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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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豊かな人生のために

3月23日(金)
 今年の寒い冬を象徴するかのように、10時ごろから冷たい雨が降り出しましたが、今日は今学期の期末テストがありました。去年のこの学期は震災の影響で期末テストができませんでしたから、予想外の欠席者がいるとか言いながらも、無事に学期が終わって何よりです。
 期末テストの日といえば、毎学期おなじみのアメリカの大学のプログラムできている学生たちの修了式です。今日も、お昼休みの時間には中級以上の学生たちの、夕方からは初級の学生たちの修了式がありました。修了式では、証書をもらった後でスピーチをすることになっています。
 多くの学生が初めての外国生活で、短い人でも3か月間東京で暮らし、KCPで勉強してきたわけですから、どの学生もすんなり留学生活が送れたわけではありません。いろいろな問題を乗り越えて修了式までこぎつけたのです。修了式の場に臨むと、その苦労が美しい思い出に昇華されるのです。クラスの先生方とけんかばかりしてきた学生も、要注意学生として名が挙がっていた学生も、みんな目を潤ませながら「ありがとう」と言ってくれます。多少の外交辞令はあるでしょうが、本心に近い気持ちではないかと思います。
 KCPへの留学が、単に日本語が上手になりました、日本文化に触れました、というだけだったら、それは自分の国でもできることです。インターネットという文明の利器を駆使すれば、そのぐらいはわけないことではないでしょうか。それに加えて自分自身を精神的に成長させてこそ、わざわざ国の外に出た価値があったというものです。
 今日のスピーチでも、今までの苦労がまぶたをよぎり、自分の成長を実感して、言葉に詰まってしまう学生もいました。KCPへの留学を申し込んだときには想像もしなかった何かをつかんだのでしょう。その何かをこれからの人生に活かして、豊かな人生を送ってもらいたいと思いました。

  • 2012年03月23日(金)18時56分

難しい…

3月22日(木)
 卒業式からだいぶ時間が経つのですが、卒業生がぽつぽつやってきます。顔を見せてくれることはうれしいのですが、その中には進学先から送られてきた書類の書き方がわからないという学生がいます。卒業生の日本語力が低くて説明書が読めないのなら私たちの責任でもありますが、どうやらそうとも限りません。様式が複雑なのに加えて、説明書がわかりにくいという例が多いのです。さらに、特殊な検査を受けることを求められ、それに時間と費用がかかることもあります。
 ひところ、非関税障壁という言葉がマスコミをにぎわせたものですが、それに似たものを感じます。留学生を受け入れたい、是非うちの大学に来てくださいと言いつつも、自分のところの入試に合格させた学生すら理解に苦しむような手続きを踏ませるというのは、どうかしていると思います。確かに、同じ手続きを日本人もしていることでしょう。でも、日本人学生には親がいます。それに対して、外国人留学生はすべてを自分でしなければなりません。手に負えなくなったら日本語学校の教職員を頼るしかありません。日本語学校の先生に見てもらうことが前提になっているのではないかとさえ思えてきます。そのくせ、大学進学のラインから日本語学校を排除しようという動きがあるのは、いったいどういうことでしょうか。また、お金のかかる検査もすべての大学で求められているわけではなく、入学生に必須のものなのか、疑問が残ります。
 概して留学生が多い大学はそれなりに考えられていますが、少ない大学は不親切なことが多いようです。他の国で留学生が大学に入学する時の事情はどうなのか詳しくは知りませんが、日本の大学はもう少し何とかならないものかと思います。

  • 2012年03月22日(木)20時57分

Jさんの挑戦

3月21日(水)
 昼休みに、Jさんが私のところへやってきました。Jさんは、半年くらい前に、私から日本語の参考書を借りていき、それを返しに来たのです。
 Jさんは私よりも年上の学生で、今学期でKCPを修了し、日本で就職することが決まっています。やはり、年齢的に語学学習はかなり大変で、同じレベルをもう一度繰り返すこともありました。年を考えてしまうと、私自身、今から新しい外国語を、KCPのような厳しい学校で勉強すること自体、ちょっと想像できません。まあ、自分のペースで趣味で勉強するなら別ですがね。だから、Jさんが、日本語というJさんにとっては難しい言語に挑戦し、曲がりなりにもコースを満了し、しかも就職まですることに対して、心から敬意を表しています。
 年を取るとともに、私たちはいろいろなことをあきらめていきます。50歳を過ぎて大学に入学したとか、70歳で気象予報士の試験に受かったとかいう人がニュースになるのは、普通では考えられないからです。でも、Jさんを見ているとそれじゃいけないんだなと思わされます。しかもJさんは去年の震災を経験していて、それにもめげずに初志を貫徹したのです。確かに、同じ学期に入学した若い学生よりも最終的な到達度は低いです。でも、私から参考書を借りてまでも日本語を身に付けようとしたことで、日本語以外の何かもつかんだことだと思います。そういうひたむきさがある限り、Jさんの人生は華やかなものになることでしょう。
 私も、語学はちょっと遠慮していますが、受験講座の理科の授業を受け持つことを通して、昔学んだことを復習もしていますし、それが最新の理論に触れるきっかけにもなっています。新しいことへの挑戦には程遠いですが、何にもしないよりは若さが保てるのではと期待しています。

  • 2012年03月21日(水)19時44分

彼岸を前に

3月19日(月)
 明日は春のお彼岸です。“暑さ寒さも彼岸まで”とは言うものの、今年は彼岸を過ぎてもまだまだ冬の装いが必要な日が続きそうです。それでも、今月末には桜が開花し、その1週間後くらいには満開になるという予想が出されています。去年より3日くらい遅い進度ですが、着実に開花に向かって歩んでいるようです。開花予想で一番早い高知は今週末に開花とされています。
 今年の桜は4月になってからが盛りのようですが、ここのところ3月中にワッと咲いてしまうことが多く、遅いなっていう感じがします。でも、私が子供の頃どころか大学生の頃でも、桜は4月になってからの花だったような気がします。つまり今年ぐらいのペースで春が来ていたことになります。じゃあ私が大学生の頃は毎年、今年のように寒い冬だったのかというと、そんな記憶はありません。これぐらいの冬が当たり前だったから印象に残っていないのかもしれません。
 今年の冬は雪がよく降りました。それでも新宿を含めた都心近辺の積雪は、最高で数センチでした。子供の頃は板橋に住んでいましたが、年に1度ぐらいは雪合戦ができるほど積もったように思います。私の記憶が正しいとすると、最近は最高気温はそんなに上がっていないけれども、雪になるかどうかというあたりの最低気温がけっこう上がっているのかもしれません。
 今年はこのブログに何回も「寒い、寒い」と書いてきました。でも、あと10日ほどで桜が咲き、来学期の入学式、4月7日あたりに見頃を迎えることでしょう。その頃にはコートも要らなくなっているに違いありません。ようやく、ゴールが見えてきました。

  • 2012年03月19日(月)17時22分

会話力テストの副産物

3月16日(金)
 アメリカの大学から来ている学生たちは、今週から来週にかけて、会話力のテストがあります。私も昨日と今日、試験官をしました。
 まず、名前とクラスを確認し、クラスの先生の名前を言わせます。次が、私が密かに楽しみにしている質問で、「その先生たちの中で一番面白い先生はだれですか」。学生はちょっと考えて、「○○先生でです」。私はさらに、「○○先生はどうして面白いですか」とききます。この質問は、初級は初級なりに、上級は上級なりに、習った文法を使って答えられるので、学生の力を見るのにちょうどいいのです。でも、それ以上に、いろいろな先生の私の知らない姿を知ることができる点が楽しみなのです。
 Jさんによると、T先生は、漢字の時間になると燃え上がるようです。Vさんによると、U先生は文法の時間にいつも熱演するそうです。私が目にしているお二人からは想像しづらいのですが、学生が一番面白い先生としてまっ先に名前を挙げるくらいですから、相当なものなのでしょう。教えられた内容が学生の頭に残っているからこそこうして名前が出てくるのでしょうから、お二人にとっては名誉なことです。
 このような教師の素顔は、私たちが授業見学をしてもなかなか見せてはもらえません。同僚が見ているとなると、多かれ少なかれよそ行きを授業をするものです。学生を使って教師の実態を知ろうなんてちょっと陰険なような気もしますが、学校として知りたいのは各先生の飾らない姿なのです。今回のJさんの話を聞いて、私の中ではT先生の評価が上がりました。熱心さが学生に伝わっていることがよくわかりました。この仕事を始めてまだ日が浅いT先生ですが、これからも自信を持って教えてくれればと思っています。

  • 2012年03月16日(金)16時44分

病院へ

3月15日(木)
 年を取ると体のあちこちにガタが来るもので、今日は午後から病院へ行きました。健康診断の結果、目の病気が見つかり、3か月ごとに通院しています。私の病気は急に進行することはなく、言ってみれば、小康状態を保っていることをチェックするために検査を受けるようなものです。
 思えば、最初に若者らしからぬ体の異常が発生したのは、30代前半で経験したぎっくり腰でしょうか。その頃から肩こりもひどくなり、現在に至るまで慢性腰痛と肩こり、それに加えて首も背中も凝りまくっています。40代半ばにして電車の中で文庫本が読めなくなり、老眼に気づきました。近眼の人は老眼にならないというのが俗説に過ぎないことを痛感させられました。2年前からそれに目の病気が加わったのですが、いまさらもう驚きません。
 このほかにも、最近は集中力が衰えてきました。周りから人の話し声が聞こえると、仕事に集中できなくなりました。だから、創造的な仕事は、早朝、他の先生方がいらっしゃらない時にするようにしています。私は早起きは全く苦になりませんからいいのですが、日中に仕事が進まないというのは大きな問題です。その上、睡眠不足にも弱くなりましたから、こなせる仕事の量が減りました。
 学生たちには、よく、「あなたたちもすぐこうなるんだよ」なんて冗談めかして言いますが、学生たちは自分とは無縁だと思っています。でも、私にとって、30歳の時なんて本当に昨日のことのようです。浦島太郎ほどではありませんが、あっという間に謙信や信長、三島由紀夫の年を追い越してしまった感じがします。だから、学生たちには、若くて体も頭もバリバリ動く時間を無駄にしてほしくないのです。
 病院での検査の結果は今までと変わりなく、1日1回目薬を差して様子を見続けていきます。無理が利かなくなったということは、限られた時間にいかに密度の高い仕事をするかということを考え続けるということです。これもまた、私にとっては楽しいことです。

  • 2012年03月15日(木)18時33分

まだ冬晴れ?

3月14日(水)
 今週はよく晴れた日が多いのですが、空の色がまだ冬です。桜のつぼみが膨らみ始める頃の、水蒸気を多分に含んだ薄ぼんやりとした色ではなく、お正月の頃の富士山が見通せるような、季節風で汚い空気が一掃されているようなきれいな青です。それでも今日は風が弱く一息つける感じもしますが、そのわりに気温は上がっていません。寒気団が日本の上空に居座っている証拠です。
 今年は桜の開花は遅くなりそうですが、花粉症シーズンは始まっているようです。O先生あたりは花粉よけのゴーグルをしています。そういう姿を目にすると、気温は低くても春に片足を突っ込んでいるのかなと思います。毎朝見ている天気予報のキャスターは、2月中ごろから明らかに春を意識した服装です。先月のうちは、その服装が無理をしているようで気の毒に感じられたのですが、最近は季節に合ってるかなと思えるようになってきました。私は花粉症には無縁だし、気温も空の色もそんなに変わっていないはずなのに、どうしてでしょうか。
 学校の季節も着実に前進しており、どこのレベルでも期末タスクの準備が盛んに行われています。何らかの形で口頭発表を行うところが多く、その原稿を書いたり発話の練習をしたりという学生をよく見かけます。また、来週の金曜日は期末テストですから、問題作りの心配もしなければなりません。4月からは新年度ですから、新しい企画も練り始めています。4月の新入生は、国で入学の日を首を長くして待っていることでしょう。
 大学の秋入学が盛んに議論され始めたとはいえ、今のところは春が勉強の始点です。4月からもKCPで勉強を続ける学生たちとともに、気持ちよくスタートを切りたいものですね。

  • 2012年03月14日(水)20時22分

ほうってはおけない

3月13日(火)
 午前中の会議を終えて職員室に戻ってくると、先週卒業したSさんがいました。北海道の大学に進学するSさん、引越しの荷物は4月2日に着くことになっているので、その前日の1日に北海道に渡ることにきめたそうです。その挨拶と、私のパソコンで1日の千歳行きの飛行機とホテルの予約をしに来たというわけです。
 Sさんは2年間KCPで勉強しましたが、いろいろな苦労をしてきました。最初は出席率100%でしたが、アルバイトを始めたら起きられなくなって出席率がどんどん下がりました。同時に日本語力も思うように伸びずに焦りも感じたことでしょう。一時は、周りの教師全員がもうだめだと思いました。でも、そこからSさんは復活しました。なりふり構わずという表現がぴったりでした。後輩に追い越されてもふて腐ることなく、わからないことは何でも質問して解決するようになりました。自分の不足しているところをつかみ、それを克服するための努力は怠りませんでした。その結果が、志望校合格につながったのだと思います。
 午前中の授業は欠席し、はたで見ているとしかられに午後から学校へ来るように見えることもありました。どんなことがあっても教師とのつながりだけは切らずに持ち続けました。確かに欠席もしましたが、決して学校をないがしろにしていたわけではないということはよくわかりました。教師の側も、100%満足していたのではありませんが、打てば響く学生として写っていました。
 教師の立場からすると、Sさんはもどかしさを感じさせられる学生でした。ちゃんと学校に出てくればもっと伸びるのにといつも思わせられました。でも、どこかほうっておけない学生でしたから、ついつい手を差し伸べてしまうのです。大学ではもう少ししっかりしてもらいたいなと思いつつ、予約をしてあげました。これが最後の“ほうっておけない”になることでしょう。

  • 2012年03月13日(火)19時06分

君たちが柱

3月12日(月)
 今日は久しぶりにいいお天気でした。朝から青空というのは10日ぶりぐらいでしょうか。6時ちょっと前に東の空が赤くなり、いつの間にこんなに日の出が早くなったのかと驚かされました。
 私が受け持っていた学生はほぼ全員が先週末に卒業してしまいましたから、今週から私はクラス授業がありません。いつもの見慣れた顔がいなくなったことは寂しいですが、今年のKCPを支えてくれる人たちに全力を投入する体制が整ったわけです。
 そんな気持ちでしたから、来年4月の大学入学を目指す学生たちに向けた今日の受験講座では、君たちの出来いかんでKCPがいい学校にもなれば悪い学校にもなるんだよと、プレッシャーをかけました。すると、教室全体が苦笑い。時間がないよという話は折に触れてしていますが、自覚には至っていないのでしょう。でも、少なくとも進学実績を議論するなら、今日の受験講座で私の目の前にいた学生たちが柱となるはずです。能力的に期待できる学生が少なからずいますから、その能力をどのようにして引き出すかが私たちに課せられた仕事です。
 受験講座での発破が効いたのか、授業後、Wさんが担任のU先生のところへ相談に来ていました。大学で勉強したいことは決まっているWさんは、志望校に合格するためには6月のEJUで何点取ればいいかというようなことを質問していました。N大学、C大学などという名前が挙がっていましたが、今からきちんと勉強していけば、M大学やA大学だって夢ではありません。受験勉強のためにアルバイトを減らしたそうですから、その勢いで、まずは、6月までの3か月を走りきってもらいたいです。
 さて、今年の受験はどうなるのでしょうか。震災で日本語学校の学生が減った影響はどのような形で出てくるのでしょうか。外がどうであっても、内側にしっかり実力を蓄えておけば惑わされることはありません。学生の皆さん、一緒にがんばりましょう。

  • 2012年03月12日(月)18時16分

今日は卒業式

3月9日(金)
 先週のバス旅行といい、今日の卒業式といい、あいにくの天気に見舞われてしまいました。でも、事前に「一番いい服を着てくること」と、耳にタコができるほど言っていたため、私が会場に着いたときにはそれなり以上の身なりをした学生たちが集まっていました。“馬子にも衣装”などと言ってしまっては卒業生に対して失礼ですが、なるほどこんなかっこうで入試の面接に臨んだのかと妙に感心してしまいました。小汚い服を着ているのは、大体今週休みまくった学生です。やっぱり学校は休んじゃいけませんね。
 証書授与でも休んでいた学生と毎日きっちり来た学生との差は歴然としていました。毎日きていた学生は、何らかの形で証書のもらい方の練習を何回かしていますから、作法にかなった動きをしていますが、休んでいた学生は舞台に上がり演壇の前まで来ると、「はいちょうだい」と言わんばかりに両手の手のひらを上に向けて私に差し出します。思わず苦笑いしたくなります。
 式の後は、時間の都合がつく卒業生と教師が集まって、卒業パーティーをしました。今年は式が午後だったので、パーティーではお酒も出て、例年以上ににぎやかになりました。お酒が入った分、本音も出しやすかったようで、意外な裏話を披露したり教師の前でざんげしたりする学生も。
 今回の卒業生は、震災直後のKCPを支えてくれた功労者です。震災で帰国した友達もいる中、最後まで自分の意思・希望を貫き通した学生たちです。私には、一番苦しい時を一緒に過ごした同志のような気がします。そういう学生たちが来週からはもう学校へ来ないのかと思うと、いつもの年とは違った寂しさを感じました。

  • 2012年03月09日(金)21時20分

17分の遅刻

3月8日(木)
 おとといのことです。入学以来ずっと無欠席を続け、皆勤賞間違いなしと思われていたSさんが、17分遅刻しました。17分の遅刻は1授業時間の欠席とされるため、卒業式3日前で皆勤が途切れてしまいました。非常に残念なことですが、皆勤とは1一時間の欠席もないことを言いますから、Sさんを皆勤賞のメンバーからはずさざるを得ませんでした。しかし、私なんかよりも誰よりも残念だったのは、Sさん自身だったに違いありません。
 Sさんは皆勤賞を目標にがんばり続けてきたので、それがふいになってしまって、がっくりきて卒業式まで休んでしまうのではないかと思いましたが、昨日はいつものように登校していました。今日も、9時の始業時刻には教室にいました。「先生、1時間だけですから何とかなりませんか」と本人から訴えられましたから、やはり無念な思いは相当なものです。その気持ちはよくわかりますが、これは譲るわけにはいきません。
 本人の口から聞いてはいませんが、火曜日の遅刻の原因は寝坊でしょう。目を覚ます時間が10分か20分遅かっただけの、ほんのちょっとしたことです。Sさんが誰かに迷惑をかけたわけでも、ましてや犯罪に関わったわけでもありません。ですが、そのささいな寝坊が、皆勤に傷をつけるという重大な結果を引き起こしたのです。Sさんにはそれをわかってもらいたいのです。今回、ここで痛い目に悔しい目にあっておけば、同じ失敗を二度と繰り返さないことでしょう。これから始まる大学生活や、さらにその先に控える社会人としての生活で深刻な事態をもたらすミスを犯さなくなれば、皆勤賞がもらえなかったことは安い授業料だったといえるのではないでしょうか。
 いずれにしても、明日は卒業式です。卒業生は、卒業式当日も出席がカウントされます。Sさんは時間通りに来ることでしょう。となると、本当に痛恨の17分となります。この17分を踏み台にして、大きな成功をつかむことを陰ながら祈らずにはいられません。

  • 2012年03月08日(木)17時04分

お礼の手紙

3月7日(水)
 今日は最上級クラスの授業でした。ほとんどが卒業する学生なので、後半はお世話になった先生方に手紙を書いてもらいました。学生たちにいきなり書けと言っても書きにくいでしょうから、見本の手紙を配りました。この見本の手紙は、私がPさんからもらったものです。Pさんは去年私が初級で教え、専門学校への進学が決まり、卒業していく学生です。Pさんは、今、中級ですが、その手紙がとてもすばらしかったので、最上級クラスの見本に使わせてもらいました。
 そんな話をしたら、最上級クラスとしてのプライドを刺激したのでしょうか、学生たちは黙々と手紙を書き始めました。学生たちにとっては書き慣れない縦書きの便箋でしたが、便箋にびっしりKCPでの思い出を書いていたようです。内容まで確かめたわけではありませんが、学生がしてきた質問からすると、そんな気がします。1人だけじゃなくてたくさんの先生に手紙を書きたいと言ってきた学生もいました。こういうあたりが、さすが最上級ですね。
 学生たちの母国はどうなのかわかりませんが、日本はお世話になった人にきちんとお礼のことばを伝えて去って行くのが礼儀です。日本語学校で最後に教えるべきことはこういうことだと思い、毎年形を変えてこういうことをしています。ただ今日のクラスはいつにまして反応がよく、学生たちが心の奥底に抱えていた何物かを吐露するのにちょうどいい手段だったのかもしれません。
 Pさんからの手紙は、何週間か前に私の机の上に置いてありました。会ったらお礼を言おうと思いながら、まだ果たせずにいます。あさってが卒業式なので、Pさんが学校へ来るのは明日が最後かもしれません。心温まるお手紙のお礼も言えないうちにPさんが出て行ってしまったら、心残りになります。明日は教室に押しかけてでも一言励ましのことばをかけようと思っています。

  • 2012年03月07日(水)20時41分

準備に追われて

3月6日(火)
 暦の上では昨日が啓蟄で、冬の寒さを耐えていた虫たちが動き始める時期です。その昨日はさんざんなお天気でしたが、今日は日中日も差し、多少は春が感じられる陽気となりました。今日の日の出は6時4分で、卒業式の9日の日の出がちょうど6時です。
 今週末に迫った卒業式に向けて、教職員は準備におおわらわです。証書の準備や皆勤賞を始めとする各賞の受賞者の決定、その賞品の選定、卒業式の手順の確認、アトラクションの準備とそれを担当する学生たちの指導など、数え上げればきりがありません。今日の私は、卒業文集に、各クラスの卒業生が作った動画を納めたDVDを貼り付ける作業をしました。こんな作業はどこかに頼めばやってくれるのでしょうが、自分自身が手を加えた文集を持って帰ってもらいたいという気持ちで作業に携わりました。まあ、経費節減という意味もありますが…。
 卒業生のクラスでは、今日から卒業式で全員で歌う歌の練習を始めました。歌詞に感激して涙を流しながら歌った学生もいたとか。それだけ泣けるというのは感情が豊かで、若い心が物事に敏感に反応しているからだということではないでしょうか。私自身、このところトンと泣いた記憶がないのでそう思ったのですが、別の先生に、年を取ると涙腺がゆるくなるって言うから逆なんじゃないのと言われてしまいました。どっちなんでしょうね。
 その一方で、私は受験講座を担当していますから、卒業式後のKCPを担ってもらわなければならない学生たちにも接しています。1年後に、彼らは今年の卒業生並みかそれ以上に成長しているでしょうか。成長させていく責任をひしひしと感じています。

  • 2012年03月06日(火)22時25分

雨に負けるな

3月5日(月)
 今日は朝から冷たい雨が降っています。日光も、バス旅行の日以上に降っているようです。今日がバス旅行だったら、バスから降りられなかったかもしれません。そのせいにしてもらいたくはないのですが、今日は欠席が目立ちました。卒業予定者は、金曜日のバス旅行ですべて終わりという気になってしまったのでしょうか。
 卒業生が気が抜けてしまうのはまだ理解できないでもありませんが、これから受験勉強をしていかなければならない受験講座の受講生がボロボロ休んだのは、どう考えてもいただけません。今から休み癖が付いているようでは、お先真っ暗です。Lさん、Oさんなど、有望な学生が休んでいるところが気になってなりません。確かに、入学するのは1年以上先ですが、入学試験は半年先です。今年第1回の留学試験は3か月先でしかありません。「あなたたちが思っているよりずっと時間がないんだよ」と、口が酸っぱくなるほど注意してきているのですが、どうも伝わっていないようです。
 2013年度の留学生入試は、志願者が減って競争率が下がり、楽になるとも言われています。しかし、それはある一面からの見方であり、学生たちが入りたいと思っている上位校・有名校がそうやすやすとハードルを下げるとは思えません。少数の精鋭が死力を尽くして競い合うという図が描けます。となると、寒いとか雨が降ってるとか言って学校を休むなど、もってのほかです。一度決めたことを最後までやり通す根性が、本当の勝負の時に物を言うのです。受験の成否のすべてを精神力に負わせようとは思いませんが、精神力で支配される部分があることは、誰にも否定できません。
 今日休んだ学生には、担任の先生経由でお灸をすえていただこうと思っています。私たちに何度も同じことを言わせないように、心して行動してもらいたいです。

  • 2012年03月05日(月)17時05分

日光江戸村へバス旅行

3月2日(金)
 新宿を出発する時はかろうじて曇り空でしたが、目的地の日光江戸村に着く直前から雨が降り出してきてしまいました。冷たい雨の中での見学になり、ちょっと残念でした。でも、私が乗ったバスは、目的地までクイズやゲームで盛り上がっていました。
 日光江戸村にはいろいろなアトラクションがあり、入場するや学生たちはアトラクションの催される場所へと急いで行きました。私はそんな学生の交通整理をするために、“村”の中央付近に立っていました。傘を持ってこなかった学生の中には、江戸村のオリジナルキャラクターのにゃんまげの傘や、江戸時代風の和傘を売店で手に入れて、それを誇らしげに差しているのもいました。体の人一倍大きいCさんは、小ぶりのにゃんまげ傘を差していたので、半身ずぶ濡れでした。
 傘だけではなく、貸衣装でお姫様やサムライになって江戸時代の雰囲気を味わっている学生も何名かいました。お姫様になった学生は、雨で足元が悪く、ちょっと歩きにくそうでした。でも、きれいな和服が着られたことはまんざらでもなさそうな顔をしていました。サムライになった学生は、刀がいたく気に入ったようで、友達に見せびらかせていました。
 村内の劇場で催されるおいらんショーで、大石内蔵助役を演じてしまいました。毎回、観客として劇場に入った素人1名を舞台に上げるそうですが、それに選ばれたというわけです。江戸時代という設定ですからめがねをはずさねばならず、そうするとド近眼の私には何も見えません。せりふはカードで示されるものを読むだけでよかったのですが、自分の演技がウケているのかいないのか、せっかくのおいらんの踊りもぼやけてしまい、何が何やらさっぱりわかりませんでした。忠臣蔵の話は学生は全くわからないでしょうから、だれか知っている人が舞台に出たほうが舞台に興味が湧くでしょう。まあ、これも校長としての職務の1つですね。劇場を出ると多くの学生から声をかけられましたから、とりあえずよかったんじゃないんでしょうか。そのうち、私の熱演(?)の様子が写真で出てくるかもしれませんから、お楽しみに。
 3時間あまりの江戸村滞在時間は、あっという間に過ぎ去ってしまいました。バスの出発時刻が迫ると、いつものようにお土産屋から学生を追い立て、帰途に就きました。これまたいつものように、帰りのバスは、私も含めて、心地よい疲れに誘われ、夢見心地でした。

  • 2012年03月02日(金)19時04分

留学を成功させるには

3月1日(木)
 午後、R大学の方がお見えになりました。R大学にはYさんとHさんの2名が合格し、入学することになっています。ご挨拶かたがた、お越しくださいました。
 R大学は東京から離れたところにありますが、留学生を積極的に受け入れ、特色ある教育をしています。多くの国からの留学生がいるため、学内が非常に国際的で、日本人学生からすると、日本にいながらにして留学しているかのような環境に置かれるのだそうです。そういう雰囲気の中でもまれると、他大学とはひと味もふた味も違う学生に育つことは想像に難くありません。また、英語教育にも力を入れていて、卒業時には留学生も日本人も、日本語と英語が完璧に使えるようになっていると言っていました。これがR大学の特色につながっているのです。
 入学したら、日本人学生にとっても留学生にとっても、かなり厳しい教育が施されます。しかし、勉強についていけずにやめる学生は少ないそうです。経済的理由でやめた学生も、しばらく働いて貯金して再入学する例が多いとのことでした。それだけ、入学試験でしっかり学生を見ているのでしょう。今日お見えになった方は、目的意識のしっかりした学生を選んでいると言っていました。
 そのため、留学生も含めて約95%の就職率を誇っています。しかも、日本中の有力企業の採用担当者がわざわざ東京から離れたR大学まで足を運んできて、学生をくれと言ってくるのだそうです。このような企業では、採用で留学生と日本人とを区別することはないと言っていました。
 学生をR大学に送るかどうかは別として、とてもいい話を聞かせていただいたと思いました。目的意識については私が面接練習でいつも強調していることですから、わが意を得たりという感じでした。日本人学生に影響を与えるくらいのつもりで留学生活を送れば日本での就職に道が開けます。英語の出来が就職に大きく響くとは聞いていましたが、今日の話はそれを裏付けるものでした。今までもR大学には注目してきましたが、これからはより一層動きを見つめていこうと思いました。

  • 2012年03月01日(木)19時47分

何回目の雪?

2月29日(水)
 今日は今シーズン何回目かの雪でした。今年の東京は雪の日が多いように思います。東京の雪は春の入口に降ることが多いので、雪のたびに春ももう近いのかと思ってきましたが、今年は雪が降ってもいっこうに春が近づく気配がありません。予報によると、明日はいくらか暖かくなるようですが、来週はまた冷え込む日があるようです。ただ、今日の雪はかなり水分を多く含んでいて、降ったそばから解けていきました。そのため、東京の積雪は最大で2センチでした。明日の朝の気温によっては、道路が凍りまくって大変なことになるかもしれません。
 さて、その雪のせいなのでしょうか、今日は欠席者が目立ちました。北海道の大学に進学することになっているCさん、あんたはこんな程度の雪で部屋に引きこもってちゃダメなんですよ。受験講座を受けている学生たちよ、雪が降ったからって勉強を休んでいるようじゃ、君たちに未来はないぞ!
 受験に成功するコツは、焦り過ぎない程度のペースを作ってそれを守っていくことです。毎朝決められた時間に登校し、授業を受けて夕方まで自習室で勉強し、家でまた勉強する…こういうリズムを崩さずに繰り返していくと、力が堆積し、気がついたら大きなものになっている、というわけです。リズムを崩してしまうと、復旧するのにはかなりの労力を要します。一度楽な道に流れてしまうと、厳しい道には戻りたくなくなるものです。それが怖いのです。
 確かに、寒い日に外をふらふら歩いていてインフルエンザにでもなったら、そっちのほうが生活を立て直すのに苦労を要するでしょう。でも、一定のリズムで暮らしていたら、そう簡単に病気にならないものです。不規則な生活が体に無理をかけるのです。
 今日は、あさってのバス旅行の説明を各クラスでしたのですが、欠席者の多いために明日仕切り直しのクラスもあります。天気予報ではイマイチのお天気のようですが、学生たちにはいい思い出を作ってもらいたいです。

  • 2012年02月29日(水)21時55分

長い戦い

2月28日(火)
 Cさんは昨日がD大学の入試でした。結果がわかるのは来週の卒業式の直前ですが、Cさんの受験はこれで終わりです。思えば、Cさんの受験は残暑の頃に始まりました。最初の大学は6月のEJUの結果を利用しましたから、それを含めれば半年を大きく上回る期間、日々受験のプレッシャーを受け続けてきたのです。Lさんも、おとといのS大学が入試の最終戦でしたが、初戦は夏休み直後で、やはり半年に及ぶ長い戦いでした。
 留学生入試は日本人の入試より早く始まり、終わりは同じです。それだけ長く重圧にさらされ続けます。親元を離れて一人暮しという学生も多く、日本人の高校生に比べてその分の精神的負担も大きいです。親にしてみれば大枚をはたいて子どもを留学させるわけですから、当然期待も膨らみます。孝行な子どもであればあるほどその期待をひしひしと感じることでしょう。CさんもLさんも、今のところ、入試は全勝です。そういういろいろなものに打ち勝って、さらに我々教師からの期待やら脅しやらをも乗り越えてきたわけですから、大したものだと感心させられます。
 2人とも、最初の受験校をものにしたのが大きいとも言えます。それで勢いづいて、すべてがうまく転がっているところはあると思います。最初の大学を落とすと負け癖がつきかねません。W大学は記念受験なんだから、などと言ってみたところで、受験失敗の傷跡が完全に癒えるわけではありません。淡い期待すら抱かずに受験する学生など、いるはずがないではありませんか。
 今日はG大学の試験日で、2人の学生が受けました。Yさんは今週末が入試で、今が最後の追い込みです。Zさんに至っては、卒業式後に入試が控えています。

  • 2012年02月28日(火)20時02分

もうひと踏ん張り

2月27日(月)
 金曜日に卒業認定試験が終わり、卒業生にとっては今週末のバス旅行と来週金曜日の卒業式を残すのみとなりました。となると、勉強する意欲を失う学生が出てきます。確かに、KCPで受けるべき試験はもうありませんが、勉強すべき事柄がなくなったわけではありません。進学するにせよ、就職するにせよ、これ以上勉強しなくてもいいという限界などありません。語学の究極の目標はネイティブと同等レベルなのですから、KCPの最上級クラスの首席の学生といえでも、まだまだもっともっと勉強しなければなりません。まして、今日の私のクラスのような、上級の入口ぐらいのクラスの学生が、たとえ認定試験に合格したとしても、勉強しなくてもいいなんて、勘違いもはなはだしいところです。
 ということで、今日は今までと全く同じように授業を進めました。お楽しみの授業になると期待して来た学生にとっては若干期待はずれだったようですが、教科書もまだ終わっていませんし、同じクラスには卒業式以降も勉強を続ける学生もいますから、まあ、当然ですね。
 学生のモチベーションを維持させ続けるということは、難しいことです。Hさんは自分でも無理だと思っていたある有名大学に合格が決まってからというもの、もぬけの殻のような状態だと聞いています。国立A大学に受かってしまったZさんも、最後に控えた国立D大学に向かう気力が失せてしまったようで、学校へは出てきているものの、ぼんやりしているとか。その点、CさんやAさんは、大学が決まってからもそれまでのペースで勉強を続けています。ときどき休むというところも含めてという点が何とも言えませんが…。
 残り2週間ですが、卒業生たちには最後の気力を振り絞って、少しでも高いところまで上ってもらいたいです。

  • 2012年02月27日(月)17時37分

追い詰められて

2月24日(金)
 KさんはあさってT大学の面接を控えています。今までにいくつかの大学を受験しましたが、いい結果が出せていません。T大学が最後のとりでです。
 Kさんは、頭は決して悪くはありませんから、校内のテストでもEJUでも、それなりの成績を挙げてきました。しかし、まだ若いからでしょうか、自分の身の回りのあらゆるものに興味を持ち過ぎ、この1年、勉強に集中できないきらいがありました。アルバイトや遊びやが生活の中心になっていて、必死に勉強しているようには見えませんでした。国から親戚の方が見えたときにきつく注意していただいたのですが、それでも効き目はありませんでした。大学出願にしても、締め切りぎりぎりにならないと動き出さないし、受験日が迫っても勉強した形跡がありませんでした。
 でも、もうあとがありません。今まではろくに準備もせずに面接に臨んでいたようでしたが、今日、ようやく初めて面接練習をしました。確かに日本語を話す力はありますが、内容が伴っていません。入試に落ち続けたのもうなずける受け答えでした。根本的なてこ入れが必要なので、T大学のホームページを見ながら、T大学で勉強するということはどういうことなのかというところから指導しました。
 Kさんも、やっと面接の何たるかがわかったようで、自分の思いを面接で表現するおもしろさに気づいた顔をしていました。同時に、自分が大学で勉強する意義もつかめたのではないでしょうか。Kさんは高校を卒業してすぐ日本へ来ましたから、日本人の高校生がいい加減な気持ちで大学を受験するのと同じような状況だったのだと思います。土俵際まで追い詰められて、今までの自分を反省すると同時に、将来に向けて1歩踏み出すことができたのだとしたら、それもまた成長です。
 さて、あさっての面接はどうなるのでしょうか…。

  • 2012年02月24日(金)18時44分
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