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お久しぶりです

10月29日(水)

朝は代講でレベル3のクラスに。ドアを開け教室に入ると、大部分の学生が怪訝な顔をしました。数名、表情が明るくなった学生がいました。いずれも2学期前の4月期にレベル1で教えた学生でした。もちろん、校内で顔を合わせることはありますが、授業で向かい合うのは半年ぶりです。懐かしさが顔に出たのでしょう。そういう顔を見ると、こちらも自然と表情が緩んできます。こういう再会がありますから、レベル1あたりで種をまいておくのはやめられません。

そのクラスで顔と名前が一致する学生は、レベル1で教えたその数名だけです。だからと言って、名前のわかるその学生たちばかりを指名するわけにもいきません。名簿を頼りに「Aさん」などと指名すると誰も答えてくれず、1拍遅れぐらいで「先生、Aさんは休みです」と教えられてずっこけてしまうこともしばしばです。

それはともかくとして、半年ぶりぐらいに教えると、やはり学生の成長を感じます。上手になったなあとか、。こんな気の利いたことが言えるのかとか、ずいぶん難しい言葉を覚えたんだねとか、何事もないような顔つきをしていますが、心の中は驚きの連続です。私はこれを秘かに刈り取りとか収穫とかと呼んでいます。学生も、ろくに日本語がわからなかった頃に教わった教師に自分の成長した姿を見せるのは、誇らしく思えることではないでしょうか。

午後は、今学期のレベル1のクラスでした。あさってに迫ったBBQについての説明をしましたが、日本語だけでは伝わらないので、ジェスチャーやら図を描くやら、面倒くさいからモニターに画像を映し出すやら、思いつく限りの手を尽くしました。こういう共同作業をするから、上のレベルで再会した時、学生も教師も懐かしさを感じるのかななんて思ったりしました。

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突然の放送

10月28日(火)

3:15の始業チャイムが鳴り、さあ化学の授業を始めようとしたところ、臨時一斉放送のチャイムが鳴り響きました。化学の授業のために集まった学生たちと一緒に耳を傾けました。近隣のビルから、KCPの学生が敷地内でたばこを吸っているという通報と抗議があったという内容でした。午後は初級クラスばかりですから、教師向けの日本語のほかに、各国語訳も入りました。英訳は強い調子だなとわかりましたが、他の翻訳も同じようにきつく注意していたのでしょう。

新宿区は、条例によって屋外は全面禁煙とされています。また、KCPとは無関係のビルは、敷地に無断で入り込んだだけで不法侵入です。こういうことは新入生へのオリエンテーションでも、毎学期の始業日にも、繰り返し言っています。15分の休憩時間内に行って戻って来られる喫煙所の場所も教えています。それでもこうして抗議されてしまうようなことをやらかす学生が後を絶ちません。

私はたばこを全く吸いませんから、喫煙者の本当の心理は理解できないものがあります。喫煙所まで行くと人ビリたばこが吸えないから近場でどうにかしようと考えているのでしょう…というぐらいのことしか言えません。授業が終わるまでたばこが我慢できないとなると、依存症を疑った方がいいかもしれません。いけないことと知りつつほかのビルの敷地で吸ったとすれば、入院治療をお勧めしたくなります。そういう人は、火気厳禁のところでも吸いかねません。

この放送によって、午後のすべてのクラスで授業が約5分つぶされました。各クラスの出席学生数と教師数の合計を掛け合わせると、20時間かそれ以上になってしまうでしょう。それだけの時間を無駄にしたということも、この愚かな喫煙者どもに突きつけたいです。

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教科書に時間を奪われる

10月27日(月)

先週末、私が学校を休んでいる間に、大変なことが発覚しました。学校の図書室の机の上に教科書やノートなどを置きっぱなしにしている学生がいたのです。うち1名は、書架に教科書を突っ込んでいました。土曜日にT先生がそれらを回収したところ、教科書が消えてしまった学生が困って事務所へ来ました。そりゃそうでしょう。教科書がなかったら、授業を受けても半分ぐらいしか意味がわからないでしょう。

ある学生は、教科書をいちいち家に持ち帰るのは重くていやだと言います。だったら、せめて、タブレットに取り込むぐらいの努力をしてくださいよ。私のクラスのGさんはそうしていますよ。数年前に卒業したSさんも教科書用のタブレットを持っていました。家でどうやって勉強しているのでしょう。少なくとも、先週末は全く勉強する意志はなかったのでしょう。

そもそも、KCPの図書室は、物を置いて席取りをすることは禁じられています。このルールは教科書を置きっぱなしにする学生を念頭に置いて作ったものではありませんが、図らずもこれに当てはまる学生が生まれてしまいました。こういう形でこのルールが生きるとは、思いもしませんでした。

ちなみに、先学期は、Pさんが駐輪場の自転車のかごに教科書を置きっぱなしにしていることが発覚しました。これまた、教科書は思いから持って帰るのは嫌だと言っていました。学生にとって、教科書はおもりでしかないのでしょうか。予復習しなくてもKCPの授業ぐらいわかってしまうのでしょうか。それにしては、JLPTやEJUなどの日本語テストの成績が振るいませんが…。

私たちは教科書に沿って授業をしていますから、教科書がなければ予習も復習も宿題もできません。そうなると、授業で習ったことの理解度も深まりません。これでは日本語力が伸びるはずがないではありませんか。

なにより、この不届きな学生どもに説教をしなければならない私の貴重な時間を返してもらいたいです。

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寒くなりましたね

10月24日(金)

1か月ほど前のこの稿に“秋の気温は釣瓶落としではないか”と書きましたが、それが現実のものとなりつつあります。コートはもちろんのこと、ダウンジャケットではないでしょうが、もこもこの防寒着を着込んでいる学生が目立つようになりました。おとといでしたでしょうか、日中外に出たら、吐息がかすかに白くなりました。秋どころか、初冬の趣です。

私も、先週までは夏用の薄いスーツでしたが、今週からは裏地付きの冬のスーツを着ています。それでも、おとといあたりは、朝、外に出た瞬間、マフラーがほしいと思いました。もう一歩季節が進めば、いよいよヒートテックの出番です。コートは11月からと考えていますが、来週は寒さに耐えられるでしょうか。

さて、ちょうど1週間後、来週の金曜日はバーベキューです。気象庁をはじめとする予報によると、31日(金)の東京地方は、曇りで最高気温は20度くらいとのことです。最低気温が12~13度だそうですから、真冬の最高気温ぐらいです。調理で火を使うものの、やはり着込んできた方が無難でしょう。

午前中に入った上級クラスで、バーベキューのメニューの話し合いをしました。毎年のことですが、学生たちは食材を買い込みすぎて余らせがちです。このクラスでも、牛2キロ、豚2キロ、鳥2キロ…などと言い始めましたから、抑えに回りました。昨日のクラスでも学生たちが暴走しそうになりましたから、なだめ役を務めました。でも、こういうのって、計画を立てている時が、いくらでも想像を膨らませられて楽しいものなんですよね。

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欠席のお詫びとご連絡

10月23日(木)

3:15からの日本語プラス物理の授業に行く前にメールをチェックすると、Aさんからのメールが届いていました。Aさんは私が担任をしているクラスの学生ですが、そのクラスは、木曜日は私の担当日ではありません。「欠席のお詫びとご連絡」というタイトルからすると、きっと学校を休んだのでしょう。

メールを開くと、いきなり、「いつも大変お世話になっております。」ときました。確かに担任としてお世話はしていますが、メールでこう言われちゃうとねえ…。

次はクラスと名前で、これは問題なし。そして、欠席理由を述べ、「…誠に勝手ながら、本日10月23日(木曜日)の授業を欠席させていただきます。」と書いてありました。事前連絡なら“欠席させていただきます”でいいですが、メールが届いたのは2時過ぎですから、明らかに事後連絡です。最低でも“欠席させていただきました”ですよね。私は、こういう状況で学生が“させていただく”を使うことはいかがなものかと思っています。“欠席しました”で十分、“欠席いたしました”が許容限度でしょう。

そして、「授業を欠席することにより、ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。」と続きます。授業を担当していない私はもちろん、授業内容からすると授業をされたY先生も、Aさんが休んだことで迷惑をこうむってはいません。迷惑をかける相手は、教師よりもクラスメートでしょう。私に詫びるとすれば、欠席連絡が遅くなったことについてです。こんな空虚な言葉よりも、明日はちゃんと学校へ来るのか書いてほしかったですし、「宿題はありませんか」ぐらい聞くのが学生としての礼儀だと思います。

普段のAさんの態度を見ていれば、Aさんに悪意があったとは思えません。私に対して失礼があってはいけないと思い、欠席連絡の文例を検索し、それに則って文面を作成したのでしょう。しかし、Aさんが模範としたのはビジネスメールであり、残念ながら学校の欠席連絡にはふさわしくない文例でした。Aさんなら、自分で文面を考えても、私を納得させるメールが書けたはずです。それぐらいの実力は私が保証しますから、自信を持ってもらいたいです。

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スマホの誘惑、抗し難し

10月21日(火)

今週から選択授業が始まりました。私の火曜日の担当は、先学期に引き続いて小論文です。でも、メンバーは大部分が入れ替わり、初日の授業は小論文の基礎からです。小論文の構成や原稿用紙の使い方を説明しました。そして、学生が書いてしまいがちな話し言葉を列挙し、書き言葉を使うように指導しました。これだけ言っても、結局「問題点がいっぱいある。」なんて書いちゃうんですけどね。

それ以上に困ったのが、やっぱりスマホです。小論文と銘打つ限りは、入学試験を前提としています。教えるべきことを教えて、入試本番になるべく近い条件で書いてもらおうというのが、授業の趣旨です。というか、本番のつもりで取り組んでもらわなければ、この授業の意味がありません。ですから、当然、スマホの使用は禁止です。そうはっきりと指示しましたが、教室のあちこちでスマホをいじっている姿が目につきました。時間の確認をしただけかもしれませんが、入試の際はスマホを時計代わりに利用することは禁じられています。

書き終わったと思しき学生は、筆記用具を置いて堂々とスマホを手にします。「書き終わった人は、スマホじゃなくて自分の原稿を見てください」と注意すると、半分ぐらいは原稿用紙を手に取りますが、そんな私の言葉も馬耳東風でスマホに熱中している学生もいました。そもそも、私がそう言ったことすら気づいていなかったのかもしれません。

初回だからとやさしめのテーマにしたのがいけなかったのかもしれません。来週からは締めてかかりましょう。

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自己紹介

10月20日(月)

先週末、レベル1のクラスには作文の宿題が出ていました。始業日から1週間余りなのに一番下のレベルのクラスでも作文を書かせるのかとお考えになる方もおいでになるかもしれませんが、作文と言っても自己紹介です。今までの授業で学んだ文型や単語を組み合わせて、また、ひらがなカタカナを書く練習として、自己紹介をしてもらおうという算段です。

その作文を回収しました。何名かは「先生、ごめんなさい」でしたが、大半の学生は宿題プリントになにがしか書いてきました。

上から下までいっぱい書いてあるなあと思って読んでみると、だいたい翻訳ソフト丸写しです。チャット君の作品かもしれません。少なくとも、辞書を使って書いたことは間違いありません。こちらは、そこまでして書いてもらうつもりはありません。せいぜい「専門は量子力学です」などというときの“量子力学”を調べる程度まででしょう。むしろ、教科書の習ったところを行きつ戻りつしながら、使える単語と文型を見つけ出し、思い出し、あれこれ工夫を加えて自己紹介文を作り上げてもらいたいのです。

Aさんは、行数は少ないですが、明らかに自分の力だけで書いていました。こちらの狙い通りの自己紹介です。Hさんは、「がっこうまでとほ10ぷんです」の“とほ”は調べましたね。“あるいて”は習ったはずなのですが…。Tさんの「じゅぎょうがはじまるまえはいつもきんちょうする」は、翻訳ソフトかな。

期末テストが近づいたら、もう一度同じ宿題を出したいですね。そうすると、学生たちは自分たちがどれだけ力をつけたか実感できると思います。でも、そんな余裕、、あるかな…。

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違反者

10月16日(木)

前半の授業を終え、10時半に職員室に戻ると、事務のLさんからメールが届いていました。

「9:10ごろ、学校の筋向いのホテルの敷地で、午前クラスのKさんがタバコを吸っていました。授業後、校長先生からも厳しく指導してください」

学校付近のホテルや駐車場など、他人の敷地に無断で入ること自体、不法侵入です。また、新宿区は条例で路上喫煙が禁じられています。他人の敷地に不法侵入して喫煙するなど、論外です。このようなことはしてはいけないと、新入生オリエンテーション、毎学期のオリエンテーションで繰り返し伝えています。Kさんは「ホテルの敷地でタバコを吸ってはいけないとは知らなかった」と言ったそうですが、そんなの、言い訳にもなっていません。

さらに、調べてみると、Kさんは2006年生まれですから、堂々の未成年です。未成年の喫煙を禁じた法律にも違反しています。つまり、2つの法律違反を犯していることになります。これは有無を言わさず退学処分でもいいのですが、いちおう事情聴取することにしました。

授業が終わり、教室の後片付けをして職員室に戻ると、Kさんはすでに来ていました。

「どうして呼ばれたと思いますか」「ホテルでタバコを吸いましたから」「はい、そうですね。じゃ、学生証を見せてください」(Kさん、鞄から学生証を取り出す)(学生証の生年月日の欄を指さして)「Kさん、あなたは2006年生まれで、20歳になっていませんね」「はい」「日本ではタバコは20歳からです。知っていますよね」「…」「ホテルでタバコを吸うのもいけませんよね」「はい…。でも、知りませんでした」「そんなことはありません。毎学期オリエンテーションで言っています。今学期も言いました」「…」「それから、9:10ごろタバコを吸っていましたね。どうして教室へ行きませんでしたか」「ほかの学生の授業の邪魔をしてはいけないと思いました(遅刻したのに教室に入ろうとしない学生の言い訳の定番)」「関係ありません。遅刻した学生は、1秒でも早く教室に入ることが一番大事です。勉強よりもタバコの方が大事だったんですね、あなたは」「いいえ、違います」…。

このあと、なぜ未成年なのにタバコを吸うのかと聞きましたが、Kさんの日本語力ではさっぱり要領を得ませんでした。私の仕事が小一時間遅れただけでした。

そして、最後に始末書を書かせました。これは、来年の3月、Kさんが卒業するまでクラスのファイルに入れておきます。とはいうものの、その文章のひどいこと。スマホを使わずに書き上げた点はほめてあげますが、Kさんと同じ学期に入学した学生なら、もっとずっとはるかに明確に誠意と反省の気持ちが読み取れる始末書を提出してくれたはずです。

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みすみすミスをする

10月15日(水)

朝の授業前に、Hさんが、最終チェックをしてほしいと、B大学に出す出願書類を持ってきました。今週末が出願締切です。水曜日は午後授業ですから、Hさんが授業を受けている時間に、その出願書類に目を通しました。

見てみると、問題なしと言えたのが写真票と国の高校からの書類ぐらいで、あとはこのままB大学に送ったら確実に門前払いされるだろうと思われるほどの、不備だらけの書類でした。すぐにHさんの教室の前で待ち構え、休み時間が始まるチャイムが鳴るや教室に踏み込み、Hさんを捕まえました。そして、記入漏れ、明らかな誤記、見当違いの記載などを指摘しました。

午後授業が始まる直前、Hさんが書き直した書類を持ってきました。うーん、まだありましたねえ。というか、せっかく記入漏れを記入したのに、記入した事柄が間違っていたなんていうのもありました。初級の学生ならともかく、Hさんは上級の学生ですから、ここまでミスを重ねるとは思いませんでした。

確かにHさんはうっかりミスをしでかすタイプの学生です。しかし、こんなにまでミスが多いとなると、他の学生たちは果たしてまっとうな出願書類を提出しているのだろうかと心配になってきました。数年前、日本語学校からの書類が不要なのをいいことに、KCPの教師に誰一人相談もなくこっそり出願した学生が、書類不備で書類が突き返されてきて、こちらに泣きついてきたことがありました。見てみると、事前に見せてくれたら、その場ですぐに指摘できるような初歩的なミスを犯していました。

外国人が記入する書類ですからそれなりの配慮がなされているのでしょうが、それでも受験生にとっては難しいんでしょうね。こういうのこそ、AIに面倒を見てもらいたいです。

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目指せ35点確保

10月14日(火)

11月のEJUに向けての日本語プラスが始まりました。私の初日は、EJUの記述でした。記述クラスに出る学生の大半はレベル3か4で、記述が初めてです。ですから、EJUの記述とは何ぞやというところから授業を始めます。

EJUの記述は50点満点で、得点は5点刻みです(低得点域は10点刻み)。毎回、一番多いのは35点の得点者で、平均点は35点を少し下回る程度です。ですから、石にかじりついてでも35点は取ってもらわねばなりません。また、“いい大学”に進みたかったら、最低40点は必要でしょう。

KCPの受験生は、毎回平均点が35点を少し上回ります。今年6月のEJUでは、得点分布の山が2つありました。1つは全体と同じ35点で、もう1つは45点でした。45点の山は上級の学生ばかりかというと、必ずしもそうではありません。読解、聴解・聴読解は惨憺たる点数なのに、なぜか記述では45点を取っているレベル4ぐらいの学生が数名いました。そういう学生が、クラス授業でどの程度の文章を書いているかはわかりません。コツをつかんでいるのか、テーマがツボにはまったのか、何かあったのでしょう。

そういうような話をし、大枠の構成を説明し、本番と同じく制限時間30分で書いてもらいました。みんな一生懸命に課題に取り組んでいましたが、採点してみるとまだまだですね。20点ぐらいの人が多いです。EJU本番まで1か月足らずですが、どこまで追い上げられるでしょうか。来週からも厳しい戦いが続きます。

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