Category Archives: 勉強

教師も勉強

6月15日(土)

学生たちは、自分たちは、KCPのテストから入学試験やJLPT、TOEFLまで、日々いろいろな試験があり、毎日勉強しなければならないのに対し、先生たちは自分たちをいじめるテストを作るばかりで、授業も毎学期同じことを繰り返せばよく、あまり勉強しなくてもいいと思っている節があります。

いいえ、決してそんなことはありません。土曜日なのに、いや、土曜日だからこそ、勉強会がありました。ほぼ全員の教師が集まり、日本語教育を専門としている大学の先生のお話を聞き、その後そのお話に基づきグループに分かれてディスカッションをしました。議論が盛り上がり、有意義な勉強会でした。

現在、KCPはカリキュラムを改訂しようと考えています。少しずつ新しいカリキュラムに移行しつつある段階です。その新しいカリキュラムにのっとった教育を円滑に実施していくには、勉強しなければならないことが山ほどあります。勉強会にはこういう背景があるのです。

平日は、授業やら学生指導やらに追われて、勉強する時間がなかなか取れません。それに加えて、私は代講が利かない授業をいくつも抱えていますから、外部の講習会に参加することもままなりません。ですから、大学の先生のお話は刺激的であり、頭の隅々にまで血が巡ったような感じがしました。

教師も勉強をしていますが、やっぱり学生の勉強量にはかないませんね。日中、2階のラウンジで、Cさんなど数名が、明日のEJUに備えて問題集に取り組んでいました。もはや、私たち教師には、学生たちが実力を遺憾なく発揮できるようにと、祈るよりほかにできることはありません。

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漢字の不思議

5月31日(金)

今学期はあちこちのクラスに代講で入っています。だいたいどのクラスでも、漢字が正しく読めるのは、中国の学生ではなくアメリカの学生です。理由は非常に簡単で、中国の学生は漢字を“見た”だけで意味がわかってしまい、読み方を深く追求しない学生が多いのです。アメリカの学生は、生まれて初めて漢字を見るようなものですから、読み方も意味も必死に覚えようとします。それゆえ、漢字の読めない中国の学生と、漢字に強いアメリカの学生が生まれてしまいます。

先日、進学の授業で経費支弁書を書く練習をしたら、ある中国の学生が、「●×△(自分の名前)は私の子どもですから、学費は全部私が払います」と言いながら、“~私の児(の簡体字)ですから~”と書いていました。その学生の頭の中では、児(の簡体字)の訓読み(?)は“こども”なのです。意味的には確かにそうですが、そんな書類を見たら、普通の日本人は“???”となってしまうでしょう。

JLPTやEJUの読解問題となったら、中国の学生はアメリカの学生より強いです。漢字の蓄積量が違いますから。文章の音読はできなくても、意味はつかんでしまいます。しかし、マークシートでなくなると、途端にこのアドバンテージを利用できなくなってしまう学生が少なくないのです。頭の中の理解を日本語でうまく表現できなかったり、表現できても“私の児”みたいな表記をしたりといったように、悲惨な解答欄が出来上がってしまいます。

もちろん、本当に優秀な学生もいますよ、先日この稿で取り上げたSさんもその1人です。日本語力が目に見えて伸びてきています。周りの学生はこういう同級生をどう見ているのでしょう。ぜひ見習ってほしいんですが…。

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5月13日(月)

Sさんは理科系の日本語プラスを取っています。Sさんのいいところは、わからないことをすぐ質問するところです。「ここまで、質問ありませんか」とこちらから誘いかけても質問しようとしない学生が多い中、Sさんは私が何もしなくても「先生、…」と聞いてきます。そして、その質問が的外れだったことはありません。「さっき説明したのに」とか、「それって、今までの話と全然関係ないじゃないか」などということはなく、他の学生にとってもためになることばかりです。宿題をきちんとやり、予習も怠りなくやっていることがよくわかります。勉強しているからこそ、疑問点も浮かび上がり、私の話で満足できないところも出てくるのです。

6月のEJUも大いに期待したいところですが、Sさんにとっては初めてのEJU受験です。日本語・読解の過去問では問題を解くスピードが全然足りません。解いた問題の正答率は非常に高いのですが、制限時間内では7、8問残してしまいます。すると、平均点は確保できますが、Sさんが考えている大学には手が届かない点数にしかなりません。理系科目にしても、「じっくり考えたらできる」では思い通りの成績は挙げられません。そう思って、いつもの学期より“ずるい解き方”を教えています。例えば素早く概算して答えを選ぶとか、化学式を見ただけで答えを絞り込むとか、まじめなSさんにとっては許しがたいと思われる考えを伝授しています。

いずれにしても、Sさんは2024年のKCPの期待のホープです。上手に育てていかねばと思っています。

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明るくなりました

5月8日(水)

Dさんは日本語プラスの理科系の科目に出ています。しかし、数学も理科も難しいと言います。確かに、物理や化学の授業中の様子を見ても、わかっているような顔はしていません。数学のS先生も、Dさんは苦しそうだとおっしゃっていました。そのDさんが、暗い顔をして、重い足取りで進学相談に来ました。

Dさんは大学で建築か機械を勉強したいという希望を持っています。建築と機械では分野がだいぶ違います。まだはっきり決められないというのが本音なのだと思います。とはいえ、6月のEJUで運命が決まってしまうケースが多いのが留学生入試です。その運命の6月16日まで39日。のんびり迷っている暇はありません。

機械工学を専攻するなら、数学や物理はかなり力を入れなければなりません。AIを搭載したロボットが作れたらいいなあといった夢や憧れだけでは勉強できません。一方、建築は、耐震構造とかという方面は数学や物理をハードに駆使します。しかし、デザインに重きを置いた建築なら、そこまでのハードさは求められません。その代わり、多少なりとも絵の素養は必要でしょうが。

Dさんに聞いたところ、デザイン系の建築も大いに考えているとのことでした。それなら、A大学はEJUの指定科目は日本語だけです。S大学は数学コース1(文科系)で受験できます。K大学は体験入学に参加すればEJU不要で合格証を手にすることができるかもしれません。K大学には、3月までKCPにいたDさんの国の先輩が進学していますから、その先輩から情報やアドバイスが得られるでしょう。

そんな話をすると、Dさんは先月からずっと感じていたストレスが消えたと、笑顔を見せてくれました。自分でも調べてみると言って、雨の中を帰っていきました。こうして早いうちから騒いでいる学生が、結局受験に勝つものです。Dさん、一歩前進かな。

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学ぶ価値

5月1日(水)

これをお読みのみなさんは、授業料を支払って外国語を勉強するとしたら、何語を選びますか。英語ですか。中国語ですか。韓国語ですか。ポルトガル語ですか。フランス語ですか。アラビア語ですか。

おそらく、上述のような言語ではないかと思います。どこかの小さな島でだけ使われている言葉とか、古代ギリシア語とかという方はほとんどいらっしゃらないでしょう。

ただで教えてもらうならともかく、学費をかけて語学の勉強をするとなると、その学費に見合った何物かが得られるかどうかを考えるのではないでしょうか。それは当然のことだと思います。私だって、英語が話せるようになるならしかるべき対価を出す気持ちはありますが、同じ金額でどこかの国のとある部族にしか使われていない言葉を勉強しようとは思いません。

要するに、出したお金と釣り合うだけの価値を手にできるかどうかという、経済的な問題がポイントなのです。現在KCPで日本語を勉強している学生たちにしても同じだと思います。日本語を学ぶことで有形無形の利益が得られると思うからこそ、決して安くはない授業料や渡航費、生活費をかけてでも勉強しているのです。もちろん、目論見通りにいかない場合だってあります。でも、そういうリスクを織り込んでも、学生たちには期待できる将来像が輝いて見えるのです。

もし、日本の国力が衰えて、何の取り柄もない国になってしまったら、わざわざお金と時間をかけて身に付けようなどという人はいなくなるでしょう。失われた30年が、40年、50年となっていったら、いずれ日本語は世界のだれからも相手にされなくなってしまうに違いありません。そうなったら、日本語教師は全員失業です。

…などという話を、養成講座でしました。先日の選挙で日本の政治が少しでも動いてくれたら、日本語教師は首の皮1枚で命を長らえることができそうですが、果たしてどうでしょう。

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連帯感

4月25日(木)

今学期の日本語プラス理科の各科目は、毎回宿題を出し、その答え合わせをしながらEJUの範囲を復習していくという形で進めています。EJUの直前までに全体をカバーし、最後の1、2回は過去問を通しでやってみようと考えています。

木曜日は物理です。Oさんはきっちり宿題をしてきました。時間はかかったけど最後までやったと言って、宿題用紙を見せてくれました。Sさんも、学校でもらったもの何でも突っ込んでいるのではと思われるファイルから、しわくちゃになった宿題用紙を引っ張り出しました。Mさんは真っ白に近い宿題用紙を机の上に置いて、私を見つめました。Kさんはやけに硬い表情でした。できなかったのかもしれません。

答え合わせは、全部についてやっていると時間が足りませんから、今回のテーマである力学の要点を解説するのにちょうどいい問題や、学生が知らないと思われる解き方がある問題や、学生がつまずきそうな問題や、先週教えたテクニックを使う問題や、要するに教えるのに都合のいい問題に絞りました。

宿題をきっちりやって来たOさんは質問します。しかし、発音が悪くてその質問の意図がなかなかつかめませんでした。質問内容は急所を突いており、Oさんの質問を起点に授業を広げられました。MさんやKさんにも良い影響を与えたことは確かです。それだけに、発音の悪さが気になります。口頭試問で苦労しそうな気がしました。

Sさんはくちゃくちゃの紙を出したわりには鋭い質問をしてきました。私が説明を省略しようとした問題について質問し、やはりクラス全体に盛り上げました。思ったより理解が進んでいる感じがしました。

出席したメンバー間には無言のうちに同じ道を進む者同士の絆みたいなものが生まれたように見受けました。今年のメンバーは、思ったより期待が持てそうです。

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聴解のメモ

4月23日(火)

聴解問題をするときに学生にメモを取らせ、終了後にそのメモを提出してもらいました。

Sさんは実に丁寧にメモを取り、スクリプトの要点を余さずとらえていました。スクリプトを見ながら書いたのではないかというくらい完璧でした。思わず五重丸をあげてしまいました。Aさん、Hさん、Gさんなども、必要なことは書かれていました。このくらいのメモが取れるなら、JLPTやEJUの問題も恐れることなどありません。

その一方で、Kさん、Cさん、Jさんあたりは、本人がこのメモを見ても、何もわからないのではないかという代物でした。まるっきり聞き取れていないわけではないのでしょうが、このメモを基に何かするのは不可能でしょう。どこまで問題が解けるのか、心もとない限りです。

日常生活で聞いたことをその場でメモすることはあまりないでしょう。紙にメモしなくても、頭にメモできれば聴解問題ぐらいなら何とかなるかもしれません。でも、頭にメモできる内容は、思っているよりも少ないものです。10~11桁の電話番号はどうでしょう。私は自信がありません。相手の言わんとしていることを少しでも深く理解するには、誤解を減らすには、メモは不可欠だと思います。

つまり、日常生活をより充実したものにするには、聞いたことをメモすることが大きな役割を果たします。その延長線上にテスト問題があると考えてもいいと思います。そう考えると、Kさんたちは日本で生活を続けていくという観点からも心配です。他のクラスにもこういう学生がいるでしょう。そういう学生たちを、卒業するまでにどのように鍛えていけばいいでしょうか。

それ以上に、岸田さん、あなたは森さんに会ったときに、メモを取らなかったんですか。それで事情聴取したつもりなんですか。

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目標に向けて

4月22日(月)

昼休み、Dさんが日本語プラスについて相談に来ました。先週1週間理科系の科目に出席して、理科の選択科目を物理と化学にしたいと言います。Dさんは機械工学に進みたいと言っていましたから、妥当な選択です。さらに、その機械工学よりも、建築に進みたいとも言ってきました。

建築には、大きく分けて、デザイン系と構造系があります。デザイン系は、その名の通り、外観や内装などのデザインを専門とします。構造系は耐震建築など、建物の建て方の根本を学びます。そのどちらかと聞くと、Dさんはデザインをやりたいと言います。デザインと言っても、ただ絵を描けばいいというわけではありません。使いやすい建物、住みやすい家を設計することが主たる仕事です。そのためには、人間工学、建築物の素材、地質や気象に至るまで、幅広い勉強が必要です。おそらくDさんはそこまで考えていないでしょう。

志望校を聞いてみました。すぐにT大学の名を挙げました。超有名校ではありませんが、手堅い感じがします。誰かから教えてもらったのかもしれませんが、Dさんにとっては手の届きそうな目標になるでしょう。今後、もう1校か2校付け加えておいた方がいいです。Dさんは出席率がいいですから、指定校推薦という目もあります。そのあたりは、私も相談に乗るつもりです。

Dさんのほかにも、進学先をどうするか、いい意味で悩み始めている学生が出てきました。学校全体が6月のEJU、さらにその先の入学試験に向けて動いているのだとしたら、今年の学生たちには期待が持てそうです。

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自転車通学

4月18日(木)

「大学には、自動車・オートバイで通学してはいけない」という本文に対して、「学生は大学まで歩いて来なければならない」という選択肢があったとしたら、みなさんは〇にしますか、×にしますか。

Pさんは〇にしました。ところが、正解は×でした。「自動車・オートバイは通学に使えないけど、自転車は乗ってきてもいい」と説明すると、「私の国では、大学の寮に住んでいる人以外で自転車で通学する人は0.00001%ぐらいしかいません」と、納得がいかない様子でした。

かつては、坂の街・長崎は自転車がない街として有名でした。しかし、昨今は電動自転車が普及し、市街地のいたるところにある急坂をものともせず、市民の足として定着しているようです。長崎に限らず、坂の多い街でも自転車は住民に愛用されるようになりました。

Pさんの語るところによると、Pさんの国には一般庶民が自転車に乗る習慣がないようです。スーパーマーケットにも、駐車場はあっても、駐輪場はないそうです。東京のような大都市で、駅前にもちょっとしたお店にも区役所のような公共機関にも、駐輪場・駐輪スペースがごく当たり前にあるのに驚いたと言っていました。

もしPさんの言っていることが本当だとしたら、この問題は読解の問題として適切でしょうか。日本人にとっても若干トリッキーな感じがしないでもありません。自転車という乗り物は知っていても、それを通学に使うという発想自体がない人々は、筆者または作問者の意図をつかむことなどできません。文化の違いが読解を妨げていると言ってもいいでしょう。

だとしたら、私が今まで作ってきた読解問題の中にも、好ましくない問題があったかもしれません。恐ろしいものです。

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好スタート

4月12日(金)

新学期が始まり、1週間が過ぎました。見慣れぬ顔があちこちでおしゃべりしたりお菓子を食べたりラウンジや図書室で勉強したり、学校に新しい風を吹き込んでいます。初級はもちろんのこと、上級までどのクラスにも新入生が入り、在校生も影響を受けているようです。

今週の出席状況を見ると、先学期は出席率が低くて要注意リストに載っていた学生の多くが、休むことなく学校へ来ているようです。教室にいる方が珍しいくらいだったTさんやDさんも、毎日出席しています。Rさんは1日だけ欠席してしまいましたが、先学期までのように休み癖がついてガタガタに崩れるということにはなっていません。新年度になり、入試本番に向けて気が引き締まっていることもあるでしょうが、新入生からの刺激もかなり効いていると見る方が自然です。

昨日とおとといは、初級レベルの学生向けに日本語強化のオリエンテーションがありました。とても活気がありました。新入生の意欲に在校生も引っ張られて、初級全体にやる気モードが漂っているように感じました。おかげでこちらの見込みを大幅に上回る登録者数で、教室をどうしようかとうれしい悲鳴を上げています。

出席率が下がってしまったTさんやDさんやRさんも、新入生の時期がありました。その頃は在校生に喝を入れる側だったはずです。その後どこかで何かにつまずいて、先生からにらまれる存在になってしまったのです。今学期の新入生がそうならないように、過保護じゃいけませんが、つまずきの元はできるだけ取り除けてあげたいです。

Tさんたちも、理想に近い形で再スタートが切れました。この好調さを持続して、志望校の合格証をつかんでもらいたいです。

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