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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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攻防戦

12月17日(月)
 学期末恒例の攻防戦が始まています。成績は悪いけど、宿題は出していないけど、テストは受けていないけど、上のレベルに進みたい学生と、そんなことは絶対許せないとする教師との戦いです。学生は「次の学期、頑張りますから次のレベルに上げてください」と言います。教師は「今学期頑張れなかった学生が、次の学期に頑張れるはずがないでしょう」と言います。
 教師として腹が立つのは、努力の跡が見られないのに進級しようという学生です。宿題提出やテスト受験という学生にとっての義務を果たさずに進級という果実を得ようという根性が気に食いません。しかも、たまに受けたテストの成績が悪いときたら救いようがないのですが、そういう学生に限って意固地になるものなのです。
 学生にもメンツやプライドがあることはわかりますが、そういったものを満たすためだけで無理を重ねて進級していったら、次のレベルは何もわからないまま終わってしまいます。いや、もうすでに何もわかっていないのでしょう。こんなことでは、留学の初期の目的を果たすことなど不可能です。貴重なお金と時間を費やして何も得ることがなかったら、青春の無駄遣い以外の何物でもありません。
 そういうことを伝えて、自分の人生という長期的観点に立って物事を判断してもらおうと思っても、学生たちは次の学期に自分のメンツが保てるかどうかという、超近視眼的な考えに凝り固まっています。若い学生の方が、年寄りの私よりもコチコチの頭を持っていることに失笑を禁じえません。今が楽しければというキリギリス的、刹那的な快楽主義は、いつか必ず後悔をもたらすでしょう。
 学期末に職員室の常連となる学生たちよ、学期の初めからそれぐらい熱心に職員室に通って勉強したり先生に質問したりしていれば、今頃こんなにガミガミと叱られることなどなかったのです。君たちの辞書に「懲りる」という単語があるのなら、同じ失敗は繰り返さないでくれたまえ!

  • 2012年12月17日(月)19時20分

元日営業

12月14日(金)
 私の家の前のスーパーが、営業時間は短縮するものの、来年は元日から営業します。元日から働かないと競争に勝ち残れないのでしょうか。小売業界の競争は厳しいものです。
 私の子供の頃は、お店屋さんは正月3が日はお休みでした。1月2日に行われる仙台伝統の初売りが、唯一の例外といってもいいような感じでした。コンビニなんていうものはありませんでしたから、元日にやっているお店と言えば、駅の売店と初詣の神社仏閣の参道に出ている露店ぐらいのものでした。それで別に不自由した思い出はありません。
 もちろん、今とその当時とでは生活習慣が全然違います。1人暮らしが大幅に増え、また、家族で暮らしていてもおせち料理を作るところが減り、正月から店が開いていないと困るようになりました。店が開いていることを前提に生活をしている人も多いと思います。私も、ここ数年は元日は旅先で過ごしており、元日営業の恩恵に浴しています。
 元日営業をするということは、元日に働いている人がいるということです。ということは、その人たちの家族はどんなお正月を迎えているのでしょうか。いらぬ心配かもしれませんが、それを思うとお店を利用しつつもなんだか落ち着きません。もしかすると、どうせ1人ぼっちのお正月だから、あるいは時給も高いことだしということで、1人暮らしの人が働いているのかもしれません。
 ライバルに差をつけようとして、3が日から営業を始め、元日営業に踏み切り、ということをしてきましたが、元日営業が当たり前になってしまったら、単に労働条件が厳しくなっただけということにもなりかねません。そうすると、いったい誰が幸せになるのでしょうか。デフレスパイラルに落ち込んでいく日本経済を象徴しているような気もします。
 私のうちから自転車で5分ほどのところにある商店街は、毎年1月5日ぐらいまで休みです。家族経営の店が多いからでしょう。こういう形が、妙に新鮮に見えてしまいます。

  • 2012年12月14日(金)17時02分

刺激的

12月13日(木)
 午後の初級クラスを担当することになっていたM先生が、声が出なくなってしまったので、代講をすることになりました。午後に受験講座の授業をすることが多く、最近は初級の代講にはあまり入っていませんでしたので、本当に久しぶりの初級クラスでした。
 今日は、午前中は最上級クラスでした。最上級クラスは穏やかなペースで授業が進みます。私のクラスはおとなしいクラスなので、大声を張り上げることもなく、淡々と時が過ぎていくという感じです。
 午後は一番下のレベルのクラスでした。教室に入ると、自然に大きな声で「こんにちは」と言ってしまいました。以後、私の担当の90分間、ずっと大きな声で指名したり説明したり何かをやらせたりしました。最上級クラスならつぶやくような声でも学生が拾ってくれますが、一番下のクラスではしつこいくらい大きな声じゃないと学生に伝わりません。M先生もそれがわかっていたから、代講を頼んだのです。
 それと、初級を教える楽しみは、学生の限られた語彙と文法で何かを説明することです。こう言えばわかるはずだ、これとこれを組み合わせれば伝わるに違いないと、授業の各場面で瞬間的に考えながら説明したり指示を出したりする時にゾクゾクするのです。今日は特に授業の始まる30分ぐらい前に代講が決まり、それから授業内容の指示を受けたので、教案もへったくれもありません。ですから、存分にスリルを味わうことができました。
 そんなわけで、心地よい疲れを覚えながら、授業を終えました。とても充実した1日が送れたような気がします。

  • 2012年12月13日(木)17時02分

Oさんのスマホ

12月12日(水)
 12年12月12日と12並びの今日、北朝鮮がミサイルを発射しました。幸いにも、どこの国にも何の被害もなくフィリピン沖に落下しましたが、物騒極まりない話です。何しろ、部品を落としながら石垣島のごく近海の上空を通過したのですから、まかり間違えれば何らかの被害が発生したかもしれません。また、部品の落下地点からすると、発射方向が違ったら本州上に何かが落ちてきた可能性は否定できません。
 このニュース、A先生は、スマホを通じて知った学生のOさんから、授業中だったにもかかわらず、「先生、北朝鮮がミサイルを発射しました」と伝えられました。Oさんのスマホは、重大事件が発生すると自動的にニュースが入るのだそうです。学生が授業中に電話をいじるのはいかがなものかと思いますが、世の中の流れは止められません。
 私は北朝鮮のミサイル発射のニュースを直後に知らなくても何ら影響はありませんでした。これに限らず、多くのニュースは新聞かせいぜいテレビのニュースぐらいのタイミングで十分です。生き馬の目を抜くような競争社会に生きているのなら、こんな悠長なことは言っていられないのでしょうが。緊急地震速報ぐらいでしょうかね、すぐに知らなきゃ影響がありそうなのは。Oさんのように毎日スマホに生まれたてのニュースが入ってくる生活を送るようになれば、瞬時にニュースを知ることが当たり前となり、ニュースが入らないことに不安を感じるようになるのかもしれません。
 でも、私は仕事の上でも私生活の上でも今のペースで十分です。私自身が情報を主体的に吟味し、何がしかの判断を下せるのは、これぐらいのペースまでだと思っています。これ以上のスピードで情報が送られてきても、スルーしてしまうものがほとんどになるでしょう。そうなると、本当に必要な情報を見逃してしまいかねません。「修理中」という話にまんまとだまされた形の防衛省や政府なども、本当に確かな情報が多くのノイズに埋もれてしまって見出せなくなっていたのかもしれません。
 北朝鮮がアホなことをしないことを祈りつつ、そんなようなことを考えました。

  • 2012年12月12日(水)17時48分

大谷選手の入団

12月11日(火)
 今年のプロ野球ドラフト会議の目玉、岩手県花巻東高校の大谷選手が、日本ハム入りを決めました。ドラフト会議の頃は絶対にアメリカの大リーグに行くと言っていましたが、日本ハムの説得が功を奏して、日本のプロ野球でプレーすることになりました。
 日本ハムは、ただ情熱だけを示したのではありません。韓国の高校から直接大リーグ入りした選手たちが、思ったような活躍ができていないことをデータで示したそうです。客観的なデータから冷静に判断して、日本ハムに入ったほうが自分の野球人生を充実したものにできると考えて、入団する決心をしたのです。
 ここで考えなければならないことは、大谷選手の第一希望である直接の大リーグ入りが必ずしもベストの結果つながらないという事実です。本人の第一希望を優先させるというと素晴らしいことに聞こえますが、周囲が大人の判断をして真に本人のためになる道を示すことこそ、私たち学生のそばに立っている者たちの責任だと、改めて教えられました。こういう進路指導をしていきたいと思いました。
 学生たちがやたらと高いレベルの大学に進学したいと言ってきたとき、「難しいよ」とは言いますが、最終的には「本人の希望だから」という美名の下、落ちるとわかっていて受けさせてしまいます。その学生が落ちても、教師は当然と思って流してしまいがちですが、本人は「夢」と思っていながらも、多かれ少なかれショックを受けていることでしょう。また、玉砕覚悟とはいえ、受験するためにはそれなりに準備をします。その準備の時間を受かる可能性のある大学のために使ったら、可能性がもっと高まるとも考えられます。
 もちろん、ただ闇雲に「君の実力では無理だ」というだけでは、学生は納得しません。日本ハムが大谷選手にしたように、客観的なデータを示し、学生本人が心から進路を考え直すべきだと感じさせることが必要です。これからの進路指導について考えさせられることの多い、大谷選手の日本ハムへの入団発表でした。

  • 2012年12月11日(火)17時48分

これからの出願

12月10日(月)
 F大学への出願を進めているYさんが、授業が始まる前の朝一番にやって来て、F大学の特色を聞いてきました。F大学は留学生に非常に人気があり、毎年かなりの競争率になります。日本人にとってもレベルの高い大学ですが、留学生にとっては日本人が感じる以上に難しい大学ではないかと思います。それゆえ、志望理由書や面接などで少しでも他の学生に差をつけたいところです。
 Yさんはしっかりした学生なので、F大学のホームページぐらいは既に目を通しているはずです。ですから、そこに書いてあるようなことではYさんの質問への答えにはなりません。こういう時は、年寄りの利点を存分に発揮し、どんな歴史を持った大学なのか、一般の日本人の目にはどう映っているのかというあたりを教えます。それをそのまま志望理由書に書かれたんじゃあんまり意味がありませんが、Yさんなりに咀嚼して、Yさん自身の理解の上に書いたり話したりすれば、他の受験生とは一味違った答えになるでしょう。
 授業後は、先週末のC大学の入試に自信が持てなかったGさんが、今後の出願についての相談に来ました。U大学の願書を持ってきましたが、最初に出願したいと言った学部は、私が見る限りGさんには合わない学部でした。C大学がダメだったらどうしようという焦りの気持ちが強すぎると、じっくり考えずに、極端なことを言えば最初に目についた学部・学科にしちゃえっていうこともあり得ます。相談に来たということは多少は迷いの気持ちがあるということですから、いろいろなデータを示してGさんの考えを、同じ大学の違う学部へとちょっとだけ変えました。
 これからは、チャレンジとか失敗とかが許されない出願が増えてきます。自由度が狭まる分、教師の力量が試されることになります。

  • 2012年12月10日(月)16時22分

叱られて

12月7日(金)
 Sさんが電話で叱られています。進学したいのにもかかわらず学校へ来ないだけでなく、出願が迫って自力ではどうしようもなくなった時にだけ学校へ来て先生を頼ろうとするからです。
 KCPが日本での進学を表看板にしている以上、私たちKCP教職員は学生たちに最大限の援助をする義務があります。しかし、満足に出席しない学生にまで分け隔てなくサービスすることは、頑張って出席している学生に対して不公平になるでしょう。少なくとも、たまに学校へ来た学生の進学相談のために毎日学校へ来ている学生にしわ寄せがいくのは、理不尽な話だと思います。
 そうは言っても、最後に頼りにされることは名誉なことだとも思います。頼りにされて必死になってそれに応えている時には、教師冥利を感じることもあります。ですから、Sさんのような不届きな学生にも、最後には“愛の手”を差し伸べてしまものです。ただ、こうすることが学生本人にとって本当に幸せなことかは疑問です。私たちがそういう形で甘やかすことが、本人の人間的成長を妨げている恐れもあります。若いうちに小さな失敗をして自分自身を矯め直せば、大人になってから大きな失敗はしないものです。
 Sさんが今後どうなるかはわかりません。ずるずるべったんのまま卒業していくのかもしれませんし、今日叱られたことで心を入れ直すのかもしれません。ずるずるべったんだったとしても、いつかKCPで厳しく叱られたことを思い出してもらいたいです。

  • 2012年12月07日(金)20時18分

計算問題

12月6日(木)
 初級の理科系クラスで数学の計算問題をしました。ウォーミングアップとして、7の3乗は? と聞くと、全員真面目に筆算で49×7と計算します。そうしてしまうと、計算に時間がかかります。入学試験では、短い時間で答えを導き出すことが求められますから、これではいけません。ところが、49×7=(50-1)×7=350ー7=343とすると、暗算でたちどころに答えが出せます。こういうテクニックを知っているかどうかが運命の分かれ目になることだってあり得ます。
 「だから、楽にできる方法を見つけて計算問題をしてください」と言って問題を配ったのですが、学生たちは一番難しい道を選んでしまいました。逃げも隠れもせず正々堂々と正面から問題に取り組む姿は敢闘精神にあふれていますが、残念ながら美しき敢闘精神が必ずしも合格に接結びつくとは限りません。ずるさというか、ちょっとした工夫というか、猪突猛進してくる問題をいなしたりかわしたりすることを考えると、時間短縮もできるし、ミスも減らせます。
 また、こういう考え方をすることは、問題を違う角度からとらえる訓練にもなります。これは、新たな発想で問題の解決方法を見つけることにもつながり、理系の研究には不可欠な要素です。発想の転換ができる人が、大きな仕事を成し遂げることが多いのです。もちろん、真正面から問題に取り組むことを否定はしません。それは正道ではありますが、最善の道とは限りません。
 次の学期ぐらいにはこういう考えを浸透させ、学生たちを飛躍させていきたいです。

  • 2012年12月06日(木)19時04分

納得できる答案

12月5日(水)
 衆議院選挙が始まっていますが、最近選挙のたびに問題となるのが、政党や候補者のインターネットによる意見表明です。「選挙運動期間中は決められた文書以外は配布してはいけない」という公職選挙法の規定に触れるので、インターネットによる選挙運動はしてはいけないというのが、総務省など選挙を管理する役所の見解です。公職選挙法そのものが時代遅れだという声が強いのですが、今回もまた従前のとおりの選挙運動が行われています。
 政党や候補者がインターネットを通して政策などを広く知らせてはいけないというのは、どう考えても前近代的です。このように、今日の日本が置かれた状況や世界情勢に合わない法律や規則や慣習がまだまだ山ほどあります。それが日本の閉塞状況を生み、停滞を余儀なくさせていることに気づいたからこそ、前回の総選挙で日本人は政権交代の道を選んだのです。しかし、閉塞状況が打破されることなく、むしろ息苦しさが増したというのがこの3年余りの日本ではないでしょうか。
 昨年の震災直後は、これは天からの警告だとする議論が目立ちました。それがいつしか、「日本人がは健気に頑張っている姿を世界に示そう」という論調に変わっていきました。確かに健気に頑張りましたが、天からの警告に対しては何も応えていないのではないかと思います。復旧するだけは復興になりません。新しい日本の形を作って初めて、成長とか発展とかという、バブル崩壊後とんと縁のなくなったものにつながるのです。
 どの政党や候補者が明るい日本を築き国民に幸せをもたらすのか、まだ私なりの答えにたどり着いていません。熟考を重ねて、11日後には納得のいく答案を書くつもりです。

  • 2012年12月05日(水)17時47分

真の国際交流

12月4日(火)
 衆議院選挙が公示されました。学校の前のポスター掲示板には、東京1区の候補者6名のポスターが貼られています。ポスターの顔はみんなやる気満々で日本をよくしてくれそうですが、本当に日本を上向きにしてくれる人を選ぶ責任が私たちに課されています。
 学生たちは、来日した時には予想もしていなかった都知事選と衆議院選挙が繰り広げられることになり、興味津々のようです。今日は、都知事選も含めて初めて選挙カーが学校の前の道を通りました。みんな争って窓に顔をつけて、選挙カーを見ていました。テレビでも有名な党首の顔が車に描かれていたので、その顔を知っている学生が解説したりしていました。文法の授業をしていましたが、ちょっとの間中断して選挙の話をしました。これも今の日本を知る生きた教材ですからね、大いに利用させていただきます。
 日本人の方も政治に無関心とか言われながらも、選挙モードに入りつつあるようです。Cさんはアルバイト先で日本人のお客さんから領土問題について意見を求められました。関心ありませんと言ってその場を逃れたそうですが、酔客に絡まれてトラブルになるよりはずっと賢明な選択です。これから選挙戦が熱を帯びてくるに従い、こうしたことが増えてくることでしょう。
 日本人の方には、論戦を挑むならシラフの状態で、また、一方的に自分の意見を述べ立てて学生たちを屈服させようとするのではなく、学生たちの国の言い分にも耳を傾けてもらいたいです。日本人がそういう態度を取れば、学生たちも本音を語りやすくなるでしょうし、そこに真の意味での国際交流が開かれると思います。

  • 2012年12月04日(火)17時52分

トンネル事故

12月3日(月)
 昨日、中央高速の笹子トンネルで天井が落下して9名の方が亡くなるという事故が起きました。笹子トンネルは通る予定にはなかったとはいえ、ちょうど10日前にバス旅行でそのちょっと手前まで行っていましたから、他人事とは思えない事故です。
 日本は地形的に険しい国です。その険しい地形を克服しなければなりませんでしたから、トンネル掘削技術が非常に進化しました。そのため、笹子トンネル程度の、あるいはそれを上回る長大トンネルが至る所にあります。長大トンネルは技術が自然に打ち勝った象徴とも言えます。
 しかし、穴を掘ればトンネルは完成というわけにはいきません。付帯設備が必要となります。今のところ、トンネル内に設けられた換気装置の老朽化が事故の原因だとされていますが、この換気装置も自動車トンネルには不可欠なものです。最近のトンネルはこの笹子トンネルとは違ったタイプの排気装置なので、こういう事故は起きにくいそうです。
 ここで今一度考えてみなければならないのは、自動車はガソリンや軽油という可燃物を積み、排気ガスを出す乗り物だということです。こういう乗り物は、そもそも長大トンネルには不向きなのです。鉄道の場合、長大トンネルを通る線はすべて電化されていて、可燃物もなく排気ガスも発生しません。自動車が排気装置をつけた長大トンネルを通るのは、ひとえに我々の贅沢な欲求を満たすためです。遠くで採れた産物を身近な店で手に入れるため、プライバシーを守りつつ家から目的地まで移動するため、我々がそういう豊かな生活が送れるように長大トンネルは掘られているのです。
 私もその恩恵に浴していますから、長大トンネルの存在を否定しようとは思いません。高速道路が日本の発展に寄与してきたことも疑いありません。ただ、そこにはかなりの無理がある、別の手段があるならそれを積極的に考えるという姿勢は忘れてはいけません。亡くなった9名の方々は、私たちの贅沢の犠牲者だというのは、考えすぎでしょうか。

  • 2012年12月03日(月)17時58分

カメ

11月30日(金)
 昨日告示された都知事選、現在の校舎は幹線道路に面しているため、選挙カーがしょっちゅう来てうるさいのではないかと危惧していましたが、今のところいつもと変わりありません。上級なら、選挙カーが来たら来たでそれをネタに授業を展開していけますが、初級は学生の気が散るだけになりかねません。4日に衆院選が公示されると、都知事選より狭い範囲での戦いになりますから、結構にぎやかになるんでしょうね。
 選挙カーに惑わされることなく授業が終わって教室で学生の面接をしていたら、Oさんが入ってきました。「先生、K大学に合格しました」と報告してくれました。面接していた学生はこれから受験なので、うらやましそうな顔をしていました。
 資料を見るため学生を引き連れて職員室へと階段を下りていると、Lさんが駆け上がってきました。「先生、N大学に合格しました」と言いながら、スマートホンの画面を見せてくれました。そこにはN大学の合格通知が写っていました。
 OさんもLさんも、面接練習の時はどうなることかと心配した学生です。それどころか、ダメでもしょうがないなと思っていました。2人に共通していることは、目立たないけどきちんと努力をしてきたことです。鋭さはありませんが、目標に向かって歩み続けられるところに2人の良さがあると思います。ウサギとカメで言えば、典型的なカメです。2人を知っているすべての先生が心から「おめでとう」と祝福しました。
 Lさんは、合格に浮かれることなく、今日も日課の職員室での勉強を続けています。それに比べてSさんは、昨夜は友達と合格祝いで、今日は欠席でした。こんなやつの合格は取り消してやりたいです。
 今日で11月が終わり、ひと月後は大晦日、そしてお正月です。まあ、受験生にはお正月はありませんが…。

  • 2012年11月30日(金)18時33分

元素名と数学の問題文

11月29日(木)
 来春進学を目指す学生たちの受験講座は英語を除いて終わりましたが、2014年春の進学を目指す学生たちへの受験講座を少しずつ始めました。
 初級の理系の学生たちは、バス旅行の前に元素名の各国語対応表を配り、元素の日本語名を覚えてくることが宿題でした。今日は元素記号を見て日本語名を書くテストをしました。私の授業は日本語で行いますし、日本人の高校生向けのテキストや問題集を使いますから、化学の場合、元素の日本語名がわからなかったら何もわかりません。今から訓練しておけば、1月から本格的に始まる受験講座の理解度が深まるでしょう。
 それから今日は、ある大学の数学の入試問題を解いてもらいました。国の言葉で書かれていれば絶対に解ける問題です。でも、学生たちは悪戦苦闘でした。「公式を忘れました」と言い訳をしていた学生もいましたが、キミができなかったのは日本語力のなさが原因だよ。その証拠に、学生たちにもわかるやさしい日本語で問題文の意味を説明したら、たちまち正解が出てきました。
 日本の大学に入るには、日本語で書かれた入試問題を解かねばなりません。理系の場合、各大学独自で数学や理科の試験を行うケースも多いですから、その問題文の意味するところを正確に読み取る力が必須です。今日の学生たちには、まだそれだけの力はありません。これから鍛えていって、遅くも6月のEJUまでにはしかるべき実力をつけさせます。
 来年の今頃は今日の学生たちも受験の真っ盛りでしょう。願わくは、どこかの大学に合格していてもらいたいです。

  • 2012年11月29日(木)19時42分

出藍の誉れ

11月28日(水)
 今日の授業で、ひょんなことから「出藍の誉れ」について話をすることになってしまいました。数学やサッカーや絵などを教える先生は、教え子が先生自身を上回る実力や技能・技術を身に付けることもよくありますが、外国人に日本語を教える日本人の先生の場合、自分自身の日本語力を上回る教え子を持つことは絶無といってもいい――という内容でした。日本語に限らず、ある言語を外国語として勉強した場合、その言葉を母語として身につけた人を上回ることはないということは、第二言語習得の理論として広く認められています。つまり、語学教師は「出藍の誉れ」を得ることはないということです。
 教え子が自分を上回る実力をつけたら、悔しい反面、きっと、それ以上に深い喜びを感じることでしょう。そして、それを自分の誇りとも誉とも思うことでしょう。「でしょう」というのは、私はそういう経験がありませんから、想像で言うしかないからです。私もぜひ味わってみたいです。
 私の受け持った学生が日本語力で私の上を行くことは今後もないでしょうが、例えばその学生が母国の大統領にでもなったら、そういう心持ちのいくらかは感じることができるでしょう。そして、その元教え子の大統領が、日本語が流暢で日本通だなんていったら、最高にうれしいと思います。
 KCPで種をまき続けて10年ちょっとになりますが、まだそんな喜びを感じたことがありません。時々卒業生が学校に顔を出してくれますが、「頑張ってるな」と思うことはあるものの、うれしい敗北感には至りません。もう10年頑張ったら、一番上の教え子が50代になり、そんな教え子が出てくるんじゃないかと期待しています。要は、「あいつは俺が教えたんだぜ」って自慢したいだけなのかもしれませんがね。

  • 2012年11月28日(水)18時47分

クラスの面接

11月27日(火)
 今学期はバス旅行が入ってしまったため遅れていましたが、今週から中間テストの結果をもとにした面接が始まっています。今日のクラスでは、2名の学生の面接をしました。
 Sさんは進路がはっきりしていませんでした。今日、話を聞いたところによると、専門学校に進学することに決めたようです。そこで英語の力をつけ、大学院を目指すのだそうです。でも、正直に言って、Sさんは勉強より日本の生活を楽しんでいるように見えます。本当に大学院が目標なら、1年前から英語の勉強をコツコツと始めていたことでしょう。初級の頃から進路に関しては周りからうるさく言われ続けてきたはずです。でも、私の目には必死に勉強しているようには見えませんでした。私たちは教室に閉じ込めてでも勉強させなければならなかったのでしょうか。
 もう1人はLさん。今学期の新入生です。新入生にクラスや学校、教師のことを聞くのはちょっと恐怖です。かなり辛辣な答えが返ってくることもあるからです。でも、それが改善の礎になるのですから、どんなに耳が痛くても聞かなければなりません。おっかなびっくりLさんに聞いてみると、特に不満な点はないと言います。額面通りなら喜んでいいことなのですが、改善の余地なしと見捨てられていたとしたら、由々しきことです。バス旅行の時も楽しそうにしていたといいますし、授業中は要点をきちんとメモしているし、素直に受け取っておきましょう。
 今日は、本当はもう1人面接する予定でした。そのJさんは欠席でした。JさんもSさん以上に進路について聞かなければならない学生です。やはり、だいぶ前から進路についてせっついてきたのですが、なかなか煮えきりませんでした。今日も進路の話から逃げたおそれがあり、不安が募ります。自分の人生を左右する決断をすべき時にこんな態度では、将来に禍根を残しかねません。遅まきながらも自分の将来をきちんと考えて自分なりの結論を出したSさんに比べて、1周も2周も置いていかれてしまいました。
 今日はLさんの言葉に胸をなでおろし、Sさんの決断に不安を覚えながらも拍手をし、姿を現さなかったJさんに非常警報を鳴らしました。進路指導も終盤戦を迎えつつあります。

  • 2012年11月27日(火)18時12分

みんなGさんのように

11月26日(月)
 今日は天気予報では18度まで気温が上がると言っていたのに、大ハズレでした。日中は10度にもならず、学生も教師も震えていました。ついに、今シーズン初めて、職員室の暖房を入れました。
 そんな中で、喜ばしい知らせはGさん。第一志望のK大学に受かりました。英語のエッセイを提出し、英語の面接をこなしての合格です。エッセイと面接の面倒を見てくださったT先生に涙ながらに報告の電話を入れたそうです。最初は別の大学に行くつもりだったのですが、夏のオープンキャンパスに行って俄然K大学に入りたくなり、必死に努力した結果が実ったのです。合格したこともそうですが、それ以上に、Gさんが誰にも言われず自分からお世話になったT先生に合格を報告したことをうれしく思いました。お世話になった先生方には必ず受験結果を報告することと、口を酸っぱくして言い続けているのですが、なかなか実行できていません。それをきちんてくれたGさんは、人間的にも大きく成長したと思います。
 残念なのはCさん。N大学に受かって以来、完全に気が緩んでしまって、半分も学校へ来ていないとか。そのくせ、バス旅行はしっかり参加していました。たまたま(?)来た今日は担任のU先生に捕まり、授業後かなり長い時間、説教されていました。しかし、説教を受けている間もニヤニヤしていましたから、明日以降、果たして気を入れ換えてくれるかどうか、疑わしいところです。
 バス旅行後の先週末は各大学で入試がありました。多くの学生が挑んでいますが、みんなGさんのように朗報をもたらし、きちんと挨拶してくれれば言うことはありません。そうしてくれれば、外は寒くても、心は暖かくなります。

  • 2012年11月26日(月)19時42分

戦慄迷宮+レッドタワー

11月22日(木)
 朝刊がビニールの袋に入っていましたから、東京は夜中のうちに雨が降ったようです。しかし、バスが出発する頃は曇り空から時折日が差すというお天気でした。上り車線の渋滞を横目に順調に走り続けていくと、富士山が見え始めました。頂上は雲がかかっていましたが、八合目ぐらいから裾野にかけてはきれいなラインを描いていました。
 毎回、富士急ハイランドに着くやいなや学生たちはダッシュして絶叫コースターなどに並び、私は置いてけぼりを食うのが常でしたが、今日は絶叫マシンがダメだというOさんに誘われて、戦慄迷宮に入ることになりました。今までは9月に行っていたためか、戦慄迷宮は3時間待ちとかいう表示が出ていて、並ぶ前からあきらめねばなりませんでした。今日は、1時間半待ちぐらいで何とかなりそうだということで、並びました。
 私としては、1時間半も並ぶのは気が進まなかったのですが、学生たちがはしゃいでいるのに合わせていると、結構時間が早く過ぎました。思ったよりもずっと短く感じました。もっとも、1時間半待ちのうちの1時間分以上はKCPの学生が並んでいる分ですから、違うグループの学生たちともあれこれ話しているうちに時間が流れていったという面もあります。入場待ちの人が並ぶところに戦慄迷宮内の注意の映像がエンドレスで流され、不気味な雰囲気をあおっていました。私は、「いざとなったらおっぱなして逃げるかなな」などとOさんをさんざん脅して、別の面から盛り上げました。
 さて、中に入ると、薄暗い部屋で重々しい口調で注意事項が繰り返され、戦慄迷宮の想定が伝えられます。怖がりの人はこの時点でかなりのプレッシャーがかかるでしょう。そして、数人ずつのグループに分かれて、迷宮内へ。私を誘ったOさんは、前を見ようとしません。一緒に入ったHさんやCさんにしがみついています。私を頼ると、1人で取り残されると思ったのでしょうね。中がどんなだっかはネタばらしになりますので控えておきます。みなさん、実際に入ってご自分の目で見てみてください。
 無事、迷宮を抜け出すと、直前のグループのTさんたちがいました。Tさんはあまりの怖さに走り出し、途中で転んで足をひねってしまったとか。見ると、10センチぐらいのヒールのあるブーツですから、走るのには適していなかったのでしょう。
 その後、Mさんと一緒にレッドタワーに。フリーフォールの時、椅子から腰が浮き上がりました。その感覚がなんとも言えず新鮮でした。高いところから落ちるとはこういう感じなのかと思うと同時に、ある実験をしたくなりました。理系人間だったら誰でもやってみたくなることです。でも、それは富士急の搭乗規則違反ですから、たぶん不可能でしょう。
 帰りのバスからは、ほんの一瞬でしたが富士山が頂上まで姿を現し、みんな一斉にシャッターを押しました。新宿近くで渋滞に巻き込まれて30分ほど遅れての到着でしたが、心地よい疲れの残る1日でした。

  • 2012年11月26日(月)08時11分

雨が降るの?

11月21日(水)
 昨日までは22日は晴れ時々曇りぐらいの予報だったのですが、今朝になって急に雨マークが出てきました。このため、明日のバス旅行はどうなるのかと学校中が大騒ぎ。でも、日中は天気が良さそうなので、予定通り決行します。
 天気予報の的中確率は、前日の予報が当たる確率です。前日の予報が前々日の予報から大きく変わっても、前日の予報が当たれば「当たり」と判定されます。1週間前から「晴れ」と言い続けてきたのに、前日急に「雨」と言い出すなんて反則技のような気がしますが、「雨」とわかっていても「晴れ」と予報を出すのは、やはり間違っています。本当に雨が降ったら予報は大外れで、迷惑を被る人も多数出てきます。我々一般庶民を納得させるには、週間天気予報が当たる確率を上げるしかありません。
 天気予報が当たる確率は85%程度です。でも、東京の場合、年間で雨が降る日が100日ぐらいですから、「明日は雨は降らない」と言えば(365-100)/365=73%ぐらいの確率で当たります。つまり、科学的な天気予報と機械的に「雨は降らない」と言うのとの差が10ポイントぐらいだというわけでう。この10ポイントを大きいと感じるか、小さいと感じるかです。
 「雨は降らない」で70%以上も当たってしまうということは、逆に考えると、雨が降るという予報がどれだけ当たるかが、天気予報の価値を決めるとも考えられます。雨の日を正確に言い当てるのは、かなりの情報と技術が必要です。また、単に「雨が降る」という定性的な予報ではなく、「何ミリ(くらい)の雨が降る」という定量的な予報には、さらに大規模な観測網を要します。こういうことを予測してこそ、気象庁や気象サービス会社の意義があるというものです。
 いずれにしても、明日の日中はお天気に恵まれたいですね。

  • 2012年11月21日(水)19時01分

お父様がいらっしゃいました

11月20日(火)
 午前の授業後、学生から集めた例文をチェックしていると、Zさんが私を呼んでいます。何かと思って話を聞くと、Zさんのお父様が出張で日本にいらしていて、子供を預けているKCPに是非ご挨拶をしたいということです。突然の話だったので戸惑いましたが、学生対応が終わる頃の時間を指示し、その時間だったらお会いできると伝えてもらいました。
 その後、Lさんの面接練習、Hさんの志望理由書の添削をし、約束の時間を迎えると、ZさんとZさんにそっくりのお父様がやってきました。現担任のK先生や入学以来Zさんの面倒を見てきたH先生と一緒に、お父様の話を聞きました。
 お父様は国で大学の先生をなさっているだけあって、教育に関しては冷静で厳しい目をお持ちでした。ご自分の子供に対しても、何か不都合なことをしでかしたらすぐ連絡してくれとおっしゃっていました。
 Zさんはこのような親御さんのもとで厳しく育てられたはずなのですが、それでも今までに時々ハメを外しています。今日は、今までのことは何も言いませんでしたが、今後はお父様のお言葉に甘えて、学生らしからぬことをしたら遠慮なくお知らせすることにしましょう。
 日本語学校も含めて、学校での教育は親御さんたちとの共同作業だと思います。両者が力を合わせないと抜け穴だらけの教育となり、効果は非常に薄いでしょう。日本語学校の場合、親御さんにすれば子供が遠くへ行ってしまい、「共同作業」とか言われてもピンと来ないかもしれません。でも、学校側からの働きかけではいかんともしがたいケースも散見されることも確かです。そういう時に、ガツンと言ってくれる親御さんがいるとありがたいですし、そういう時に厳しく我が子を導いてこそ、親の存在価値があるというものです。
 Zさんのお父様は、満足そうなお顔で帰られました。お父様から預かったZさんをしっかり育てなければという責任を感じました。

  • 2012年11月20日(火)20時12分

寒い寒い

11月19日(月)
 週末に木枯らし1号が吹き、昨日は札幌や旭川で初雪が降ったそうです。北海道はまだ雪が降っていなかったのかという感じですが、日が当たってもあまり暖かさを感じなかった昨日あたりは、冬の到来を感じさせられました。
 今日は、最高気温も10度に届かず、一挙に真冬になったかのようでした。日が当たらないと、空気そのものが冷たくなっているため、本当に寒いのです。風邪をひいている学生が多く、欠席も多ければ出ている学生もマスク姿が目立つという悲惨な状況が続いています。
 OさんとCさんは明日面接です。2人とも咳をして鼻水をすすっているのが気がかりです。そして、風邪気味の状態がだいぶ続いているというところも不安要因です。でも、今晩寝たら急に良くなるなどということはなく、体調不十分なりに最善を尽くしてくれることを祈るばかりです。
 週末にこの2人の面接練習をしました。大学で何を勉強し、それを卒業後にどう活かしていくかという、面接の中核になる質問への答えがまだ固まっていませんでした。ゲホゲホ言いながら欠席届を出した2人の明日が心配です。
 学生たち、風邪はひいていますが、今週木曜日のバス旅行はみんな楽しみにしています。富士急ハイランドは東京よりだいぶ気温が低そうですが、翌週の出席がボロボロになるなんていうことはないでしょうね。私は昨日、暖かいと評判のGパンを買い、着々と準備を進めています。お天気は何とかなりそうですから、あとは寒さがどのくらいかが問題です。人気アトラクションに並ぶのなら、カイロを5つぐらい貼り付けるぐらいの根性じゃないとね。

  • 2012年11月19日(月)18時57分
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