論理構成

9月26日(火)

道がぬれていますね。どうも          ようですね。

この下線部に言葉を入れなさい、という問題が出たらどう答えますか。この問題を作った人は「雨が降った」を正解としていますし、多くの方がこれに類する言葉を入れるのではないでしょうか。

「雨が降った」を入れた方は、どうしてそう答えたのですか。これにきちんと答えるほうが難しいかもしれません。道がぬれているという状況を見て、その原因を考えると、「雨が降った」が一番自然だから、というのが基本的な論理構成でしょうか。

こんなに深く考えずに、「だって当たり前じゃん」でおしまいにしてしまう人だっていることでしょう。ところが、これが全然当たり前ではない人もいるのです。Fさんがその1人です。Fさんの答えは「雨が降る」でした。

道がぬれていますね。どうも雨が降るようです。

「雨が降る」といえば、未来のことです。「ようです」は推量です。道がぬれているという現在の状況の原因を推量して答えてほしいのですが、Fさんは未来の出来事を答えていますから、ある現状の「原因」にはなりえません。「降る/降った」というテンスの間違いかと思ったら、Fさんは「今、降ります」といいます。要するに「雨が降っているようです」と答えたかったのです。

でも、現在進行形で雨が降っていることを指摘したかったら、わざわざ「道がぬれていますね」などとは言わないでしょう。こういう説明をしても、Fさんは理解してくれません。「今雨が降っているのだから道がぬれている」という論理のどこがいけないのかと、疑問たっぷりの目つきで私を見つめます。

あれこれ手を尽くしましたが、Fさんに「道がぬれているのはわりと近い過去の一時点に雨が降ったからだ」という理屈を理解させることはできませんでした。もしかすると、Fさんと私(たち日本人)は、根本的に発想が違うのかもしれません。これが事実なら、こういう日本人独特の発想に基づく論理をテスト問題にしてはいけないということにもなりかねません。でも、こういう考え方をするのが日本人であり、それが日本文化だよと、日本にある日本語学校に勤める私は、押し切ってしまいたいところです。

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