Monthly Archives: 10月 2021

疲れ目

10月30日(土)

1か月ぐらい前から、ドライアイがひどくて困っています。眼科で診てもらったら、目に塗る軟膏を処方されました。小さなチューブに入った軟膏ですが、薬剤師さんに塗り方を尋ねても、「さあ、どうやって塗るんでしょうかねえ」と言いながら、軟膏に添付されている説明書をくれました。その薬剤師さんも、実際に患者に目の軟膏を渡すのは初めてだったんでしょうね。

もらった説明書によると、あかんべえをして、その“あか”の部分を目がけてチューブから軟膏をほんの少し押し出し、軟膏が“あか”に載ったら瞬きをして伸ばすのです。やってみると、“あか”に軟膏を載せるのは、思ったよりずっと簡単でした。目に何かを入れるということに対して、初回は恐怖心を覚えましたが、今はもう平気です。しかし、軟膏を入れて瞬きをすると、目がかすんで視界がうすぼんやりとしてしまいます。そりゃあそうですよ、軟膏なんてしょせんは脂薬なんですから。だから、軟膏は寝る直前に入れることにしています。

そんな苦労をしてドライアイが改善したかというと、そうでもありません。日中はしょっちゅう目薬を差しています。ドライアイがよくならない最大の原因は、学生たちからの提出物です。テストの採点、例文や宿題のチェック、作文の添削など、日々目を酷使しています。きれいな字ならまだしも、汚くて乱暴な字を解読しなければならない場合がほとんどです。濁点があるのかないのか、漢字がきちんと書けているか、ふりがなは間違っていないか、文法的に正しいか、文脈がちゃんと通っているか、そういったことを細かく見ていき、誤りがあれば訂正していくとなると、目も疲れますよ。

さて、これからおとといの文法テストの採点再チェックです。それが終わったら、学生の出願書類のチェックが待っています。

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メトロポリタン口

10月29日(金)

課外授業で、池袋の防災館へ行きました。感染状況が落ち着いてきたので、本当に久しぶりに学校の外へ出ようということになったのです。読解の時間で地震に関する教材を扱い、実際に災害に見舞われた際にどう行動するべきか、それを学びに行きました。

まず、学生が集まりませんでした。中級の学生ならたやすく見つけられるだろうと思って、集合は池袋駅メトロポリタン口としました。しかし、集合時刻までに姿を現したのは半数以下でした。多くの学生が朝から池袋探検をしたようです。新宿から池袋まで、スマホに言われたからでしょう、湘南新宿ラインに乗ろうとした学生がいました。ところが、今朝は運転見合わせとなってしまいました。「どうしましょう」という電話が入りました。山手線で行くという知恵が回らなかったのです。東京で暮らしていけるか、不安になりました。

ゆとりを持って予定が組んでありましたから、防災館の約束の時間には間に合いました。グループに分かれて体験+見学です。私のグループは、最初に地震のVRを見ました。作り物だってわかっちゃいるけど、迫力は感じました。今から玄関につながるドアが開かないとき、どうしようって思いました。

震度7の体験は、それ以上でした。緊急地震速報の、あの不吉な電子音とともにテーブルの下に身を隠しました。しかし、震度7の揺れだとテーブルの天板に頭がぶつかるんですねえ。ヘルメットや防災頭巾の意味がよくわかりました。

学生たちはみんな、消火器の使い方などの訓練に真剣に取り組んでいました。不幸にして地震や火事などが襲ってきたときの対処法は、身につけたとは言えないまでも、考えるきっかけにはなったはずです。学生たちにとって、苦労してメトロポリタン口までたどり着いた甲斐はあったと思います。担当のA先生、お疲れさまでした。

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中断

10月28日(木)

テストがある日は、朝一番で出席を取ったらすぐに実施します。授業の後半などというと、それまでの授業は上の空になってしまいます。同じ話をテスト後に繰り返す羽目になりかねません。

出席を取り、毎朝実施している漢字復習テストを済ませ、真打登場という雰囲気で、9:40ごろから今学期このクラス初めての文法テストを始めました。学生の机の間を前に後ろに、右に左に見て回り、答え方が間違っている学生にそれを指摘したり、学生の誤答に落胆したり、微妙な答えに採点の難しさを憂えたり、肉体的にも精神的にも忙しく立ち回りました。もちろん、不正行為未然防止という意味もあります。

そんな中、学生たちが突然、「先生、地震」と言いながら、いくらかおびえた目つきで私を見上げました。地震は立っている人より座っている人の方が感じやすいと言われますが、私は全く感じませんでした。「はい、こんなの、地震のうちに入りませんよ。テスト、テスト」と、テストを続けさせました。何人か、スマホで地震情報を確かめようとした学生もいましたが、それに乗じてカンニングしようという学生はいませんでした。私がスマホ中毒とみているSさんすら、すぐにテストに復帰しました。でも、ここで集中力が途切れてしまったことは確かなようで、少しだけ時間を延長してやりました。

その後は何事もなく授業を進めていきました。会話の授業の最後に、グループで話し合ったことをまとめて発表してもらいました。その最中、感染防止で全開にしていた窓から、「地域のために働いております〇〇××でございます」と、大音量の連呼が入り込んできました。「ごめんなさいね、日本は今週いっぱい、選挙だから…」と謝っておきました。地震も、「ごめんなさいね、日本はプレートの端っこが集まっていて、地震が多いんですよ…」とでも謝っておけばよかったかな。

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首の皮一枚

10月27日(水)

秋が深まるとともに、出願もたけなわとなってきました。そうすると毎年のように問題になるのが推薦の扱いです。大学の指定校推薦は募集人数も少なく、かなり厳しい基準が設けられていますから、私たちが面接して、学校として推薦する学生を決めます。そうやって厳選したつもりでも、指定校推薦で合格が決まった学生が不行跡を重ねる例が皆無とは言えません。

専門学校の場合、大学の指定校推薦に近い推薦制度を有している学校もありますが、出願に必須の書類として推薦書を挙げている学校が、もしかすると大多数と言ってもいいかもしれません。専門学校の心中を勝手に想像すると、通っている日本語学校との間に、推薦書を書いてもらえるくらいの関係が築けていれば、うちの学校に入ってからも大きな問題を引き起こさないだろうと考えているのでしょうか。逆接的に、推薦書すら書いてもらえないような学生は、相当質の悪い学生だという判断なのかもしれません。

多くの学生が引っかかるのが、出席率です。Oさんはかろうじて出席率の基準をクリアしました。ほぼ全学生が、レベルが上がるにつれて出席率は下がりますから、かろうじてクリアということは、初級の頃の貯金で滑り込んだということです。直近の数値ではアウトです。また、例年ならビザ更新後の出席率も考慮するのですが、Oさんも含めて、今年はビザ更新をした学生がほとんどいません。Oさんはこの点でも救われています。

このまま推薦したのでは相手方に対して不誠実です。ですから、Oさんには今後出席率が基準を下回るようなことがあったら、出願校に連絡して推薦を取り消すという条件を付けることにしました。

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カッコつけない

10月26日(火)

私が火曜と金曜に受け持っているクラスに、今週から大学の日本語学科の実習生が2名入っています。授業を見てもらうのですが、果たして私の授業の進め方が役に立つのやら。

大学や養成講座の方に授業をお見せするのは今までに何回もあり、特別なことではありません。初めの頃は多少なりともお手本にある授業をしようなどと思ってもいましたが、今はそんなことは全く意識しません。反面教師も教師のうちと、開き直っています。

でも、見てもらいたい、気付いてほしいポイントはあります。“ここだよ”と心の中で叫びながら授業をすることもまれではありません。実習生の書いた実習ノートにこちらの伝えたかった思いが記されていると、思わずニンマリしてしまいます。それについて何も書かれていないと少し寂しくなりますが、だからと言ってその方の評価を落とすわけでもありません。教師だって十人十色です。私のカラーに近い人もいれば、対照的な人もいます。

さて、今回の実習生は大学生。若いうえに、理論を学んだばかりですから、教科書をいかに教え切るかが発想の中心ではないでしょうか。私のスタイルは、特に中級以上では、教科書をガイドブック代わりにそぞろ歩くように授業を進めていきます。授業が終わった時に帳尻が合っていればいいという発想です。実習ノートを見ると、戸惑っていた様子が感じられました。学生に文法の例文を読ませた後に、突然発音指導が始まっちゃうんだもんね。漢字の時間に「ワシントン条約って何?」とか聞いちゃうんだもんね。

実習は来週まで続きます。今度、このクラスに入るときは、この2名、どのくらい成長しているでしょうか。目の付け所を観察したいです。

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早くしてくれ

10月25日(月)

11月のEJUの受験票が届きました。学校を通して団体受験申し込みをした学生の分です。届いたのが授業の始まった後でしたから、学生本人に手渡すのは明日になります。ここまでくれば、よほどの天変地異でもない限り、中止ということはありえないでしょう。

しかし、学校としては、まだ胸をなでおろすわけにはいきません。11月までの来日を見込んで日本国内での受験を申し込んだ学生たちが、まだ誰1人として入国できていません。11月14日の本試験を受けようと思ったら、今すぐにでも来日しなければなりません。11月30日に設定された追試験を受けるにしても、待機期間を考えると、11月15日には来日していないといけません。

一刻も早く政府に動いてもらいたいところですが、現在、衆議院選挙の真っ最中で、動ける状況ではありません。どんなに早くても31日の投票日後ですから、11月14日の本試験受験は絶望的、30日の追試験も黄信号かもう少し赤っぽい中央線のラインの色ぐらいでしょうか。

感染状況がひどくない国からの留学生は、ワクチン接種済みを条件に待機期間を5日間ぐらいにしてくれたら、多少は望みが出てきます。でも、そういう政策は取らないでしょうね、政府は海外からの留学生に冷たいですから。自民党がボロ負けして政権交代などとなったら、留学生の入国なんかかすんでしまいます。自民党が勝っても、まず経済政策とか言って、やっぱり後回しにされてしまうでしょう。どちらに転んでも、明るい兆しは見えてきません。菅さんが夏あたりに抜き打ち解散とかしておいてくれたら、今ごろは多少落ち着いて、「そういえば、留学生も入れなきゃね」などとなっていたかもしれません。

本人に渡らないかもしれない受験票の入った水色の封筒を見るのは、心が痛みます。

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また?

10月22日(金)

朝からさっぱり気温が上がらず、日中は10度か11度あたりをうろちょろしていました。12月並みの寒さだそうです。教室は、学生が暖房を入れていました。感染予防のため窓を開けていますから、教室内の気温も10度台前半だったかもしれません。

寒さのせいなのか、私のクラスは欠席が目立ちました。あまり体が丈夫ではないと引き継がれている学生が休んでいます。「解熱剤を飲めば熱は下げられます」と言って学校へ来ようとした学生もいましたが、そこまで無理をするなと止めました。受験を控えていますから、気になる兆候です。

Yさんは出席率が危険水域なのに、休んでしまいました。もう休み癖が付いていますから、教師が騒いだところで効き目がありません。でも、放置しておくわけにもいきません。担任教師がお手上げならば、私が動く番です。それでも行状が改善されなかったら、自分自身で責任を取ってもらうほかありません。

Yさんが成績優秀なら、まだどうにかなる可能性もありますが、残念ながら、その目は薄いようです。そういうことがわかっているのかなあ。自分で自分の首を絞めている、自分の手で自分の将来の扉を閉ざそうとしているということに気付いていないのです。

毎年のことですが、Yさんのような学生に、来学期、私たちは手を焼くことになります。今年の1月期もそうでした。Yさんは学校に隠れて受験しているようだという噂を聞きつけています。こんな隠密行動がうまくいったためしがないのに。でも、何にも見えないんですよね。

天気予報によると、週末はいいお天気のようです。秋晴れの程よい日差しを浴びて、みんな元気になってくれるかな。

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変心

10月21日(木)

「はい、じゃあ、15分休みましょう」と休憩を宣言するや否や、Sさんがやって来て、「先生、昨日の漢字テスト、今受けてもいいですか」と、追試を受けさせてくれと言うではありませんか。他の学生なら驚くほどのことではありませんが、Sさんが自ら進んでテストを受けようとするなんて、にわかに信じがたいことでした。

先学期のSさんは、興味のあることしかしようとしませんでした。その興味とは進学であり、進学に直接かかわりのあること、例えばEJUの勉強以外は、無視を決め込んでいたのです。平常テストは、まともに勉強したとは思えないような成績でした。オンライン授業中は、出席を取るとき以外、指名してもろくな反応が返ってきませんでした。おそらく授業とは無関係な問題集か何かに取り組んでいたのでしょう。ブレイクアウトセッションには、参加したためしがありませんでした。授業で扱うような話題について話す気などなく、グループ内に存在しているだけというありさまでした。

それが、先学期は一言もしゃべらなかった自己紹介で、ホワイトボードの前に立って1分ぐらい自分を語っていました。指名されても、的外れな答えをすることがなくなりました。ペアの会話練習では、ちゃんと相手の目を見て話していました。そして、“テストを受けてもいいですか”です。確かに、テストの日に欠席したのは褒められたことではありませんが、自分でその後始末をしようとしたのですから、大躍進です。

何がSさんをそうさせたのかよくわかりませんが、この前向きな精神状態をキープしたまま受験に臨んでもらいたいです。教師としては、うれしいやら、どこでこけるか気が気ではないやら、おっかなびっくり対処しています。この前向きな精神状態のままで、合格まで突っ走ってほしいと切に願っています。

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彼女は悲しげな表情で去っていく彼に手を振った

10月20日(水)

文法の例文に、“彼女は悲しげな表情で、去っていく彼に手を振った”というのがありました。学生にコーラスさせた後、「悲しげな表情の人は誰ですか」と聞きました。「彼女」という声が多かったですが、「彼」と言った学生もある程度いました。

最初、「かれぇ? なーに考えてんだ、こら!」と反応してしまいましたが、よく考えたらそれもあり得るのです。教科書には“彼女は悲しげな表情で、去っていく彼に手を振った”と書かれていますが、読点の位置をちょっとずらして、“彼女は、悲しげな表情で去っていく彼に手を振った”としたらどうでしょう。悲しい人は彼になってしまいます。

文字にすれば両者の違いは明らかですが、音声だけだったらどちらにも受け取れるのです。もちろん、授業の場合は教科書がありますから、この例文からは悲しげなのは彼女だという結論にしかなりません。しかし、教科書を読まない、ないしは読点に頓着しない学生が、彼は悲しげだと受け取ったとしても、不思議ではありません。

学生と教師の間に誤解が生じることがよくあります。多くの場合が、学生の理解力不足、教師の説明力不足に起因しますが、こんな読点の位置の食い違いが原因となっているケースもあるのではないでしょうか。話し言葉の場合、話し手は自身の頭の中で組み立てた文を音声として発信し、聞き手は受信した音声を自身の頭の中で再構築し理解します。教師は“彼女は悲しげな表情で、去っていく彼に手を振った”のつもりで言っても、学生は“彼女は、悲しげな表情で去っていく彼に手を振った”と受け取ることだって、十分にあり得ます。その差は、ほんのちょっとした間の置き方の違いにすぎないのですから。しかし、教師は学生の理解力不足を信じて疑いません。

音声言語は証拠が残りませんから検証のしようがありませんが、こういう行き違いがなかったか、胸に手を当てた次第です。

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寒さに感じる

10月19日(火)

なんだか急に季節が進んじゃいましたね。昨日あたりから肌寒ささえ感じています。始業日前日・先週の月曜日までは夏装束で半袖だったのに、午後の授業を終えて職員室に下りてきたら、T先生やH先生が毛布にくるまって仕事をしていました。

教室でも、いつの間にかドアが閉まっていました。換気のために、対面授業の時は窓もドアも開け放つことになっているのですが、あまりの風通しのよさに、ドアの近くの席にいた学生が閉めたのでしょう。

そのせいかどうかわかりませんが、私のクラスは欠席が3名。伊達の薄着じゃありませんが、ろくに布団もかけずに寝たり、着たきり雀でいたりして熱を出している例も少なくありません。当節、熱は風邪なのかインフルエンザなのか、はたまたPCR検査行きなのか、判断がつきません。健康には十二分に留意しなければならないのに、その辺が抜けているんですねえ。

予防という概念が薄いのでしょうか。そうだとすると、将来を見込んで行動するという計画性も足りないということにもなります。これでは進学もうまくいきません。場当たり的な対処を繰り返していたら、どこかで破綻をきたします。目の前のことばかりに集中していると、あさっての方向に進んでいくことだってあります。

これは、学生の作文にも言えます。骨格をメモしてから書くようにと指導したのですが、書きながら考えるの成れの果てみたいな、論旨が二転三転するスリリングな作品もありました。窓を開けっぱなしで寝たなどという生活態度とぴったり一致します。

週間予報を見ると、朝が10度、日中が20度ぐらいの日が続くようです。このまま冬装束に突入しそうです。

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