Category Archives: 勉強

年間計画

4月14日(水)

受験講座の教室に向かおうと職員室を出たところで、Cさんに呼び止められました。Cさんは理系の大学進学を目指し、先学期から受験講座を受けています。「私は6月のEJUの結果を使ってW大学を受けて、11月の結果で国立大学を受けるつもりです。共通テストも受けて、一般入試でも国立大学を受験しようと思っています」と、決意のほどを語ってくれました。

最近、留学生が一般入試を受けて日本の大学に進学する例が増えていると聞いていました。3月に卒業したJさんもそうでした。ただ、Jさんは共通テスト不要の方式を選んだようでしたから、切羽詰まったあげくの選択だったかもしれません。それに対し、Cさんは今から共通テストと言っていますから、Jさんよりずっと計画的です。国にいた時から共通テスト経由の進学を知り、それを目指して動いてきたのかもしれません。外国語を中国語にすればいい点が取れるとまで言っていました。

このように書くと、Cさんは受験の計画をすらすらと話したかのように見えるかもしれませんが、残念ながら日本語教師にしか理解できない日本語でした。発音はまだしも、語彙や文法はお寒い限りでした。面接官にCさんの思いが伝わるとは思えません。EJUで点数を稼いだところで、面接で落とされる可能性大です。そういうことも踏まえて、面接のない一般入試の道を探っているのではないかとも思いました。

もう一つ、実は、Cさんは「共通テスト」ではなく、「センター試験」と言っていました。センター試験から共通テストに変わって、試験の傾向がEJUから遠ざかりました。また、国語もCさんには大問題でしょう。それを今から9か月ぐらいの間になんとかできるのでしょうか。

今学期は、火水は新たに受験講座を受け始めが学生対象の授業です。この中にも共通テストを受ける学生がいるのだろうかと、初めて会う顔をしげしげと見てしまいました。

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祝就職だけど

4月10日(土)

来週から始まる受験講座の準備をしていると、卒業生のFさんが来ました。卒業生と言っても、つい先月までKCPにいた学生じゃありません。現校舎が完成したころに入学した学生です。卒業してR大学に進学し、H大学の大学院に進学しました。今年M2で就活のはずですが、もう内定をもらったそうです。

Fさんは、入学したころは日本語力がゼロに近かったですが、ぐんぐん力を付けていった覚えがあります。受験科目の力も伸びて、難関と言われるR大学に合格しました。R大学でも努力を怠らなかったようで、大学院は国立大学でした。そこでもきっと優秀だったのでしょう。だから早々に就職が決まったのに違いありません。

そのように優秀なFさん、博士課程進学は考えなかったそうです。「先輩を見ていても、修士で就職するのが一番みたいだったし、博士で就職しても給料は修士と変わりませんし…」と、進学しない理由を語ってくれました。その言葉に日本社会の現状が如実に表れていました。

Fさんはこの先も日本に貢献してくれそうですが、Fさんのように考えて優秀な留学生が日本で就職しなくなっています。日本は博士にとって生きづらい社会だというのが定説になっているのではないでしょうか。

これからはオンラインによる高等教育が幅を利かせていくことでしょう。そうした時、日本の大学や大学院は世界に伍していけるのでしょうか。さらに、日本社会に優秀な留学生を引き留める力があるでしょうか。Fさんの話はおもしろいのですが、同時に日本に対する先行きの不安感が増してきました。

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苦い思い出

3月18日(木)

昨日から「スマホ脳」(新潮新書)を読んでいます。残すところ10ページちょっとですから、この後帰宅時の電車の中で確実に読み終わります。

あんまり詳しく書くとネタバレになってしまいますが、スマホでSNSをやると、その反応が気になり、また、より良い反応を求めるようになり、スマホが手放せなくなること、それゆえ集中力がなくなることというのが中心的な話題です。

これを読んでいて思い出したのが、何年か前の卒業生のXさんです。理科系のセンスがある優秀な学生でした。事実、国立大学に進学しました。

ただ、Xさんが挑んだ大学は、筆記試験がない大学ばかりでした。EJUとTOEFLと面接と出願時に提出する志望理由書などで合否判定がなされる大学を選んでいました。数学や理科の筆記試験がある大学は、志望校にはしていましたが、結局受験しませんでした。

つまり、マークシートなど選択式の試験には自信を持っていましたが、答案を書く試験では点が取れなかったのです。受験講座でも、EJUの過去問では力を発揮しましたが、「この時の物体の速さを求めよ」とか「なぜこのような反応が起こるか説明せよ」などという問題となると、計算メモや反応式を答案用紙の隅にくちゃくちゃと書くだけでした。答案が書けさえすれば最難関校も夢ではない頭脳を持っていましたが、どうにもなりませんでした。

そのXさん、授業中も常にスマホを握っていました。本人もスマホ依存症と言っていました。答案が書けないのは、明らかにスマホの影響だと思いました。そう注意しましたが、スマホを我慢するくらいなら第一志望校に行けなくても構わないと、聞く耳を持ちませんでした。

この本を読んだことで、Xさんの精神構造が見えてきたような気がします。今、KCPにいる学生たちはどうなのでしょう。対処する方法があるのでしょうか。

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教科書を見ながら

3月16日(火)

卒業式の後は、ずっとレベル1のクラスに入っています。レベル1を教えること自体は今までに何回もありましたから、要領を思い出せばどうにかなります。でも、文法導入や練習などに使われている場面や状況などに、密を思わせて昨今の情勢に合わないものが意外と多いのです。

東京も桜の開花宣言が出され、さあ花見の季節だと言いたいところですが、花見の名所はどこも花見宴会禁止で、許されるのはせいぜい素通りのみです。しかし、教科書の挿絵では、みんなで集まって大いに盛り上がっています。学生たちも大人ですから、そんなことは重々承知でしょうが、大勢で騒いでいかにも楽しそうな例文を作らせるのは、ちょっと心が痛みます。

夢に描いた留学が、個習か孤学とでも表したくなるような日々になってしまい、学生の心にはもやもやしたものがあるに違いありません。それを思うと、一刻も早く緊急事態宣言が解除され、正常な授業に戻せるようになってもらいたいと思います。その一方で、急いては事を仕損じるとも言いますから、解除は新規感染者数をもっと押さえ込んでからの方がいいという気もします。

首都圏は人口が密集しすぎているから、患者数はそう簡単に減らないという説もあります。また、緊急事態慣れしてしまったから、緊急事態宣言をこれ以上続けても意味がないと考えている人もいます。海外では、日本の緊急事態宣言は緩すぎると言われています。どれもある程度以上は正しいでしょう。これにオリンピックという異次元の商業的要素も絡み、菅さんもどうしたらいいのかわかんなくなっちゃってるんじゃないかな。

「今年はぜひお花見をしたいですね」という、練習問題に対する学生の解答を聞きながら、あれこれ想像してしまいました。

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朝から受験講座

1月22日(金)

今学期は、受験講座が午前中です。受講生が全員午後クラスなので、受験講座を午前に持って行ったのです。KCPが受験講座を始めたころ、9時からの日本語授業の前に受験講座をやったことがありましたが、9時から理科の授業をするなんて、それ以来です。東日本大震災のはるか前ですから、15年ぐらい前の話です。

さて、2021年理科の受験講座の初回は、オリエンテーションをしました。EJUの理科の出題傾向、平均点の推移、時間配分など試験の心得、勉強のしかたなどを説きました。実際に過去問を解いてもらって、どんなところが難しいか実感してもらいました。毎年つまずく学生が出る、化学物質名などのカタカナ言葉に対しても、覚えるしかないと覚悟を決めてもらいました。

今まだ動き回っている、この4月に進学するつもりの学生たちが何に苦労しているかも、実況中継のごとく伝えました。面接練習などを指導する立場から、早いうちに訓練を始めておいてほしいことを言っておきました。受験講座も大切だけど、それ以上に日本語授業でコミュニケーション力を磨くことが必要だと訴えました。

最後に、日本へ来たばかりの学生はほんとうに日本の大学を知りませんから、大学紹介をしました。東大、早慶、MARCHしか知らなくても平均以上というのが毎年の例ですから、学生の目をそれ以外の大学に向けさせました。資料を出すと、身を乗り出して画面を見ている学生の姿が、zoomの小さなモニターに映し出されていました。例年より少ない受講生を丁寧に育てていきたいです。

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オンライン説教

1月20日(水)

授業後、Kさんを残して説教。担任のO先生に頼まれて、不行状を追及しました。Kさんは3月卒業なのですが、まだ進路が決まっていないのみならず、出席率もいいとは言いかねる数字です。このままでは、3月末に帰国せざるを得ません。

一番悪いのは、本人に切迫感がないことです。出願校を言わせた時、私が聞き取れなかったんですからねえ。自己流の発音ですから、面接官に伝わる可能性はゼロです。それに加えて、文法や語彙の間違いもひどすぎます。聞き手が理解できないような間違え方ですから、致命傷になりかねません。そんな耳を覆わんばかりの日本語をへらへら笑いながら言っているのですから、切迫感ゼロどころかマイナスです。

オンライン授業もカメラをオフにして受けていますから、自分の部屋で何をしているかわかったものではありません。そういう点を指摘しても「ちゃんと聞いています」と反論します。しかし、授業中に指名すると「先生、問題は何ですか」とか「どこを読みますか」とか聞き返しますから、授業に集中していないことは明白です。

出席率だってそうです。「卒業式まで毎日出席しますから大丈夫です」の一本槍です。面接で「どうしてこんなにたくさん休んでいるんですか」と聞かれたら、今のKさんでは何も答えられないでしょう。欠席するたびに自分の将来への窓を狭くしてきたということに、今もって気付いていないようです。

かなり厳しく対処したつもりですが、画面を通しての説教となると、隔靴搔痒の感がかなり強いです。これからは、オンライン説教にの技術も磨かねばなりません。

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ある退学

12月22日(火)

毎学期、期末テストを限りに学校を辞める学生がいますが、今学期はRさんもその1人となりました。表向きはコロナの感染者が増えてきたからということになっていますが、実情は進学をあきらめたからです。

実は、昨日、EJUの成績をもらった後、私のところへ相談に来ました。日本語の成績が思わしくなく、Rさんが考えていた国立大学に手が届きそうもありません。他の科目も、日本語の成績が同じくらいの受験生に比べればよく取れていますが、どんな学生と比べても抜群に素晴らしいかといえば、そんなことはありません。Rさんの持ち点でどうにか勝負できそうな大学名をいくつか挙げたところ、考えてみますとのことでした。そして、一晩考えた結果が、退学だったというわけです。

言っても詮無いことですが、6月のEJUが中止になったのが痛かったです。そこで痛い目に遭って軌道修正ができていれば、どうにか希望がつながったかもしれません。目標への道のりのどの辺まで来たかつかめず、このままでいいのだろうかという気持ちもあったことでしょう。そのせいでしょうか、6月以降、Rさんは焦りが目立ち、精神的にきつかったようです。私たちも力になろうとしましたが、Rさんに必要だったのは、家族の力だったようです。少々前ですが、そういう意味のことをぽろっと漏らしていました。

Rさんは国で進学するようですが、形の上では2浪です。辛い選択だったに違いありません。「外国での生活の経験を生かして…」などと口で言うのはたやすいですが、その生かし方もよくわからないのではないでしょうか。私の手を離れてしまったら、私には祈ることしかできません。でも、精一杯、Rさんに幸あれとお祈りします。

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次の学期で

12月7日(月)

先月から、入国後の待機期間を終えた新入生が来始めています。レベルテストをしてレベルを決定するのは今までと変わりありませんが、今回は学期の途中から既存のクラスで授業を受け始めるケースがほとんどですから、私たちも手探りの部分があります。もはや期末テストまで2週間ほどですから、今からとなると1月期も同じレベルで勉強するケースも多いです。

大半が初級ですが、私が担当している中級クラスにも数名加わりました。次の学期も同じレベルというと何となく不満なところもあるようですが、聴解の生教材を聞かせると、黙ってしまいます。JLPTの練習問題など、作られた教材を聞き答えを選ぶ訓練はしてきましたが、まとまった話を聞いて内容を把握し、それを表現するとなると、KCPでずっと鍛えられてきた学生にはかなわないようです。全然聞き取れず、自信を失ったという新入生もいました。来学期も同じレベルで実力を蓄えることに納得したようです。

まあ、焦って1つ上のレベルに入ったところで、4月からの学期では同じクラスになってしまうでしょう。現在上級に在籍している学生たちは、みんな卒業しますから、今、中級の学生で、4月以降も残る学生が最上級クラスを構成することになるのです。そういうわけで、長期的に考えたら、基礎部分の穴をしっかり埋めておくことの方が、大きく伸びることにつながり、受験で好結果をもたらすことになるでしょう。

そういう学生たちを見ていると、学生たちがどうして日本で勉強したがるのかも見えてきます。問題集や教科書では培えない力を得たいのです。オンラインなら国でも受けられますが、そういう授業では学べないものに浸りたいのです。それに応えてこそ、学生の求める学校であり、理想的な教師なのです。

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熱演が無駄

12月3日(木)

「はい、ここまでのことで、質問ありませんか。……ない? なかったら、例文を書いてください」と、学生たちに今やったばかりの文法を使った例文を書かせました。文法の授業を締めくくる恒例の儀式と言ってもいいでしょう。

学生が例文を書いている最中、私は教室中を回って、学生たちの手元をのぞき込みます。もちろん、密にならず、変なプレッシャーを与えずという距離は保ちます。学生が作ったばかりの悪い例文を見つけ出し、どこが悪いか学生全員に考えてもらいます。同時に、私の説明が足りなかったところや練習が必要だったところを補います。

Cさんの例文を見ると、私が書いてはいけないと注意したタイプの例文でした。赤で板書し、ホワイトボードをたたいてここが重要だと訴えたのに、それを無視した例文を作っていたのです。すぐに、教室全体に響く声で、「こういう文を書いてはいけないって言いましたよね。思い出してください」と再度注意しました。Cさんも、書いたばかりの例文を消して、また考え始めました。

ところが、Cさんの教科書やノートを見てみると、私が赤で書いた重要ポイントも、ホワイトボードをたたいて強調した注意点も、何も書かれていませんでした。わずかにその文法の意味しか記されていませんでした。参考になるのがそんなメモ書きみたいなものしかなかったら、教科書の例文を見たって、どこに目を向けるべきかわかるはずがありません。

Cさんみたいな学生は、板書事項をまとめた解説を配ったって、おそらく見ないでしょう。学生が書いて提出した例文は添削して返しますが、教師が入れた赤は読んでいないに違いありません。その証拠に、Cさんのこの前の文法テストは…、いや、お恥ずかしくて点数は明記できません。

2度目の解説はきちんと聞いていたようで、Cさんが提出した例文は、一応要点は捕らえていました。でも、別のところに文法ミスがあり、○にはできませんでした。その文法を勉強した時も、ろくにノートを取っていなかったんでしょうね。

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塵も積もれば

11月16日(月)

金曜日の中間テストを採点しました。

超級の大学進学クラスは、大学入試の過去問を出しました。採点してみると、漢字の読み書きで助かった学生が目立ちました。読解問題の失点をカバーしてかろうじて合格点を取った者、漢字で点を伸ばして評定をワンランク上げた者、そんな学生がいました。先学期から通学授業の日には毎日漢字テストをやって来た効果が表れたようです。半年前は漢字で足を引っ張られることが多かったのですから、大きな進歩です。でも、読解の筆答問題は、相変わらず弱くて、困っています。

中級クラスは、漢字のテストでなくても、どんな易しい漢字にもフリガナを振らせました。これが悲惨な結果を招きました。“学生”“欠席”など、初級で勉強したか今まで何度も接してきたはずの漢字にも、正しいふりがなが書けない学生が続出しました。“がっせ”“けせき”などというのをいくつも見せられると、それ以降採点せずに不合格にしたくなりました。おそらく、そういう学生は、ふだん、「けせきが多いがっせ」などと発音しているに違いありません。それをきちんと注意してこなかった私たち教師にも責任はありますが、初級の入り口の頃に出てきて、毎日のように耳にしているはずの単語がきちんと発音できないというのは、その学生が日本語に積極的に接しようとしてこなかったのではないからでしょう。

大学進学クラスの学生は、私なんかいじめ抜いていますから、できないという印象が先に立ってしまいますが、中級クラスの学生と比べると、やはり格が違うなと思います。鍛え続ければ伸びるものなんですね。

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