厳しく見つめる

5月11日(月)

Tさんは、受験講座理科でやっている模擬テストで毎回満点に近い成績を挙げています。国で理科の基礎をきちんと身に付けてきたのだと思います。また、理科に対するセンスもかなりのものだと思います。EJU日本語の模試でも高得点を取っていますから、本番で大いに期待が持てます。

NさんもGさんも、理系的な勘が働くようで、そういう意味では期待が持てます。でも、みんな私の目の前で問題を解いているのではありません。計算問題でこっそり電卓を使っていたとしても、私にはわかりません。先学期の受験講座で私が配ったプリントなど、参考資料を見ながらというのもありえますが、わりと早く解答用紙を提出してくることからすると、その可能性は低いと思います。

そうはいっても、あまり期待を持ち過ぎないようにしています。今まで、期待をかけた学生に何回裏切られたことでしょうか。本番独特の雰囲気にのまれてしまうこともあるのでしょう。でも、一番危険なのは詰めの甘さです。最後まで答えを出すことなく、「ここまでやればあとは単純な計算だからもういいや」と思ってしまったり、「単なるケアレスミスだから本当は〇だよ」と安易に考えてしまったりすると、本番で痛い目に遭いかねません。

3人とも、早々と提出するのですが、どこかで何か落とすことがたまに見られます。知識とかテクニックとかなら十二分に持ち合わせていますが、それを正確に発揮し、正しい答えにたどり着き、得点に結びつけるところで抜かりがあると、残念な結果になってしまいます。そういう指導が、思い通りにできないもどかしさが、遠隔授業にはあります。

全国的に新規感染数が減りつつありますから、日本国内ではEJUは実施されるでしょう。最後の2、3回かもしれませんが、通常授業に戻ったらそんなところを厳しく注意していくつもりです。

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夢はYouTuber

5月8日(金)

今学期はずっとオンラインで受験講座をしています。今までもパワーポイントを利用して授業を進めていましたが、主役は生身の私自身でした。私が身振り手振り口振りで説明し、学生との掛け合いを通して理解度を探り、授業を形作ってきました。

しかし、今学期はパワーポイントが主役です。私の拙い操作技術では、画面に生身の私を再現することはできません。身振り手振り口振りを何らかで補わなければなりませんが、それをパワーポイントに担わせようとしているものの、なかなかそのレベルには至りません。

まず、先学期までのパワーポイントでは力不足です。補足資料のつもりで作っていますから、授業全体にわたってそれに頼ろうとするには無理があります。板書をしながら説明した部分がそっくり抜けていたり、体を張って説明していた部分を文字にすると長ったらしくなってしまったり、あらばかりが目立ちます。

しかも、そういうのが実際に授業をやっている最中に気づきますから、「学生たち、わからないだろうなあ…」と思いながら話を続けざるを得ません。事前にシミュレーションして足りない部分を補ったつもりでも、本番になると「しまった」の連続です。大急ぎで別の資料を引っ張り出してきたり、カメラのレンズに写真をかざしたり、ホワイトボードに計算過程を書いたりなど、冷や汗を流しながら応急処置をしています。

こういう授業を繰り返していると、YouTubeなどで公開されている授業はよくできていると思います。もちろん、かけているお金も時間も違いますが、自分の非力さを痛感します。私はYouTuberにはなれそうもありません。

ここのところ、新規感染者数が落ち着いてきました。このままフェードアウトしてくれたら、6月には対面授業ができるかもしれません。そうなることを、祈っています。

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やさしい日本語

5月7日(木)

電話が鳴りました。「はい、KCPです」。Sさんが電話を取りました。どうやら、授業料の支払いとビザの更新に関する問い合わせのようです。去年の4月に入学した学生は、だいたいビザの期限が6月末か7月初めです。この学生も、おそらくそうなのでしょう。

「授業料を払ってもらった時にビザの更新の手続きもしますから…」と説明しています。あれ、それで通じるんだろうかと心配になりました。

このセリフの場合、“授業料を払ってもらった”の主体は、KCPです。でも、学生にとって“授業料を払ってもらった”といったら、“私が親に授業料を払ってもらった時”という文が、まず頭に浮かぶのではないでしょうか。後半部分は、主体があなた(=学生)でもKCPでも大勢に影響はありません。

この学生が今どのレベルかわかりませんが、去年の4月にレベル1で入学して、今学期中級レベルだったら、すんなり理解できたでしょうか。いや、「授業料」「払った」「ビザ」「します」しか聞き取れず、そのおかげで授業料支払い時にビザ更新手続きもすると受け取れたかもしれません。

「やさしい日本語」が少しずつ広がってきています。日本人が、日本で暮らす外国人が理解できる日本語を使って、情報伝達などを進めようという動きです。阪神淡路大震災の時に、外国人が情報を得られず困難な状況に陥ったという反省から始まっています。外国人が大勢暮らす自治体を中心に、活用が進められています。

この「やさしい日本語」の精神で上記のセリフを言うとすると、どうなるでしょう。考えてみてください。Sさんに悪気はなかったとはいえ、ちょっと勉強してもらわなきゃね。

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買い物

5月6日(水)

先月半ばから紀伊国屋が臨時休業中なので、本を買うことができません。うちの前にあるショッピングモールの本屋は、先週あたりから営業を再開しています。でも、KCPのラウンジぐらいの広さに本棚がたくさん並んでいて、しかもお客さんが詰めかけていますから、何となく入るのを躊躇してしまいます。

こんな時にこそ、紀伊国屋のウェブストアを使ってみようと思い立ちました。まだ本のストックはありますが、非常事態宣言がさらにもっと延長されたら読み尽くしてしまわないとも限りません。活字中毒の私は、読むべき本がなくなったら精神に異常をきたしかねません。

そんな事情で、初めてパソコンを通して本を買うことに挑戦しました。しかし、買うべき本のイメージが明確になっているわけではありませんから、検索すること自体が非常に難しいです。漠然と「歴史」などというキーワードを入れても、ヒット件数ばかり多くて、読みたい本を選び出せません。受験講座の授業づくりの参考にと思って「高校物理」としてみても、どれが適当か全く見当がつきません。

私は店頭で実際に本を手にとって、あるいはタイトルや装丁に引かれて、買う本を選んでいたのです。そもそも、何か目的があって本を読むことはめったになく、電車の中や待ち時間に読むので、興味本位で本を選ぶのです。まさしく乱読ですから、コンピューターで検索しながら買うというのが最もふさわしくない人間です。

それでも、2020年4月出版の文庫とかって無理やり検索項目を決めて何冊か選び、発注にこぎつけました。何となく充足感を味わいながら紀伊国屋のサイトをよく見てみると、新宿本店は明日から営業再開と出ているではありませんか!!!

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名所案内

5月5日(火)

今年は行きそびれてしまいましたが、ここ15年ぐらい連休は毎年関西へ行っています。関西のどこがいいのかとよく聞かれます。安くておいしい食べ物がたくさんあることは確かで、お好み焼きは必ず食べます。でも、私はグルメじゃありませんから、それが目的で行くわけではありません。やはり、歴史でしょう。

じゃあ、歴史を感じるところでどこがおすすめですかと聞かれると、あれこれいっぱい思いついて、ちょっと困ってしまいます。

坂本の西教寺は、たぶん10年以上前に行ったと思いますが、姿のいいお寺で、ぜひもう一度行きたいと思っていました。お茶もおいしかったなあ。今年の大河ドラマの主人公・明智光秀ゆかりの寺ですから、しばらくは訪れる人が多いでしょう。

京都の西山も、再訪したいところです。阪急京都線の東向日駅からバスで20分ぐらいでしょうか。十輪寺、勝持寺、善峯寺、三鈷寺などをのんびりとめぐります。山から見下ろす景色が印象的でした。ただ、私が行ったときは高速道路の工事をしていましたから、今はそれが開通して、のどかな雰囲気が壊れてしまったかもしれません。

室津、龍野、篠山、出石、長浜、近江八幡といった、ツアーだったら1時間か2時間で通り過ぎてしまう街を、少なくとも半日かけてじっくり見て回るのもおすすめです。どこも歩いて回れる程度のお手頃サイズで、街の隅々にまで行き渡っている歴史に対する誇りを感じるのが、これらの街の醍醐味です。

それから、山の辺の道や竹内街道、柳生街道など、歩く旅も捨てがたいですね。光秀ブームに乗って、老ノ坂から洛中に入るのコースあたりが今年のはやりかなと思いましたが、果たしてどうでしょう。

来年は5月1日から5日まで5連休ですから、絶対に今年の仇を取りますよ!

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過多

5月4日(月)

緊急事態宣言が5月末まで延長されました。当然の判断でしょうね。…と、東京にいるとそう感じますが、いまだに感染者がゼロの岩手県の人はどう感じているのでしょうか。東京から大挙して避難民やら観光客やらが凝られちゃ困ると思っているのか、感染者がいないから経済のことも考えて岩手県だけ宣言を解除してほしいと思っているのか、どうなんでしょうね。

全国の新規感染者の半数近くかそれ以上を東京が占めている状況が続いています。このままいったら、月末には東京だけ宣言が解除されず、他は段階的にではあれ解除に向かうなんてことにもなりかねません。東京の人が東京の外に出たり、東京以外の人が東京に入ったりするのは“自粛”で、それ以外の移動は、例えば青森の人が鹿児島へ行くなどというのは、東京を経由しない限り認められるとかってなるかもしれません。

東京の新規感染者数が思うように減らないのは、東京一極集中のしっぺ返しです。東京一極集中は、経済効率を考えたら、日本にとって理想的なのでしょう。それがもたらす弊害は、東京の出生率の異常な低さや精神面での荒廃など、多くのことが今まですでに指摘されてきました。今回、感染症に弱いことも露呈しました。オリンピックは来年になりましたが、現状からすると、都民がよほどの奮起をしない限り、世界中の選手や観戦客のみなさんに安心しておいでいただける状態にならないのではないでしょうか。

昨日、うちの前のショッピングモールで異様な光景が見られました。2階の通路にかなりの長さにわたって、1.5m間隔ぐらいの列ができていました。100円ショップに入る人が並ばせられていたのです。店内に入れる人数を何人に設定したかはわかりませんが、入店までかなり待たされたんじゃないでしょうか。やっぱり、人が多すぎるのです。これを解消しない限り、新たな伝染病が発生するたびに同じことが繰り返されるでしょう。

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心ここにあらず

5月2日(土)

今ごろ羽田空港、今は琵琶湖を見下ろしている頃、今は三宮から姫路に向かう電車の窓から淡路島が見えている頃、姫路城の天守はどうなっているだろう、…朝からずっと、計画していた関西旅行の旅程を追いかけています。初日は朝1番の飛行機で神戸空港に降り立ち、電車で姫路に向かい、姫路城を見学する予定でした。平成の大修理の最中に、足場で囲われた「天空の白鷺」を見に行って以来ですから、7年ぶりか8年ぶりに対面するはずでした。姫路は朝からずっと晴れているようですから、青空に浮き立つ白鷺が美しいことでしょう。

死んだ子の年を数えるのとはちょっと違うかもしれませんが、中止を余儀なくされた旅行の跡をたどるのは悲しいものです。明日も明後日も、連休が終わるまでずっと、今ごろ繖山とか福原京の跡を歩いている頃とか思い続けるんでしょうね。未練がましいですが、私はそういう性分です。でも、去年は10連休でしたから、2年分休んじゃったんですよ。いや、そう思ってもやっぱり残念だなあ。

連休の予定は、去年のうちに骨格を決めて、足と宿を予約し、年が明けてから詳細を練り始めていました。そのうちにだんだん雲行きが怪しくなり、始業を遅らせる代わりに連休も授業と決まり、やむなくあきらめました。今は夏休みにかけていますが、これも指をくわえるような仕儀に至ったら、いったいどうしましょう。

4・5・6日も、世間一般は休日ですが、私は学生たちと一緒にEJUの準備に励みます。北摂や南都へ飛んで行きたがる心を押さえつけて、授業の準備をしました。

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朝のお勤め

5月1日(金)

人通りは減っているはずなのに、一向に減らないのが投げ捨てられた吸い殻です。今朝は5本も拾いました。毎朝出勤したらまず学校の前に変なものが落ちていないか点検しますが、吸い殻が0本になる日は最近めったにありません。風邪で吹き寄せられたとは考えられませんから、学校の前の道を歩いていた人がポイと捨てたに違いありません。

マスクをしたままたばこは吸えませんから、あごマスクかなんかの状態で吸ったはずです。たばこは煙とともに息も吐き出しますから、吸っていた人が無症状感染者だったらウィルスもまき散らしたことになります。ポイ捨てした人全員が無症状感染者だったとは思いませんが、あまりいい気持ちはしません。私の想像力はたくましすぎるでしょうか。

志村けんさんが亡くなったのも、ヘビースモーカーだったため病気の勢いが増したためだと言われました。自分の命を削っていることに気が付かないのでしょうか。きっと依存症なのでしょうね。だから、健康を害することになりかねないことにもお構いなしに吸い続け、しかも吸殻をポイ捨てして恥じるところがないのです。新宿区は条例で路上喫煙を禁止しています。それにも触れています。罰則こそありませんが、条例違反は取り締まりの対象です。

受動喫煙禁止法で、4月から屋内での喫煙が禁止され、たばこは外で吸わざるを得なくなったため、路上喫煙禁止条例など意識の外になり、こうした状況になってしまったとも考えられます。依存症だとしたら、そういう思考回路であることもうなずけますね。明日からも地道に学校前をきれいにしていくほかありません。

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教室を使わせてください

4月30日(木)

KCPはオンライン授業を続けていますが、TOEFLも受験者を会場に集めて試験を行う方式をやめて、受験生の自宅で受験ができうるようにしています。しかし、どんな場所でも受験できるのではなく、受験環境にある一定の基準を設けています。そりゃそうですよね。カンニングし放題だったら試験の意味がありませんから。

お昼過ぎ、CさんがTOEFLを受けに学校へ来ました。Cさんも自宅で受験しようとしたのですが、TOEFLの基準を満たしていないため、学校の教室を借りて受験することにしたのです。誰もいない学校の教室なら、TOEFLから文句を言われず(まあ、なんたって試験を受けさせるのが学校の仕事ですからね)、それにwifiも使えます。また、学校はGさんのうちから歩いて数分ですから、こういうご時世でも許してもらえそうな範囲であり、しかも使い慣れた場所ですから余計なプレッシャーもかかりません。だから、受験に絶好の場所なのです。実は、上述のTOEFLの話は、Cさんから聞いたものでした。

どんなふうに試験を受けるのか見てみたい気もしましたが、それじゃあCさんはたまったもんじゃありませんから、設定にだけ付き合って職員室に引き上げました。きっと遺憾なく力を発揮してくれたことでしょう。

EJUは、先ほどサイトを確認しましたが、予定通り6月21日に実施すると言っています。6月のEJUは、おそらく日本でいちばん早い大学入試でしょう。諸々の事情で6月の第3日曜日となっているのでしょうが、今年はそれが非常な重荷になっています。近日中に発表される緊急事態宣言の今後によっては、9月入学への動きも含めて、留学生と私たちに多大な影響を及ぼすかもしれません。

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引き際

4月29日(水)

昭和の日です。でも、KCPは普通通り授業がありました。この後、来週の月火水も、授業です。今学期の始業を遅らせたため、連休も休まずに授業なのです。学生にしたって、どうせどこも行くところがないのですから、授業で1日のリズムを作ったほうが、生活が乱れないはずです。私は、緊急事態宣言が引っ込んだら、連休の分を休ませてもらいます。

来週の水曜日は5月6日、安倍さんが緊急事態宣言の区切りとした日です。現状では、5月6日までに新規患者の数が落ち着くとは思えません。たとえ落ち着いたとしても、そこですぐに解除したら、また増えだすことは明らかです。緊急事態宣言は解除されないと見て行動した方がいいでしょう。

緊急事態宣言は、出すのは、ある意味、簡単です。そりゃあ、罰則はなくても国民の行動に縛りを設けるのですから、軽くはありません。でも、出すことによって病原体の広がりを抑える方向に向かわせられます。確かに、広範囲にわたって経済的な打撃を受けます。しかし、感染拡大を防ぐという効果は確実にあります。だから、出すのが遅いくらいだという批判もあったのです。

しかし、解除するタイミングを計るのは非常に難しいです。経済的観点からすれば早く解除するのが望ましいでしょうが、疫学的観点からは慎重であるべきです。早く解除して感染の第2波をかぶってしまったら、元も子もありません。安倍さんは、また「責任はあるけど取らない」という不思議な論法を振りかざして逃げてしまうのでしょうが、そうなってしまったら経済的にも極めて重大な悪影響をこうむります。

解除されたらみんな一斉に遊びに出るでしょうね。日本中が3密だらけになりそうです。夏休みが危ないです。そうならないような手じまいのしかたが難しいのです。

連休の分を、いつ休みましょうか。のびのびと休める時期に休みたいものです。

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