Category Archives: 試験

再挑戦

1月8日(水)

あさってから新学期ですが、学生たちはぎりぎりの攻防を続けています。先学期の成績が振るわなかった学生に「もう一度同じレベル」という連絡をしたところ、どうしても進級したいという学生が何名か現れました。毎学期のことですが、今学期はお正月休みが長かったため、始業日の直前までごたごたが続いています。

Bさんは“もう一度”の連絡を受けた1人です。進級したいと訴えてきたため、一番点数の悪かったテストを受け直してもらうことにしました。もちろん、誰にでもこういうチャンスを与えるわけではありません。Bさんは意見を積極的に発表するなど、授業への貢献が大でしたし、授業中の活動を見る限り進級する学生に劣るとは思えませんでしたから、チャレンジさせようと思いました。結果は、こちらの期待に応えてくれました。

Cさんも同様に訴えてきました。授業中の発言などからは進歩が感じられました。しかし、Bさんに比べてどのテストも成績が劣り、特に文章力のなさが目立ちました。再チャレンジも意味不明の文が多く、あえなく失敗となりました。今学期は卒業の学期ですから、卒業証書が手にできるように努力してもらいたいものです。

Dさんも力及ばずでした。Dさんはすでに進学先が決まっていますから、無理して難しいことを勉強してわからないことを増やすより、先学期よくわからなかったことを確実に身に付けて卒業したほうが、進学してからのためになります。

まるっきり問題外のEさんからは、何の反応もありませんでした。本人も納得しているのでしょう。Eさんはこれから受験の本番ですから、それどころではないのかもしれません。

職員室には、新学期の教科書や教材が積み上げられて、学生たちを待ち構えています。

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大躍進

12月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。まず、聴解。Nさんの解答用紙には、最初の2問しか答えがありませんでした。その2問は正解だったのですが、あとが白紙では点数をあげようにもあげられず、あっさり不合格。日頃のNさんの様子を見る限り、2問しかできないなどということは絶対にありませんから、テスト中に寝込んでしまったのに違いありません。ほかは、よくできる学生が満点近くを取り、怪しい学生は合格点に届かず…という感じで、大きな番狂わせはありませんでした。

次は作文。Nさんの作文は2行で終わっていました。ここでも寝たのでしょうか。こんなに寝てばかりだとすると、どこか具合が悪かったのでしょうか。それとも、進級をあきらめたのでしょうか。受験で頭がいっぱいで、期末テストになんか、構っていられなかったのかもしれません。そうだとしたら、年明け早々の入試にぜひとも合格してもらいたいものです。

作文で驚かされたのは、Kさんです。今学期勉強した論理構成に則って、持論を堂々と展開していました。クラスの学生にこういう作文を書いてほしかったのですが、なかなか書いてくれませんでした。Kさんも書いてくれない1人でしたが、最後に立派な文章を書いてくれました。どんな授業も真剣に聞いているKさん、ついに華が開いたと言ったところでしょうか。

そのKさん、EJUでもやってくれました。今朝ほど公表された11月のEJUの結果によると、Kさんは6月のEJUに比べて、日本語の成績を60点以上も伸ばしました。地道に努力を続けてきたKさんの面目躍如です。そして、この時の記述の成績が40点。でも、昨日の期末の作文なら、50点取ってもおかしくないです。1か月前のEJUではできなかったことが、昨日はできたのです。大躍進じゃありませんか。

惜しむらくは、Kさんはすでに指定校推薦で進学先が決まっていますから、このEJUの好成績を活用する場がありません。でも、自信だけは持ってもらいたいですね。

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納税期

12月17日(火)

期末テストが近づくと、年貢の納め時の学生があちこちに現れます。中間テストの時は、まだ学期が半分残っている、期末テストで逆転して見せると、多少の余裕も見られます。追試再試の先送りもよくある話です。しかし、期末テストとなると、そんな余裕もなくなり、受けるべきテストの先送りも許されなくなります。未受験のテストは0点だったものとみなして平均点を算出しますから、そのせいでその科目が不合格になることだって十分あり得ます。

Gさんはその年貢を一生懸命納めようとしています。不合格だったテストを次々と受け、なんとか合格点にまでこぎつけようとしています。直前まで2階のラウンジで勉強し、1階に下りて来てテストを受けるという繰り返しです。覚え込んだことを忘れないうちにテスト用紙に書き込もうという魂胆です。瞬間最大風速みたいな点数を出して、ぎりぎりでも合格しようというつもりです。

その作戦が功を奏してか、このところ受けた漢字や表現のテストは、どれも合格点を取っています。平均点も合格点を確保しました。あさってが期末テストですから、そうやって無理やりにでも詰め込んだものが、多少は残ってることでしょう。図らずも期末テストの勉強にもなっているのです。

Gさんはそうやってどうにか年貢を納め切って、期末テストでひどいことにならなければ進級できそうです。その一方で、LさんやZさんは置かれた状況はGさん以上に厳しいものがあるのですが、動いてもいませんし、動く気配すら見せていません。進級をあきらめてしまったのでしょうか。Kさんも当落線上にいるはずなのですが、自覚が感じられません。私が買い物に出た時、恋人と腕を組んで歩いていました。

ここに登場したみなさん、果たしてメリークリスマスになるのでしょうか。よい新年を迎えられるのでしょうか。

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息つく間もなく

12月16日(月)

午前の授業の後は、まず、アメリカの大学プログラムの学生Mさんのオーラルテストをしました。先週金曜の日本の高校訪問がとてもよかったと言っていました。そこでは自分の地元の紹介など、大活躍をしたようです。来年、JETプログラムを利用して、東北地方の学校で働いてみたいと夢を語ってくれました。

その次は日本語プラス生物の授業をしました。今学期最終回は、ホルモンと神経の話です。バソプレシンとか糖質コルチコイドとかランビエ絞輪とか、学生たちが大嫌いなカタカナ専門用語がたくさん出てきました。しかし、確認テストはよくできていましたから、必要最低限の概念は学生たちに届いたというところでしょうか。

それが終わったら、Rさんの面接練習でした。Rさんは私のクラスの学生ではありませんが、いろいろな成り行きで面接練習を引き受けました。T大学の面接試験が今週金曜日に迫っています。

T大学に入りたいという気持ちが強すぎるのか、前のめりの姿勢で受け答えをしていました。今まで、自信なさげに前かがみで面接練習に臨む学生は大勢いましたが、Rさんのように、見ようによっては今にも飛びかからんばかりに受け答えをする学生は初めてでした。気持ちはよくわかりますが、ちょっと表に出し過ぎかな。でも、答えの内容は素晴らしく、どれ一つ取っても他の受験生の口からは出てきそうもない、オリジナリティーあふれる言葉の連続でした。本番もこの勢いなら、合格の可能性は十分にあります。

面接練習が終わって1階に戻ってくると、Gさんが待っていました。漢字テストの再試です。Gさんはどうしても進級したいと思っていますが、不合格の漢字テストがあります。それを受けておかないと、漢字が不合格で進級できないということもあり得ます。それでは困ると、受けに来たという次第です。再試ではどうにか合格点が取れましたが、これは期末テストの範囲でもあります。不安が全面解消したわけではありません。

諸々が終わったら、外は真っ暗。明日も同じような1日になりそうです。年末、最後の力を振り絞って、仕事をどんどん片付けていきます。

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望みはある?

12月9日(月)

Aさんは大学入試の面接が迫っています。EJUの日本語の点数はまあまあ以上ですが、話すのがよくありません。話せないわけではありません。早口なのと口をあまり開けずに話すのとが相まって、非常に聞き取りにくいのです。私は半年以上もAさんと付き合っていますから、Aさんの話し方に慣れています。そのため、Aさんの言わんとしていることがわかってしまうのです。しかし、大学入試の面接官は違います。Aさんの話し方では、10%も理解してくれないでしょう。そういうことを、夏の暑いころからAさんに伝えてきました。しかし、Aさんはどこ吹く風といった感じで、話し方を変えようとはしませんでした。

先週、面接練習をしました。その時、Aさんはその様子をスマホで録画・録音しました。そして、おそらく、自分で撮ったビデオを見たのでしょう。また、面接練習後のフィードバックで、話し方を今までよりもずっと強く注意されもしました。そんなことがあったので、その翌日から、Aさんは授業の際に例文など教科書を読む時には自分を指名してくれと申し出ました。今学期はやる気のなさが目立ったAさんでしたが、実際に指名してみると、本気を出して読んでくれました。

少しでも話す力を付けようとしての申し出なのですか、手遅れ感があります。早口で口を開けずにという話し方で固まってしまって、なかなか聞き取りやすい読み方にはなりません。「え、わからない。もう一度」と何回言われたでしょう。面接に間に合わそうという根性は買いますが、見通しは決して明るくありません。

もっと早い時期から厳しくしつけておくべきだったという反省は残ります。でも、面接までに残された時間で精いっぱい引っ張り上げるつもりです。

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11時に起きました

12月2日(月)

朝、教室に入ると、Gさん、Sさんの姿が見えませんでした。授業の直前にメールをチェックしましたが、2人からの連絡メールはありませんでした。Sさんは先週の金曜日も無断で休んでいますから、その理由を聞こうと思っていました。しかし、休まれてしまったらどうしようもありません。

前半の授業が終わり、職員室に戻り、メールを見てみましたが、やはりメールは届いていませんでした。めったに休む学生たちではありませんから、なおさら気になりました。

授業後はZさんとの面接、Uさんの再試の採点・フィードナック、日本語プラスの授業と、3時まで休む間もなく仕事が続きました。欠席者への連絡が遅くなってしまうことは気になっていましたが、面接などの方が優先順位が高いですから、後回しにせざるを得ませんでした。

そういうのがすべて終わって、まず、無断欠席が続いたSさんに電話をかけました。なかなか出ないので切ろうとした頃になってやっと「もしもし」。欠席理由を聞くと、「昨日JLPTの後で飲みすぎてしまいました」とのこと。金曜日は、うちでJLPTの勉強をしていたと言っていました。「明日から休まずに学校へ行きます」と言いますから、軽く叱って終わりにしました。

次はGさん。こちらはすぐに出ました。理由を聞くと寝坊だと言いますから、何時に起きたか聞きました。11時という答えが返ってきましたから、JLPTの打ち上げかと聞くと、少し小声で「はい」。11時まで目が覚めなかったということは、下手をすると、私が起きた時間ぐらいまで飲んでいたのかもしれません。また、GさんとSさんは同国人ですから、確かめるまでもなく一緒だったに違いありません。

2人とも、受験したレベルに合格したら、これは笑い話として聞き流してあげましょう。

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長期計画

11月26日(火)

大学の留学生入試には面接がつきものです。最近は日本人の大学受験生も、多くが総合選抜などの試験方式の一科目として面接試験を受けるようになりましたが、全体で見れば、留学生入試ほどの割合にはなっていないでしょう。大学側は、自分の大学で学ぶ留学生を慎重に選んでいます。

それは結構なことです。留学生は、中途退学すると、留学ビザが無効になりますから、直ちに帰国しなければなりません。覚悟の上での退学ならともかく、夢見たような学生生活が送れずに退学・帰国となると、精神的な打撃も計り知れません。そういうことが起きないように、自分の大学のカラーに合った留学生を選んでくれるのであれば、面接大歓迎です。

何の対策もせずに面接試験を受けたら、学生たちは答える要領がわからず、自分の力を発揮できないまま、不合格の通知を受け取らざるを得なくなります。そうならないために、先週から面接対策の授業を始めました。25年4月進学予定者はもちろん、26年4月を予定している学生も参加しています。

26年組は、まだ具体的な志望校はありません。漠然とした憧れレベルの志望校はあるでしょうが、大学研究も済んでいませんから、まだ夢物語の域です。でも、面接の質問は志望理由などの大学がらみばかりではありません。面接官が受験生を知ろうとする質問や、社会性を見る問いかけをすることもあります。そういう質問への準備は、今から始めておいても決して早すぎることはありません。

つまり、自分自身を見つめ直してほしいのです。自分にはどんな特徴があるのか、進学することでどんな道が開けてくるか、その道を自分はどのように歩むのか、そういったことを考えておけば、進学後の学びも主体的なものになるに違いありません。入学するや燃え尽き症候群を患ってしまったら、留学で広がるはずだった将来が、幻になってしまいます。

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メモ魔歓迎

11月16日(土)

中間テストの聴解を採点しました。すべて記号(番号)で答える形式でしたから、採点そのものは楽でした。できると思っていた学生は高得点を取り、授業中からダメっぽかった学生はせいぜいぎりぎり合格点で、結果はおおむね予想通りでした。

高得点の学生とできない赤点の答案用紙を比べると、メモの量が全然違いました。100点だったSさんも95点だったCさんも90点だったGさんも、みんな細かい字で聞き取った情報をメモしていました。80点以上だった学生は、ほとんどが、母国語であったとしても、メモ欄を大いに活用していました。

一方、最低点だったLさんをはじめ、不合格になった学生は、メモ欄がほぼ白紙でした。何も聞き取れなかったのかもしれません。Jさんは、授業中の様子を見る限り、満点に近い成績だろうと思っていたのですが、80点に届きませんでした。メモ欄は真っ白でした。Jさんもきちんとメモを取っていれば、高得点組に名を連ねたのではないでしょうか。

授業で聴解をするときは、メモを取るようにと口を酸っぱくして注意しています。しかし、ボーッと聞いているだけの学生は、どのクラスにも必ずいます。聴解問題には何を聞き取るのかという指示がありますが、それすら理解できず、だから何をメモすればいいかわからないという可能性もあります。そうなると、どこから指導していけばいいかわからなくなります。

とはいえ、中には聴解の天才がいます。数年前の学生Kさんは、ずっと集中して問題を聞き、決してメモを取りませんでした。そして、問題が終わるや否や、自分の答えの番号をマークしました。最後に採点すると、正答率は、悪くて9割でした。爪の垢をもらっておくべきでした。いや、聴解ですから、煎じて飲むなら耳の垢の方が効き目があるでしょうか。

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漢字難しい?

11月14日(木)

中級間テストの試験監督に入った上級クラスの最初の科目は作文でした。といっても、今学期の上級の作文は選択授業ですから、学生によって試験内容が異なります。20人のクラスに3種類の試験問題が混在していたため、最初はあわただしかったです。

そのあわただしさが落ち着いた後も、昨今はスマホ中毒の学生が増えていますから、試験時間が終わるまで教室中を油断なく見回らなければなりません。悪気がなくても、手が無意識のうちにスマホに伸びているということがあるのです。机の上に右手しか出していない怪しい学生が1人いましたが、近づいてみると、左手は太ももと椅子の間に挟み込んでいました。指先が冷たかったのでしょうか。

Kさんの横を通過した時、Kさんに呼び止められました。「先生、消しゴムを貸してください」とねだられました。「消しゴムも持ってこないで試験を受けるとは何事だ」と説教したいところですが、試験中ですから、「揚げます」と言って、黙って消しゴムを手渡しました。こういうことも予期して、試験監督に入るときは、消しゴムを数個持って行きます。それが役に立ちました。“備えあれば憂いなし”というのとはちょっと違う感じがしますが、ペンケースに忍ばせておいた消しゴムがKさんの元へと巣立っていきました。

せっかく消しゴムをあげたのに、その後のKさんの答案は空欄が目立ちました。最後の科目、漢字・語彙に至っては、試験用紙の裏側が真っ白でした。帰ろうとするKさんを呼び止めて「裏側は?」と聞くと、「全然わかりません」と言い残して、結局帰ってしまいました。

Kさんの、漢字・語彙以外の中間テストの答案用紙を見ると、気の利いたことを書いているではありませんか、ひらがなで。また、Kさんはこなれた日本語を話します。でも、漢字がここまで書けない読めないとなると、進学にかなり分厚い暗雲が垂れ込めていると言わざるを得ません。

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野分のまたの日

11月11日(月)

朝、教室に入ると、Yさんの姿がありません。Yさんは昨日EJUを受けているはずです。若干不吉な予感がしました。同じくEJUを受けたはずのGさんも9時にはいませんでしたが、そのうちこっそり教室に入ってきました。明るい表情で授業を受けていましたから、こちらはまあまあだったのでしょうか。

Yさんは、後半の授業が始まった直後に来ました。授業には普通どおりに参加していました。しかし、授業が終わってみんなが帰った後、「先生、もうダメです」と声をかけてきました。数学も理科もうまくいかなかったようです。でも、6月の点数が使える成績でしたから、それで勝負をかけることになるでしょう。

そこに加わってきたZさんも、数学で解けなかった問題があったという、あまり景気のよくない話をしてくれました。「理科はほぼ完璧だと思いますが、これでS大学に行けますか」「S大学は独自試験を重視するから、そっちの数学や理科ができれば可能性はあると思うよ」などという、進学相談もどきをしました。

職員室に戻り、メールをチェックすると、Bさんから志望校について相談したいというメールが来ていました。日本語プラスの授業後なら時間があると返信すると、すぐにそれでお願いしますと返事が来ました。

Bさんも、思ったほど点が取れないのではないかという心配をしていました。Bさんの志望学部は特殊ですから、出願できる大学が限られています。さらに成績が伸びなかったとなると、さらに可能性が狭まります。過去のデータを基に、最悪の場合、この辺の大学でどうかというアドバイスをしました。

うわさによると、理科系志望のWさんは、数学コース1を答えてしまったとのことです。これはもう絶望的です。幸いにも6月の成績が使えそうですから、最悪のパターンには陥らずに済みそうですが、Wさんはさぞかし気落ちしていることでしょう。今度会ったら慰めてあげることにします。

今シーズンの進学指導は、難問山積のようです。

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