入学式挨拶

皆さん、本日はご入学おめでとうございます。このように多くの若者が世界中からこのKCPに集まってきてくれたことをとてもうれしく思います。

皆さんの留学の目的は人それぞれでしょうが、皆さんの周りにいる、あるいはこれから現れるライバルたちに差を付けるというのもその1つではないかと思います。大勢の中に埋没してしまっては、皆さんの存在意義は薄れてしまいます。皆さんが、皆さんを取り巻く人たちにとって唯一無二の存在となるためには、ほかの人にはない何か大きな特徴を持っていることが必要不可欠な条件となるでしょう。それゆえ、留学経験を、自分自身を特徴付ける何物かにしようと思っている人も多いと思います。でも、これは留学さえすれば誰でもそうできるというものではありません。留学の中身が大きく物を言います。漫然と外国で時を過ごしただけでは、留学という経歴は残りますが、実力は伴いません。やがて周りの人々にその経歴は虚仮威しに過ぎないと見抜かれてしまいます。密度の濃い、物の考え方や仕事の進め方や果ては人生観にまで影響を及ぼすような生活を送って初めて、この留学が皆さんの将来に明るい光をもたらす経験となるのです。

では、どうすれば密度の濃い留学生活が送れるでしょうか。勉学に励むことはもちろん、というよりそれは最低条件で、進んで自分とは異質なものを求めていってください。他国の学生と友達になることもそうですし、年代の違う人たちと語り合うこともそうです。日本の文物に触れることも忘れてはなりません。インターネット上での経験ではなく、体を張って五官を通して感じ取ってください。

そして、こういう経験によって、自分自身や自分の国を相対化してください。異質なものとの接触によって得られた新しい視座から、今までの自分を総決算し、これからのあるべき自分像を見出すのです。また、自分の国を愛する心、誇る気持ちは大切です。しかし、それと何でも自分の国が一番だと信じ込んでしまうこととは別です。自分の国の強みも弱みも知っている人が、政治の世界でもビジネスの分野でも科学技術の方面でも、頼れるリーダーとなるのです。KCPにいるうちにここまでしろとまでは言いませんが、いずれはこういうことができるようになってもらいたいです。KCPを卒業し、進学したり就職したり起業したりして社会に根付いている人たちは、みんなこういう目を養っています。その一方で、異質を拒み続けた学生たちは、得る物の少ない留学に終わっています。

KCPでの勉強が終わったら国へ帰る人たちは、これからこのような異質な世界での生活は経験できないかもしれません。ですから、この機会を有意義に活用し、肌身で世界の広さを実感してください。日本で勉強を続けていこうと思っている人は、KCPでの生活は進学後の生活の助走です。より高く遠くへ飛んでいけるように、十分に勢いをつけてください。

今ここにいらっしゃる皆さんは、短い人で2か月、長い人は、日本の大学や大学院での期間も加えると、数年あるいはそれ以上にわたる留学生活が控えています。後で振り返った時、得がたい経験をしたと胸を張って言えるような濃密な人生のひとときを、皆さん自身で創造していってください。私たち教職員一同、喜んでそのためのお手伝いをいたします。

本日は、ご入学本当におめでとうございました。

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