Monthly Archives: 2月 2020

お久しぶり

2月29日(土)

4年に1度のうるう日でしたが、朝から卒業認定試験の採点、月曜日のオンライン授業の準備と、仕事ずくめでした。認定試験の結果が思わしくない学生が数名いたことが、ドライアイと肩こりと腰痛に拍車をかけています。一体何回目薬を差したことか、何回ストレッチを繰り返したことか。

そんな中、気持ちを和ませてくれたのが、卒業生のAさんでした。12年前に日本へ来て、10年前にKCPを卒業したと言います。来日したばかりの頃は本当に子どもだったのに、なんと、フィアンセを連れてきたのです。2人の様子を見ていると、お互いを信頼し合っているのがよくわかり、心が温まりました。

フィアンセは日本語がゼロで、KCPで勉強したいそうです。Aさんも、KCP入学時は日本語が全くわかりませんでした。その後、持ち前の“頑張り屋”をいかんなく発揮し、K大学に進学しました。K大学卒業後はS社に就職しました。そうそう、何年か前に、スピーチコンテストの審査員もしてくれましたっけ。

社会人としてもまれているだけあって、Aさんの日本語は実に自然でした。言葉や文法の選び方も、イントネーションやアクセントも、日本人と変わるところがありません。一般の日本人からすれば、まさしく“変なガイジン”でしょう。私たちは、よくぞここまで上手になってくれたものだと、ただただ感心するばかりです。

Cさんはおとといの卒業認定試験で漢字26点でした。欠席が多かったですから、当然の結果です。欠席理由を聞くと体調不良とかと言っていましたが、それは理由なしという意味でしょう。たとえ休んだにしても、うちできちんと勉強していれば、26点などという点数には絶対になりません。Aさんの頑張り屋魂を少し分けてやりたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

見えない授業

2月28日(金)

おとといから、新型肺炎の全世界新規患者数のうち、中国が占める割合が5割を切ったそうです。武漢市と湖北省を犠牲にして中国全体を守ったようなものだと評しているジャーナリストもいます。日本はウィルス検査も満足にできない状況が続いており、漠然とした不安が上空に漂っています。

この漠然とした不安を取り除くのは、理詰めな説明や解説ではありません。頭では理解しても、心のもやもやが晴れることはないでしょう。安心感を与えるほかはないのですが、具体的にどうすればいいのかとなると、安倍さんもだれも、確たる答えを持ってはいません。

学生たちに安心感を醸し出せるかどうか自信はありませんが、KCPもオンライン授業を開始し、学生たちが満員電車に乗らなくてもいいようにしました。昨日の夜は、その準備で全教職員が大わらわでしたが、そのおかげか、初日は大きなトラブルがないまま切り抜けられました。

学生たちも期待していたのでしょうか、初級から超級までかなりの出席率でした。初日は珍しさも手伝ってという面もありますから、授業内容の真価が問われるのは来週からです。飽きられて昼間で寝ていられたり、形式的に接続しただけで実質的に何もしなかったりなどということが起きては困ります。

そういうことを起こさないように、頭をひねり、腕を振るうのが教師の役割です。月曜日は私がカメラの前に立ちます。目の前にいない大勢の学生に対して授業をすることには慣れていませんが、どうにか引っ張っていかなければなりません。教材を厳選し、教案を立て、いつもの数倍気合を入れて授業に臨みます。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

10校も

2月27日(木)

お掃除のHさんのお孫さんは、10校に受かったそうです。第一志望はM大学だったそうですが、そこを含めて多くの大学に連戦連勝でした。定員厳格化の中、超勝ち組と言っていいでしょう。

お孫さんが何を勉強しようと思っているのか、どんな大学の選び方をしたのか、その辺のことは全然わかりませんが、ぜひともお話を聞いてみたいです。日本人と外国人留学生とでは、入試方法をはじめ条件が違います。それでも、どこかに何か秘訣のようなものがあるような気がします。

今シーズンのKCPの学生たちは、あと一歩が踏み込めず敗れ去った例が目立ったように思います。逆に、ほんのちょっとのアドバイスが功を奏して合格に結び付いた学生もいました。落ちた学生と受かった学生と、私の目には甲乙つけがたく映っても、面接官の目は私とは違う視点視座、別の座標軸価値観から学生を評価し、甲乙をつけているのです。この視点視座座標軸価値観を知ることができれば、百戦危うからずになるんですがね。

Yさんが、N大学に進学することにしたと報告してきてくれました。N大学は今までにも多くの学生が挑戦していますが、なかなか合格させてくれませんでした。Kさんも受かりましたが、YさんやKさんのような向上心も向学心も強い受験生を合格させたということは、N大学は受験生を非常によく見ているという気がします。資質のある学生を、そのレベルにまで引っ張り上げなければならないとなると、こちらとしては荷が重いです。

昨日はSさんがM大学の大学院に合格したと報告してくれました。面接練習で、何回も一番弱い点をぐりぐり突っ込んだ甲斐がありました。同じように面接練習でいじめ倒したWさんが受かってくれれば言うことなしなんですが、果たしてどうでしょう。結果は、来週です。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

 

何を書いたのかな

2月26日(水)

今学期の超級クラスは読解が選択授業です。小説、論説文、エッセイと分かれて授業をしてきました。明日の卒業認定試験を前に、その読解の認定試験をしました。

私が試験監督をしたのは、エッセイのクラス。今学期は、「“その”が指すのは何ですか」みたいな授業ではなく、文章全体を大づかみにして、筆者独自の視点や主張を読み取るということをしてきました。テストも、当然そういう問題にしました。選択式ではなく、筆答式の問題ばかりにしました。学生たちにとってはきつい問題かもしれないと思いながらも、こういうことをやってきたのだから、その力がどれだけついたのかを測る問題にしようと、初志貫徹しました。

試験問題を配ると、学生たちは一瞬顔を引きつらせましたが、すぐに問題に取り掛かり、黙々と答えを書いていました。解答欄を広めに作ったつもりでしたが、解答欄に書ききれず余白に続きを書く学生が何名もいました。もちろん、ただ本文を引き写しただけでは長い解答でも意味はありません。本文を自分なりに咀嚼できているかどうかを、採点基準にしようと思っています。

時間前に提出したSさんやCさんの答えを見ると、ちょっと期待外れの面もあれば、よくやったとほめてやりたくなる答えもありました。それ以外の学生も、あきらめて端から机に突っ伏してしまうことはありませんでした。少なくとも、最後の問題まできちんと解いていました。

このテストでは、授業で配ったテキストは持ち込んでもいいことにしました。そこにどんなメモが書かれていたとしても、それはその学生が授業を真面目に聞いていた証であり、そのメモが多い学生が有利になるのなら、理にかなっています。Wさんのテキストは特に書き込みが多いようでしたから、うならされる答えが書かれているのではないかと期待しています。

テストが終わって解答用紙を集めると、かなりのボリュームを読まなければならないことがわかってきました。卒業認定がかかっていますから、悠長に構えているわけにもいきません。

明日は文法と文字語彙の試験です。こちらもある期待寄せて問題を作っていますから、採点が楽しみです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

明るい街

2月25日(火)

うちの近くのコンビニが、今月から深夜営業をやめています。コンビニ店員が集まらず、深夜営業が厳しくなっているというニュースはだいぶ前から耳にしていましたが、自分の身近なところでその影響が出るとは予想外でした。私はコンビニのヘビーユーザーではありませんから、深夜の1時から朝の6時まで5時間コンビニが閉まっても大きな影響はありません。そもそもその近辺はコンビニ過密地区で、このコンビニが休んだところで、徒歩1~2分範囲に3軒のコンビニがあります。だから、1軒が深夜営業をやめたところで、よほどそのコンビニのコーヒーとかお弁当とかが好きでないかぎり、困ることはありません。

深夜営業をやめることで人件費は節約できそうです。しかし、店の照明はつけっぱなしですから、電気代の節約にはなっているようには見えません。まあ、今はLED照明でしょうから、照明の電源を落としたところで大した節約にはならないのかもしれません。

でも、やっぱり気になります。もったいないなあと思ってしまいます。同じことが、コンビニのそばのショッピングモールにあるドラッグストアにも言えます。こちらは夜の9時から翌朝10時まで閉店なのですが、私が帰る時間にも、出勤する時間にも、店内の照明が煌々とついていることがあります。また、回転寿司屋も、1か月に2日、従業員のために休業にしていますが、その2日は、どういうわけか、店の照明はつけっぱなしです。

夜中に明かりがあると安心すると言いますが、これらの店のまわりには街灯が明々とついています。上述のように、付近に開いているコンビニがたくさんありますから、その店の明かりが消えたところで急に寂しくなるわけではありません。

せこい話で恐縮ですが、最近気になっていることです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

口は雄弁に

2月22日(土)

教室にマスクが目立ちます。コロナウィルスに感染しないようにということなのでしかたがありませんが、授業がやりにくいです。まず、学生の声がこもってしまい、聞き取りにくいです。学生の発言を聞き返すことが増えました。その分、授業がスムーズに流れなくなります。

そんなことよりも、口元を隠されると、こんなにも表情が読めなくなるものかと、逆に感心しています。学生がわからなさそうな顔つきをしていたらもう少し説明を加えるとか、楽しそうにしていたらその活動を少し延長するとか、そういった現場での授業の微調整がしづらいのです。そこまでいかなくても、目の前の学生たちが何を考えているのかつかみにくく、商売がやりづらいことこの上ありません。

火曜日だったと思います。午後、食事に出たら、「先生、こんにちは」と学生に声をかけられました。その学生はマスクをしていましたが、わざわざマスクを取ってくれました。そのおかげで、声の主が初級で教えたMさんだとわかりました。とてもさわやかな印象でした。顔を全部見せるって、コミュニケーションの上で重要なんだと感じさせられました。

今朝の新聞に、マスクで顔を半分隠す習慣が、コロナウィルスの流行が収まってもそのまま日本に定着するのではないかと出ていました。マスクをすることによって心を隠し、安心感を得るのでしょう。でも、マスクをして感情を見せなくした群衆から受ける圧迫感はそれ以上だと思います。塵も積もれば山となるで、日本社会全体が不安定な方向へ傾くんじゃないかと心配しています。

関東地方で春一番が吹いたそうです。この強風でウィルスを吹き飛ばし、活力のある社会を作り直したいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

インタビュー

2月21日(金)

Lさんは京都の大学への進学が決まっています。そのきっかけとなったのが、夏に京都の大学のオープンキャンパスを見に行くツアーに参加したことです。午後、そのツアーを主催した京都の団体が、今年の夏に行う予定のツアーのプロモーションに使う動画を撮りに来ました。

動画と言ってもLさんへのインタビューが中心で、向こうの担当者からの質問にLさんが答えるという形で撮影が進められました。Lさんにはだいぶ前に知らせておいたのですが、約束の時間のかなり前からちょっと目が泳いだような顔つきでラウンジにスタンバっていました。

インタビューが始まっても、明らかに緊張した表情と声で受け答えをしていました。しかし、答えの内容は立派なもので、インタビューの聞き手の方も感心していました。日本語教師的に評価すると、単語で答えることが全くなかったのと、主語と述語が食い違うねじれ文もなかった点に、心の中で思わずガッツポーズをしてしまいました。時々言いよどむこともありましたが、話が変な方向へ進んでしまうこともなく、言いたいことがよくわかる答え方をしていました。

普段見ていると、進学してから日本人に伍していけるかなあと感じさせられていましたが、いざとなったらしゃべれるものなのですね。学生たちは私たち教師が知らないところで成長していくものなのです。いや、成長していくだけの力があったからこそ、大学に合格したのかもしれません。

夜、3年前に京都の大学に進学したJさんが、就活だと言って顔を見せてくれました。もう少し正確に言うと、昼間から怪しげな人影がロビーをうろちょろしていたのですが、誰なのかわからず放っておきました。改めて呼び出され、声を聞いたらJさんだとわかりました。一回りやせて精悍な顔つきになっていたので、すぐにはわからなかったのです。話を聞くと、かなり密度の高い学生生活を送ってきたようです。第一志望の大学に進学できたのですから当然の結果かもしれません。

3年後、LさんもJさんのように充実した学生生活だと報告してくれるでしょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

大遅刻

2月20日(木)

10時2分、学生たちに文法の問題をやらせていると、ドアが開き、Yさんが入ってきました。1時間2分の大遅刻ですが悪びれる風もなく、空いていた席に着きました。学生たちが取り組んでいるプリントを渡すと、当たり前のごとくそれを受け取り、問題に取り組み始めました。

YさんがK大学に受かったのは先月のことでした。日本語ゼロでKCPに入学し、コツコツ努力を重ね、超級レベルに上り詰め、そして、名門大学に合格したのです。Yさんに関わったすべての先生が祝福し、Yさんも少しはにかみながらそれに応えていました。

しかし、Yさんが休み始めたのはそれからです。やや病弱なところがあり、それまでにも学校を休んだことはありましたが、平気な顔で遅刻したり、欠席理由が寝坊になったりし始めたのは、合格からです。受かるまでは、悲壮感を漂わせながら授業に食らいついていましたが、今はタガが緩み切った表情をしています。

毎年、志望校に合格してから株が下がる学生はいますが、Yさんの落差は屈指のものです。K大学合格までYさんを応援していた先生方が最近のYさんの姿をご覧になったら、さぞかし落胆なさるでしょう。私も初級でYさんを受け持ちましたが、今のYさんはまるで別人です。燃え尽きたというのとも違います。

HさんもLさんもJさんも株価低迷組です。人はどうして何かに挑戦し続けないと堕落してしまうのでしょう。ひたむきに挑む姿は美しいですが、望みがかなった後にこそ、その人の本性が現れるのだとしたら、汗の結晶の輝きはかえって罪です。

午後は年末までだらけていたWさんの3回目の面接練習でした。今までになく目が真剣でした。力が伸びてきている感じがします。期待していいのでしょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

お金持ち

2月19日(水)

今シーズンの受験も終盤戦です。国立に勝負をかけている学生はともかくとして、去年のうちから受けているのにまだ決まっていない学生もいます。また、どうしてもこの3月で出たいけど、どこにも入れないでいる学生も何人か聞いています。志望校に受からなかったら帰国と、自ら背水の陣を敷いているプライドの塊も見かけます。

そんな中、W大学の先生に会いました。まだ進学先が決まっていない学生がいるという話をすると、「ぜひうちの大学に送り込んでください」と。授業料減免もするから、そういう学生に薦めてほしいと言って、要項をくださいました。

どんな学生でもいいのかというとそうではなく、経費支弁がしっかりしていることという条件を付けられました。つまり、家にお金がある学生なら歓迎するというわけです。アルバイトに走らなければ、きちんと教育すると言いたいのでしょう。

私がKCPに勤め始めたことは、“学生=貧乏”という不動の方程式がありました。アパート、学校、バイト先の3地点に囲まれた地域を、魔のトライアングルとも呼びならわしました。怪しいアルバイト先を確認しに行ったり、勉強とアルバイトとどちらが大事なんだと学生に迫ったりしたものです。今も、もちろん、アルバイトをしている学生はいますが、アルバイトに生活が懸かっている学生はいません。

今は、着たきり雀みたいな学生もいなくなりました。持ち物が豪華になりました。着ているものがおしゃれになりました。Cさん、Oさん、Sさん、Yさん…毎日しゃれた格好で登校してくる学生は枚挙にいとまがありません。そんな経済力を見ると、W大学が要求する基準は満たせそうです。学生の中には、日本に残るためにW大学進学を選ぶ人もいるかもしれません。そんなときのために、友好的に笑顔で接しました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

これから出願

2月18日(火)

中間テストがありました。しかし、3月卒業予定者は、来週卒業認定試験がありますから、別メニューでした。私も、日本語教師養成講座の講義を担当しましたから、試験監督には入りませんでした。

養成講座の前半の講義を終えて、職員室に戻りがてら卒業予定者の別メニューの教室をのぞこうとしていたら、Sさんがその教室に入ろうとしました。コートを着てかばんを持っていましたから、“ちょっとトイレ”というのではなさそうでした。朝寝坊して今やっと学校に着いたという風情が漂っていました。私と目が合うや気まずそうな顔をして、教室に入っていきました。

養成講座が終わって職員室でコンピューター仕事をしていると、Sさんが、出席成績証明書がほしいと言ってきました。出席成績証明書は、先々週あたりに一度出しているので、その時に出願した学校はどうなったかと聞くと、落ちたとのことでした。それで、今から間に合う学校に出願するために証明書を申し込んだというわけです。

Sさんは優秀な学生です。教室では積極的に発言し、その発言も的を射ています。それゆえ、クラスメートもSさんの発言に注目しています。ただし、これは、Sさんが学校へ来た日のことです。そうです。Sさんの最大の弱点は、出席率が悪いことです。筆記や面接でどんなに点を稼いでも、今のご時世、出席率が低かったら絶対に受かりません。Sさん自身もその点は自覚していますが、どこかなめてかかっているところがあり、教師にどんなに注意されても、遅刻や欠席を繰り返します。あんなに頭がいい学生なのに、どうして過去から何も学ばないのだろうと不思議に思います。

もう後がありません。「頑張れ」と言ってやりたいところですが、みんなで声を合わせて言ったところで、向こうが出席率の数字で切ってきたら、それでおしまいです。「後悔先に立たず」を学んで国へ帰るなんてことにならないように祈るしかできません。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ