天声人語と戦う

7月21日(金)

初級クラスのFさんは、来年の春、J大学やG大学に入りたいと思っています。しかし、読解力も文章力も発話力もまだまだで、自分自身でも相当頑張らなければJ大学やG大学には手が届かないと感じています。学校の授業だけでは足りないと思ったFさんは、今学期の最初から天声人語を書き写し始めました。周りの日本人に薦められたのかもしれませんが、天声人語は初級のFさんには荷が勝ちすぎているように思えます。

そのFさん、授業後に私のところへ来て、自分の写した天声人語を音読し、内容についてあれこれ質問しました。天声人語ですから、初級では習わない単語や文法が何の前触れもなく現れます。そのため、まず、文章をどこで切って読めばいいかわからないようでした。自分なりに意味を解釈していましたが、目の前の単語しか見ていない意味の取り方で、当然、字面どおりの意味しか捕らえていません。ですから、天声人語ならではの文章の味わいなど、感じ取れるわけがありません。

Fさんからの質問には、Fさんにわかる範囲で可能な限り味わいの部分を補って説明しました。600字余りの天声人語を読み通すのに、丸1時間かかりました。読み終えたときのFさんの満ち足りた顔を見ると、やってよかったという気持ちが湧き上がってきました。

でも、やっぱり天声人語は初級じゃないと思います。上級の語彙力、読解力と、日本社会に関する基礎知識がないと理解が進みません。無味乾燥な文字列を追っているに過ぎなくなります。だからFさんには今の実力にふさわしい教材を教えてあげたいのですが、Fさんは今、天声人語に燃えていますから、もう少し頑張らせようか名とも思っています。

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