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KCP校長ブログ

  KCP地球市民日本語学校校長・金原宏のブログです。

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連合艦隊

6月25日(水)
 日本の夏が終わってしまいました――といったら高校野球のファンに怒られてしまうかもしれませんが、朝の7時には1-4で試合が終わり、ワールドカップ1次リーグでの敗退が決まりました。朝の電車がいつもよりすいていたように思えたのも、乗っていた人たちもモバイル機器に見入っていた人が多かったのも、みんなこの試合を見ていたのでしょう。ベスト8ぐらいまで行けるんじゃないかと言われていただけに、落胆した人も多かったことと思います。まあ、勝てる試合を2つ落とした(ギリシア戦の引き分けは負けに等しい)のですから、敗退は当然の結末です。
 負けた2つの試合は、どちらも後半に一気に差をつけられました。前半の善戦が日本の精一杯の力であり、後半に切り札の選手を投入して本領を発揮した両国には及びませんでした。ヨーロッパ組中心で初出場のころに比べれば代表選手の実力は上がっているはずですが、いざというときに瞬発力を発揮して流れを引き寄せてくれる選手は育っていないようです。
 歯車が狂った日露戦争のような気がしてきました。日露戦争は、秋山真之の瞬発力がみごとに生かされて、1セットしかない連合艦隊がバルチック艦隊を完膚なきまでに撃退しました。また、203高地においては児玉源太郎の瞬発力が勝利を手繰り寄せました。今大会の日本チームには秋山や児玉がいなかったのです。
 長友、本田、岡崎という連合艦隊で乾坤一擲の勝負をかけたのですが、バルチック艦隊にきわどくかわされて勝利を逃したという感じがします。そこにもう一枚持ち駒があってバシッと王手飛車取りかなんかかけられたら、きっと勝てたと思います。
 冒頭に「夏が終わってしまいました」なんて書きましたが、一月半ぐらいして高校野球の季節になったら、ワールドカップなんかすっかり忘れて、また熱くなるんでしょうね。

  • 2014年06月25日(水)19時39分

悪しきDNA

6月24日(火)
 朝刊の1面を飾ったのは、男性都議が女性都議に頭を下げている写真でした。それも、軽くではなく体を90度に折っています。先週、この男性都議が女性都議の質問中に飛ばした野次についての謝罪です。男性都議にとっては屈辱的な写真でしょうが、女性都議に対してそれに相当する侮辱を与えたのですから、当然です。
 全国紙は東京版の紙面だけではなく、関西版や九州版でも写真を載せているところがありました。それどころか、学校でとっている英字新聞は日本語の新聞より大きな写真で取り上げていましたから、世界中に勇名を馳せてしまいました。
 男性都議の野次の内容は論外で、それについてはここで論じる気も起きません。私が気になるのは、彼が51歳・自民党所属だということです。国会・地方議会を問わず自民党議員が前近代的な発想に基づく無神経な発言をしたことは、今に始まったことではありません。若いころは、頭が古い親の世代の議員だから問題発言をしたのだろうと思っていました。社会に出てからは、もう少しして我々の世代が社会の中心になったら問題発言もなくなるだろうと思っていました。
 しかし、この男性都議はまさに我々の世代です。彼は自民党の悪しきDNAをがっちり受け継いでしまっています。望むらくはそのDNAを彼で打ち止めにしてもらいたいです。私は戦後の日本の発展における自民党の貢献を否定しません。自民党なくして現在の日本は存在しえません。しかし、同時に自民党は前近代的発想の温存にも手を貸してきました。旧態依然たる考えやしくみが批判にさらされつつも生き延びているのは、自民党がそれを保護しているからです。私たちの世代までもが若い世代の足を引っ張るようなことをしているのかと思うと、私自身までとても老いぼれてしまったような気がしてきます。
 男性都議は辞任するつもりはないようです。自民党の将来も、その党を国政の与党とする日本の将来も、明るくはないような気がします…。

  • 2014年06月24日(火)16時55分

お墓とは

6月23日(月)
 週末は法事がありました。といっても、ごく近しい人間が集まって墓前で手を合わせただけですが。
 さて、その墓ですが、私のところは合祀墓です。以前は父の生まれ故郷である浜松の近くのお寺に「金原家之墓」なるものがありましたが、そこから東京の合祀墓に移したのです。浜松だとそう簡単にはいけませんが、東京都内ならこうして法事も簡単にできるのです。
 墓は、亡くなった人のためにあるのではありません。残された人が亡くなった人を偲ぶためにあるのです。だから、墓は生きている人の都合に合わせてしかるべきなのです。私のような不信心の者は、お墓が浜松などという遠いところにあったら、親の法事でもすっ飛ばしかねません。もちろん、故人に縁もゆかりもない場所に移したのではありません。生前父が活躍していたところに近いお寺がそういう合祀墓を営んでいたので、そこにしました。
 最近、海などに散骨する人が増えてきましたが、案外困っているのが、残された人たちがどこでどうやって手を合わせればいいかということなのだそうです。海に向かって手を合わせても漠然としていますし、故人の遺志だからといって立山連峰あたりに散骨してしまったら、おいそれと散骨した場所まで行けやしません。そういうことにならないように別の手立てを考えているのでしょうが、そういう点から考えると、お墓って便利なものです。
 原発事故でお墓の近くまで行けない人たちの気持ちはいかばかりかと思います。それを「最後は金目でしょ」と言いきってしまった大臣は、軽率のそしりをまぬかれません。また福島まで行って頭を下げたそうですが、傷つけられた心は元には戻りません。この大臣は裕福な家庭に育っていますから、金さえあればって思っちゃったんでしょうかね。

  • 2014年06月23日(月)14時32分

消しゴムが落ちました

6月20日(金)
 期末テストの監督をしていると、Cさんが手を挙げました。Cさんのところへ行くと、テスト中ですからささやくような声で、「消しゴムが落ちましたけど、(前の席の)Tさんのかばんの下に入ってしまいました」と。大いに引っかかるものを感じながらも、むやみに声を出すこともできず、黙って拾ってあげました。
 このクラスは読解の教材で、日本語では物を落としたことを注意するとき「落ちましたよ」と言うっていう内容のエッセイを扱っています。ちょうどそのエッセイに関する問題のときでしたから、Cさんは「消しゴムが落ちました」と言ったのかもしれません。でも、これは変です。
 そのエッセイは、「物が落ちました」という表現には「落とした」人の不注意をとがめない優しさがあると述べています。でも、これは他人が何かを落としたときであり、自分が消しゴムを落としたら、しかもその消しゴムを拾ってもらおうと思っているのなら、「消しゴムを落としてしまったんですけど……」と言わなきゃ。自分が落としたことを明示し、助けてもらうというスタンスをはっきりさせないと、他人事のように聞こえてきてしまいます。
 こういうのを日本語の難しさというふうに後ろ向きにとらえるのではなく、奥の深さというように挑戦すべき目標って受け取ってもらえるとありがたいんですけどね。中級のCさんが「落ちました」「落としました」を自然に使い分けられるようになったとき、本当の意味で上級話者なんですがね。

  • 2014年06月20日(金)18時08分

漢字も壁?

6月19日(木)
 受験講座の理科系の科目を取っている中国のSさんとじっくり話をする時間がありました。現在、中級のSさんは自分の日本語力で自分の志望校に手が届くだろうかと悩んでいます。焦りを感じていると言ってもいいでしょう。Sさんは今年入学の2年コースの学生ですから、来年度もKCPで勉強する権利はあります。しかし、少しでも早く大学で専門の勉強を始めたいので、なんとか今年度の入試で勝負をつけたいと思っています。
 日本語力のほうは、レベルジャンプして10月期に何とか超級レベルに入ろうと考えています。今のレベルと超級レベルとではかなりの差があります。これを埋めるのは容易なことではありません。次のレベルの勉強をしつつ、その上のレベルの勉強も並行して取り組まねばなりません。ジャンプの際に何が問われるかを教えてあげたら、盛んに感心していました。
 もうひとつ、理系科目もネックになっているといいます。受験講座を通して、Sさんは理系のセンスがあると思っていただけに、意外な感じがしました。Sさんが言うには、日本語と中国語での理系用語の違いに悩んでいるそうです。カタカナ語はともかく、漢字で書き表す用語は理解できるだろうと思っていましたが、なれるのに思ったより時間がかかっているとのことです。Sさんからいくつか例を挙げてもらいましたが、確かにそんなに違っていたら困るだろうなと思いました。漢字なら何とかなるだろうと、教わるSさんも教えるこちらも漠然とそう信じてきましたが、見通しが甘かったようです。
 Sさんに教えられた例を私の手持ちの辞書で調べてみてもネットで調べてみても、翻訳されません。何年か前に理科の教科書に出てきた言葉を片っ端から中国語や韓国語に訳してみましたが、その“労作”も無駄だったかもしれません。思わぬところから宿題を突きつけられました。

  • 2014年06月19日(木)19時26分

テレビ観戦

6月18日(水)
 先週末、サッカー部のOさんが私のところへやってきました。「先生、来週の水曜日の朝、2階のラウンジでワールドカップを見せてもらえませんか。韓国の試合があるんです。もし、2階で見られなかったら、18日は午前の授業は韓国人みんな欠席しちゃいますよ」。半分脅されたみたいですが、みんなでテレビを見て盛り上がるというのも、ラウンジに大画面のテレビを設置した理由の1つですから、いつもより1時間半ほど早くラウンジを開けることにしました。7時試合開始で、授業が始まる少し前に試合が終わりますから、試合時間的にも絶好なのです。
さて、6時半にラウンジの鍵を開け、エアコンを入れて受け入れ態勢を固めましたが、言いだしっぺのOさんも含めて学生は現れません。6時40分にテレビ中継が始まってまもなく、Cさんが一番のりで到着。7時直前にOさんもやってきて、テレビ観戦が始まりました。キックオフ時に集まったのは1ケタでした。寝坊大好きの学生には厳しい時間ですからね、数名でも上出来かも。
 私は仕事がありますから2階に居続けることができません。でも、上からは歓声とも悲鳴ともつかない絶叫が聞こえてきました。チラッとのぞきに行くと、右手におにぎりを持って固まったままテレビに釘付けになっている学生もいました。学生はだんだん増えていき、最終的には30人ぐらいに。顔ぶれを見ると、必ずしもお互い知り合いだとは思えない組み合わせでしたが、そこには明らかに連帯感が生まれていました。
 試合は引き分けで、Oさんたちにとっては消化不良のところがあったでしょう。でも、異国の地で母国のチームを応援するというのは、また格別の味がしたことだと思います。あさってが期末テストですから、こんなふうにみんなで自分の国を応援できるチャンスは、今大会ではもうありません。2年後のリオデジャネイロオリンピックまで待たないといけないのかな…。

  • 2014年06月18日(水)18時45分

蒸してきました

6月17日(火)
 週末から昨日まではいいお天気が続きましたが、今はもうすっかり雲が広がり、明日は雨の予報も出ています。梅雨ですから雨が降るのは当然とはいえ、蒸してくるのはいただけません。気温はそれほどでもありませんが、どの教室もエアコンが活躍しています。
 日本に比較的近いところから来た学生たちも、東京は蒸し暑いといいます。寝苦しさに耐えかねてエアコンをつけたまま寝て風邪を引く学生が目立つのも、この時期の特徴です。熱帯夜のはるか手前で寝苦しいなんて言っていたら、7月8月が思いやられます。冬は異常な乾燥で、夏は異常な蒸し暑さで、春と秋は気温の変動で体調を崩す学生が多くて困りますが、学生にとっては日本って本当に住みにくいところなんですね。
 私は外国の経験と言ったら旅行しかありませんから、自分の生まれ育った国と違う環境の国で暮らすということがどのくらい大変なのかは、実感としてはわかりません。人生の半分以上を東京都民として過ごしていますから、東京の気候がそんなに厳しいとも感じません。だから、「エアコンを消して寝ろ」「食べ物には気を使え」とかって注意しても、それが的外れなものになっているおそれもあります。
 でも、日本で生きていくには日本に合った体をつくっていくことが必要不可欠です。広い意味では夏の蒸し暑さも冬の乾燥も日本の文化です。また、毎年皆勤賞や精勤賞をもらう学生がいるということは、そういう体作りができないことはないはずです。はたで見ている限り、そういう学生がすごく特別なことをしていたとは思えません。健康維持が板についていて、表面からはわからなかったのでしょうか。
 6月のEJUは終わりましたが、受験勉強はこれからが本番です。6月いっぱいで帰国する学生も、期末テストまでは真剣勝負です。みんな、悪条件(?)に負けずにがんばれ。

  • 2014年06月17日(火)18時08分

次に向けて

6月16日(月)
 昨日はEJUでしたが、私のところへ来た情報によると、あまり手ごたえがなかった学生が多いようです。Sさん、Jさん、Yさんなどは、来学期は受験講座をやめて自分で勉強するつもりだったのが、昨日の試験で自分の弱点が浮き彫りになり、やっぱり続けたいとのことです。3人とも上級の学生ですから、それなり以上に自信を持って試験に臨んだのでしょうが、その自信が揺らいでしまったようです。
 彼らは知識は十分に持っていたと思います。しかし、その知識と知識を関連付けてある結論を導き出すというところに難点があったのではないかと思います。あるいは時間の壁に跳ね返されたのかもしれません。EJUは時間との戦いでもありますから。直接学生に聞いたわけではありませんが、6月のEJUではよく聞く話です。
 じゃあ11月のEJUに向けてどうすればいいのかというと、同じ問題を繰り返しやることだと思います。学生たちは、国籍を問わず、同じ問題をやることを嫌がります。問題を1回やると、答えあわせをして合っていてもいなくても、次の新しい問題をやろうとします。少なくとも間違えた問題はどこでなぜ間違えたのかを検証しないと、同じ間違いを繰り返すことになりかねません。正解だった問題も、どこが正解のポイントだったのかを確かめておけば、その正解への道筋が頭の中に固定化されます。それが知識の体系化につながり、応用問題に強い頭を作り上げるのです。
 私が受験生のころは、数学なんかは同じ問題集を3回やれって言われましたけどね。これは日本だけの話なんでしょうか、それとも今では日本でもこんなことは言わないのでしょうか。いずれにしても、ワールドカップに気をとられることなく、次の1歩を踏み出してもらいたいです。

  • 2014年06月16日(月)16時39分

調べ物

6月13日(金)
 午前中授業がなかったので、受験関係の資料を作ろうと思い、インターネットで調べ物をしました。今年の入試日程は、W大学など出願締め切りや入試の早い大学は発表されていましたが、大半はまだこれからのようでした。オープンキャンパスもまだ走りのようで、山場はもうちょっと後です。
 JASSOの進学説明会が、今年は7月12日の土曜日で、新学期が始まったらすぐです。今学期中にアナウンスして、学生たちに時間を空けておくように言っておかねばなりません。この日は例年のごとく、私たちも出動して学生たちに指示を出したり相談を受けたり各大学のブースの様子を観察したりと、精一杯回転しなければなりません。受験講座はお休みですね。
 大手予備校のサイトで、各大学の難易度・偏差値を調べました。予想されたような順番になっていましたが、中には意外な大学が意外に高かったり低かったり、なんていうことがありました。留学生にとっての難易度と日本の高校生にとっての難易度とはいくらか食い違いがありますが、大学選びの参考にはなります。
 新しい学部ができていたり改組されて名前が変わっていたりという大学も多かったです。ライフデザイン、社会イノベーション、現代システム、国際キャリア、フロンティアサイエンス、グローバルエンジニアリング、こういうあたりは何を勉強するのか私にはよくわかりません。学際的な学問ができて面白いのかもしれませんが、その面白さがもう一つ伝わってきません。進路指導をする教師にその学部のよさが伝わらなかったら、学生集めに苦戦するんじゃないかと思うんですが…。高校の進路指導の先生方はわかるのでしょうか。単に私が研究不足なだけなのでしょうか。
 さあ、日曜はEJUです。学生たちの奮闘を期待してやみません。

  • 2014年06月13日(金)20時30分

新函館北斗

6月12日(木)
 再来年開業する北海道新幹線の駅の名前が決まったそうです。終着駅は「新函館北斗」という名前になりました。長い名前だと思います。たぶん多くの人が「新函館」と省略するでしょうね。
 この駅が函館市内にあれば「新函館」で決着したはずですが、所在地が函館の隣町の北斗市であるために、お尻に「北斗」が付いたのです。北斗しにしてみれば、自分の市域の駅なのだから市名である「北斗」が駅名に入るのは当然と思っているのでしょう。しかし、北斗市以外の人たちにとっては、函館へ行くために降りる駅だということがわかればそれでいいのです。そのためには駅名に「函館」という要素は欠かせませんが、残念ながら「北斗」はあってもなくてもどちらでもいいのです。あってもなくてもいいのなら省略される方向に進むというのが、少しでも楽をしたい人間の取る行動です。
 この駅は、函館市街から20キロぐらい離れた原野にできるそうです。新幹線ができても東京から函館へ行くのは飛行機のほうが便利です。とすると、この駅を使うのは東北地方から函館へ行く人たちが中心となるでしょう。利用者はそんなに多いとは思えません。北海道新幹線は新函館北斗が最終的な終着駅ではなく、札幌までの延伸が予定されていますが、計画では完成が2035年となっています。たとえ札幌まで行けるようになっても、飛行機のお客を奪うには至らないでしょう。
 50年前、東海道新幹線ができたころ、当時の国鉄の最上層部では、新幹線が経営的に成り立つのは東京大阪間、せいぜい岡山までだと考えていたそうです。しかし、その後新幹線は日本列島改造論などにより、経営的には疑問符が付くところにまで伸びていきました。国家的福利厚生施設のような一面も感じられます。新幹線は雪に強いですから、北海道内の交通機関としては適していると言えます。札幌までなどとけちなことは言わず、道内に新幹線網を張り巡らしたら道内の移動は非常にスムーズになるに違いありません。でもそれは高い買い物であり、経営とは違う次元で考えないと存続し得ません。
 2年後に北海道新幹線が開通したら、1回ぐらいは試しに乗ってみるかもしれません。青函連絡船で函館まで行った経験のある身としては、東京駅で乗り込んで一寝入りしている間に函館(の近く)まで来ちゃったという感激を味わってみたいのです。

  • 2014年06月12日(木)19時16分

タスクで成長

6月11日(水)
 期末タスクが花盛りです。今日のクラスでは授業時間の半分を期末タスクの準備に充てました。KCPの期末タスクは、どのレベルでも話すことを中心としています。中級クラスでは、調べたことをまとめて話すというのが大きな目標になっています。グループワークですから、個人的にすごく優秀なだけではだめなのです。
 今日のクラスで感心させられたのは、各グループのリーダーがきちんとメンバーを統率していたことです。Cさん、Kさん、Sさんが、いろんな国(最低3か国)からの学生をまとめ上げ、ストーリーを協力して作り上げ、自然な発音・イントネーションで発表できるように練習もしています。Cさんはメンバーに押されちゃうんじゃないかなと心配していましたが、てきぱき指示を出してグループを引っ張っていました。Kさんは自分たちの発表全体を見渡して、言葉づかいやストーリーに流れなどの相談を持ちかけてきました。Sさんは前半欠席した学生を電話で呼び出し、練習に向かわせました。3人をリーダーに選んだN先生の慧眼に感服するばかりです。
 3人は、日本語という外国語を使ってメンバーをタスクの達成に向けて動かしています。もどかしいこともあるでしょうが、単に命令を下すばかりではなく、メンバーの意見に耳を傾け、少しでもレベルの高い発表にしようと汗をかいています。もどかしさは、それを何とかしようというインセンティブにつながります。こういう経験を通して、机に向かって問題集を解くだけでは身に付かない日本語力がものにできるのです。
 大きな果実を得ようとしている学生がいる一方で、何も考えずにポワンと休んでいるTさんやHさん、ただリーダーや他のメンバーにぶら下がっているだけのOさんやLさん、こういう学生たちはどうなっちゃうんでしょうね。自分がグループのお荷物になっているってことに気づいてるんでしょうか。笛を吹いても踊らず、尻をたたいても動かぬ学生たちはどうすればいいんでしょうか。リーダーの3人の成長に目を細めてばかりいるわけにはいかない教師のつらさです。

  • 2014年06月11日(水)18時27分

煙草はおいしいですか

6月10日(火)
 受験講座を終えて職員室に戻ってくると、K先生が「公園で煙草を吸っていた学生を捕まえたので叱ってください」と言ってきました。学生たちはロビーの壁際に立っていました。
「公園で煙草を吸ってもいいですか」
「いいえ」
「じゃあ、どうして公園で煙草を吸いましたか」
「すみませんでした」
「謝ってくださいとは言っていません。理由を聞いています」
(しばらく沈黙)「喫煙室は人が多いですから…」
「公園は人が少ないですから煙草を吸いましたか」
 という調子で、10分ぐらい4人の学生から油を絞ったでしょうか。その間、4人はほとんど下を向きっぱなしでした。腰をかがめて、下を向いたその顔を覗き込んで目を合わせて追及したのは、ちょっとかわいそうだったかな。
 下を向いて歩くというのは窮屈なものです。胸を張って生きられないというのは息苦しいものです。気持ちがどんどん落ち込んでいきます。確かにKCPの喫煙室は狭いです。でも、禁煙のルールを犯して広々とした公園で吸ってしまったら、狭い喫煙室で吸うよりずっと気持ちが重苦しくなります。後ろ暗さを抱えながら吸ったほうが、煙草がおいしくなるのでしょうか。
 自分自身に恥じることのない行動を取ってもらいたいです。正々堂々と人生の道を歩んでもらいたいです。誰に対してもまっすぐ目を合わせて自分自身を語れるようにふるまってもらいたいです。煙草だけの問題じゃありません。全力を傾けて勉強しているか、アルバイトとしての職責をきちんと果たしているか、自分に厳しく対処することがこれから長い人生を有意義なものにするのです。

  • 2014年06月10日(火)19時37分

真理は遠い

6月9日(月)
 Yさんは文系の学生ですが、2週間ほど前にEJUの過去問をコピーし、そのうちの何回分かの答えを持って来ました。その答えをチェックすると、問題を解く力は十分にありますが、ケアレスミスが目立ちました。ちょっとした計算ミスや約分のし忘れなどにより、正解に至らなかった問題が数問ありました。
 マークシートは実に冷酷で、計算過程が正しくても最終的な答えが違っていたら得点になりません。約分のし忘れなら部分点がもらえるのかもしれませんが、マークシート独特の解答方法に慣れていなかったがゆえに答えをうまく表現できなかったとしても、点数はもらえません。
Yさんの場合、結構痛いところで間違えていましたから、これをEJUの基準できちんと採点したら、本人が思っていたほど点数が伸びなかったかもしれません。最後の最後までがっちり論理を組み立てて計算し、自分の思考の結果をマークシート上に書き表す(塗り表す?)ことが求められます。どこか1つでも欠けたところがあると、手ごたえほどの点数は得られません。
 Yさんは文系の学生ですから、国立の上位校でも狙わない限り数学でのミスは他の科目で挽回可能です。しかし理系の学生は、数学の点数が低かったら大学側の評価はガクンと落ちます。にもかかわらず、計算を面倒くさがって最後までしない学生が多くて困ります。150点の壁を越えるには、ふだんから最後の詰めまで怠りなくすることが不可欠です。
 今週はEJU直前の受験講座ですが、初日から数学に限らず欠席が目立って困ります。自分で勉強したほうが能率が上がると思っているのでしょうが、そんな浮き足立った状態では本番に力が発揮で来うるわけがありません。毎年繰り返されることですが、学生がこの真理に気づくのは卒業式間近で…。

  • 2014年06月09日(月)17時28分

時代遅れ

6月6日(金)
 代講で上級のクラスに入りました。テストがあり、授業後その採点をしましたが、上級で習った内容、テストで問おうとしている事柄ではなく、初級や中級で習ってきたはずの項目でミスを重ねる学生が目立ちました。私が受け持っている中級のクラスにもそういう学生は山ほどいますが、上級ならもうちょっと上級らしい間違い方をしてもらいたいです。
 何で初級のミスが上級でも出るのかというと、学校などにおいて教科書で勉強したのではなく、アニメやゲームなどのコンテンツで日本語を耳から覚えた学生が増えてきたからです。て形を作る練習をすることなく、耳から入ってきた日本語を使ってみて、多少は失敗もしながらコミュニケーションが取れるようになってきたのです。コミュニカティブといえば実にそうですが、使っている日本語を文字の形で残すと、微妙な不正確さが浮かび上がってしまいます。最上級クラスの学生の中にも、初級の文法を勉強したいと訴えてくる学生がいるくらいです。
 これを突き詰めると、語学の勉強は何が最終目標かという問題に行き着きます。さまざまなコンテンツを楽しむという観点からは、彼らの日本語力は十分だと見なし得るでしょう。アニメを楽しむ限りにおいては「来て」でも「来って」でも関係ないのです。しかし、KCPをはじめ多くの日本語学習機関は文法や表記などの正確さを重視します。そうするとコンテンツ経由の学士はまだまだとか詰めが甘いとかと評価されてしまいます。
 私が日本語教師になる勉強をしていたころは、日本の英語教育は文法訳読法だから時代遅れだ的な講義が何回かありました。でも、初級の学習項目で減され続ける上級の学生の中には、KCPの勉強方法にはどこか時代遅れのものがあるなんて思っている人がいてもおかしくありません…。

  • 2014年06月06日(金)18時59分

エレベーターが好き?

6月5日(木)
 新校舎のエレベーターは2、3、4階には止まりません。1階の次が5階です。すべての階に止まると、乗る人も多くなるし時間もかかるしで、いいことがありません。仮校舎のエレベーターがそうで、本当にかったるかったですからね。若者は階段を1段ずつ踏みしめながら教室まで上がるものです。
 ところが、4階あたりの教室の学生は、エレベーターで5階まで上がって階段で下りていきます。年寄りの教師が教材やら資料やらをしこたま抱えてっていうんなら、そういうのもありでしょう。でも、二十歳前後の学生がそんなじじむさいことをしていたら、足腰が弱ってしまい、私ぐらいの年になったら歩けなくなってるかもしれませんよ。それとも、学生たちは4階まで階段で上がる力もないくらい疲れ果ててるんでしょうか。
 私はエレベーターを使いません。5階の教室で授業のときも、多少荷物が多くても、階段を上り下りします。運動不足を少しでも補おうっていうのと、校内の見回りも兼ねています。今のところ、学生がそんなに悪いことをしている場面には出くわしていませんが、学生たちは私の姿を見ると改まった顔をするので、予防効果はあると思っています。時には階段に落ちてるごみもつまみあげます。それに、4階の教室ならエレベータを待つよりも早いです。また、待ち時間ゼロですから、イライラもせず、精神衛生にもいいです。
 もう少し正直に言うと、目的階に着くまでエレベーターの中で所在無さげにしているのが好きじゃないのです。何かするには時間が短すぎるし、何もしないと手持ち無沙汰だし。乗り合わせた人たちと階数表示を見詰め合ってるのも気疲れします。階段は足を動かし前後左右を見回していると、エレベーターより桁違いに刺激を受けます。要するに、ボーっとしていることができない、貧乏性なのです。
 毎日、4・5階まで3往復ぐらいはします。運動不足解消にも省エネにも程遠い動きですが、これはもう私の生活のスタイルになっています。

  • 2014年06月05日(木)18時26分

梅雨入り間近

6月4日(水)
 おとといは九州・山口、昨日は四国、そして今日は中国、近畿、東海が梅雨入りしました。関東地方は明日から雨という予報が出ていますから、こちらもすぐ梅雨入りですね。もし明日なら、平年より3日、昨年より5日早い梅雨入りとなります。確かに先週の土曜日は暑すぎましたが、いいタイミングでとしまえんへ行けたと思います。今度の土曜日だったら中止になりかねませんでした。
 雨の季節が迫りつつある一方で、北海道は猛暑日連発で大変なことになっています。熱中症が続出していることはもちろんのこと、家のつくりが熱を逃さないことを旨としているため、こもった熱で火災報知機が発報して消防車が出動する例が相次いでいるそうです。でも、暑いのは日中だけで、夜はかなり気温が下がります。今日猛暑日の名寄は、日の出のころ最低気温9.9度を記録しています。10度を割ったらコートですよ。それに比べると、東京は熱帯だなと思います。最高気温は30度に届きませんでしたが、最低気温は22.1度です。私はもうタオルケットだけで寝ています。
 長期予報によると、関東地方は今年の梅雨は空梅雨気味で、気温は高めに推移するそうです。曇り勝ちのすっきりしない日が続くんでしょうね。でも、新校舎に移ってから日中外に出る回数が減りましたから、その重苦しい天気をさほど強くは感じずにすむかもしれません。去年は毎日のように本館と別館の行き来をしてましたからね。
 夕方、ある方が差し入れてくださったスイカをいただきました。今年初スイカでしたが、冷たくて甘くて一瞬で疲れが吹き飛びました。おいしいスイカって、気持ちが明るくなりますよね。

  • 2014年06月04日(水)20時49分

踏み出せ

6月3日(火)
 お昼ちょっと前に定期健診から帰ってくると、すぐに進学フェアの会場で挨拶。講堂に都内の大学を呼んで、大学や大学院に進学しようと思っている学生のための説明会を開きました。
 12:15に午前のクラスが終わるや否や、上級の学生たちが会場に押し寄せました。W大学やS大学のブースは学生があふれてしまい、あわてていすを並べました。理科系のT大学では、私にとって受験講座でおなじみの学生たちが担当の方の話に耳を傾けていました。同じ顔ぶれがD大学にも並んでいました。
 もちろん、外部の会場で開かれる進学説明会のほうがはるかに多くの大学の話が聞けます。しかし、慣れた場所で、いわばホームグラウンドで、しかもKCPの学生が多く志望する大学をピンポイントで呼んでいますから、踏み込んだ話をじっくりすることもできます。外では怖気づいてしまう学生も、学校の中なら堂々と振舞えるでしょう。他流試合という意味合いからは、アウェーも経験してもらいたいですけどね。
 学生がのびのびとしていたのはいいのですが、中にはちょっといただけない行動も。各大学はテーブルの上にパンフレットなど資料を積んでいました。待ち時間に何も言わずにぬっと手を伸ばしてその資料を持っていく学生が目立ちました。上級でもそうしてしまう学生が多かったのに、中級のCさんは「資料をもらってもいいですか」と断ってから手に取っていました。こういうのが最後にものをいうことがあるんですよね。KさんやYさん、あんたたち、もうちょっと見られてるっていうこと、意識したほうがいいですよ。
 予定の時間を多少オーバーして、大盛況のうちに進学フェアはお開きとなりました。今回いらしてくれた大学にどれくらいの学生が入れるでしょうか。憧れを憧れのままにするのではなく、自分自身がその憧れの場に立てるように、踏み出してもらいたいです。

  • 2014年06月03日(火)18時42分

エアコン登場

6月2日(月)
 土曜日から3日連続の真夏日でした。今朝はここ2日間の熱気がとどまっていたせいか、気温が高めでした。私がいつも乗っている朝のすいている電車にも、しっかり冷房が入っていました。
 暑くなるとエアコンの温度調節が問題になります。暑がりの学生は低めに設定したがる一方、それでは寒すぎるという学生も必ず出てきます。私は冷房に対する許容範囲が広いので、よほどのことがない限り文句を言いません。朝一番で入った教室は、若干低めの設定でした。駅から走ってきたり、走るまでではなくても早足で歩いてきたりする学生が多いので、クラス全体の体温が上がっているのでしょう。Kさんなんかは薄手の長袖を着ている学生もいましたが、Kさんは早めに来ることが多いので、遅刻ぎりぎりの学生が来るころには体温が元に戻っているのでしょう。
10時半の休憩時間後に教室に入ると、高めの設定になっていました。学生たちはちゃんと空気を読んで設定を変えているようです。その後、会話の時間にヒートアップして、Kさんも長袖を脱いでいました。しかし、授業後、文法の再テストのころはまた元通りに。
 教室の温度調節はうまくいきましたが、冷房を付けっぱなしで寝て風邪を引いて欠席という連絡もありました。冷房を切らずに布団をかぶって寝たけど、今朝になったら調子が悪くなってしまったといいます。いったいどういう神経をしているのでしょう。こういう学生の辞書には「省エネ」という言葉がないんでしょうか。国でエアコンを使ったことがないんでしょうか。
 暑さのピークは過ぎたようですが、今週半ばぐらいから湿っぽい日が続くという予報が出ています。過ごしにくい季節がまためぐってきました。

  • 2014年06月02日(月)18時54分

としまえんでの1日

5月31日(土)
 土曜日ですが全校のリクリエーションとして、としまえんへ行きました。いつもの行事に比べて出足が遅く少し心配しましたが、最終的にはいつもぐらいの出席率になりました。
 としまえんは富士急ハイランドなどに比べると子供向けの穏やかなアトラクションが多く、学生たちがどんな反応を示すか気になっていました。でも、クラスメートや仲のいい友達と乗れば楽しいみたいで、笑顔と歓声があふれていました。好き嫌いが分かれる富士急ハイランドの乗り物より、みんなで乗れるとしまえんの乗り物のほうが大勢で乗るには向いているみたいです。
 しかし、普段の行いがよすぎたからなのか、太陽が力いっぱい顔を出し、気温がどんどん上がっていきました。園内でお弁当を食べ終わり、午後になると学生の動きが鈍くなりました。日陰のベンチで昼寝を始める者、スマホのゲームに夢中になる者などが現れました。木陰で友達とずっとおしゃべりしている学生も。せっかくとしまえんまで来たのだからもっといろんなものに乗ればいいのにと思いましたが、炎天下で待つのがしんどいようでした。
 そんな中、意外に人気を集めたのがカルーセルエルドラドという回転木馬でした。その前が最終集合場所だったこともあり、友達同士誘い合って乗っているようでした。これも、1人では乗ることはないでしょうが、仲間がいるとちょっと乗ってみようかっていう気分になるのでしょう。
 また、園内でコスプレショーが行われていたので、コスプレをしている人に許可をもらって写真を撮っていた学生も数名。知らない人に声をかけて何かをお願いするっていうのはなかなかできませんから、いい経験になったんじゃないでしょうか。
 熱中症で倒れる学生も出ず、受験生たちにとっては2週間後に迫ったEJU前の息抜きになったのではないでしょうか。

  • 2014年05月31日(土)18時24分

始まるぞ

5月30日(金)
 来学期から受験講座を受ける初級の学生に受験講座の説明をしました。中間テストが終わったばかりだと思っていたら、もう来学期の心配をしなければなりません。
 大半の学生が2016年4月の入学を目指しているとあって、まだそんなにピリピリしたところはありません。じっくり力を蓄えて上位校を狙おうという計画です。何人かは具体的な志望校を書いてきましたが、何人かは勉強したいこともはっきりしていない様子でした。経済、経営、商学など、“無難な”学部を書いてきた学生は、「将来は貿易会社をつくります」なんていうありがちな将来設計を口にするのでしょう。
 自分がこの学生たちと同じ年代のことを思うと、こんなざっくりした計画でもやむをえないなと思う一方で、こんなに焦点の定まらないまま外国留学をしてしまってやっていけるんだろうかとも思います。今までの学生を見ていると、勉強しているうちに、大学について調べているうちに、自分の将来が見えてくるようです。
 そうはいっても、留学先で自分探しをするよりは、自分の夢を実現するためにはこれが必要だから留学するんだっていうほうが有意義な留学ができそうな気がします。留学先でやりたいことを見つけ、それがライフワークになったなんていったらとってもドラマチックですが、そんなことってめったにないんですよね。来年の今頃、周りの教師どもからやいのやいのと言われて、友人の様子を横目で見ながら志望校を決めてる様子が目に浮かびます。私たちの役割は、学生たちがそうならないように学生たちに考えるヒントを与えていくことです。かつてのGさんみたいに目の色を変えてその目標に走っていくような進路指導ができたら最高です。

  • 2014年05月30日(金)20時49分
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