10月26日(水)
「先生、ちょっとお時間、いいですか」「うん」「この問題、教えてほしいんですけど…」と、GさんがEJUの理科の問題を持って来ました。Gさんが持ってきた問題用紙には、Gさんの字で計算式が書き散らされていました。Gさんが問題文に引っ張ったアンダーラインやキーワードを囲んだ〇や□も入り乱れていますから、問題文を読むだけでも一苦労です。
私が問題文を読むそばで、Gさんが自分の考えを披瀝します。自分なりの考えを伝えようとする点は評価できますが、そのときに、すでに字やら記号やらがあふれている問題用紙に、さらに何か書こうとするのです。こうなると問題用紙は混沌そのもので、Gさんでさえ何がなにやらわからなくなっています。
私もGさんがどこでつまずいているのかわかりませんから、新しい白い紙を渡して、そこに式や図を描くように言いました。すると、「あ、そうか。ここで2倍するのを忘れたんだ」と、Gさんは自分の間違いに気がつきました。
だから、式をきちんとわかりやすく書き直せばいいのに、次の問題に取り掛かるや否や、Gさんは私が渡した新しい紙もあっという間に混沌の渦の中に巻き込んでしまいました。そして、考えの筋道が本人にもわからなくなり、自滅へと突き進んでいきました。
「こんなことしていたんじゃダメだ。ノートにきちんと式を丁寧に書いて、それでもわからなかったら、私のところへ聞きに来い。こんな問題の解き方をしてたんじゃ、EJUで絶対いい点数は取れない」と言って、Gさんの質問を打ち切りました。「でも、先生、EJUのときは式を書く場所がありません」「ある。なかったら自分で作れ」というやり取りの末、Gさんを追い返しました。
自分の間違いに気付くことができるのですから、Gさんは理科系のセンスがない学生ではありません。でも、問題用紙に無計画に式を書き殴って、読解不能に陥っているようじゃ、そのすばらしいセンスも宝の持ち腐れです。式をわかりやすく書くだけで、間違いは半分どころかそのまた半分ぐらいになるでしょう。それができなかったら、いや、そんなことすらできなかったら、理系の勉強をする資格がないと思います。実験記録もまともに残せないでしょうし、データ整理も満足にできないでしょう。
Gさんは、いつ再質問に来るでしょうか…。