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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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楽しい世界情勢?

10月19日(金)
 中上級では、今週から選択授業が始まりました。始業日に各科目の説明をし、希望を取ってクラスを決めました。しかし、教師の思いが学生たちに正確には伝わらず、学生の期待と現実の授業とにギャップが生じます。それゆえ、授業が始まってから受講科目を変更したいという学生が出てきます。また、希望を取っても、第一希望の授業が希望者少数で成立しなかったら、第二希望の授業を受けてもらいます。そうなると、やはり、期待していたのと違うということになってしまいます。
 今日の私の授業も、学生の期待に応えられたかどうかよくわかりません。「世界情勢」などという大きなタイトルがついていましたから、EUのノーベル平和賞受賞を話題にしました。一部の学生はそれに関する新聞記事を読むのに精一杯で、別の一部の学生は民主主義とはなんぞやということについて議論したがり、さらに別の学生はEUの概論で満足し、そのほかにはそもそもEUに興味も関心もない学生や、新聞記事の読解で十分だという学生など、十人十色の反応でした。
 違うベクトルを持った学生たちをまとめあげるのは難しいです。確かに、日々の授業でも学生の興味関心を束ねて授業の形にするのは大変ですが、授業とはこんなものだという学生たちの納得のようなあきらめのようなものに頼って勧めていけることもできます。選択授業の場合、学生たちは自分で選んだという意識が強く、事前の期待が大きい分だけ、教師にとってはハードルが高いように思えます。
 さて、来週はどんな「世界情勢」にすればいいのでしょうか。これから今学期が終わるまで、学生が喜びそうな「世界情勢」探しが続きます。

  • 2012年10月19日(金)22時19分

志望理由書は夢

10月18日(木)
 新学期早々、出願ラッシュを迎えています。今日も2人の出願書類を見ました。2人とも志望理由書を書いてきました。誤字脱字や文法ミスも含め、直すところだらけで、下書きの原稿用紙が真っ赤になりました。直すのが嫌だとか面倒くさいとか感じるかというと、これがそうでもないんですね。結構楽しみながら直している自分がいるのです。学生をいたぶるのが好きだというわけではありません。学生が書き表そうとしている夢が面白いのです。
 学生は、みなそれぞれ夢を抱いて来日しています。夢の実現の第一歩がKCPへの入学なら、大学進学は二歩目です。二歩目はどこに踏み出してもいいのですが、一旦踏み出したら戻ることや方向を変えりことは非常に難しいです。学生の人生を決める「一歩」なのです。志望理由書は、学生が、おそらく生まれてめて自分の人生と向き合って紡ぎ出した作品です。その作品を読み、より明確な形にしていくのが、志望理由書を直す仕事です。
 志望理由書を読んでいるうちに、自分がその学生の夢を実現するかのような錯覚に陥ることがあります。あれを勉強してこれを勉強すればこんなことがわかって、そうするとこんなことができるようになる…そんなふうに、自分の将来が開けてくるような気がしてくるのです。もし、自分が入学したら、という妄想(?)を抱きながら学生の志望理由書に手を加えていくのは、私にとっては楽しい作業です。
 考えてみれば、面接練習も同じです。学生の将来の夢がいつの間にか自分の夢になって、私だったらこう言うのにという気持ちが沸き起こり、学生の答え方を直す原動力が生まれるのです。学生ごとに違った夢を見させてもらっているので、楽しく感じるのでしょう。
 昨日は、地元の企業をさらに発展させる夢を、今日は、環境を整えながら国を発展させる夢、新しい素材で家をつくる夢を見させてもらいました。日本語教師って、案外と幸せな職業かもしれません。

  • 2012年10月18日(木)18時58分

理解する

10月17日(水)
 授業後、学生が学校の前にたむろしていたところ、その学生たちが中国人だと知った日本人の通行人が、非常に汚い言葉で学生たちを罵っていったそうです。現場に居合わせたE先生によると、学生たちはその日本語が理解できなかったらしですが、もし理解できたら相当腹を立てたであろうと思われるほどひどい言葉だったとのことです。
 確かに、往来に広がってしゃべっていた学生たちにも非があります。しかし、聞くにたえないような言葉で罵るのはやりすぎです。何ら問題の解決にはなりません。日中間がギクシャクしているからといって、中国人に対して言葉の暴力を振るっていいわけがありません。中国各地で日本企業を襲った過激な中国人と変わるところがありません。
 自分だけが正しいとして相手のことを受け入れようとしない人たちが、両国の関係をより悪化させるのだと思います。日本人が中国人に、中国人が日本人になる必要はありませんが、日本人が中国人を、中国人が日本人を理解する必要はあります。お互いの立場や考え方が理解できた時初めて、問題が解決に向かうのです。なめられてはいけませんが、やたら好戦的、挑戦的になるのは、まるでしつけの悪い犬のようです。
 私は学生たちに汚い言葉を浴びせた人を直接見かけたわけではありませんが、何かの八つ当たりをしたのか、よほど狭量な人なのかと勝手に想像しています。きっと、外の世界を知らないのでしょう。あるいは、知ろうとしないのでしょうか。学生たちには、そういう人になってもらいたくないです。自分の知っている世界とは違う世界があることをしることが、国際人の第一歩ですから。

  • 2012年10月17日(水)17時53分

上級でみんなの日本語

10月16日(火)
 今日の私のクラスは上級でしたが、みんなの日本語Ⅰの授業をしました。もちろん、復習ですが、間違えた学生も結構いました。
 上級まで進んでしまうと、初級文法が多少あやふやでも勉強し直す機会がなかなかありません。「こそあ」の「そ」と「あ」の区別がつかない学生が多数いるのに、それをきちんと練習する授業がありません。KCPの初級ではきちんと教えて練習をしても、上級のクラスはKCP生え抜きの学生ばかりだとは限りません。最近はアニメを通して独学という学生も珍しくはありません。独学でいきなり上級に入るのは立派だと思いますが、どこかに無理が生じていることが多いこともまた、動かしがたい事実です。基礎に穴があいていると、ある程度以上の積み重ねが利かなくなります。真に上級話者と言われたければ、どこかで初級から中級までを振り返る必要があります。
 今日は上級の学生相手ですから、間違えたところは日本語で説明しました。初級のように体で覚えさせるだけでは、学生はついてきてくれません。別の切り口から攻めることが求められます。「こそあ」の使い分けを日本語で理解した学生たちには、さすが上級と感じさせられました。
 言葉はコミュニケーションの手段です。コミュニケーションとは、自分の心や考えを相手に伝え、相手の思いを理解することです。正確に伝え、正確に理解することができて初めて上級と言えるのだと思います。そのために基礎を思い出し、大きく伸びる準備をするのです。

  • 2012年10月16日(火)18時43分

天は自ら助くるものを助く

10月15日(月)
 Cさんは今週末がN大学の入学試験です。面接で合否が決まるとあって、面接練習に余念がありません。しかし、Cさんが言っていることは支離滅裂で、私にはCさんのやりたいことや将来の希望がわかりませんでした。
 CさんがN大学に入りたいと言い出したのは夏の盛りでした。出願するときは志望理由書を書くのに大騒ぎをし、これをもとに面接するから内容をよく頭に入れておくように、と言っておいたのですが、それが全然できていません。文法が弱いと言ってきましたから、弱点補強の方法も示しました。今までにかなりの時間があったはずですが、一体何をしていたのでしょうか。面接練習の相手をしていて、だんだん腹が立ってきました。
 さらに、そんな答え方じゃダメだ、何を言っているのかわからないと注意すると、「じゃあ、先生、どう答えたらいいですか。教えてください」と、自分で考えようとしません。確かに、CさんにN大学を勧めたのは私ですが、Cさんが大学時代に何をしたいかまで考える筋合いはありません。
 天は自ら助くるものを助くと言います。私は神ではありませんが、いや、神ではないですからなおのこと、努力しようとしない学生に手を差し伸べたくはありません。「いろいろしなければならないことがあった」とCさんは言っていましたが、大学に入ることが最優先ではなかったのでしょうか。
 今学期は受験の山場ですから、毎日、こういう準備不足であなた任せの学生の相手をしていくつもりでいなければなりません。Cさんには相当厳しいことを言いましたから、少しは響いて1週間足らずのあいだにグンと伸びてくれることを祈るばかりです。

  • 2012年10月15日(月)18時03分

語る授業

10月12日(金)
 読解の授業がありました。今日のテキストは、やや理科系的色彩があったので、ちょっと力が入ってしまいました。読解半分、私の理科の講義半分となってしまい、読解の授業としていいものであったかどうかは疑問です。聴解の訓練にはなったはずだ、などと開き直っていてはいけませんね。
 私は理科系出身のため、科学系の話題となるとつい語ってしまうきらいがあります。また、地図大好き人間ですから、地名にも過敏に反応してしまいます。さらに、歴女ならぬ歴男なので、歴史にもうるさいというわけで、私が読解をやるとなると、いたるところにトラップがあり、そのたびに脱線し、牛歩のごとき進度となってしまいます。
 脱線するかどうかはともかくとして、私は日本語教師には日本語以外の得意分野があってしかるべきだと思っています。一般論として、語るものを持っている人の話は、聞いていて面白いです。聞き手の知識量に合わせて得意分野が語れる人は、尊敬を集めることができると思います。だから、学生の日本語レベルに合わせて得意分野を語ることは、教師としての信頼も高まりますし、それを通して学生を引き上げることもできます。日本語教師に社会経験を積んだ人が多いのは、それゆえだと思います。
 もちろん、自分で自分に酔ってしまうような独善的な授業は困ります。それは、単に、聞き手である学生が見えていないに過ぎません。今日の授業は、果たしてどうだったのでしょうか。

  • 2012年10月12日(金)21時06分

教科書販売

10月11日(木)
 仮校舎への引越しでバタバタしているうちに、新学期の始業日になってしまいました。2か所の校舎に分かれての授業に若干の心配も抱いていましたが、今日のところは、多少の混乱はあったものの、無事と言える範囲内で収まりました。
 始業日は教科書販売をします。期待に胸を膨らませながら、これからどんな勉強をするのか新しい教科書を見ていくのが学生にとっての楽しみなのではないかと思っていましたが、今学期の学生は思ったより教科書を買いません。学期の後半になってから使う教科書もあるのですが、今日は予想外に売れ行きが悪かったです。先学期も若干そういう傾向があり、学期の途中で教科書が変わる段になって、また売れ始めました。売り切れてしまって追加発注しなければならないのもあったほどです。
 今日売れ残った教科書の中には、すぐに使うのも含まれていますから、学生たちがどうするのか心配な面もあります。ただ、新入生の場合、国で買って持って来たという学生が増えていることも感じます。「みんなの日本語」がそうなのはよくわかりますが、KCPで作って売り出して日の浅い「1日15分の漢字練習」も国で買ったという学生がわりといたのには、少々驚かされました。
 新しい教科書をきちんと持っていれば、学校の教科書販売で買ってもらわなくてもいいのでが、友達や先輩からもらったからいらないというのは、ちょっと困ります。前の持ち主のメモや書き込みを読んだだけでわかった気になってしまってはいけません。授業をおろそかにしたり、甚だしくは学校を休んでも大丈夫だと思うようになってしまったりしたら、その学生はもう終わりです。
 新しい教科書のインクの匂いは、今でも好きです。それを嗅ぐと、自分が成長したように思え、新たな課題に挑戦しようというファイトも湧いてきたものです。今の学生たちにも、そんな気持ちを味わいながら歩みを進めていく喜びを感じてもらいたいです。

  • 2012年10月11日(木)21時51分

紫はどんな色

10月10日(水)
 ついひと月ほど前は、熱帯夜と真夏日に悩まされていたのに、最近は出勤時にもう1枚ほしいとすら感じるようになりました。9月の10日頃と比べると、朝の最低気温は10度ほど下がっています。昼間も、日なたが「暑い」ではなく「暖かい」と思うようになりました。もうひと月もすれば、コートの季節なんでしょうね。最近は夏が粘り強いので、夏から秋を経て冬までがことさら忙しく感じられます。
 NHKの天気予報では、昨日から全国の気温分布の表示が夏用から冬用へと変わりました。20℃前後が寒々しい水色からほんわかした黄色になりました。氷点下も紫とか黒とかに色分けされて表示されます。氷や雪のイメージとはだいぶ違った色ですが、突き刺さるような寒さを感じさせられます。毎年のことですが、紫や黒で酷寒を表示するというのはうまく考えたものだと思います。
 赤や黄色の系統が暖色で、青っぽいのが寒色というのは常識ですが、紫や黒はそういうスケールの欄外ではなかったかと思います。でも、寒色よりも厳しい寒さ・冷たさを感じさせるのはどうしてなのでしょうね。もしかすると、そう感じるのはNHKの気温表示に飼いならされた私だけなのでしょうか。
 日本では、紫は、古来より高貴な色とされてきました。それゆえ、紫には近寄りがたい威厳があり、その威厳から寒さや厳しさが連想されるのかな、と考えてみたこともあります。ちょっと調べてみたい気もしますが、そんなことを知ってどうすんのというブレーキの方が強く、今まで誰にも聞いたことはありません。
 明日から新学期です。東京の気温が紫表示になることはないでしょうが、寒さに向かっていくこの学期は、受験生にとっては勝負の秋です。紫の房でもつけたくなるような、素晴らしい結果を期待しています。

  • 2012年10月10日(水)20時23分

山中教授、受賞

10月9日(火)
 京大の山中教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。ここ3年ほど、「今年こそは…」と下馬評にあがり続けてきましたから、当然の受賞だとも言えます。
 iPS細胞の発見という、今後の医学を大きく変えていく可能性のある仕事に対する受賞です。iPS細胞に関する解説は新聞などに譲るとして、今回の受賞で注目すべきことは、これが今世紀に入ってからの仕事だという点です。最近日本人が受賞したノーベル賞は、20世紀の発見に対する受賞だったので、昔の功績を称えられたと考えるべきでした。今回は、これから伸びていく技術の種、現在進行形の研究が受賞したのです。日本がこの分野でリードしていくことが期待されてる点が、このところパッとしない日本に明るい火を灯したのではないでしょうか。
 もちろん、研究の世界は激烈な競争があり、トップを走り続けることは容易なことではありません。山中教授も、研究の主導、特許戦略、研究費集めなど、八面六臂の活躍を続けています。そうであればこそ、日本がトップを争っていられるのです。研究しかしない・できない研究バカには、リーダーは務まりません。
 山中教授は、かつて、日本の大学教授は雑用が多くて研究ができないということを言っていました。米国の大学に比べると、書類作成や会議などに追われて研究に割く時間が少なくなってしまうとのことでした。現在の山中教授は、多少は恵まれた環境にあるのでしょうが、研究の場を与えるべき組織が研究の足を引っ張っているようでは、山中教授に続く人材や研究が現れるかどうか、疑わしいものがあります。
 KCPでは、中級の読解でiPS細胞を扱っています。今学期は、ノーベル賞で授業が盛り上がることでしょう。

  • 2012年10月09日(火)22時40分

朝のバス

10月5日(金)
 新しい職員室の私の席は左側が窓で、外苑西通りがよく見えます。朝、私が出勤する頃は、夜行バスが四谷4丁目の交差点に向かって走っていきます。バスのボディーに書かれた広告から関西地区発のバスではないかと思うのですが、どういう経路で外苑西通りに入ってくるのかがわかりません。学校の150mくらい手前が外苑西通りの起点で、バスは靖国通りから曲がってくることは確かなのですが、どっちから曲がってくるにしても、どこで首都高を降りたかはっきりしません。
 そんなことどうでもいいだろうと思われる方が大半だと思いますが、地図マニアの私としては、気になってしかたがりません。なんとか突き止める手がないものかと、毎朝夜行バスを見るたびに思うのです。関西まで行って夜行バスで帰ってくればはっきりするのでしょうけど、そんなお金も時間もありませんから、しばらくはモヤモヤした気持ちが続くのでしょう。
 私は昔から地図を見るのが好きで、地図さえあれば1日それだけを見て時間がつぶせます。世界地図でも日本地図でも新宿区の地図でも、何でも見入ってしまいます。大学のホームページでも、アクセスのページは必ず見ます。こんな行き方ができるのか、こんなところにあるのか、こんなものが近くにあるのか、そんなことで感心しています。
 ニュースなどで聞きなれない地名を耳にすると、調べずにはいられません。そんなことの積み重ねで、私は普通の人の5倍ぐらいの地名を知っていて、その地名を聞けば頭の中の地図に赤いランプが灯ります。そんなことができてどうすんのっていうようなことですが、地図を見るのはやめられません。
 来週もまた夜行バスを気にしながら、パソコンのスイッチを入れる毎日となるのでしょう。

  • 2012年10月05日(金)19時30分

新しい味

10月4日(木)
 仮校舎に移ってから、新宿御苑前駅がほんの少し遠くなりました。遠くなったということは、学校までの道の選び方が何通りもあるということです。前の校舎は、遠回りをしない限り駅から学校までの道筋は1通りでしたから、仮校舎の方が行き帰りの道が楽しめます。
 前の校舎と今の校舎は、直線距離で200mほど、道のりでも250mほどしか離れていないのですが、駅と学校との往復の道で毎日新しい発見をしています。こんなところにこんな店があったのかと驚くことしきりです。学生は自宅と学校とアルバイト先の3か所しか知らないと嘆いていたのですが、私も実はほんに狭い世界しか知らなかったことを感じさせられています。
 同時に、こういうことが固定観念につながっていくのだなとも思っています。同じことの繰り返しに慣れてしまって、そこから別の世界に踏み出そうとしないのは、老化現象の一つでしょう。違った視点から物事が考えられなくなっても当然です。自分の身の回りに何があるのかさえ把握していないで、どうして世界が論じられましょう。
 なんて、やけに大きなことを言ってしまいましたが、今日やったことは、新しいラーメン屋を開拓したこと。今週になってから目をつけていた店で、お昼に入りました。魚介類系のダシの太麺で、私の口にはよく合いました。その店からの帰り道で、さらにもう1軒気になる店を見つけてしまいました。世界を論じるには程遠いですが、気分だけは新たになりつつあります。

  • 2012年10月04日(木)22時41分

面接練習その1

10月3日(水)
 今シーズン初の面接練習をしました。中級のCさんは、ちょっとレベルの高いT大学を狙っています。本番は2週間ほど先ですが、それまで練習をたっぷりして確実に合格したいということで、学期休み中から始めたというわけです。
 練習の結果は、残念ながらというか、Cさんの心配の通りというか、ゆとりある日程が活用できそうだというか、今日の受け答えだったら間違いなく落ちますね。Cさんは私とは顔見知りのはずですが、緊張している様子が手に取るようにわかり、終始手を動かしていました。答えは「いろいろ勉強したいです」「どんな仕事でもしたいです」といった、意欲はあるかもしれませんが特徴や自己主張が全く感じられないものでした。これじゃあ、面接官の頭には何も残りません。
 かなりボコボコに言いましたから、Cさんはショックだったかもしれません。でも、志望校に受かろうと思ったら、一度は血まみれにならなければなりません。そこからはい上がる過程で、自分の将来を見つめ直し、留学の意義を再確認し、大学で勉強する覚悟をしっかりと持つことができるようになるのです。幸いにも、まだ時間は十分にありますから、軌道修正もきっとできるはずです。
 Cさんは入学式でも運動会でも、いろいろな学校行事で活躍してくれています。私たちにとっては、その恩返しとしてビシバシ鍛えて第一志望校に入れてあげたいと思っています。新学期が始まれば、来る日も来る日も面接練習になるでしょう。学生たちの夢を叶えるために、一肌もふた肌も脱ぐつもりです。

  • 2012年10月03日(水)20時12分

期末の結果

10月2日(火)
 期末テストの結果が出揃い、学生たちから問い合わせが来ています。Yさんは受験講座の授業後に職員室に顔を出しました。一応合格の点数ですが、素晴らしい成績とは言えません。かろうじて墜落せずに学期を終えたといったところでしょうか。来春の大学進学を目指していますから、これから受験が山場になります。ですから、KCPでの成績がどうのこうのというよりは、自分の思いを面接の場で訴えられるかが問題になってきます。思いを表現できるだけの語彙、それを効果的に面接官に伝えられるだけの文法、そういったものを持っているか、ここぞという時に使えるかが問題になってきます。
 それと同時に、あるいはそれ以上に、進学してから日本語の講義が理解できるだけの総合的な日本語力を付けることがYさんにとっての課題です。大学に入ったら一般教養から専門科目まで、みっちり勉強しなければなりません。さらに、Yさんは理系志望ですから、実験も加わります。そうすると、たとえ進学先に留学生向けの日本語の授業があったとしても、日本語をじっくり勉強することなど望めません。Yさんに残された時間は、あと半年です。長期的視野で自分の日本語力を伸ばしていってもらいたいです。
 そういうことをYさんに言い聞かせたしばらくあとに、同じような成績のGさんからも成績問い合わせのメールが来ました。Yさんに言ったのと同様のことを書き、問い合わせメールの間違いを直して返信しました。
 日本語教師の役割は、学生たちの生き抜く武器としての日本語を与えることです。私はそう思って、日々学生に向かっています。

  • 2012年10月02日(火)21時04分

眺めは最高

10月1日(月)
 仮校舎での初めての授業をしました。この仮校舎は交差点を目の前にした角地で、見晴らしはとてもいいです。今までは向かいのビルかマンションが見えるだけでしたが、今度はかなり遠くまで見渡せます。今日のようにすっきりした青空だと、上の階からは窓の半分以上が青空なんじゃないでしょうか。これで富士山でも拝めたら最高なんですが、窓は東側と北側なので、そこまではいきません。
 今日は受験講座で、模擬テストとその解説でしたから、学生の反応はあまりつかめませんでした。あんまり感激している様子もなさそうでしたから、教室の窓からの景色など、大して気に止めていないのかもしれません。あんまり景色ばっかり眺められても、勉強がおろそかになってしまいますから、それも困るのですが…。
 昨日の夕方から台風で大変でしたが、今朝はもう過ぎ去ったあとで、青空が広がりました。しかし、今度の台風は秋の空気を呼び込むのではなく、夏の暑さを呼び戻してしまいました。今日は10月1日衣替えで、先週までの半袖シャツではなくスーツを着込んで行きましたが、ちょっと暑かったですね。最高気温は31℃で、真夏日復活でした。
 職員室の方はだいぶ片付いてきて、足の踏み場くらいはできました。それでも夕方ひょっこり顔を出した卒業生のPさんは、乱雑さにびっくりしていました。Pさんは最初元の校舎の所へ行ってしまい、学校がつぶれたのかと思ったそうです。卒業生の皆さんには、まだきちっと連絡していませんから、しばらくはPさんのような人が出てくるかもしれません。
 引越し作業に飲み込まれて、先学期の期末テストの成績がまだまとめられていません。これから大急ぎで新学期の準備をしなければなりません。忙しい1週間になりそうです。

  • 2012年10月01日(月)20時27分

それでも受験講座

9月28日(金)
 新しい職員室は、去年の地震の直後もこんなにひどくはなかったというくらい、散らかりまくっています。足の踏み場がないとはまさにこのことかと、この年になって実感させられました。
 そんなとんでもない状況ですが、受験講座のEJU直前講座は予定通り行われました。今日の講師のK先生とS先生は、あまりの惨状に絶句状態。授業を受けに来た学生たちも、みんな心配そうな顔をして職員室をのぞいていきました。
 今日は職員室の整理よりも校舎の整備を優先しました。私も、外階段の手すりにこびりついていたハトの糞をこそげ落としました。ハトはちゃんと雨の当たらないところに止まってたんですね。日中小雨がぱらつきましたが、糞掃除には全く影響ありませんでした。昨日も今日も、捨ててもいい服を着てきていますから、糞をかぶろうがほこりまみれになろうが、そんなことお構いなしに動いています。でも、帰りの満員電車で私のすぐそばになっちゃった人は嫌でしょうね。
 校舎の中がひっちゃかめっちゃかでも、受験は待ってくれません。学生たちに最大限のサービスをしていくのが私たちの使命です。大学院の試験を間近に控えた学生が、担当の先生と相談していました。私のところに、志望理由書やら願書やら、学生たちはいろんなものを持ち込んで来ました。
 学生や先生方に心配されながらも、なんとか仮校舎での第1日が終わりました。

  • 2012年09月28日(金)19時57分

お疲れ様

9月27日(木)
 一昨日あたりの天気予報だと、台風18号の影響を受けるのではないかと言っていましたが、雨も降らず暑くもならず、引越し日和となりました。
 9時少し前に学生アルバイトが到着し、戦闘開始。移動距離はほんの数百メートルですが、運ぶ荷物の量が半端じゃないため、アルバイト学生の若さをもってしても、相当大変そうでした。大物をみんな学生たちに任せましたから、なおさらそうだったかもしれません。
 昨日までにだいぶ片付けてきたつもりでしたが、次から次といろんなものがいたるところから、文字通り湧いてきました。捨てたり家へ持ち帰ったりして荷物はかなり減らしたのですが、徹底的に運び出すという目で見ると、まだまだ甘かったようです。出てきたものは、ほとんどすべて処分しました。もしかすると必要なものもあったかもしれませんが、時間との戦いでしたからやむをえません。こういうことがあるから、引越し貧乏なんていう言葉があるんでしょうね。
 仮校舎は2か所のビルになります。教室もその2つのビルに分かれます。それを知ったアルバイト学生のKさんは、「校舎が分かれると同じKCPの学生だとわからなくなっちゃいませんか」と心配してくれました。「そういう時のためのクラブ活動じゃないか。Kさんのサッカークラブが頑張って部員を集めてどんどん試合に出れば大丈夫だよ」と答えると、にっこり笑って、早速、アルバイトに来ていた学生に声をかけていました。
 思ったよりも時間がかかりましたが、今日すべきことはなんとか終わりました。ゴミだけが残されたガランとした職員室にみんな集まって、記念写真を撮りました。

  • 2012年09月27日(木)20時55分

期末の後に待っているもの

9月26日(水)
 期末テストがありました。学生たちにとっては、現校舎での最終日です。でも、そういうことはあまり気に留めていないようでした。何人かの学生が校舎の写真を撮っていましたが、それ以外の学生はごく普通に帰っていきました。新学期のこのあらちでまごつくんじゃないだろうかと、心配になったほどです。学生たちにとっては、明日からの休みの方が大きな関心事なのでしょう。私たちのように11年もこの校舎で暮らしていたのではなく、学生たちは長い人でも1年半ほどですから、思い入れの深さが違うんでしょうね。
 期末テスト終了後は、引越し準備の最後の追い込みです。授業をしながらではできなかった仕事をしています。もう、私の机の引き出しはすっからかんで、机の上にはパソコンのディスプレーとキーボードがあるだけです。そのパソコンも、このブログを打ち込んだら取り外してしまいます。ディスプレーの隣に並んでいた理科の教科書や問題集などは、すでにダンボール箱の中です。学校の共通部分の荷物も片付けましたから、かなり疲れました。でも、それは11年間お世話になったこの校舎への別れの儀式だと思っています。
 新しい校舎が完成するのは、2014年。その時にまた民族大移動をするわけですが、それまで1年ちょっとですから、今回ほどの荷物整理はないでしょう。

  • 2012年09月26日(水)20時54分

最後のお掃除

9月25日(火)
 たった今、夕方のお掃除の方が、「長い間ありがとうございました。今日で最後です」と言って去っていきました。明日は期末テスト、明後日は引越しなので、授業後にお掃除をしていただくのは今日が最後だったのです。そういえば、今日はこの校舎での最後の授業日でした。そんな感慨に浸ることもなく、いつもどおりに授業を進め、授業の終わりも、「明日は期末だからしっかり勉強すんだよ」なんていう、ごくありきたりの言葉で流してしまいました。だから、お掃除の方から別れの挨拶をいただいた時、少しばかり驚いてしまったのです。
 この校舎は2001年の夏から使っていますから、11年強お世話になったことになります。老朽化というには早すぎるような気もしますが、教育機器の進歩はめざましく、また、昨年の震災から耐震性の強化を図ることも急務とされ、校舎拡張も兼ねて建て直すことにしたわけです。
 引越しの準備ということで、このところ毎週末校舎中を大掃除しています。そのたびにトラック1杯分ぐらいのゴミが出てきます。校舎が浮き上がったんじゃないかというくらいのゴミを出しました。そういうゴミの山を見るたびに、これが11年間の垢なんだなとしみじみ思います。私自身、折に触れて書類は捨ててきたつもりなのですが、それでも結構な量のゴミを出しました。また、私の場合は本を買うのが趣味ですから、この11年間に買って学校に置いておいた本がとんでもない冊数でした。それをちびりちびり家へ持って帰ったのですが、いつの間にか私の部屋は本の林となっています。
 今日で授業が終わりということで、お掃除の方が帰られた後から職員室の整理の追い込みにかかりました。あっという間に手軽く運べないほどのゴミが出てきました。この11年間にIT化はかなり深化しましたから、これからはこれほどのゴミは出ないでしょう。いや、それにしても、私たちはゴミと一緒に仕事していたんだなと思わせられています。

  • 2012年09月25日(火)21時19分

横綱昇進おめでとう

9月24日(月)
 昨日は大相撲秋場所の千秋楽で、日馬富士が2場所連続の全勝優勝を遂げました。第一人者の白鵬を破っての全勝優勝ですから、横綱審議委員会では満場一致で横綱に推薦しました。日馬富士は、まだ幕下で安馬と名乗っていた頃から、根性のありそうな力士だと思って追いかけてきました。そういう力士が横綱になるのですから、個人的にはとてもうれしいです。また、日馬富士が横綱に昇進すれば、2年半にも及ぶ白鵬の一人横綱に終止符が打たれ、東西に横綱が並ぶバランスのとれた番付になります。
 日本は古来から最上位が1人というのはあまり好まれず、2人がバランスを取りながら並び立つというのが好まれました。現在NHK大河ドラマで放送中の平清盛にしても、あまりに強い権力を持ちすぎたがゆえに嫌われたという面もあります。ですから、確かに白鵬は頑張っていましたが、何か欠けているものがあるような気がしてならないというのが、日本人の偽らざる心情ではないでしょうか。
 番付のバランスは整うかもしれませんが、相変わらず番付の上位は外国人に独占されたままです。日本人の最高位は大関の稀勢の里と琴奨菊です。琴奨菊は今場所途中休場でパッとせず、稀勢の里も今すぐ横綱に上がれそうな勢いは感じられません。ともに白鵬や日馬富士と同年代ですから、よほどの奮起がないと上へは行けません。日本人は、1998年の若乃花を最後に横綱に昇進していません。2003年の貴乃花の引退以来、日本人の横綱が土俵に上がっていません。
 ロンドンオリンピックでは、男子柔道で日本は金メダルが取れませんでした。本家本元が簡単には優勝できないのは国際化が進んだ証拠だ、とも言えるでしょう。相撲は既に6年あまり日本人の優勝力士が出ていませんから、柔道の先を行っています。シャープが液晶テレビで経営を傾けたのも、日本の伝統スポーツ不振の延長線上か同根であるような気がしてなりません。
 日本語学校にいると、日本と外国との境界線がぼやけてくることがありますが、それでもやっぱり、ガンバレニッポンです。

  • 2012年09月24日(月)21時28分

野田さん再び

9月21日(金)
 民主党の代表選挙があり、野田さんが再選されました。また、自民党の総裁選もまもなくで、谷垣さんに代わる党の顔が選ばれます。私はどちらの党員でもありませんから選挙権はなく、選挙を傍観するしかありません。しかし、この両党のどちらかが次の政権を取ることは確実ですから、この両選挙は次の首相を選ぶ選挙でもあります。関心を持たないわけにはいきません。
 学生たちも日本の政界が騒がしいころは感じていて、自国との関係がどうなるか気にしている学生もいます。授業で政治の話題を取り上げるのはきわどいものがありますが、上級ともなれば学生の興味に応える授業も必要となってきます。また、受験の基礎知識、日本で暮らしていく上での常識として知っておいたほうがいいこともあります。実際にやってみると、学生はかなり強い関心を示しました。冷静な論調の社説を教材にしましたから、冷静な議論ができました。学生たちにとっては、自国の論評とは違う角度からの物の見方ができたのではないでしょうか。
 私自身の反省としては、日本の立場をもっときっちりアピールできたらよかったという点です。もちろん、私は日本を代表する地位にいるわけではありませんが、学生から見れば日本人の代表です。日本の美質をきちんと伝えて、学生たちが抱いている誤解や偏見を解消させることもまた、外国人と頻繁に接する日本語教師としての仕事です。そこが甘かったなと思っています。
 草の根の外交などといきがるつもりは毛頭ありませんが、学生たちが日本で幸せに暮らしていくことを考えると、そういう知識を入れていくこともまた、日本語学校の役割だと思います。自民党総裁選は今学期の期末テストの日ですから、その結果について学生たちと議論できるのは来学期になってからです。仮校舎になっても中身の濃い授業をしていきます。

  • 2012年09月21日(金)22時16分
Web Diary