値上げ

2月18日(木)

世の中では、おとといから6月のEJUの出願受付が始まっています。KCPでは来週団体出願をします。それに先立って、進学コースの学生向けに、EJUの概略を説明しました。今回は、昨年秋以降に入学した学生たちが主力ですから、EJUの受験経験者が今までになく少ないです。ですから、EJUのいろはから解説していきました。

6月のEJUが初EJUという学生が大半ですが、6月のEJUを練習だと思ってもらっては困ります。6月の成績で勝負が決まる大学がたくさんあります。その中には学生たちがあこがれている大学も多数含まれています。そういう大学に不戦敗とならないようにするには、いきなり本番だと思って何が何でも高得点を挙げる必要があります。

その他、KCPの学生の得点状況から、傾向と対策を少々述べました。先輩たちの苦労した点を伝え、今から対策を講じていけば、先輩たちの実績を上回れるかもしれません。6月20日が試験ですから、4か月ほどの短期決戦です。使えるものは何でも使わなければ。

そのEJUですが、今年から受験料が上がりました。1科目で1万円、2科目以上は1万8千円です。日本人が受ける共通テストが、2科目以下が1万2千円、3科目以上で1万8千円です。これと比べると、EJUは割高ですよね。受験者数が1桁以上違いますから、マス効果がないためにこうなるのでしょうか。

でも、受験者数が少ないわりには結果が出るまで時間がかかります。値上げしたのですから、そのあたりのサービスも向上してもらいたいです。

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落ち着いた

2月17日(水)

Yさんがやっと合格しました。今までに10校ぐらい受けましたが、ことごとく落ちました。2月の半ばが過ぎて、かなり切羽詰まって来た時点で、どうにか行き先が決まったというわけです。

はっきり言って、Yさんは高望みのし過ぎでした。実力的に無理な大学ばかりを受け続け、落ちまくっていたというのが実情です。もちろん、私たちも何も指導しなかったわけではありません。かなりきつい言葉で志望校のレベルを落とせと言ったこともあります。しかし、Yさんは全く耳を貸しませんでした。

指定校推薦に応募しようともしましたが、EJUの点数が足りなくてあきらめざるを得ませんでした。指定校推薦の足切り点は、通常、かなり低めに設定されます。その大学の合格最低点かもっとしたぐらいの感覚です。それにすら到達しなかったのですから、その成績で他大学に受かるはずがありません。

Yさんは不真面目な学生かというと、決してそんなことはありません。ただ、どこかで仕入れた根拠がないけど自分の耳にやさしい情報を信じ、こちらの厳しい言葉はすべてスルーでした。今学期になって、ようやく現状が見えてきて、志望校を3ランクぐらい下げて、合格にたどり着きました。

Yさんにとっては不本意な結果でしょうが、去年から見てきている者としては、落ち着くべきところに落ち着いたなという感じがします。自分の実力って、なかなか見えてこないのでしょうか。

去年からずっと指導されてきたK先生、今晩はきっと枕を高くしてぐっすりお休みになれるでしょう。

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これから勝負

2月16日(火)

Tさんは3月卒業予定ですが、まだ進路が決まっていません。オンライン授業では積極的に発言するのですが、進路のことになると、なぜか動きが鈍いのです。高望みを続けてあちこち落ちましたが、滑り止め校に関しては手を打っていませんでした。ですから、2月の半ば過ぎになって持ち駒がなくなりました。

今から出願・受験できるところもありますが、Tさんの満足するレベルの大学ではありません。そこでTさんが見つけ出してきたのが、TさんもあこがれているM大学の科目履修生でした。怪しいと思って調べてみると、やはり、ビザは出ませんでした。他大学の正規生が、M大学の講義を聞きたいときに利用する制度でした。

次に就職という話を持って来ました。でも、高卒で来日したTさんは、就労ビザはもらえません。「アルバイトの店長が…」などと言っていますが、それは店長が法律を知らないだけです。可能性があるとすれば、いわゆる社長ビザです。日本で起業すると言っても、元手が必要ですから、おいそれとできる話ではありません。

あらゆる外堀が埋められて、ようやく、大学進学コースがある専門学校に進むという決断をしました。今週末に開かれる進学相談会の案内メールや、最近専門学校から私のところへ直接来た学生募集メールを転送しました。幸い、出席率はそんなに悪くはありませんから、出願書類で門前払いということはないでしょう。

ここから先は、まず、Tさんが主体性を持って動かなければ意味がありません。はっきり言って、1学期分動きが遅いですね。先学期か先々学期に言われたことを、身にしみて感じているのではないでしょうか。最近、根拠のない自信を持っている学生が多いような気がします。

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WiFi不調

2月15日(月)

いつもは真面目なCさんが、オンライン授業で怪しい動きをしていました。WiFiの調子が悪いと言って抜けること2回。何も言わずにいつの間にか消えている学生に比べればはるかに良心的ですが、いままでWiFiがどうにかなって一時的にせよ授業から出ることはありませんでしたから、どうしたんだろうと思いたくもなります。

ところが、2回目に抜けてまた戻ってきてからは、今までになく積極的になりました。私が指名した学生が答えに詰まっているとチャットで反応するし、Cさんを指名すると妙に意気込んで答えます。本当にWiFiが不調だったのかもしれません。そう思いながら授業を終えました。

授業後、学生からの質問に答え、要指導の学生を残して注意を与え、職員室に戻ってきました。メールをチェックするとCさんからメールが届いていました。H大学に合格したと、Webの画面が貼りつけてありました。どうやら、授業を抜けて合格発表を見ていたようです。

授業が終わってから確認しろと言いたいところですが、教師の目が直接届かない自室で授業を受けるとなると、合格発表を観たい気持ちを抑えるのは不可能でしょう。対面授業でも教師の目を盗んでスマホで発表を見て喜んだり落ち込んだりする学生が毎年いましたから。

Cさんは、唯一の受験機会だった11月のEJUで失敗しました。信じられないような低得点でした。今シーズンの大学進学は無理だと思って、専門学校をキープした上でH大学に挑戦しました。面接練習にも熱が入っていましたが、EJUの失敗を挽回できるか、本人も私も確信が持てませんでした。

それだけに、授業終了後まで合格発表を待てなかったのでしょう。うれしさもひとしおだと思います。H大学からの入学手続きの書類が学校に届きました。明日は雨が上がりますから、授業が終わったら取りに来るんじゃないでしょうか。そうしたら、「おめでとう」と言ってあげましょう。

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春の気配

2月13日(土)

私が春を感じるのは、出勤した時に、学校の前の道から見える東の空がわずかに明るくなり始めるころです。今週の初めぐらいから、東の空の色が頭上の空の色よりわずかに薄くなり始めました。空がオレンジ色に染まるよりはるかに手前で、まだ白黒の世界です。ビルのすき間(谷間にも満たない狭さです)が白んだかなという程度に過ぎません。それでも、なんだか心が浮き立ちます。

職員室で受験講座の資料作りに励んでいると、O先生が「咲きました。いい香りですよ」と、梅の小枝を持って来てくれました。7階のお茶室の庭に咲いていたそうです。オンライン授業が続き、茶道部も活動ができません。久しぶりにお茶室に足を運んだO先生が、白梅のほころんでいるのを見つけたというわけです。梅の小枝は、O先生が一輪挿しに生けて、受付に飾ってくださいました。

お昼過ぎにZさんが来ました。去年の新入生ですが、W大学の大学院に受かったので、今学期いっぱいで退学します。その手続きを聞きに来たのかと思ったら、T大学の大学院も受けているけれども、そっちも合格したらどちらに進学した方がいいかという相談も受けました。「日本人だったら90%以上T大学だろうね」と答えると、退学手続きはT大学の発表の後まで待つということになりました。表情からすると自信ありげでしたから、期待してもいいかもしれません。

私がZさんの相談を受けている隣で、Kさんが志望理由書を書いていました。来週早々出願ですから、担任のO先生のチェックを受けてすぐに清書しているという次第です。O先生の顔をのぞき込むと、梅を生けていた時とは打って変わって、渋い表情をしていました。KCP全体の春は、もう少し先のようです。

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最後のお勤め

2月12日(金)

今学期はずっとオンラインでの授業を続けていますが、始業日に学生にアンケートを取りました。進学先が決まっているか、これから受験すところはどこか、アルバイトはしているか、しているならそれはどこか、曜日と時間はどうか…など、学生の生活全般にわたるものでした。最後に、学校や教師への要望も聞きました。

Cさんは、それに対して「入試直前なので、面接練習をしてほしい」と答えました。その週の週末が入試でしたから、私が入試前日にオンラインで面接練習をしました。答え方がめちゃくちゃだったので、基礎からたたき直して、どうにかCさんの思いが面接官に伝わるようなレベルまで持って行きました。それが功を奏したかどうかは定かではありませんが、Cさんはその志望校に合格しました。

Cさんが受かったという情報は、M先生から聞きました。始業日のアンケートで進学先が決まっていないと答えた学生にさらなる聞き込みをした段階で、M先生がCさんの合格を知り、他の学生の合格情報と一緒に伝えてくださいました。責任を果たせて、ホッとしました。

ところが、その後、Cさんのクラスに入ることはあっても、Cさん自身の口から合格の報告は聞いていません。恩着せがましいことをするつもりはりませんが、一言あってもいいんじゃないかなあ。「おかげさまで」などという気の利いた言葉までは要求しませんが、「合格しました。ありがとうございました」ぐらいは言えますよね。

面接練習は教師の仕事の1つです。だから、受験する学生から要望があればして当たり前であり、その結果受かっても報告するいわれはないと考えているのでしょうか。残念ながら、日本の社会はそこまでドライに割り切る発想が広まっていません。Cさんが同じようなことを進学先で、おそらく次は就職試験で、やらかしたら、人間性を疑われるでしょうね。

これをCさんに教えてあげるのが、Cさんを教えた者としての最後の仕事でしょうか。

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何もしない

2月10日(水)

今学期は、水曜日の午前中は進学先が決まっていない学生への指導の時間です。2月も半ばになろうというのに吉報を1つも手にしていない学生は、日本力が足りないか、高望みしすぎか、手順を踏んで物事を進めるのが苦手か、その辺のどれかです。

Jさんは3番目のパターンです。T大学の編入学試験に出願しようと考えていました。国の3年制大学を出ていますから、できれば編入学と考えるのは普通です。しかし、考えているだけで動いていませんでした。今頃になって「15日が出願締め切りですが、今すぐ書類を申し込めば12日にもらえますか」と聞いてきました。そんな書類は、先月のうちにそろえておかなければいけません。それだけではありません。WEB出願なのに何もしておらず、国の学校が出した書類の和訳もしておらず、パスポートや在留カードのコピーもしていません。

私が必要書類を並べ立てると、JさんはあっさりT大学への出願をあきらめてしまいました。KCPの書類だって、担任の先生を拝み倒せば12日までに何とかなります。明日は授業がありませんから志望理由書などの書類作成に集中できます。それを金曜日の朝に学校まで持って来れば(Jさんの家は学校の近くなので、十分可能)、担任の先生の最終チェックを受けて、遅くとも夕方には郵送可能です。そのぐらいのこと、今までに何十人もの学生がやってきました。そして合格をつかみ取ってきました。しかし、Jさんはやるべきことの多さ(?)に気持ちがなえて、旗を巻いてしまったのです。

去年のまだ暑さの盛りの頃から計画的に動けと言われてきたはずです。先送りのあげくが、これです。今まで、自分で自分のことをしなくても、誰かがしてくれたんでしょうね。日本留学も、親か親戚かの言いなりで、主体性がなかったのかもしれません。だとすると、日本語力不足などよりはるかに手ごわい症状です。

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森さんと同じ?

2月9日(火)

先週来、オリパラ組織委員会の森会長の発言が問題になっています。発言というよりは暴言に近く、内容は問題外です。多くの人が論評していますが、私は大坂なおみさんの意見が一番心に響きました。大坂さん自身、差別やら暴言やらと戦ってきた歴史があるからでしょう。

確かに、「いらんこと言うとらんでワシについてこい!」というトップダウン的なリーダーシップが必要な時もあるでしょう。でも、それは、3.11のような、本当の非常時に限られます(残念ながら、3.11の際にはこういうリーダーが現れず、10年たっても復興には程遠いのが現状です)。森会長が置かれている立場は、議論を尽くすことこそ求められます。その立場が理解できないのだったら、お年もお年ですから、後進に道を譲るべきでしょう。森さんが首相になったのは、ちょうど2000年のことです。もう過去の人です。

昨日の上級の文法テストを採点していたら、「彼は周囲の反対をものともせず、障害がある女性と結婚しました」という例文が出てきました。女性を議論の場から排除するかのような森会長の発言が問題になるのなら、この例文の、障碍者を結婚相手として避けたがる発想も問題です。結論として結婚したのですから、森会長の発言よりはいくらか光明が見えますが。

純粋に文法的観点からすれば、この例文はマルです。書いた学生に悪気があったとは思えません。しかし、悪気がないだけに、何かの拍子に誰かを傷つけるおそれが高いのです。あれこれ悩んだ末に、マルにしました。その上で、書いた本人にはフィードバックをしようと思っています。

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大差

2月8日(月)

上級クラスで文法のテストをしました。オンライン授業ですから、テストもオンラインです。学生の自室で受けるということは、教科書やノートは見放題ということになります。満点続出を防ぐひねくれた問題があるにしても、普通に勉強していれば80点ぐらいは軽く取れるはずです。

ひねくれ問題をものともせずに、満点近い点数をとったWさんやSさんはさすがです。授業で指名しても的を射た答えを返してくれるだけのことはあります。Yさん、Zさんもそのグループでしょう。不明な点はすぐに質問して解決するなど、前向きな態度が好成績につながっています。Cさんは、授業中の反応からは想像できない高得点でした。復習型の学生なのでしょう。

一方、Oさん、Iさん、Lさんはひどいものでした。出席を取る時だけ返事をして、あとは指名しても反応しなければ、ブレークアウトセッションになれば逃げてしまい、授業中何をしているかわかったものではありません。試験問題が教科書のどこから出ているのかすらわからなかったのではないでしょうか。ノートが真っ白けなのは、疑う余地がありません。

ボーダーライン上が、TさんやSさんです。応用問題はからっきしでしたが、教科書の例文に沿った問題で点を稼ぎ、かろうじて合格点を確保しました。教科書の使い方をしている分だけ、Oさんグループより上です。

要するに、勉強する学生はオンラインだろうと対面だろうと力を付けていくのです。オンラインだからと手を抜く学生は、伸びないどころか落ちていきます。最高点と最低点で4倍近い差が付きました。学期が始まって1か月なのにね。

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王様がセンタク

2月5日(金)

「Aさん、次の例文を読んでください」「はい。『王様のような生活をしてみたいです』」「はい、じゃあ、みなさん、マイクオフのままでいいですから、私の後に一緒に読んでください。『王様のような生活をしてみたいです』…。じゃあ、Bさん、王様のような生活って、どんな生活ですか」「センタクします」「え、センタク? 王様は服を洗いますか。家族が着た服を洗うんですか」「いいえ、センタクです。…お金をたくさん使います。高い物を買います」

これをお読みのみなさんは、Bさんが何と答えようとしたかわかりますか。

「ゼイタク」でした。下々の民にしてみれば、王様の生活は贅沢に見えるでしょう。日本人の語感だと若干非難めいたにおいがしますから、例文のような「してみたいです」には合わないように思えます。しかし、そこは不問に付しましょう。Bさんなりに「王様のような生活」をあれこれ考えて「贅沢」という言葉にたどり着いたのだとしたら。

けれども、「センタク」という発音は許せません。発音が悪いにもほどがあります。KCPの学生の超ヘタクソな日本語によって日々訓練されている私ですら理解できなかったのです。普通の日本人に通じるはずがありません。パソコンのマイクにせいで済まされるレベルではありません。漢字が読めないか、「ゼイタク」と発音しているつもりでも「センタク」となってしまうのか、いずれにしても根が深いです。

対面授業なら一文ごとにコーラスさせて、変な発音はすぐに発見し訂正させます。その繰り返しで1ミリずつでも滑らかな日本語へと近づけられます。それが充分にできていないのが現状です。

Bさんも進学希望ですが、今年の秋ぐらいまでに面接にたえ得る発話力が得られるでしょうか。

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