Category Archives: 勉強

今の授業は

10月14日(水)

昼休みに、Xさんが来ました。Xさんは2年前にR大学に進学しました。しかし、1年でやめて、W大学に入り直し、今は2年生です。

Xさんが進んだ学科は、後期になってもオンライン授業が続いています。キャンパスへ行くのは試験の日だけだそうです。確かに、その学科は実験や実習はなさそうですから、その気になれば全面オンライン化も難しくはないのでしょう。でも、Xさんは、言葉には出しませんでしたが、ちょっと寂しそうな顔をしていました。

R大学だって十分以上に伝統があり、有名であり、教育力の高さには定評があるのに、そこを捨ててW大学に入ったのです。それにもかかわらず、家で自習に近い勉強しかできないというのは、さぞかし辛いことでしょう。W大学がいい加減なオンライン授業をしているとは思えませんが、学生の立場からすると、どんなに素晴らしいオンライン授業でも満たされないものがあるのではないかと思います。

今後は、大学の授業において、一定の割合のオンライン授業が定着すると言われています。オンライン授業は、現時点では緊急事態に対処する体制の1つですが、ごく近い将来、恒久的な大学教育の手法になるのかもしれません。そうなると、高等教育とは何ぞやという議論も湧き上がってくることでしょう。

私たちは、学生が大学や大学院に入るのをお手伝いするという立場です。高等教育のあり方が大きく変わるとなると、私たちの進路指導の方向性も変わってきますし、そもそも国境を越えて学生が移動するだろうかというところまで考えを及ぼさなければならなくなります。

Xさんは、また来ますと言って去っていきました。マスクを外して撮った写真のXさんは、笑顔だったでしょうか。

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嵐の前の静けさ

9月5日(土)

進学指導用の資料を作るために、いくつかの大学のデータを調査・比較しました。個々の大学の学部や学科の構成は、外からもわかりやすいというか、目にする機会も多いですから、“うん、そうだね”という程度です。でも、何校かの学部や学科を並べると、改めて新しい学部が増えたなあと思いました。

私が受験生だったのは40年以上も昔ですから、その頃は工学部とか経済学部とかという古典的な学部学科名ばかりでした。その代わり、名前を聞けばどんな勉強をするかだいたい見当がつきました。しかし、最近は一筋縄ではいかない名前の学部学科が増えました。また、似たような学部名でも勉強する内容がだいぶ違うという例もあります。学生に進路を誤らせないようにするには、指導する側もしっかり勉強し、データをアップデートしておかなければなりません。

それから、学部卒業後の進路に考えさせられました。まず、文科系学部の大学院進学率の低さです。国立大学ですら1桁%にとどまります。文科系大学院生の大半が留学生だという話はよく聞きます。理科系も、よく調べてみると思っていたよりも低く、50%程度でした。日本は先進国の中でいちばん学歴の低い国だというのも事実かもしれません。

新しい名前の学部が増えたのは、学際的分野の研究が進んだからでしょう。文学とか農学とかという前世紀のくくりでは収まらないほどに研究範囲が広がったのです。でも、それなら、学部の4年間だけではその範囲を学びきることなんてできないんではないでしょうか。「広く浅く」では、大学は教育の責務を果たしたとは言えません。また、学ぶ側も真に価値のある教育を受けたことにはなりません。4年のうち1年ぐらいは就活に費やされるんですから、なおさらです。

東京は、台風10号の影響もなく、暑いですが穏やかな1日でした。大きな嵐が近づいているのにのうのうと暮らしているあたり、低学歴なのに気づかず世界と競争することになる日本のようです。

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理系脳の構築

9月3日(木)

このところ、理科の受験講座ではEJUの過去問をやっています。11月8日の本番までの授業時間数を考えて、先月末から各科目毎週1回分ずつ取り組んでいます。今までは10月になってから始めましたが、今年は事実上11月の試験の一発勝負ですから、少しでも早く試験に慣れておいてもらいたいのです。

もう一つ、過去問をやりながら、私の授業で説明が足りなかった部分や学生の理解が浅かった部分を補っていくという意味もあります。授業の時と同じスライドを見せることもありますが、一通り勉強した後で見ると、初めて見た時とは違う何かを感じるかもしれません。「ああ、そうか! これはこういうことだったのか!」「あれとこれはこういう関係があったんだ!」なんていう発見が必ずあるはずです。初めての時は、その項目のごく近傍しか見えていなかったのが、全体を勉強した後で復習すると、鳥瞰図的に見えてくるものです。

復習では、教える方も、学生にとって未習事項がなくなっていますから、意識的に他の項目と関連させて説明することができます。そうすることによって、各科目の全体像が立体的に浮かび上がってくると思います。これは、EJU対策というだけでなく、理科全体に思考回路を張り巡らすという意味も持っています。理科の知識が点在している状態から、それらが有機的につながった状態へとグレードアップしていくのです。

学生たちはまだ手ごたえを感じていないでしょうが、今から種をまき続ければ、11月にはきっと確かな実りを手にすることができるでしょう。

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泣く前に

9月1日(火)

K先生の代講で、中級の大学進学クラスに入りました。大学進学を目指しているにしては勉強のしかたが甘いと、このクラスに入っている先生方から聞かされていました。授業をしてみると、予習をしていなかったり、していても通り一遍だったりで、確かに先生方のおっしゃる通りだと思いました。

どうしてこうなったかというと、他流試合が不足しているからだと思います。このレベルの学生は、例年なら、6月のEJUの結果にショックを受けて、尻に火が付いているはずです。しかし、今年はそれがなく、その代わりにいくつかの外部試験を受けるように勧めてきましたが、受験者数はそれほどでもありませんでした。その試験の結果が大学入試には使えないからでしょう。そうじゃなくて自分の力を知るためだと力説しても、学生たちの心にはなかなか響きません。唯一、校内実力テストがほぼ全学生の受けたテストですが、「校内」なので、その結果のインパクトは今一つ弱いようです。

授業中にちょっと突っ込んだ質問をするとすぐ答えに詰まるというのが気になりました。私の質問のしかたが、K先生をはじめとするこのクラスの先生方とは違うという面もあるでしょう。でも、漢字の語彙として出てきた「満潮」の対義語ぐらいは調べてきてほしかったなあ。

おそらく、このクラスの学生たちは、かなり高いレベルの大学を志望校としているに違いありません。このまま放置しておいたら、私大入試第一陣の結果が出るころには、いたるところで悲鳴が上がっていることでしょう。最近は言ったいろいろなクラスで同じようなことを感じています。学生たちにそうさえないよう、手立てを考えなければなりません。

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緩み

8月27日(木)

この前の日曜日に日本語の外部試験がありました。7月のJLPTが中止されましたから、日本語学習者が自分の実力を客観的に評価してもらえるチャンスが消えてしまいました。それを補う一助として、また、入試などで自分の日本語力を示すデータとして、学校が受けておくように勧め、学校を通して出願しました。

数十名が出願したのですが、そのうち十数名が受験しなかったと、主催者側から連絡がありました。私のクラスのKさんもその1人でしたから、授業後に理由を聞きました。すると、寝坊したというではありませんか、確かにKさんは授業中にうつらうつらしていることがあります。W大学を目指して毎晩遅くまで勉強しているのでしょう。先週の土曜日もきっとそうだったのだと思います。しかし、日曜日の試験をすっぽかしてはいけません。

これがW大学の本番の試験だったら、論外もはなはだしいです。だから、Kさんは絶対にこんなことはしなかったでしょう。気が緩んでるなと思いました。W大学出願直後は、ある種の高揚感から、勉強に限らずなんにでも張り切って取り組む姿が目に浮かびます。日が経つにつれて緊張感が薄れ、本人の地金が出てきたのです。

まだ若い学生たちにとって、気持ちをコンスタントに保つことは難しいと思います。でも、それができないと、いつまでたっても「やればできる」のレベルにとどまります。そういう人の「やれば」は、非常に大きな仮定であり、だいたい最後までやらないかやれないものです。

「やれば」の壁は厚いのです。

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大学に入ってから困らないように

8月18日(火)

Cさんは、理科に関しては優秀な学生です。受験講座でこちらが一通り説明をすると、EJUの過去問はだいたい解けます。まだ中級ですから、問題文を読むのに時間がかかることがありますが、11月まで訓練を続ければかなりのところまで伸びるでしょう。数学も筋がいいという話を聞いていますから、11月に予定通りEJUが実施されたら、理系科目では高得点が期待できそうです。

Cさんに弱点があるとすれば、応用力です。知識を組み合わせたり想像力を働かせたりして答えを導き出すことが苦手のようです。単一の知識に基づいて答える問題には強いのですが、いくつかの知識を総合して答える必要がある問題となると、勢いが止まってしまいます。EJUの選択問題には答えられても、そこから発展した質問をすると、考えをまとめられないようです。

EJUなら、平均点など軽く上回る点が取れるでしょう。80点台も夢ではありません。しかし、大学の独自試験はどうでしょう。点数になる答案が書けるか心配です。口頭試問も、理路整然と説明できるかとなると、不安を感じずにはいられません。

Cさんの志望校がEJU+面接という大学なら、今のCさんでも勝負できます。しかし、それ以上の試験があるとなると、かなりの鍛錬が必要です。いや、たとえEJUだけで入れる大学であっても、Cさんがこのまま進学したら進級できないかもしれません。大学で壁にぶつかって身動きが取れなくなるなどということのないように、KCPにいるうちにマークシートでない発想法も身に付けさせておきたいです。

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ある変更

7月30日(木)

教育制度が国ごとに違うのは十分想像できることです。日本の高校で勉強することがある国では勉強しなかったり、その逆だったりということは時々あります。理系の数学は、そういうことがよく見られます。EJUの理系数学は高校の数学の範囲からまんべんなく出題されます。ですから、国で勉強しなかった(させてもらえなかった)項目も勉強しておかなければなりません。

勉強したのだけれども忘れてしまったというのもよく聞く話です。急に日本に留学しようと思いついて実行に移してしまった学生にありがちなパターンです。また、学校を出てからしばらく働いて、そして来日したなどという学生にも多いです。Yさんもそんな1人です。受験講座の理系数学を取ったものの、授業についていけず、国の教科書で勉強し直すことにしました。受験講座が始まって1か月足らずですが、こういう決断は早ければ早いほど好ましい結果につながります。EJUまで3か月ちょっとですから、けっこうぎりぎりの決心です。

今年は実質的に11月一発勝負ですから、すでに土俵際の状態です。一歩も下がれないと思って踏ん張らなければ、黒星を喫してしまいます。せめて土俵中央にまで押し返す力がないと、桟敷席まで吹っ飛ばされてしまいます。Yさんの志望校は決して生易しいところではありませんから、何となくEJUを受けただけでは勝ち名乗りは得られません。出席率100%で、まじめに勉強していて、理科に関してはセンスを感じさせてくれるYさんですから、何とか上を向いて花道を引き揚げてこられるようになってもらいたいです。

数学を国の教科書で独習するとしても、私たち受験講座担当者はYさんを支えていきます。

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気を抜くな

7月29日(水)

オンライン授業だと、Zoomの画面に学生の名前が並びますから、誰が出席しているかわかります。でも、授業の最初に名前を呼んで返事をしてもらって出席を確認します。つなぐだけつないで授業に参加しているふりをして、好き勝手なことをしているなどという不届き者が現れないようにするためです。顔も出させるし、次々と指名もして、授業時間内はこちらに集中してもらいます。オンライン授業が始まったばかりの頃は、授業中に指名してミュートを解除したらいびきが聞こえてきたなどという事例もありましたから、その辺は抜かりなくやっています。

もちろん、9割以上の学生は真面目に勉強しています。進学の意志があやふやな学生たちはほぼ帰国してしまい、今在籍している学生たちは、本気で進学しようと考えている、いわば精鋭たちです。ですから、オンラインであれ対面であれ、前向きな姿勢で課題に取り組み力を伸ばそうとしています。

水曜日は、オンライン授業の日。朝9時にFさんの名前を呼んで出席を取ると、眠そうな声で返事が。いかにも今起きたという雰囲気を漂わせていました。これはまずいと思い、すぐに指名すると、授業で使うことになっているプリントを用意していないと言います。やはり寝起きだったのです。その後何回か指名して、声がしゃきっとしてきたのが11時ごろ。ということは、9時からのオンライン授業にすっきりした頭で出席するには、7時に起きなければならないという計算になります。起きるべき時間は、通学する日と同じです。

だけど、授業終了間際に指名した時は、的外れな答えだったなあ。オンラインだと気合が入らないんでしょうか。世の在宅勤務のみなさんはどうなのでしょう。社会人は責任がありますから、ピシッとやってるはずですよね。

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明るいニュース

7月18日(土)

新規感染者数が増えたとか、Go To キャンペーンから東京を除外するとか、そんな重苦しく、ある種きな臭いニュースの陰にすっかり隠れてしまいましたが、今週は藤井聡太七段が渡辺明三冠から棋聖位を奪ったというさわやかさを感じさせてくれるニュースもありました。史上最年少のタイトルホルダーとなりました。私のようなへぼな者は、飛車角に金銀まで落としてもらっても勝てないでしょう。

藤井新棋聖の談話で感心させられたのは、感染症拡大防止のため棋戦が中止されていた期間、AIを使って差し方の研究をしていたということです。終盤は強いけど、序盤はそれほどの鋭さがなく、序盤で差を付けられるとあっさり負けてしまうという弱点がありました。それを克服すべくAI相手に工夫を重ねていたと言います。その成果が、初戴冠です。

巣ごもりの間に差がつくとは、ビジネスでも勉強でも言われていました。藤井新棋聖はそれを地で行ったわけです。新棋聖より少し年上のKCPの学生たちはどうだったでしょう。巣ごもり明けを見越して何かをしていた学生は、ほとんどいなかったんじゃないかなあ。話すのが下手になっていたり、字を書くのが遅く汚くなっていたり、こちらからの話の理解力がガタ落ちだったり、部屋の中でのんびりしていただけという学生が少なくないような気がします。

確実に伸びた学生もいます。ピンチをチャンスに変える力を持った学生と言えます。どんな変化にも自分を見失うことなく、最善の手を打てます。こういう学生は、どこの大学でも欲しがりますよ。大学院に進んだら、研究の核になれます。

月曜日は、進学フェア。のんびりの学生の尻に火をつけ、伸びた学生をより一層伸ばし、学生たちを夢に近づける場にしたいです。

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一抜けた

7月13日(月)

今シーズンの合格者第1号が出ました。9月入学の大学に照準を合わせて、かなり前から準備をしていたそうです。オンライン授業、EJU中止、オープンキャンパスなし、入試日程が決まらない、学生たちの焦りと危機意識の薄さなど、さえない話題が多かったところに、久々の明るいニュースです。

合格したHさんは、9月には、オンラインかもしれませんが、大学の授業が始まりますから、それまでにはKCPを退学します。でも、明日にでも辞めたいと言っていますが、それはいただけません。

まず、入管法を厳密に解釈すれば、大学に入学する2か月も前に日本語学校をやめてしまうと、その間所属機関がなくなり、身分が宙ぶらりんになるため、法律違反となります。今は状況が特別ですから、直ちに帰国しろとはならないかもしれませんが、それはあくまでも「かもしれない」話です。近々、一部の国からの入国規制が緩和されるとの話もありますが、そうなったら「帰国しろ」となるかもしれません。帰国した場合、最近の新規感染者数の増え具合から、Hさんの国が日本への渡航を差し止めることだってあるかもしれません。

それから、2か月ものんびり過ごしてしまったら、入学して授業が始まってからが恐ろしいです。3月にオンライン授業が始まる前に、日本は危ないからと一時帰国した学生がオンライン授業に参加すると、実に見事に日本語を忘れているんですねえ。KCPをやめても日本にいるのですから、一時帰国した学生に比べれば日本語に触れる機会もはるかにたくさんあるでしょう。しかし、国の言葉ですべてが解決するコミュニティー内で生活していたら、どうなるかわかったものではありません。

勉強しなくてもいいならそれで済ませたい気持ちはわかりますが、いやしくも最高学府で勉強しようと思っている学生が、勉強から逃げ出そうとしてはいけません。

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