Category Archives: 試験

最後まで

8月12日(火)

中間テストがありました。レベル1は会話の中間テストもあり、先学期に続いて試験官を務めました。レベル1のしかも前半が終わったばかりですから、話せることはそんなに多くありません。

でも、「お国はどちらですか」ぐらいはわかりますから、それを聞きました。「中国です」と答えれば○ですが、「お国は中国です」だったら×です。「学校はどちらですか」「学校はKCPです」は○なんですがね。

それに続けて、「いつ、日本へ来ましたか」と聞くと、すぐに「七月に来ました」と答える学生もいる一方で、指折り数えて「ななげつです」と言ってしまう学生もいました。さらに日にちまで答えようとして、やはり指折り数えたあげく、「七月ごっか」などと間違ってしまう学生も数人。

もちろん、中には、「夏休みは鎌倉へ海を見に行きます」と、授業で習った表現を応用して答えた学生もいました。結構意外な学生もそんな答えをしていたのは、習ったばかりで忘れる前だったからでしょうか。

でも、一番差が付いたのは、「じゃあ、これで会話テストを終わります」と言った後の態度でした。逃げるように席を立つ学生、ぴょこんと頭を軽く下げる学生、「フーッ」と大きく息を突く学生、「ありがとうございました」と言ってから立ち上がる学生、十人十色でした。こちらが終了宣言をした後ですからこの部分は採点対象外ですが、やっぱり印象が違いますね。

これと似たようなことを、上級の学生が入試の面接の場でやっていないとも限りません。面接練習の場で、要指導です。

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筆鋒鋭く

8月9日(土)

火曜日に行った選択授業・小論文の中間テストの採点をしました。5日のこの稿にも書きましたが、グラフから何かを読み取って小論文にまとめるタイプから、グラフなしの問題に変更しました。問題の説明をした時点で学生たちは喜んでいましたが、それが文章にも現れていました。

グラフ読み取りの問題に比べて、学生の文章が生き生きとしています。筆(シャープペンシル?)の勢いが全然違います。600字という制限を大きく超える大作を著した学生も少なくありません。その大作も、水太りで字数だけ増えたのではなく、筋肉太りですから読みごたえがあります。

私が取り上げた題材が学生たちにハマった面もあるようです。ある事件に関する意見を求めたのですが、意見がほぼ真っ二つに分かれました。学生たちにとって、議論のしがいがあるトピックだったようです。この選択授業の初回に説明した小論文の構成に則り意見を述べてくれた学生が多かったです。

学生たちは、頭の中で考えたことを原稿用紙の上に表すことに関しては、かなりの能力を有していることがよくわかりました。しかし、しかるべき根拠を示して議論を展開するとなると、まだまだだと思わざるを得ません。根拠がないので、文末が「~だろう/かもしれない/ではないかと思う」など、断定を避ける表現が目立ちます。

ここを鍛えておかないと、本番の入試の小論文で痛い目に遭いかねません。EJUの記述試験なら、根拠なしでも点が取れますが、“いい大学”の小論文は、それでは勝てません。やはり、グラフで鍛えていくのが、今学期後半の小論文の課題です。

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発表

7月23日(水)

学校の中は明日のコトバデーの準備で右往左往していますが、私には午前中に発表になった6月のEJUの結果を取りまとめるという仕事が入ってきました。現時点では学校経由の団体申し込みのデータしかありませんが、コトバデーが終わった翌日の金曜日からは、個人で申し込んだ学生のデータも本格的に集めます。

さて、その団体申し込みの学生の成績ですが、日本語の第1位がCさんでした。Cさんはこの3月に卒業した学生で、現在I大学に通っています。残念ながら東京から離れざるを得ませんでしたが、東京の生活が忘れられず、捲土重来を期して26年度入試に挑みます。

私はCさんに、4年間雑音の入らない環境でみっちり勉強して、大学院で東京の大学を狙えと言って送り出しました。しかし、I大学を包み込む清澄なる空気に耐えられず、濁り切った東京の水を求めて、動き始めているのです。私は、I大学に入れたのなら、EJUで高得点を取るための受験勉強なんか、時間の無駄だと思うんですが…。

最上級クラスの面々は、その次ぐらいに位置しています。でも、言わせてもらうと、ちょっと物足りないです。学生たちの志望校を考えると、Cさん並みかそれ以上の成績が必要です。H先生の所には、さっそく難しい相談が舞い込んできました。明日の準備をしながら、学生の話に耳を傾けていらっしゃいました。

現在中級かそれ以下の学生の進路相談にも乗らなければなりません。こちらは持ち点がそれほどでもありませんから、より一層厳しい話になるでしょう。

何だか、明日のコトバデーが、束の間の息抜きに思えてきました。・

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秀作ぞろい

7月18日(金)

15日(火)の選択授業・小論文の時間に学生に書いてもらった小論文は、忙しくてなかなか読む時間がなかったのですが、放置3日目にしてやっと読むことができました。

先学期の選択授業・小論文は、何回注意しても原稿用紙の使い方がいい加減でした。そこで、今学期は、初回に原稿用紙の使い方をたたき込み、実際に書いてみて身に付けてもらおうと計画しました。ですから、初回のテーマは地球温暖化防止対策という、上級の学生にしてみればすでに何回も話し合ったり意見を書いたり発表したりしたことのあるものにしました。学生たちにも、内容の良し悪しよりも、原稿用紙の使い方に重きを置いて採点すると言っておきました。

読んでみると、原稿用紙の使い方そのものにミスがあった学生はごく僅かでした。口うるさく言った成果だと思いたいです。その代わり、誤字や誤解を生むような字形が目立ちました。これは、原稿用紙の使い方のミスがなくなったために浮かび上がってきたのかもしれません。原稿用紙の使い方はAでした。

語彙のレベルを上げるようにという注意もしておきました。こちらは多少怪しいのもありましたが、総じて言えば十分合格点があげられます。文法や語彙の誤用もあまりなく、読みやすかったです。

じゃあ内容はというと、これも水準以上でした。学生の頭の中に地球温暖化問題のネットワークができているのではないかと思いました。授業でさんざん取り上げられてきたテーマですから、それに関する文章を読んだり映像を見たり聴解問題として聞いたりしたことがかなりあるはずです。それを通して得た知識やデータなどが堆積し、活用できるまでに熟成していると見たいところです。

地球温暖化に関してはそうだとしても、実際の入試で今さら地球温暖化問題を取り上げる大学は少ないのではないでしょうか。他のテーマに関してもこれくらい書けるようになるには、地球温暖化と同じくらい時間と手間をかけて学生を鍛えなければならないのかもしれません。

学生が初めて取り組むテーマを与えたら、原稿用紙の使い方も語彙のレベルも文法も軒並みC以下になってしまうのでしょうか。そうすると、文字は日本語だけど文章は日本語ではないという“力作”にまみれる日々が麻痺構えているのかもしれません。

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地ならし

6月21日(土)

学生の作文は、最低2回は読みます。まず、誤字脱字、文法の間違いを訂正しながら読みます。そして、主張を理解すべく精読します。残念ながら、99%の作文は、間違いを直して初めて、学生の意見や考えが浮かび上がってくるのです。私は、この1回目の読みを、秘かに地ならしと呼んでいます。

私が今学期担当した作文は、上級の小論文でした。上級なら間違いも少なくて地ならしもすぐにすむだろうとお考えになるかもしれませんが、決してそんなことはありません。上級の学生にはプライドがありますから、難しい表現をしたがります。これがピタリと決まれば言わんとすることがすっと入ってくるのですが、そんなことはめったにありません。多くの場合が空振りか暴投で、地ならしをしないと「大変だ」ということぐらいしかわかりません。

「SNSを観察すると、動画や文章のタイトルが大抵同じだという結論を認める。」って、要するに、「SNSには同じようなタイトルの動画や文章が並んでいる」ということですよね。こんな文は中級の学生には書けませんが、原稿用紙2枚にわたってこんな文がてんこ盛りになっていたら、お腹いっぱいどころか吐き気を催してきます。だから、まず、吐き気を催さない程度の文にしておく必要があるのです。

そうやって浮かび上がらせた主張は、さすが上級だけあって、首肯できるものが多いです。結論を認めちゃった学生も、「言葉を正しく学び、多様な表現を身に付けることが、これからの社会をよりよくするために必要不可欠である。」なんて、まっとうな意見を述べています。

朝から急ぎの仕事をいくつもしましたから、まだ1/3ぐらいの学生の小論文しか読んでいません。でも、月曜日中には読み終われそうな光が見えてきました。

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採点デー

6月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。私の担当は、読解3クラス分です。1クラスは最上級クラスで、私が作った問題ですから、自作自演みたいなところがあります。残り2クラスは、今学期木曜日に入っていたレベル3です。こちらはO先生が作成された模範解答と採点基準に則って採点しなければなりません。

レベル3だと、答えの型を重視します。例えば、「なぜ~です(ます)か」「~はどうしてですか」など、理由を聞く問題には「~から(です)」と答えることになっています。「なぜ外国人観光客が増えているのですか」に対しては、「円安が進んでいるからです」と答えます。「円安の進行」ではマイナス2点です。

ところが、授業でやっているにもかかわらず、「円安の進行」タイプの答えが多いです。「円安が進んでいるからです」と答えた学生は、クラスの上位者ばかりでした。中位以下の学生は、テスト問題を見ると、心の余裕がなくなってしまうのでしょう。

それから、問題文から延々と抜き出した答えも困ったものです。解答欄が1行しかないのに、細かい字で3行分ぐらい書く学生が多くて、目が痛くなりました。自分のクラスなら“私が読めない答えは全部×”と宣言してしまうところですが、そんなわがままは許されません。目薬を差しながら採点しました。これも、上位者は必要なところを要領よくまとめています。

最上級クラスのテストは、授業内で考えたことや議論したことを中心に出題しました。ですから、自由解答みたいな問題がいくつかありました。読解の日に休みがちだったCさんはほぼ白紙、いつも真剣に聞いていたAさんやYさんはほぼ完答。期末テストは日本語力を判定するテストではなく、勉強したことを確認するテストです。ですから、模範解答はあるようなないような、上述の自作自演とはそういう意味です。

明日は、選択授業の小論文の採点をします。

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心配事

6月19日(木)

期末テストがありました。中間テストと同様に、レベル1の会話の期末テストもありました。学生にプレッシャーをかけるためでしょうか、期末テストは自分のクラスではないクラスの会話テストを担当しました。

テストですから、漫然とおしゃべりを続けるだけではすみません。今学期、特に後半に習った文型が使えるかどうかを、会話をしながらチェックしていかなければなりませんから、教師の方も緊張します。学生たちには習った文型を使って話すようにと伝えてありますから、こちらは話すきっかけを与えてあげます。

しかし、みんなそのきっかけを活かしてくれないんですねえ。「明日から休みですねえ。何をしますか」「明日、帰国します」「そうですか。国で何をしますか」「友達に会います。一緒に食事します。買い物します」といったやり取りになってしまいます。この会話、確かにコミュニケーションは成り立っています。使われている表現は、中間テストの時と変わりません。「友達に会って、一緒に食事したり買い物したりしようと思っています」というぐらいの発話を期待していたのですが、それができたのはわずかに1名でした。その学生はレベル1から3に上がろうとしていますから、できて当然です。いや、そのくらいできなかったら、レベル3は務まりません。

自分のクラスの学生ではない学生が相手でしたが、自分のクラスはどうだったのだろうと気になりました。昨日のクラスは楽しそうに会話練習をしていましたが、こういう形で聞かれた時に昨日勉強した表現がすっと出てくるでしょうか。とても心配です。

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大掃除

6月18日(水)

期末テストの前日、最後の授業日の先生は、その学期の大掃除をします。未返却のテストや宿題があったらそれを返して、必要ならばフィードバックもします。そのレベルで勉強することになっている授業内容をすべて終わらせます。学生から質問があったら、何でも答えます。「明日答えます」は許されません。学期休み中の注意事項を伝えるのを忘れてはいけません。

私のクラス(レベル1)は進度に余裕がありましたから、勉強したばかりの表現の応用として、レベル2でこんな言い方を勉強するよという、予告編みたいなことをしました。子の予告編がすんなりわかり、それに興味を示すような学生は、問題なく進級できます。教師の話を聞きとるだけで精一杯という学生はボーダーライン上です。どうにか上がれるでしょうが、レベル2で苦労することは想像に難くありません。

来学期の展望の一環として、7月に予定されているコトバデーの予告をしました。レベル1ですから、去年参加した学生はいません。アフレコの発表作を見せて、雰囲気を感じ取ってもらいました。そして、去年初級の学生が挑戦したアニメで実際にアフレコをしてもらいました。みんなセリフが速すぎると言いましたから、セリフのスピードを半分にしました。さすがにこれは間延びし過ぎて、かえってつまらなそうでした。

それでも、興味は持ってもらえました。明日の期末テストの後、2週間少々の学期休みをはさみ、新学期を迎えます。そうしたら、あっという間にコトバデーです。ここで種をまいておくことには、大いに意味があります。

種をまくと言えば、今学期受け持ったレベル1のクラス2つで、しっかり種をまきました。今年度の後半から来年度にかけて、中級か上級で実りが味わえると信じています。「今度はレベル4ぐらいの教室で会いたいですね」と、学生に別れを告げました。

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見失う

6月17日(火)

選択授業が終わって廊下に出ると、Sさんがいました。「先生、相談したいことがあるんです」「はい、いいですよ。どんなことですか」「私、何をしたらいいですか」。ちょっと穏やかな話ではありません。

「今度のEJUでいい点を取ろうと思って、一生懸命勉強してきました。でも、日曜日にEJUが終わってから何をしていいかわからなくなっちゃって…」「Sさんは、大学、どこに行きたいの?」「A大学です。でも、行けるだけの点が取れたかどうか、自信がないんです」。

行けると思ってA大学の独自試験に向けた勉強をするのが常道なのですが、そういう気が起きなのでしょう。だったら、最低どこに行きたいか、そこをしっかり押さえることだと思います。一番いけないのは、何の目標もなく、来月の半ば過ぎに今回のEJUの結果が出るまでだらだらと過ごすことです。SさんならA大学も決して夢ではありませんから、準備を進めていってもらいたいです。

毎年、この時期、燃え尽き症候群みたいな学生が出てきます。本物の燃え尽き症候群なら志望校に入った後ですが、こちらはそのはるか手前です。この先いくつも山や谷を越えなければならないのに、やる気を失ってしまっては話になりません。

幸い、SさんはJLPTを受験します。Sさんの力なら、N1合格は間違いありません。だから、いかに高い点数で合格するかにかけてもらいたいです。国際的外国語学習の基準のCEFRでC1とみなされる142点は取ってもらいたいです。

さあ、頭を切り替えましょう。

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楽しい授業の後で

6月16日(月)

月曜日のレベル1のクラスも、ついに最終回。楽しく盛り上がって終わりたいところですが、このくらす、進度が若干遅れ気味ですから、少しでも追いつくようにガンガン進めていかなければなりません。そういう時には、教科書をベターッとやっていくのではなく、学生が上のレベルになってからもなかなか使えるようにならない項目に力を入れます。いつの間にか身についていくような表現は、サラッと扱います。

サラッと扱うにしても、学生にとっては勉強すべき、覚えるべき事柄がたくさんあることには変わりありません。普通に教えていては頭の中に残りませんから、インパクトを強くし、印象付けることを考えます。体を動かしたり画像や動画を見せたりいつもとは違うクラスメートと話させたり、こちらも精いっぱい頭を使います。

レベル1も最後のほうになると、結構しゃべれるようになります。そうなると、教師もついうれしくなって、予定外の行動に出てしまうこともあります。その期待に応えて、こちらが用意した応用タスクをうまくこなしてくれたり、こちらの予想以上の反応を示してくれたりすると、うっかり調子に乗ってさらに余計なことまでしてしまうこともあります。でも、進度を稼ぐことが本日の第一使命ですから、そこは我慢しなければ。

という感じで、最後の授業も無事に終わりました。“よかった、よかった”といきたいところですが、授業後に先週のテストの再試を受ける学生がクラスの半分ぐらいいました。木曜日が期末テストですから、受けられる日が限られています。再試者が1人か2人なら、その場でフィードバックするのですが、これだけの人数となるとそういうわけにもいきません。全員分の答案を職員室に持って帰り、じっくり採点しました。

ここで頭の痛いことが。再試者の1/3以上が不合格なのです。授業中に私と一緒に調子に乗っていた学生も含まれています。授業、ちょっと軽すぎたかな。でも、勉強していないことも明らかです。先週のテストでは同じぐらいの点だった学生が90点以上で合格しているのですから、勉強不足と断じざるを得ません。

3日後が期末テストという時期に及んでこんなことでは、進級が危ういです。私たちこのクラスの教師にも責任の一端はありますが、学生自身が勉強しないことには、今後大きく伸びていく目はないでしょう。

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