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安っぽい?

7月26日(金)

「あ、新札だ」。レジを開けた事務のTさんが叫びました。「どれどれ」と、私も新1万円札を見せてもらいました。7月3日の新札発行より遅れること3週間余り、初めて拝見し、触らせていただけるチャンスが訪れました。

パッと見、安っぽい感じがしました。確かに、偽造防止のホログラムに渋沢さんのお姿が浮かびましたが、“子ども銀行券!”というのが第一印象でした。算用数字の10000というのが、その源のような気がしました。

噂によると、ATMでお金をおろすと新札がザクザク出てくるそうですが、まだ当分その必要はなさそうです。先ほど財布の中を見たら、諭吉さんが4人もいらっしゃいました。夏休みぐらいまで行けるんじゃないでしょうか。

学生たちは新札をどう見ているんでしょうか。私自身、新札にお世話にもなっておらず、興味もありませんから、授業で取り上げることもなく、したがって、学生の意見も聞いていません。学生から新札の話題が出てくることもありませんから、私同様、新札を見にしたり手にしたりしたことがないほうが主流なのかもしれません。でも、Tさんが見つけた新1万円札は、学生が支払ったお金である確率が非常に高いです。とすると、学生は案外新札を使っているということも考えられます。となると、いちばん時代遅れなのは、新札を見つけて叫び声をあげたTさんや、そのTさんにわざわざ渋沢さんのお顔を拝ませてもらった私ということになります。

来週は授業の際に例文か何かで使ってみて、学生がどんな反応を示すか観察してみることにします。

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明るい地下活動

7月25日(金)

午前の授業を終えて、職員室に荷物を置いて地下1階多目的室に下りていくと、学生たちもぱらぱらと集まってきつつあるところでした。8月5日のコトバデーの演劇部公演にチョイ役で顔を出す私にとっては、これが初練習でした。

演劇部担当のN先生から台本をいただいたのは、もう2週間ほど前になるでしょうか。その直後に風邪をひいて声が思うように出なくなり、演劇部の練習に参加するどころではなかったのです。そんなに大量のセリフが割り当てられているわけではありませんから、のどの調子は万全とは言いかねますが、練習に参加して雰囲気だけでも味わっておこうと思った次第です。

私は台本を見ながらセリフを言いましたが、主人公役のDさんや劇中の中心人物の1人であるEさんは、ほぼセリフを覚えていました。丸暗記ではなく感情もこもっていましたから、立派なものです。Fさんは覚え方が中途半端だとN先生に叱られていました。でも、全然何も覚えてこなかった私より数段上です。

自分も仲間に加わって動いてみると、台本を読んだだけでは見えなかったストーリーが、動画で思い浮かべられるようになります。このセリフはこんな流れの中で言うのだとしたら、こんなふうに感情を込めればいいのかな…などというアイデアも湧いてきました。

今度の公演は、今までのよりセリフが多いですから、あと10日余りとなった本番までにセリフをしっかり覚えておかなければなりません。最近物覚えが悪くなりましたから、これが一番つらいです。

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結果発表

7月24日(水)

昨日の帰り際、Tさんが「先生、EJUの点数はもうわかりますか」と聞いてきました。成績発表は7月24日とEJUのページにしっかり出ているのに、心配で心配でたまらなかったようです。もちろん、昨日の時点では発表されていません。「明日まで待っててね」と答えるほかありませんでした。

今朝、8時頃。Sさんが「先生、EJUの点数はもうわかりますか」と聞いてきました。EJUのページを見ましたが、発表された形跡はありません。「もうちょっと待っててね」と言って自分の仕事に取り掛かりましたが、Sさんは帰る気配がありません。「ちょっと待っててね」と受け取って、私が仕事を中断して点数を見つけ出すのを待っていたのです。こちらも言葉が足りませんでした。「発表、まだみたいだから…」と付け加えればよかったのです。

その後、授業に出てしまい、10:30の休憩時間に戻ってくると、発表されていました。12:15の授業終了後、大急ぎで結果を取りまとめ、先生方に知らせました。

そんなことをしていると、ゆうべ騒いだTさんと、RさんがEJUの成績を基に進学相談に来ました。2人とも、思ったよりも点が取れたようです。少し強気な大学名も出てきました。それはいいのですが、2人の課題は発話力です。今の話し方だったら、EJUの成績がよくても面接で落とされるでしょう。しかし、そういうことを注意しても、2人は成績が良かったことに浮かれて、私の言葉など聞いちゃいないようでした。こういうパターンが一番心配なんですよね。Rさんに至っては、早く合格して楽な生活がしたいと言い出す始末です。

Qさん、Pさんなど、進学相談を待ち構えていそうな学生が何人か思い浮かびます。忙しくなりそうです。

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うさぎとかめ

7月23日(火)

中級クラスでは、毎日朝一番で漢字の復習テストがあります。前日に勉強した漢字の読み書きの問題を10問出し、6問正解が合格点です。文字通りの復習テストで、出題にはひっかけやひねりなどは加えません。だから、うちでその日習った漢字を復習しさえすれば、確実に合格点が取れます。

出席を取って、すぐにその復習テストを始めました。教室内を回ってみると、Fさん、Oさんなどはかなり苦戦しているようでした。GさんやMさんは楽勝のようでした。

さて、授業後、採点してみてびっくり。今朝の受験者の約4割が不合格ではありませんか。Fさん、Oさんは全滅に近い悲惨極まる状況でした。Yさん、Jさんも、惜しいところで不合格。もちろん、満点の学生もいましたが、全体としては成績不振と言わざるを得ませんでした。

一言でまとめてしまえば勉強不足です。上述の通り、教科書を見てちょっと手を動かすだけで、合格点ぐらいは絶対にどうにかなります。現に、アルファベットの国から来たCさんとMさんは、毎回合格点を取っています。その一方で、漢字の国から来た学生は死屍累々の有様です。

漢字の国からの学生は、勉強不足と同時に油断もあります。意味がわかればそれでよしとしてしまうと、読解はどうにかなっても、漢字や語彙のテストでは戦えません。毎日の小さいテストだと、不合格に慣れてしまって、勉強のモチベーションにはつながらないのかもしれません。

こういう現象を見るにつけ、「うさぎとかめ」を思い出します。Fさんはうさぎの典型例、Cさんはかめの代表です。学期gは始まって2週間ほどで、両者の間には大差がついています。

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1合目?

7月22日(月)

コトバデーまでちょうど2週間。そろそろ気合を入れて練習しないと、本番に間に合いません。最初のうちは、学生たちはいたってのんびりしており、教師が引っ張らねばなりません。

私が入ったクラスも、全然まだまだの状態でした。各クラス、音読チームと声優チームに分かれていますが、学生たちは自分がどのチームに属するかだけはわかっています。先週末に割り振りをしましたから。その際に各自のセリフも割り当てられています。しかし、実際に声を出してそのセリフを言うのは初めてという状況でした。

音読チームは棒読み以下でした。台本の文字を1つずつ拾い読みする学生が大半で、音読の全体像が全くつかめていません。しかたがありませんから、私が思い切り感情を込めて範読しました。読み終わると拍手が湧き上がりましたが、うれしくも何ともありません。こんなところで感心するのではなく、どうしたらそう読めるか、少しは研究しろと言いたいです。

声優チームは、動画とセリフが全く合いません。初回はそうでしょうね。セリフの速さに追い付けないのです。去年の各クラスは練習しているうちにだんだん追いついてきて、コトバデー本番では、審査に困るほどのすばらしい発表をしてくれました。

「明日も同じような練習をしますが、あさっては練習した後、それぞれのチームに発表してもらいますからね。そのつもりで自分のセリフをしっかり覚えてください」と、ちょっぴり脅しをかけました。実際に発表する感じで練習しないと、本番で力を発揮できませんからね。

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先生、さようなら

7月19日(金)

終業のチャイムが鳴ると、「先生、さようなら」「先生、また来週」と、学生たちが思い思いの挨拶をして、教室を去っていきました。その直前まで書いていた作文を提出して。

数名の学生が残りました。諸般の事情で作文を書く時間が予定より短くなってしまいましたから、多少の時間オーバーは大目に見ることにしました。それでも、1人を除いて10分もしないうちに書き上げて出して教室を後にしました。ただ1人取り残されたのは、Lさんでした。見ると、原稿用紙の半分も埋まっていないではありませんか。

Lさんは、大学の直接募集で、日本語学校を経由せずに、文字通り国から“直接”日本の大学に進学しました。この4月に初めて来日し、留学生活を始めたものの、自分の日本語力のなさを痛感し、KCPで日本語を勉強し直そうとしています。

ペーパーテストはそこそこできるに違いありません。直接募集に合格したのだし、KCPのプレースメントテストでも中級と判定されたのですから。しかし、コミュニケーション能力には大きな疑問符が付きます。大学生活がうまくいかなかったのも、おそらく先生方とのやり取りに支障が生じるほどのコミュニケーション能力のなさゆえでしょう。文章を書くにしても、他の学生の半分以下のスピードでしかなかったから、時間を大幅にオーバーしても原稿用紙半分以下しか書けなかったのです。

訥々と語るLさんの言葉によると、国では例文レベルの長さの日本語しか書いたことがないようです。しかも、丁寧体でしか書いたことがないので、普通体と指定された今回の作文は、その時点で混乱してしまいました。

日本の教育機関(大学に限りませんから、こういう言い方をします)は、最近直接募集に力を入れていますが、Lさんのような学生を大勢入れてしまっているおそれがあります。Lさんは勇気をもって勉強し直す道を選びましたが、それもできずに、わからない日本語に囲まれて、コミュニケーションも取れずに、孤独と不安にさいなまれている留学生も少なくないことでしょう。

月曜日までに書いてくるようにと宿題にすると、Lさんは表情を和らげ、「先生、さようなら」と言って、教室を出ていきました。

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今度こそ

7月18日(木)

午前の授業後、Kさんが職員室に姿を現しました。日本語プラスの授業に登録していないけれども、授業を受けたいと言います。Kさんは入学以来先学期まで、6月のEJUに照準を定め、日本語プラスの授業も受けてきました。しかし、体調を崩し、精神的にも落ち込んで、どうやら不本意な受験に終わってしまったようです。

さらに話を聞くと、Kさんは、自分に残されたチャンスは11月だけだから、それに向けて最善の努力をしていくと、今までになく神妙な顔つきで決意を語りました。その表情は、先学期のような目に力のないどよ~んとしたものではなく、明るく前向きな力強さが感じられました。

これなら立ち直ってくれるだろうと、数学のS先生に私も一緒に頭を下げ、午後の授業から出させてもらうことにしました。S先生は、最初の学期からKさんの頭脳明晰さを高く評価されていました。先学期は欠席続きだったKさんのことを気にかけてくださっていたようで、逆に元気づけてくださいました。

Kさんは、数学の後、私の物理の授業にも出ました。今学期は6月のEJUの後ですから、基礎から始めます。Kさんの再スタートにはちょうどよかったかもしれません。Kさんにとっては2度目の授業ですが、以前よりもよくわかるのか、疑問点がはっきりしてきたのか、質問が多かったです。やる気に満ちている証拠だとも言えます。

始まったばかりですから予断は禁物ですが、この勢いを保ってくれさえすれば、受験に関しては十分に逆転可能です。受験校選びも含めて総合的に指導していけるのがKCPの強みですから、これからしっかりフォローしていきます。

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病人の運動

7月16日(火)

急にのどが痛くなったのは、先週の火曜日の授業直後でした。あまりに急だったので、咳払いを何回かすれば思ったのですが、1回やっても2回やっても10回やっても一向に良くなりませんでした。ならばロ龍角散攻勢を仕掛けましたが、敵方の牙城を崩すには至りませんでした。

3連休は、全くの安静というわけにはいきませんでしたが、比較的穏やかに過ごしました。熱いお風呂に入って体を温めて免疫細胞の活性を高め、それよりも至適温度が若干低めの病原菌類の活性を落とし、この差でもって健康を取り戻そうともしましたが、望み通りの結果とはなりませんでした。

午前中の授業を終え、昼休みの進学授業もこなし、午後の化学が終わり、授業の引継ぎも済んだのは5時過ぎ。急いで四谷三丁目にある耳鼻咽喉科へ向かいました。地下鉄1駅分ありますから、さすがに学校から10分では着きませんでしたが、15分後には待合室で問診票を書いていました。

最新の医療機器は進歩しており、医者がカメラを向けると私ののどがモニターに大写しになるのです。自分ののどを初めて見ました。医者に言われずとも明らかに不健康そうな口蓋垂や咽頭の上部が見えました。驚くほかありませんでした。会計を済ませ、処方箋をもらい、うまくすると6時までに学校に戻れるかなというタイミングでした。

ところが。御苑前の出口のところに最近できた薬局には処方箋受付がなく、学校の近くの薬局は、処方箋に載っている4種類の薬のうち1種類の在庫がないので、他の3種類の薬も出せないと言います。処方箋は1枚につき1回(=1店舗)限り有効なので、1種類でも揃えられなかったら、すべての薬がもらえないのです。

これは一般常識なのかもしれませんが、病院から出る薬を飲むなどめったにない私にとっては、初めての出来事で、ただただ驚きました。次に行ったのが全国チェーンの薬局ですが、学校から一番近いところにあった店舗がいつの間にか倉庫になっていました。その次に近い店舗も同じくするがありませんでした。ただし、こちらは、そこから歩いて行けそうな店舗に電話をかけて在庫を確認してくれました。「店の前の道を右に進んで、ファミマの角を、道を渡らずに右に曲がってまっすぐ進んでください」と、店の場所を説明してくれました。

近くにファミマがあったかなあ…と思いながら歩いて行くと、新宿通りの交差点まで行ってようやくファミマがありました。これなら「新宿通りの交差点を…」と言ってもらった方がわかりやすかったです。

そこで4種類の薬を出してもらいましたが、お会計は670円。雨のせいもあり、日没前でしょうが外は夜の雰囲気にたっぷり漬かっていました。御苑の駅から半径500mぐらいを、小1時間歩き回らされたことになります。歩く元気も出ないほど病気が重かったら、薬をもらうのをあきらめたでしょう。

今、日本中で薬が足りないと報じられています。それを強く実感させられました。同時に、この処方箋の制度は、手直しが必要なのではないかとも思いました。

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貴重な戦力

7月12日(金)

教室に入ると、Gさんがいませんでした。遅刻かなと思いましたが、いつまでたっても来ませんでした。Gさんは先々学期教えた学生で、その後も何かというと声をかけてきました。また今学期受け持つことになったのですが、水曜日は養成講座の講義をしたため会うことができず、週の終わりになってようやく教室で相まみえることになるかと思ったら、結局空振りでした。担任の先生のところに病欠の連絡があったそうです。

さて、このGさんのクラスです。コトバデーでだれが何をするかを決めようとしたのですが、だれもうんともすんとも言いません。小さい声で呟いているのかとも思いましたが、どうやらそうでもなさそうでした。初めて入るクラスで、顔と名前が一致する学生が少なく、しかもそのうち1名が欠席、しかもこちらはおとといから声が満足に出ないという、四重苦みたいな状況に陥ってしまいました。

こういう時Gさんがいたら、「私、声優をします」とかって口火を切ってくれたことでしょう。それでもみんなが黙っていたら「Aさん、いっしょに声優しようよ」などと勝手に周りの友達を誘って、教室の雰囲気を盛り上げてくれたんじゃないかと思います。別にAさんが声優をしなくてもいいんです。「声優はちょっと…。でも音読なら…」という流れができれば、こういうものは案外とんとん拍子に決まるものなのです。

結局、来週もう一度聞くから、その時までに決めておくことを連休の宿題としました。Gさん、火曜日は病気を治して出てきてくださいね。

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足ふきマットを買いました

7月11日(木)

“三密”などという言葉が生まれる以前からですから、5年ぶりぐらいになるでしょうか。バザーが復活しました。小雨がぱらつく中、校舎の軒先と1階のロビーに品物を並べ、午前クラスの休憩時間、10:30に開店。私は授業がありましたからずっと張り付いているわけにもいかず、ちらっと様子を眺めただけでしたが、思ったよりにぎわっていました。三密と指摘されてもしかたないくらい学生が集まっていました。

授業が終わり、午前の学生が帰り、授業前に立ち寄る午後の学生も教室へと消えた頃を見計らって、お店をのぞいてみました。今回は食器がたくさん売れたとのことでした。まだお皿やカップなどが残っていましたが、私はそういうのには興味がありません。文房具はノートしか残っておらず、これまたパス。ネクタイがたくさんあると言われましたが、私の心に響くデザインはありませんでした。

私の目を引いたのは、足ふきマットでした。タオルを何枚も使った手作りで、100均やホームセンターなどで売られている安っぽいものとは、厚みも手触りも段違いです。1枚1000円と、ちょっと値段が張りましたが、KCPのバザーはチャリティーバザーですから、普段寄付などということには縁遠い私にとって、人のためにお金を使う絶好の機会です。そんなわけで、2枚買いました。ここで支払った2000円は、どこかで中抜きされることなく確実に困っている方々に届きますから、安心できるのです。

これからは、以前のように毎学期バザーが開かれることでしょう。だいぶ遅れましたが、楽しみがまた1つ復活しました。

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