Author Archives: admin

鍛えたいですが

11月28日(金)

Xさんは日本語プラス生物でEJUの問題に取り組んでいます。大学で生物系の勉強がしたいというだけあって、毎回そこそこの成績を挙げます。頭の中に知識体系が形作られているようですから、うまく鍛えればどんどん伸びていけそうです。

ただ、その鍛え方に工夫が要りそうです。わからない、解けない問題の多くが、知識の有無ではなく、問題文ないしは選択肢の読解にかかわっているからです。「先生、わかりません」と持って来る問題の多くが、難易度☆ぐらいのレベルです。Xさんの実力からすると、解けないわけがありません。

問題文をかみ砕いて、時にはホワイトボードに図を描いたりもして、解きほぐしていくと、たいていどこかで“なあんだ、そんなことか”となります。独力では問題文が読み取れなかったというケースがよくあります。Xさん自身もそれに気づいていて、もどかしく思っています。

だから、Xさんの“わからない”は、学術的にわからないのか、日本語的にわからないのか、瞬時に見分ける必要があります。後者の場合は、文構造にさかのぼって、問題文や選択肢の読解のポイントを教えることもあります。

また、Xさんは、日本人の高校生向けの図版資料を参考書として持っています。そこかしこに書き込みがあり、努力の跡がうかがえます。日本語の勉強にもなっていることと思います。しかし、索引を使っている形跡がりません。“ベクターは何ですか”と聞いてきたので、図版を見ろと指示したら、出ていそうなページをあちこち開いては出ていなかったということを繰り返していました。私が索引を使ってベクターの出ているページをたちどころに開いてみせると、とても驚いていました。

耳から入ってきた言葉を索引で調べるのは、まだ中級のXさんには難しいこともあるでしょう。しかし、印刷された言葉なら、楽に調べられるはずです。それとも、索引ページの日本語単語の行列を見るとめまいを起こすのでしょうか。鍛え方が難しそうです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

頭痛の原因

11月27日(木)

火曜日の選択授業・小論文で学生が書いた小論文をチェックしました。今週は文章読解型小論文に挑戦しました。1000字ほどのまとまった文章を読んだ上で、与えられた課題について書いてもらいました。今までは「こういう意見・考え方についてどう思いますか」というパターンが多かったのですが、今週は課題文から筆者の意見を読み取るところから始まりました。

初回ですから、読解に関しては多少助けてあげました。学生たちには理解しづらいだろうなというところには、解説を加えました。そして、書くべき課題についても、こういう構成で書くといいと説明しました。

さて、ふたを開けてみると、約半数の学生が的外れな小論文を書いていました。「なぜ○○が必要なのですか」という問いなのですが、「筆者の意見に賛成だ」「○○に反対だ」と書き出していました。1000字の文章どころか、わずか1行の指示文すら読み取れていませんでした。“課題は「なぜ」だから、賛成/反対で答えちゃいけないよ”と注意したにもかかわらず、堂々と賛成/反対で書き始めた学生が半数もいたのです。しかも、上級の学生たちだよ。激しい頭痛と吐き気に襲われました。

それに耐えながら「筆者の意見に賛成だ」の続きを読みました。予想通り、「なぜ」の答えは現れませんでした。入試の採点官だったら思い切り0点をつけるところですが、どこか1つでも評価できるところはないかと、目を最大変に見開いて探しました。無駄な努力でした。

すでに小論文入試を受けた学生たちもこんなのを書いたのでしょうか。だとしたら、受かるわけがありません。

賛成/反対組には、コメントで“なぜ”に答えていないと訴えました。そして、書き直しを命じることにしようかと考えています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

タダで勉強

11月26日(水)

Gさんは高校大学時代を英語圏の国で送り、大学院は日本でということで来日し、現在、KCPの初級クラスで勉強しています。「英語の方が日本語より上手ですか」と聞くと、「もちろんです」と言いたげな顔をしつつうつむきました。その辺のところ、複雑な心境なのでしょう。

当然、英語で受験できる大学院を狙っています。先日も、大学院の入試関係で2日ほど欠席しました。クラスの他の学生たちは、日本語力的に見て26年4月進学は無理と考え、27年度進学を目指しています。でも、Gさんは来春の進学のために動き回っています。

英語プログラムが用意されているところとなると、やはりある程度のレベル以上の大学院となります。Gさんも苦戦が続いているようです。入試対策・勉強のために時間が費やされ、日本語の勉強に回せる分は限られてしまいます。だから、というわけでもないのでしょうが。中間テストを見ると、文法や単語をきちんと覚えていないことに起因するミスが目立ちました。このままでは、26年進学どころか、27年4月の進学も危うい感じすらします。

そんな話をGさんから聞いて職員室に戻ってくると、卒業生のMさんが来ていました。S大学に進学して、現在3年生だそうです。そして、もう、就職の内定が取れたと言っていました。つまり、27年4月入社の内定です。こんな早くに内定を出しちゃっていいの? と聞きたいですが、Mさんは嘘をつくような学生ではありませんでしたから、信じていいでしょう。

さらに驚いたことに、Mさんは奨学金のおかげで実質ほとんどタダで大学の勉強をしているのです。S大学はあちこち落ちまくった末に受かった大学で、Mさんの第一志望ではなく、いわゆる有名大学でもありませんでした。一時は仮面浪人して他大学に入る直すことも考えました。しかし思いとどまって勉強をつづけ、サークル活動もエンジョイしながら内定を手にしたのです。第一志望の有名大学に進学していたら、勉強と学費稼ぎのアルバイトに汲々とする日々を送っていたのではないでしょうか。

大学受験においては、Mさんは勝ったとは言い難いです。しかし、日本で就職するというのがゴールだとしたら、Mさんは勝ち組です。Gさん、どうです、あなたもゴールの設定を考え直してみては。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

また遅刻

11月25日(火)

Yさんは出席率があまりよくありません。何日も学校を休み続けるとか、非常に病弱だとかではありません。たまに風邪をひいて休むこともありますが、主に遅刻のせいで出席率が上がりません。私の授業の日によく出席率を尋ねますが、80%台前半をうろうろしていて、決して芳しいものではありません。

KCPでは目視による確認も含めて、1日に4回出席を取ることになっています。ですから、9時の段階でいないということは、4つのうち1つ欠席ですから、その日の出席率75%です。Yさんはこれをよくやらかします。入学時にそういう出席率の計算方式を教えていますが、実感が湧かないんでしょうね。自分の出席率の数字を見て初めて、思ったよりだいぶ低いことに気づいて、どうにかしようと動き始めます。Yさんもそんな1人です。

今朝はYさんのクラスに入りましたが、Yさんの姿はありませんでした。来たのは、後半の選択授業の時間から。これじゃ、出席率50%です。「また寝坊でしょう」と突っ込むと、照れ笑いをしながらうつむきました。

Sさんは先月珍しい記録を残しました。毎日学校へ来ていたのに、月間出席率は70%台でした。正確に言うと、月間出席率80%未満のブラックリストに載ったので出席状況を詳しく見てみたら、なんと毎日登校していたことが判明したのです。つまり、連日の遅刻で出席率がさっぱり上がらなかったというわけです。

YさんにしろSさんにしろ、勉強する気がないとか、進学を完全にあきらめたとかいうのではありません。日本の大学に進学するつもりですから、寝坊前提みたいな生活習慣を改めなければなりません。本人たちもそれはわかっていますが、どうにもできないのです。同病相憐れむ立場のEさんは、日本語学校の出席率を提出しなくてもいい大学を見つけてきて、そこに出願するようです。

これから、そういう学生たちが正念場を迎えます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

質問タイム

11月21日(金)

日本語プラス生物の授業後、Yさんが残って授業で取り上げたことについて質問してきました。Yさんは日本の高校生向けの資料で勉強しています。勉強内容そのものは、図表を見ればある程度は見当がつきますが、専門用語の正確な定義とか用法とかとなると、1人ではどうにもならない部分があるようです。

私とのやり取りは、もちろん日本語です。Yさんはまだ中級ですから、立て板に水で質問できるわけではありません。質問のセリフもこちらの補助を参考にしながら組み立てていくといった感じです。私の回答も1回聞いただけで理解できず、追加説明が必要なこともよくあります。でも、多少時間がかかっても、最終的には理解にたどり着きます。よかったよかったと、お互い顔を見合わせることもよくあります。

はっきり言って、国の教科書を使って、国の言葉で説明してもらった方がずっと効率的です。わかっていてそうしないのは、Yさんの意地かもしれません。国の学生とはつるまないと、先学期の授業の時に言っていました。食事に行くのも、ほかの国の学生と一緒だそうです。自国のコミュニティーにどっぷり漬かっていてはいけないと思っているのでしょう。

Yさんは再来年の進学を考えています。だから、長期戦のつもりなのです。日本語で専門的な議論ができるようになることを秘かな目標にしているのかもしれません。私が最上級クラスを教えていると聞くと、「27年の1月の学期、私は一番上のクラスに入れますか」と聞いてきました。「頑張ればね」と答えておきました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

心配事

11月20日(木)

木曜日の上級選択授業・身近な科学は、毎回授業の最後にその日の授業内容に関するクイズを出します。それにどんな答えを書くかで、その学生がどれくらい真面目に話を聞いていたか見当がつきます。スマホでこっそり調べればわかってしまう問題のときもありますが、大体はスマホで調べた結果をそのまま書くと“こいつ、やったな”と気が付いてしまうものです。

チャイムが鳴って、みんなクイズの答えを出して教室を出て行きましたが、Lさんが黙々と答えを書いていました。Lさんは毎回話をしっかり聞き、クイズにもきちんと答えてくれます。自分のとったメモを見返しながら真摯に答えようとしますから、みんなよりいくらか遅くなることもあります。

せかすことなく教卓周りの片づけをしていると、3分遅れぐらいで出しました。“さようなら”と言って帰っていくのかと思いきや、「先生、日本で一番地震が少ないところはどこですか」と質問。先々週の身近な科学で取り上げた地震についての質問でした。

「難しい質問だなあ…。山口には大きな電波望遠鏡のアンテナがあるんだ。地震が起きるとアンテナの位置が微妙に狂って正確な観測ができなくなるから、地震が少ないところを選んだって聞いたことがあるけど」「本当ですか? 山口ですね」「いや、地震保険の値段を調べてみたら。地震が起きる確率が低いところは安いはずだから」「地震保険ですか。調べてみます」…

Lさんはいずれ日本に住みたいのですが、地震のない国出身ですから、地震は怖いです。先々週の私の話を聞いて、夢が潰えそうになっています。日本はどこで大地震が発生してもおかしくないと言っちゃいましたから。

その後、話が弾んで、フォッサマグナや活断層と原発についてまで、30分ぐらい話し込んでしまいました。どれもLさんにとってはネガティブな話ばかりでしたが…。

先々週のクイズにはグーグル先生かチャット君にお伺いを立てたと思われる答えも散見されましたが、授業をきっかけに関心を深めた学生もいるとわかると、やっぱりうれしいものです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

模範解答と面接

11月19日(水)

いろいろとしなければならないことが多く、上級クラスの中間テストの採点が延び延びになっています。どうにかしなければと午前中奮起しようとしたのですが、このテストの模範解答がありません。せっかく時間に少し余裕ができ、やる気も湧いてきたのですから、ここで挫折するのは癪です。

こういう時は、よくできる学生の答案用紙に頼るに限ります。候補として、Aさん、Zさん、Yさん、Bさんを選びました。最初の問題の答えを比べると、Aさんが全問正解で、他の3名はいくつか間違っていましたから、Aさんの答えを土台に模範解答を作ることにしました。次の問題以降もAさんの答えを参考にしながら解いていくと、すらすら問題が解けました。最終的にAさんは93点で、模範解答選びは大正解でした。

さあ採点に移ろうと思ったところに、午後のレベル1のクラスの学生が面接に来ました。午後クラスは授業後にたくさん面接をするわけにはいきませんから、午前中に持ってきます。いつの間にか、最初の学生Cさんの面接の時間になっていました。Cさんの次はXさんが控えています。Xさんの面接が終わるころには、午後の授業の準備を始めなければなりません。採点はまたも延期になりました。模範解答ができたという大きな進歩がありましたから、多とすることにしましょう。これさえあれば、意外と短時間で採点できそうな気もします。

面接では、2人とも、クラスの雰囲気がいいと言ってくれました。確かに、マイナスのオーラを出している学生はいませんから、教える方も楽しいです。でも、楽しい、楽しいで勉強が上滑りしてはいけません。そこのところは引き締めていかなければなりません。ためになる授業もしなければね。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

ちゃんと読んでね

11月18日(火)

先週の火曜日の選択授業小論文は中間テストでした。その中間テストを1週間かけて添削し、成績をつけ、学生に返却しました。学生は、当然ながら、私の評価を一番気にしますが、私が本当に気にしてもらいたいのは、添削の部分です。自分の書いた文章がどのように直されたか、しっかり見届けることで、次の小論文の質を上げてほしいとずっと思っています。しかし、学生は見てくれないんですよね。すぐに新しい課題を与えると、同じような間違いを繰り返し、こちらも同じような直しをしなければなりません。

こんなことを続けていては進歩が見られないと思い、今週は各学生の小論文からいただけない文を抜き出し、それについて解説しました。言いたいことはわかるけど表現がおかしい文、何が言いたいかさっぱりわからない文、やたら長くて意味不明になっている文、小論文の結論としては全くパンチのない文、文意はわかるけど表現レベルが初級にとどまっている文、そういった文を取り出して、なぜそれではいけないのか、どう直せばいいのか、あるいは手の施しようがないのか、などを細かく解説しました。

「この文は、大学入試の採点官は絶対理解できません。ここから先、読まないで不合格にしちゃいますよ」なんて調子でボコボコにした文もありました。そう評された学生は、さぞかし耳が痛かったことでしょう。そして、私が入れた赤を参考に、返却した小論文を清書してもらいました。いつもより取り組み方が真剣でしたから、少しは心に響いたのかもしれません。

終業のチャイムが鳴って清書を提出してもらい、教室の片づけをしていると、KさんとSさんが質問に来ました。中間テストはイマイチの成績だった2人ですが、質問の内容は当を得ていました。気が付いてほしいと思ったことについて質問してきました。

まだ清書を読んでいませんが、期待できそうな感じがします。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

油断大敵

11月17日(月)

レベル1のクラスで初めての漢字テストがありました。レベル1は中間テストの少し前から漢字の勉強が始まり、中国人以外の学生たちも少しずつ漢字に慣れてきたころです。

毎学期のことですが、レベル1の漢字テストで悪い点を取るのは中国人の学生です。彼らにとっては易しすぎて勉強する気にもならないのでしょう。しかし、「このほん(     )は、三千円(     )です。」などという問題に、中国の簡体字を書いたり“さんせんえん”と答えたりしてしまうのです。Cさんは90点でしたが、間違えた問題は手紙と時計の読みでした。ちなみに、中国人以外の学生たちは、満点かそれに近い点でした。

「手紙」はCさんだけではなく、中国人の学生の半分ぐらいが「てかみ」と書いていました。こういう学生は、話すときも「てかみ」と発音しているケースが多いです。「さんせんえん」も同様です。Tさんは「中国」に対して「ちゅうごう」と書いていました。Tさんの発音は、確かに「ちゅうごう」に近いです。「てかみ」でも「さんせんえん」でも「ちゅうごう」でも、話し言葉の中なら文脈がありますから、誤解が生じることはまずないでしょう。しかし、聞き手の日本人に違和感を生じさせ、“下手!”という印象を与えてしまうことだってあるでしょう。

漢字テストは、これから期末テストまで、数回予定されています。初回の漢字テストで思わぬ不成績だった中国人学生たちも、きっと巻き返してくれることでしょう。ここできちんと気を引き締めれば、十分に間に合います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

台風が来ませんでした

11月15日(土)

11月も半分が過ぎましたが、気が付いてみると、今年は東京地方には台風が来ませんでした。“えっ、八丈島は、先月、2つの台風が連続して来たじゃありませんか”と言われるかもしれませんが、台風が来なかったのは“東京都”ではなく“東京地方”です。

天気予報の世界では、行政区分の東京都を、東京地方、伊豆諸島、小笠原諸島と、3つの予報区に分けています。その中の東京地方は、今年は上陸したり通過したりした台風がなかったということです。例えば、 “福島県浜通り地方には台風が接近して雨風大変だったけど、会津地方は何ともなかった”というように、ある県の一部は台風に襲われたけれども、別の地方は影響がなかったということです。

都庁と八丈町役場の直線距離は286キロほどです。直線距離で言えば、東京~名古屋間よりも遠いです。これだけ離れていればお天気が違うのも当然です。

八丈島は、東京地方に雪が降るかどうかの分かれ目になる地点でもあります。西高東低の冬型が緩み、強い寒気団が関東平野まで出てきて、なおかつ絶妙のタイミングで低気圧が八丈島付近を通ると、都心をはじめ東京地方に積もるほどの雪が降ることがあります。歯切れが悪いのは、寒気の気温や低気圧のコースなど、条件がピシッとそろわないと降雪とはならないからです。八丈島は、そういう結びつきもある島です。

東京地方に台風が来なかった年はこれまでに何回かありましたから、異常気象とか温暖化とかという話とは直接結びつきません。全国的に台風による被害が激甚化している中、台風が来なかったというのはラッキーだったとは言えます。しかし、来年もこうなるという保証は、どこにもありません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ