6月21日(土)
学生の作文は、最低2回は読みます。まず、誤字脱字、文法の間違いを訂正しながら読みます。そして、主張を理解すべく精読します。残念ながら、99%の作文は、間違いを直して初めて、学生の意見や考えが浮かび上がってくるのです。私は、この1回目の読みを、秘かに地ならしと呼んでいます。
私が今学期担当した作文は、上級の小論文でした。上級なら間違いも少なくて地ならしもすぐにすむだろうとお考えになるかもしれませんが、決してそんなことはありません。上級の学生にはプライドがありますから、難しい表現をしたがります。これがピタリと決まれば言わんとすることがすっと入ってくるのですが、そんなことはめったにありません。多くの場合が空振りか暴投で、地ならしをしないと「大変だ」ということぐらいしかわかりません。
「SNSを観察すると、動画や文章のタイトルが大抵同じだという結論を認める。」って、要するに、「SNSには同じようなタイトルの動画や文章が並んでいる」ということですよね。こんな文は中級の学生には書けませんが、原稿用紙2枚にわたってこんな文がてんこ盛りになっていたら、お腹いっぱいどころか吐き気を催してきます。だから、まず、吐き気を催さない程度の文にしておく必要があるのです。
そうやって浮かび上がらせた主張は、さすが上級だけあって、首肯できるものが多いです。結論を認めちゃった学生も、「言葉を正しく学び、多様な表現を身に付けることが、これからの社会をよりよくするために必要不可欠である。」なんて、まっとうな意見を述べています。
朝から急ぎの仕事をいくつもしましたから、まだ1/3ぐらいの学生の小論文しか読んでいません。でも、月曜日中には読み終われそうな光が見えてきました。
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