logo

KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

過去ログ

過去ログ選択フォーム
表示ログ

本当の代表

11月16日(金)
 衆議院が解散されました。国会が民意を表していないと言われて久しく、解散は当然と言えば当然です。しかし、つい先日、最高裁が「違憲」と判断した選挙区で選挙を行うので、その選挙結果がやはり民意を正確に表していないことには変わりないのかもしれません。
 人口に忠実に代表を出すというのは民主主義の基本です。それゆえ各小選挙区の1票の価値は限りなく1:1に近づけるべきだというのは正論だと思います。しかし、概して都市部ほど投票率が低く、投票率まで考慮した1票の価値みたいなものを考えると、国勢調査の結果から割り出した1票の価値の差よりは小さくなるんじゃないでしょうか。暴論かもしれませんが、政治に無関心な人は発言する権利なしということも言えるんじゃないかと思います。
  原発事故で人口が減った福島県の代表が減らされたら、福島県内でも人口の減り方が激しい原発の近くからの代表がいなくなったら、福島の復興、原発事故の教訓を国会に訴える人がいなくなってしまうかもしれません。「0増5減」案では福島県は議席減の対象外ですが、復興が遅れて人口減が進めば代表も削られてしまうかもしれません。すべての国会議員が日本全体のことを考えてくれるのなら、こんな心配は不要です。しかし、現実は地域代表の色が必要以上に濃いと思います。
  3年あまり続いた民主党政権はあまり評判が良くありません。しかし、政権って交代させられるんだっていうことを、日本人が学習したのが前回の総選挙でした。今回もそういう結果になるのでしょうか。来月16日が投票日ですから、東京は知事選挙とダブル選挙になります。どこに出しても恥ずかしくない代表を選びたいですね。

  • 2012年11月16日(金)17時53分

避難訓練

11月15日(木)
 避難訓練をしました。地震が発生し、学校の近くで火災が発生したので避難するという想定でした。10月に現在の校舎に移ってから初めての訓練ですから、頭の中で考えた避難手順の妥当性を検討するという意味合いもありました。
 午後の初級各クラスは概して真面目に取り組んでいたのに、午前の中級・上級クラスはおしゃべりばかりしていたところもあったということです。日本で暮らす期間が長くなると、悪い意味でも慣れてしまうのですね。
 地震の避難にはエレベーターは使えませんから、階段で1階まで下りました。走ると将棋倒しになって大勢が大けがをしかねません。走らないということは守られていましたが、本当に避難しなければならない時には、焦ってしまう人が出てきても不思議はありません。それから、非常階段は目が回るとおっしゃた先生も。これまた、いざという時に目を回して逃げられなくなったなんていうことがないように、たまには訓練しなければなりません。
 日本は、陸地面積は世界の0.25%ほどですが、全世界で発生する地震の10%が日本で発生していると言われています。世界で有数の地震大国です。しかし、今の学生の中で去年の地震を経験した学生は、ほんの数人しかいません。その学生は地震の威力を身をもって感じていると思います。しかし、それ以外の学生は、国での報道を通してしか知りません。地震の本当の怖さを伝えていくためにも避難訓練が必要ですし、日本語の授業の教材などを通して意識付けしていくことも必要です。
 こういうことも、広い意味で日本文化だと思います。地震と共存してきた日本人、地震を意識した生活、それを知ることが日本に留学する意義の一つです。

  • 2012年11月15日(木)20時15分

問題ミス

11月14日(水)
 早いもので、もう、中間テストです。EJUの3日後に中間テストというのはハードかもしれませんが、連日入学試験を転戦するということもありえますから、この程度で弱音を吐いていては困ります。
 中間テスト・期末テストはその学期の学生の最終成績を大きく左右するテストですから、念には念を入れて問題を作ります。しかし、人間が行う作業ですからミスを完全に防ぐことは難しいです。今日、私が入ったクラスでも、同じ選択肢が2つあるとか、ひらがなが1文字抜けているとかというミスがありました。どちらも大勢に影響を及ぼすものではありませんでしたが、ミスはミスです。
 今日のミスは、どちらも学生からの指摘で気がつきました。問題を作った時と印刷した時の2回は問題をチェックするチャンスがあったはずです。でも見逃されてしまいました。私も自分のクラスの問題を作りましたが、どうだったのでしょう。試験監督の先生から何の報告もありませんから、ミスはなかったのでしょう。
 問題にミスがあると、内容的にどんなに立派な試験であろうも、軽く見えてしまいます。誤植があると、一生懸命勉強してきた受験生ほど、がっかりしてしまうと思います。いくらこのテストは重要なテストだと叫んだところで、受験者に軽く見られてしまったら、叫ぶ側は空回りするばかりです。ひいては、学校そのものもが受験者の目に安っぽく映ってしまいかねません。こういう角度から見れば、試験は学校の顔とも言えます。
 中間テストは終わりました。期末テストをキズモノにしないよう、今から心していきます。

  • 2012年11月14日(水)19時12分

手取り足取り

11月13日(火)
 SさんとTさん、2人ともいかにも育ちの良さそうな学生です。その2人が大学進学を目指し、面接練習に挑戦しました。結果は血まみれでした。普通の学生ならフィードバックも含めて1時間で終わる練習が、たっぷり2時間かかりました。
 何でかというと、2人とも自分の将来を考えていないからです。確かに、2人と同級生になりそうな日本人の高校生も将来のことなんて深くは考えていません。しかし、留学生には「覚悟」があってしかるべきなのに、それが全く感じられまいのです。
 Sさんは大学卒業後家業を継ぐと言います。そのためには大学で何を勉強しなければならないかと聞くと、経営の基礎知識という答えでした。Sさんの頭の中には、家業を今の形のまま引き継ぎ、そのまま自分が経営していくことしかありません。最低でも世の中の進歩に合わせていかなければならないのに、これじゃあ自ら負け組に加わりに行くようなものです。
 Tさんは証券会社に勤めたいと言います。証券会社でどんな仕事をするのかと問うと、株を売ったり買ったりという答えが返ってきました。大学で経済学を修め証券会社に勤めるというと、どんな仕事を夢見ているのかと期待していただけに、思いっきりがっかりさせられました。
 大学受験ぐらいどうにかなるだろうという考えなのかもしれません。どこかに引っかかるんじゃないかという期待を抱いているのかもしれません。しかし、いくら少子化の影響で日本人の新入生がなかなか入ってこないからといっても、日本の大学もそこまで甘くはありません。ここまで自分が専攻しようとする学問やそれを活かす方向性に関して何も考えていないと、救いようがありません。
 世の中は発展するものだと説いたり、証券会社は何ぞやと講義したり、おそらく国ではご両親など周りの人たちがやってきたであろうと思われる役目を務めました。血まみれ状態の時には半べそだったTさんにも、最後には笑顔を見せてくれました。2人の面接は来週末です。結果が楽しみなような怖いような…。

  • 2012年11月13日(火)22時03分

受けなかった

11月12日(月)
 昨日は今年2回目のEJUでした。6月よりやさしかったという声もあれば、全然できなかったという学生もいて、実際のところはどうだったのでしょう。
 受けた学生はそんな感想を漏らしていますが、受けなかった学生もいたようです。Bさんもその1人で、本人は、6月より日本語の点数は上がると思うけど、総合科目は6月以上の点数は取れそうもないと言っていたそうです。これは、敵前逃亡の言い訳に過ぎません。Bさんの6月の総合科目は、確かに平均点は上回っていますが、これ以上伸びそうもないという点数ではありません。Bさんは総合科目はあまり勉強できなかったと言っていますが、受けなかったら話にもなりません。6月の日本語にしたって、悪くはないという程度であって、お世辞にも素晴らしい点数だとは言えません。そんな成績で「いい大学」に入ろうなんて、おこがましいにも程があります。受けなかったことは、絶対に後悔するでしょう。
 確かに、先週末のBさんはちょっと自信喪失気味でした。普段の快活な印象ではなく、陰にこもった感じがしました。EJUのプレッシャーがきついのかなと思って軽く元気づけはしましたが、まさか受験しないとは思ってもみませんでした。根性無しとけなすことはたやすいですが、根性が折れてしまうほどの重圧を少しは肩代わりできなかったものでしょうか。そんな後悔があります。直前にBさんと話をしていたのですから、「軽く」元気づけるだけではなく、もっと何かできたのではないかと反省しています。
 学生の私生活や心の奥底まで踏み込むことはいろいろな意味で難しいことです。でも、学生を後悔させないように導くのが私たちの役割です。そうでなければ、親御さんたちに合わせる顔がありません。Bさんさんは今後どのように進路を選ぶかわかりませんが、今度こそ悔いを残さぬ指導をしていきます。

  • 2012年11月12日(月)22時06分

直前

11月9日(金)
 EJU直前の最後の授業日です。どことなくピリピリした空気を感じました。最後の最後まで過去問に取り組む学生もいれば、授業が終わるや学校を出て、家で何かしようという学生もいました。
 私の受験期は簡単には思い出せないくらい大昔ですが、「この期に及んでも…」と思いつつも、最後まで意地汚く悪あがきしていたような気がします。学生たちは当時の私なんかよりずっと自分の人生を賭けてこの試験に臨むのですから、そこから受けるプレッシャーもかなりの強さでしょう。
 今シーズン最後の受験講座を終えて職員室に戻ると、今年3月の卒業生のPさんがいました。「元気ですか、Pさん」と声をかけると、「元気ないです」と言って、今日来た訳を話してくれました。N大学に出願するつもりだったけど、うっかり出願締切日を忘れてしまったのだそうです。そして、何とか出願できるようにN大学に交渉してほしいと言うのです。
 これは、はっきり言って無理です。入学試験は大学にとって最重要のイベントですから、これに例外を設けることは考えられません。というか、あっさり特例を認めるような大学は信用できません。そんな大学には行かないほうがいいです。N大学の留学生入試は今回だけですから、どうしてもN大学に入りたかったら、日本人と同じ試験を受けるほかありません。
 このようにPさんを諭すとと、Pさんは日本人と同じ試験を受けると言います。それだけの覚悟があるならということで、N大学に外国人が日本人と同じ一般入試を受けられるかを聞きました。出願資格があるという返事をいただきました。出願は来年の1月、入試は2月です。Pさんはもう3か月ばかり、緊張を強いられることになりました。
 日本人と同じ試験を受けてでもというのですから、Pさんは本当にN大学に入りたいのでしょう。でも、そこまで入りたいのなら、なぜ出願締切日を忘れてしまったのでしょう。いろいろと事情があったようですが、ポロッと抜け落ちてしまったとういのなら、その時点では覚悟が足りなかったということでしょう。この事件で肝が据わったでしょうから、あと3か月死に物狂いで頑張って、栄冠を手にしてもらいたいです。

  • 2012年11月09日(金)19時55分

優秀な人材を

11月8日(木)
 田中文部科学大臣が大学の新設を認めなかったり、急に前言を翻して認めたりということが注目を集めています。そのおかげで、子供の数が減り続けているのに大学の数は増え続けているとか、半数近い私立大学が定員割れになっているとか、大学のあり方にスポットが当たっています。もう少し話が広がって留学生についても議論してもらえないかと思っていますが、不認可になった3大学が認可された時点で議論が沙汰止みになり、そこまではいかないでしょうね。
 留学生についての議論は、とかく不法滞在やアルバイトといった文脈で行わます。しかし、大学が留学生にとって学びやすい環境にあるかとか、留学生が日本人学生に与えている影響とか、大学を卒業した留学生の就職とかという議論はほとんどありません。留学生に関する議論がもっと盛んになり、積極的に受け入れようという世論が形成されれば、日本の大学も国際的に開かれ、海外の大学との競争力も高まることでしょう。
 最近の報道によると、今春大学を卒業した56万人のうち、正社員として就職できた人が36万人だったそうです。残りの20万人のうち8万人が大学院進学だそうです。他はアルバイトやニートになったようです。帰国した留学生も、このグループに入れられているのだと思います。KCPから大学進学したYさんも、日本での就職がかなわず帰国するという話を夏頃耳にしました。Yさんのような優秀な学生すら帰国を余儀なくされるとは、外国人留学生の就職戦線はかなり厳しいのだなと思いました。
 日本で育った優秀な人材を日本社会に取り込むにはどうしたらいいか、ということについて国を挙げて議論してもらいたいです。それが、日本の低迷を打破する一里塚になると思います。

  • 2012年11月08日(木)19時27分

編入学は難しい

11月7日(水)
 ある人に頼まれて、あることが勉強できる外国人の編入学を受け入れている大学を調べました。
 まず、日本人であろうと外国人であろうと、編入学を認めている大学が少ないことが最初の壁でした。編入学を認めている大学でも、外国の大学などで教育を受けた場合は受験資格がないというところも目立ちました。外国人向け編入学試験のある大学は、非常に少ないです。
 編入学は、多少なりとも専門の知識がある人が対象ですから、外国人向けの試験までは期待しませんが、外国で教育を受けた人はダメというのは、理不尽に思えました。確かに、単位の認定などが煩雑になりますし、何年かに1人来るか来ないかの外国からの編入生のために制度を用意しておくのは非効率的かもしれません。しかし、だからといってシャットアウトしてしまうのはいかがなものでしょうか。
 大学院の入試は海外の大学卒でも受け入れているのですから、編入学でもできないことはないと思います。大学院と大学とではシステムが違うよと言われてしまいそうですが、日本の大学を開かれたものにするには、そんなところに線を引くのはおかしいと思いませんか。
 留学生を大幅に増やすと言いつつも、制度的に実態が伴っていない一例だと思います。学部の外国人留学生入試も、過去問がなかなか公開されないなど、受験生の方を向いた制度になっているとは言い難いものがあります。留学生特別入試問題集を買っても、肝心の日本語の問題は、著作権の処理がなされていないがために、本文が真っ白けです。日本人高校生向けの“赤本”ではそんなことがありません。やっぱり、留学生入試は軽く見られているんですね。
 日本の大学が真にグローバルな学問の場になるには、まだまだ道のりが遠いように思われます。

  • 2012年11月07日(水)22時10分

苦節3年

11月6日(火)
 NさんがR大学に合格しました。国にいた時に受けて、去年日本へ来て受けて、今年は3度目の正直でした。周りの学生より年を食っていることを気にしていて、今年がラストチャンス、背水の陣で受験しました。そういうふうには言っていませんでしたが、そういう感じがNさんから漂っていました。
 Nさんは国で社会人の経験があります。仕事を始めたけれども、どうしても夢を捨てられずに、やりたいことを勉強するために来日しました。時々休んだり遅刻したりゲームにはまったりする、私たちにとっては理想的な優等生ではありませんが、妥協せずに初志を貫徹したところは偉いと思います。
 Nさんは、去年R大学を始めいろいろな大学に落ちていた時も、非常に楽観的でした。面接練習で完膚無きまでにやっつけられても、決して落ち込むことはありませんでした。受験から帰ってきた時に様子を聞くと、いつも「うまくいったと思います」と答えていました。自分の悪い状況に対して鈍感なのだろうか、現実から目をそらしているのではあるまいかと思ったこともありました。それと同時に、打たれ強い性格なのかなとも思っていました。今、振り返ってみると、常に前向きに自分の目標に向かっていたという点が、今年の合格をもたらしたのでしょう。
 もちろん、大学に受かっただけで喜んでいたのではいけません。合格の時点で燃え尽きてしまっては夢が叶えられません。留学は、大学に入ってからが本当の勝負です。でも、入学までにこれだけ苦労を重ねたNさんなら、目標を見失うことなく有意義な留学生活を送ってくれると信じています。
 Nさんは、大学進学クラスで最初の合格者です。幸先のいいスタートが切れましたから、他のクラスメートもあとに続いてほしいところです。

  • 2012年11月06日(火)20時15分

初暖房

11月5日(月)
 午前中、授業をしていると、学生が暖房を入れてくれと言います。若い盛りの学生が寒く感じたのですから、今日の寒さはかなりなものだったのでしょう。今シーズン初めて、エアコンをヒーターとして使いました。ヒーターをつけると、心地よいんですね、これが。もう、晩秋ではなく初冬というべき季節に進んでいるのです。
 今日は曇り空で、気温もあまり上がりませんでした。朝の予報では最高気温は19℃と言っていましたが、それがいつの間にか17℃に変わり、実際には16℃まで届きませんでした。日中はコートなしでも耐えられますが、朝晩はマフラーも欲しい感じがします。明日からはいくらか暖かさが戻るようですが、木枯らし1号を迎えるのも時間の問題です。あさっては立冬ですから。
 今日のクラスにはマスクをしている学生が2名いました。体調不良で休んだ学生もおり、風邪の季節にもなったことを実感させられています。受験生は寒いとか風邪だとか言っている暇はありません。少なくとも受験日にはベストコンディションで臨まなければなりません。でも、学生たちはこのコンディション作りが下手なんですよね。無理をしなければいけない時と、無理をしちゃいけない時の区別がつかないようです。もちろん、遊びで無理をするなど論外です。
 もうすぐ受験の山場、今度の日曜日はEJUですが、熱で力が出し切れなかったなんていうことのないようにしてもらいたいものです。

  • 2012年11月05日(月)17時18分

集中力

11月2日(金)
 今年2回目のEJUまであと9日。学生たちの心には焦りと不安と緊張と心配と、重苦しい影が差しています。Zさんもその1人で、「私は聴解・聴読解の時、どうしても途中で集中力が切れて、簡単な問題を間違えてしまうんです。1人でCDを聞いて練習する時は大丈夫なんですが、模擬テストになるとダメなんです。どういう訓練をしたらいいですか」と聞いてきました。
 はっきり言って、集中力が途切れなくても間違えてしまうことはあります。聴解・聴読解で肝心なのは、その間違いを引きずらないことです。「間違えた」「わからない!」と思っても、その問題のことはすぐ忘れることです。直ちに頭を切り替え、真っ白な気持ちで次の問題を待ち受けることが何より大切です。「失敗した」という気持ちを抱えたまま次の問題に取り掛かると、次の問題にまで響いてしまいかねません。そうなると、傷口がどんどん広がっていきます。
 ですから、ある問題で集中力が切れたとしたら、その問題は捨てて次の問題からまた集中して取り組めばいいのです。聴解と聴読解で1問ずつ捨てたとしても、他の問題を確実に取れば、十分以上の高得点が望めます。1問も間違えちゃいけないなんていう必要以上のプレッシャーを自分にかけるなど、愚の骨頂です。
 そういうことをZさんに言っていると、M先生が横から「Zさん、あんたおんなじことを昨日私に聞いて、おんなじ答えをもらったでしょう」とツッコミを入れてきました。Zさんはやや落ち着きのないところがありますから、何か訓練してあと9日で集中力の途切れない学生になるとは思えません。だから、被害を最小限に抑える方法を伝授しようとしたわけです。
 とかく学生は自分の都合のいい答えを聞きたくて、いろんな先生のところへ足を運び、同じ質問をするきらいがあります。でも、学生にとって耳の痛い答えをしてあげることも教師の役目です。この時期の及んで、甘い話など、百害あって一利なしです。

  • 2012年11月02日(金)20時34分

合格は朗報?

11月1日(木)
 先日面接練習でコテンパンにやっつけたCさんが、N大学に合格したようです。「ようです」というのは、Cさんから直接聞いたのではないからです。今日は欠席で、欠席の理由を聞くためにかけた電話で、Cさんがそう言っていたとのことです。
 合格は難しいと思っていた学生が受かったことはうれしいですが、素直に喜ぶこともできません。これからのCさんの生活指導が大変になりそうだからです。前々から気安く休む癖のあるCさんですから、本人が行きたいと言っていたN大学への合格が決まってしまったら、タガが緩みっぱなしになるのではないかと心配しています。現に今日も休んでいますから、この先3月の卒業式までどうなるのでしょうか。電話で話を聞いたU先生によると、国立を受けると言っているそうですから、今のところは新たな目標を持っているのでしょう。しかし、それが長続きするかどうかは非常に怪しいです。いや、単に浮かれているだけかもしれません。
 大学によっては、3月の卒業までの伸びしろを見込んで合格を出すというところもあります。N大学がそういう大学なのかはわかりませんが、少なくとも今のCさんの実力ではN大学に入ってから苦労することは疑いありません。これからの5か月で可能な限り自分の日本語力を高めねばなりません。このまま自堕落な生活に陥ってしまったら、せっかくの大学留学のチャンスを生かすことはできません。
 浮かれまくっている学生に、大学合格という当面の目標に到達してしまった学生に、さらなる日本語力をつけさせ、大学の授業について行けるまでに伸ばすことは、大学に合格させることよりも難しいことです。でも、ここで踏ん張れなかったら、日本語学校の日本語教師とは言えません。

  • 2012年11月01日(木)19時42分

語るべきもの

10月31日(水)
 今日は今週末に入試を控える2人の学生の面接練習に付き合いました。
 Eさんは中級の学生で、T大学を目指します。1週間ほど前に面接練習を申込み、予想質問集への答えも怠りなく考えてきていました。わからないことに対して思い切りはっきり「わかりません」と言ってしまうあたりに危うさがあったり、時々助詞を間違えたりしましたが、T大学に入りたいという情熱や、将来何をしたいかという夢は十分に語れていました。T大学をきちんと研究し、そこで何を勉強して、勉強したことを卒業後にどのように活用していくかがよくわかりました。もちろん、絶対合格などとは言えませんが、合格ラインに達している面接内容でした。
 最上級レベルのBさんは、M大学を狙います。今朝、面接練習を申込み、午後、Eさんの後に面接練習しました。一夜漬けにもなっていませんから、志望理由などの基本的な質問に対しても、その場で考えながら答えていることが明らかでした。ですから、面接全体を通してのポリシーのようなものがなく、途中でつじつまが合わなくなったり、意味不明の回答になったりしてしまいました。準備不足は火を見るより明らかでした。Bさん自身の中で、M大学への進学が熟しきっていないように感じられました。M大学で勉強する自分の姿が、Bさんの頭の中にも描かれていなかったのでしょう。これでは面接官を満足させる答えなど期待するべくもありません。
 面接はコミュニケーションです。コミュニケーションとは、相手を理解することも含まれますが、自分自身を相手に知らしめることにも大きなウェートがあります。Eさんには語るべき自分があり、Bさんにはそれがなかったというのが、今日の面接練習の差になって表れたのです。Eさんにしても、わからないことをただわからないで終わらせてしまっては、コミュニケーションを拒否したと受け取られかねません。その点は厳しく注意しました。
 Bさんには語るべき何かを形作るために、いろいろと指示を出しました。今週末の試験日までに体勢の立て直しができるといいのですが…。

  • 2012年10月31日(水)22時31分

推薦入学

10月30日(火)
 B大学への指定校推薦の学生を選ぶ面接をしました。3名の対象学生全員を一度に面接しました。
 KCPとして推薦するかどうかを決める面接ですから、入試の面接練習とは勝手が違います。まず、型通り、志望する大学名、学部名、学科名、学科の中のコースを正確に言わせます。これは3人とも軽くクリア。次は、なぜそのコースを選んだかという志望理由を聞きました。これも十分練習しているはずですから難なく答えられると思いきや、最初の学生がB大学の志望理由を答えてしまったものですから、あとの2人も「B大学は私の勉強したいことが勉強でき…」という話になってしまいました。
 「みなさん、私の質問に答えていませんね」と言うと、3人とも顔から血の気が引きました。コースを選んだ理由を話してくださいと質問し直すと、今度はこちらの求めた答えが返ってきました。これで緊張がほぐれたのでしょうか、その後の質問には全員きちんと答えていました。
 最後に、学校から推薦してもらえる学生はどんな学生かと聞くと、出席率がいい学生、真面目に勉強する学生、成績がいい学生、バス旅行など学校行事に進んで参加する学生、などなど模範的な答えが返ってきました。もう少し突っ込んで聞くと、日本の生活に慣れている学生、大学で勉強していく日本語力がある学生、要するに4年間大学生活を続けられる資質を持っている学生というが回答が出てきました。こういう答えが思いつけば、3人とも推薦の意義を十分に理解しているものと思われます。
 推薦で入学した学生は、KCPを卒業したといってもKCPの看板を背負っているのと同じです。他の学生に刺激を与えるような学生になって、KCPの名を上げてもらわなければなりません。3名は努力家だったりひたむきな情熱があったり感性の鋭さを感じさせられたり、いずれも私たちに期待させる「何か」を持っています。それをB大学の面接官にも伝えることができれば、合格も夢ではないでしょう。

  • 2012年10月30日(火)17時58分

快晴

10月29日(月)
 朝方は曇っていましたが、8時頃から気持ちよく晴れました。雲一つない快晴が夕方まで続きました。こういう日は「スポーツの秋」ということで屋外でひと暴れしたいところですが、受験生にとっては「学問の秋」で、いつもどおり教室で授業をしました。
 今日ぐらい晴れてくれれば「行楽の秋」にももってこいです。11月22日はバス旅行で、今日は各クラスでその説明をしました。私は自分のクラスの他に、初級のクラスをいくつか回りました。旅行の主たる目的地である富士急ハイランドの乗り物の写真を見せると、日本語のレベルに関係なく歓声が上がりました。富士急ハイランドはバス旅行の人気コースですが、その勢いは全く衰えるところがないようです。
 今までも富士急ハイランドへは何回か行きましたが、11月の下旬というのは初めてです。気温が低いのではないかというのが心配な点ですが、ジェットコースターめがけて駆け回っていれば、寒さも感じられないのかもしれません。初冬の澄み渡った青空に、雪をかぶった富士山はきっと映えることでしょう。そんな富士山を見ながら食べるお弁当は、さぞかしおいしいことでしょう。
 そして今回は、今までよりも長い時間、富士急ハイランドにいます。ですから、今度こそ、フジヤマやドドンパなど、人気アトラクションに乗りたいものです。学生の世話に追われて何も乗れなかったことさえありましたから、時間のある今回は、密かに期待しています。実は、私はジェットコースターのように速くて高い所へ行ってGのかかる乗り物は大好きです。教師ばかりが浮ついていてはいけませんが、学生と一緒に存分に楽しみたいです。

  • 2012年10月29日(月)17時33分

物忘れ?

10月26日(金)
 夕方、卒業生のCさんが学校へ来ました。ところが、そのCさんがいつの卒業生だったか思い出せません。顔ははっきり覚えているのですが、それが何年前のクラスだったのか、記憶が曖昧なのです。「2年前だったけ?」と聞いたら、「今年の3月ですよ。忘れちゃったんですか」なんて言われてしまいました。
 決して忘れてしまったわけではないのですが、3か月ごとに学生を迎え入れ、送り出していますから、今年の3月といってもかなり以前のことのように思えてしまうのです。Cさんは大学に進学してそこに根を下ろし、落ち着いた学生生活を送っているのでしょう。確かに大学入学は激変でしたが、その後は安定した毎日だったと思います。だから、半年は半年に過ぎないのです。しかし、私は入れ替わり立ち代りいろんな学生の面倒を見ていますから、前の学期のことさえも遠い昔に感じてしまいます。さらに今年は、仮校舎への引越しという過去をより一層遠いものにする要素が加わりました。そうだとしても、2年前というのはちょっと気の毒だったかな、と反省しています。
 きのうは、WさんがK大学に合格しました。本命はD大学だそうですが、K大学も全く遜色ありません。Wさんは今年の4月入学ですが、これで来年3月卒業が決まったも同然です。入学の学期と今学期と、2回教えていますが、来年の今頃、Wさんが遊びに来ても、「2年前の学生?」なんて言っちゃうんでしょうか。
 でも、KCPの先生がみんなこうじゃありません。私はもう年ですから物忘れが激しいだけで、若い先生はそんなことないはずです。卒業生の皆さん、安心して遊びに来てくださいね。

  • 2012年10月26日(金)20時02分

ハロウィンパーティー

10月25日(木)
 今日は夕方からH大学でハロウィンパーティーがありました。先週、このパーティーに参加する人を募集したところ多数の応募があり、今週初め、抽選で選ばれた学生に招待状を配りました。
 ところが、今日になってキャンセルする学生が続出しました。これに限らず、相手がある予定をあっさりキャンセルす学生が多いです。もちろん、キャンセルする側にもいろいろな事情があるのでしょうが、キャンセルしないで済ませる努力をどこまでしたのでしょうか。
  私など、歯医者の予約を変更するだけでも罪悪感を覚える方です。よーく考えて、変更やキャンセルをしなくてもいいように、この日なら絶対大丈夫だという日に予約します。そういう人間から見ると、気安くキャンセル感覚がどうしても理解できません。少なくとも、相手の厚意によって成り立っている約束を、当日になってキャンセルするというのはいただけません。
 これとは逆に、予約もなしに突然大きな重い用件を持ち込む学生もいます。そういう用件は時間を食うので、こちらが抱えている他の用事に影響が及ぶこともあります。お前は割り込みなんだぞ、と意識させた上で付き合います。それで多少なりとも申し訳なさそうな態度になればまだ脈はありますが、どこ吹く風っていう顔だったら付き合おうという気もなくなります。
 携帯電話が普及するにつれて簡単にドタキャンをするようになった、ドタキャンに寛容になったと言われていますが、そんな習慣が染み込んだまま社会に出たら、間違いなく痛い目にあいます。学生たちを大人にしていくことも、この学校の教育の一環だと思っています。お預かりした学生を、帰国した時に親御さんに一皮むけたと感じてもらえるまでに成長させる――それができる学校が、真に“いい学校”なのです。

  • 2012年10月25日(木)18時07分

銀行は3時までです

10月24日(水)
 今週から来週にかけて出願締め切りの大学が多く、授業後は学生がひきもきらずに出願書類を持って来ます。郵送直前に出願書類をチェックしてくれというのですが、受験講座などでの指導によって、かなりのところまで自力でできるようになりました。しかし、学生たちにさっぱり定着しないのが、銀行は3時までだということと、「消印有効」と「必着」の違いです。
 銀行は3時までだというのは、初級の教材にも出てきますし、受験講座でも注意しましたから、何度となく刷り込まれているはずです。しかし、5時近くになって「じゃあこれから振込みに行きます」という学生が後を絶ちません。学生たちと同じ年代の日本人にとっても、これは常識ではないかと思います。学生は口座を作るとき以外窓口へ行かないからでしょうか。今日もHさんが3時までだと聞いて、心の底から驚いたような顔をしていました。
 「消印有効」と「必着」も、ホワイトボードをたたきながら声を張り上げて違いを力説したのに、全然覚えていません。「ショーインユーコー」なんて言ってるようじゃ、頭の中に残ってるわけありませんよね。これもまた、学生たちの日常生活には縁のない約束事ですから、歩留まりが悪いのでしょう。さらに悪いことに、「必着」を「消印有効」と取り違えると命取りになりかねません。今年はまだのようですが、毎年これにまつわる事件が発生します。
 調べてみると、銀行の営業時間は法律で定められているようです。一部の銀行がこの法律の特例を用いて営業時間を延長していますが、事実上横並びです。国際的に見て、ほぼ一律3時までというのはどうなのでしょう。私が青筋立てて注意しても夕方までやっていると思い込んでいる方が国際標準なのかもしれません。
 そうは言っても、最後の詰めを誤って学生が夢をあきらめなければならないような事態は招きたくはありません。早手回しに指導していかなければ…。

  • 2012年10月24日(水)18時42分

雨が降って季節が進んで

10月23日(火)
 今日は時々通り雨の降る荒れ模様の天気でした。仮校舎の本館は眺めがいいだけに、外の様子が手に取るようにわかります。雨が降り出せば学生の注意があっと言う間にそちらに向かってしまい、教師は置いてけぼりを食ってしまいます。今日は、傘を持ってこなかった学生が多く、どうやって帰ろうかという気持ちになったようです。
 この雨は寒冷前線の通過によるもので、雨のあとは明らかに気温が下がりました。季節が大きく進んだ感じがします。明日の朝は、今朝に比べて10度くらい低くなるそうです。東北や北海道は雪かもしれません。
 さて、今学期は、来月、バス旅行が予定されています。去年までは9月に行ってきたのですが、今年は11月のEJUが済んでからになりました。1か月ほど先のことですが、気になるのは気温です。富士急ハイランドをメインに、その付近を見学する予定ですが、寒いとせっかくの旅行が印象の悪いものになってしまいかねません。今年3月の日光江戸村への旅行も、冷たい雨に降られてかなりひどいお天気でしたが、それなり以上に学生は楽しんでくれました。ただ、富士急ハイランドは屋外のアトラクションが中心ですから、気温が低いだけならともかく、雨は困ります。気温が低いと、ジェットコースターなどに並んでいる間に風邪を引いてしまうのではないかという心配もあります。
 山梨県は日本有数の日照時間の長い県ですから、何とかなるんじゃないかなという楽観的な観測をしています。EJUで引き締められ続けてきた学生たちに、きれいな青空とそこに浮かぶ富士山を恵んでください、お天気の神様!

  • 2012年10月23日(火)17時11分

形にする

10月22日(月)
 先週末に学校に届いたEJUの受験票を配りました。学生たちは、中身を確認すると、会場が遠いだの東大だからいいだの、好き勝手なことを言っていました。顔は笑っていましたが、心の中はプレッシャーを感じ始めていることでしょう。
 今日の最上級クラスの授業では、大学入試の過去問をしました。過去問をやるときは、必ず答えを書くということが肝心です。なんとなくわかる、だいたいこんなことだというだけでは、本番で点数が取れません。きちんと答えを書いて、それが合っているかどうかを確認して初めて、力がつくのです。今日はそれをポイントにしてやらせました。HさんとKさんはきちんと答えを書いたようで、答え合わせの時に盛んに発言していました。Cさん、Sさん、Lさんあたりも、問題プリントに細かい字で何やら書いていましたから、おそらく自分なりの答えをまとめたのでしょう。こういうことを繰り返していけば、明るい未来が開けてきます。
 頭でわかっていることを文字という形に残す作業が、大学入試の答案作りです。私は理解していますよ、ということが採点者に伝わらなければ、得点にはなりません。日本語以外の科目でも同じです。数学や理科では、論理的思考の跡を答案用紙に記さなければなりません。答えの数字だけを書いても点数はもらえません。
 EJUまであと3週間を切りました。私立大学は出願も試験も盛りを迎えています。週末に受験のため関西まで遠征した学生もいます。昨晩の夜行バスで帰ってきたとか。今日は3名の学生の志望理由書をチェックしました。面接練習のピークも、もうすぐ訪れます。受験シーズンは、学生も教師も体力勝負です。

  • 2012年10月22日(月)17時55分
Web Diary