Category Archives: 学生

教師も勉強

11月7日(金)

あさってが11月のEJU本番ですから、日本語プラスの生物も最後の模擬試験でした。解き終わったYさんに模範解答を渡すと自己採点して、「先生、5番の問題がわかりません」と、できなかった問題について質問してきました。PPTなどを用いて解説すると、わかってくれました。

「先生、塾ではこの辺の知識は勉強しませんでした。でも、よくわかりました」とYさん。塾の教育内容と日本の高校生物のシラバスには若干違いがあるようです。塾の先生はYさんと同国人の大学院生ですから、自分が勉強していないことは教えなかったのでしょう。

教師と言えども得手不得手はあります。でも、広く浅くのEJU生物ぐらいなら、不得手でもどうにかできると思います。どうにかするのが、教師だと思います。たとえ学校で勉強してこなくても、自分で勉強して教えるのが、仕事に対する責任ある態度だと思います。

数年前大活躍したPCR法などというのは、私が若いころにはなかった技術です。RNAワクチンも新しい技術です。私はそういうものも勉強して、少なくとも受験生に教えられるくらいにはなりました。私のような年寄りでもそうしているのですから、学問の第一線で活躍している大学院生なら、自分の習ってこなかったことを勉強してEJUの問題に対抗できるくらいになるなど、朝飯前のはずです。

Yさんは来年6月のEJUで好成績を挙げて、国立大学に進むという計画を持っています。十分可能性があります。私も後押ししていくつもりです。

名前だけの自己紹介

11月6日(木)

Eさんは、今度の土曜日にJ大学を受けます。午後、その面接練習をしました。本当は先々週あたりにする予定だったのですが、Eさんが病気になったり、こちらがBBQの準備で忙しくなったりで、ずっとできずにいました。初めての入試ですから、何回も何回も練習を繰り返すことが必要です。でも、上述のような事情で、本番直前にようやく初練習となってしまいました。

Eさんは、日本語を話すことに関しては、ほとんど問題ありません。発音・イントネーションもきれいだし、複雑な事柄でも筋道立てて話せるし、聞き取りも完璧に近く、コミュニケーションに支障を来すことはありません。しかし、内容を伴わないことがあります。

「簡単に自己紹介をしてください」と聞くと、「A国から参りましたEと申します。……どうぞよろしくお願いいたします」と答えました。これは、レベル1の学生の、入学直後ぐらいの内容です。「急な質問で、何の準備もしていませんでしたから…」と言い訳していましたが、本番でもこんなやり取りだったら、日本語はできないと判定されてしまうでしょう。

面接は、受験生が自分自身を大学側に売り込める数少ないチャンスです。そのチャンスが生かせないようだと、合格への道のりは遠いと言わざるを得ません。他の質問も、Eさんは誠実に答えましたが、パンチが足りません。J大学は毎年受験生が多いですから、このままではその他大勢にされてしまいます。

こんな図が予測できましたから、もっとずっと早くに練習を始めたかったのです。答え方のポイントは教えましたから、あとはEさんに気張ってもらうほかありません。私は祈るのみです。

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凶兆?

11月5日(水)

レベル1のクラスはカタカナディクテーションから始まりました。テニス、サッカーなどという言葉とともに、フォークが出てきました。カタカナの拗音はさんざん練習しましたが、フォとかディとかという、もともと日本語になく、欧米語が大量に流入してから生まれた音に関しては、今まで練習してきませんでした。案の定、学生たちは“フォーク”が何物かはわかったものの、それをどのように表記すればいいかはわかりませんでした。このクラスで一番よくできるPさんですら、“プオク”と書いていました。音的には当たらずとも遠からずだった点はさすがですがね。

正解を板書し、“ファ、フィ、フ、フェ、フォ”でファ行を形成するという話を、レベル1の学生でもわかる日本語でして、ファイト、フィンランドなど、実例を書いてみせました。これからファ行の言葉に嫌というほど出会いますから、できるだけ早いうちに慣れさせておくことが肝心です。

昨日から始まった漢字には、“日”がありました。“日”は曲者で、「九日の日曜日は休日です」という文に出てくる4つの“日”は、“か、にち、び、じつ”と、読み方がすべて違います。中国の学生が、「日本語の漢字は難しいです」とぼやいていました。漢字二日目にして弱音を吐いたりしていては、上級にたどり着くはるか手前で沈没してしまいますよ。

文法は形容詞の活用でした。寒いです、寒くないです、寒かったです、寒くなかったです、というように活用させます。頭では理解できますが、毎学期、口が回らない学生が必ず出てきます。“寒いです…”でつまずいているようだと、“あたたかかったです”なんて、絶対言えません。

日本語は、入り口は取っ付きやすいけど、勉強が進めば進むほど難しくなると言われます。早くもその兆しが見えてきたというところでしょうか。ここで挫折することなく上級まで進級して来てもらいたいものです。

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かろうじて逃げ切り

10月31日(金)

一昨日、最上級クラスで、バーベキューの日に教師の補助をしてくれるよう学生に頼みました。その中に、朝の仕事がありました。仕事内容を説明するや、Jさん、Yさん、Hさんがぜひやりたいと名乗り出てくれました。その積極性は大いに買うところですが、大きな問題がありました。それは、この3人、遅刻の常習犯だということです。このクラス以外の学生は当日朝10時に集合ですが、私の説明した仕事を担当する学生は9:45集合で、遅刻してもらっては困るのです。

さて、今朝はどうだったかというと、予想通り、3人は遅刻。定刻に来たのは、もう1人私が指名した、遅刻実績のないSさんだけでした。それ以外の仕事もあるので、しばらくの間Sさんには1人で頑張ってもらうことにして、他の学生を引き連れてバーベキュー会場へ向かいました。幸いにも、ほどなく3人が来て、Sさんが地獄を見ることはなかったようです。

私は最上級クラスではなく、レベル1のクラスの担当でした。直前までメニューが決まったのかどうか危なっかしかったのですが、肉も野菜もきちんと切り刻んできて、あとは焼くばかりの状態になっていました。どこで手に入れたのか、国の香辛料も持ってきてくれました。これが肉にも野菜にも合うんですねえ。私の家にも置きたくなりました。

料理をしている時や食べているときは余計な言葉は要らず、おいしい笑顔で語り合えますから、日本語を習い始めたばかりのレベル1の学生ともコミュニケーションが取れます。友達のクラスへ偵察に行ったり、友達を連れてきたり、私も最上級クラスから差し入れをもらったり、クラス間の交流も活発でした。

バーベキュー恒例の料理コンテストは、さつまいも料理がテーマ。結果は、本物の料理人を擁した初級のあるクラスの圧勝でした。この料理コンテストのためにわざわざお皿まで用意してきたくらいですから、見た目からして全然違いました。私のレベル1のクラスも、大学芋っぽい味付けの上にわさび味ポテトチップスをちらすなど工夫を加えていましたが、料理人にははるかに及びませんでした。私は、その料理人の握ったすしだけご相伴にあずかりましたが、もちろんおいしかったです。

ちょうど料理を食べ終えたころ、ぽつぽつと降ってきました。傘を差すほどではないものの、散策の時間も取りたいので、後片付けもそこそこに、海岸へ向かいました。写真を撮ったりおしゃべりしたり、少しだけのんびりして、本降りになる前に解散しました。若干駆け足気味でしたが、最上級クラスの面々も活躍してくれましたし、総じて言えばみんな楽しめた学校行事だったのではないでしょうか。

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見るだけ

10月30日(木)

明日はBBQですが、午前授業で私が入った上級クラスは買い出しなどの役割分担も決まり、あとは本番を待つだけのようでした。ですから、進度表どおりに授業を進めました。

このクラスは、読解の授業で高度経済成長期の日本について学んできました。高度経済成長期は私の子供の頃ですが、幼いなりに世間の風向きを感じ、においをかぎ取り、世の中の色を見ながら育っていきました。学生たちの教科書に載っている水俣病も、自分より少し年上の方たちが苦しんでいる様子を、リアルタイムのニュースで見ていました。

私が昔話をしてもいいのですが、それよりも動画を見てもらった方が勉強になります。2本見せましたが、スマホをいじる学生もなく、みんな集中していました。やっぱり、たまには目先を変えたほうが意欲も湧くのでしょう。その後、それに関連するグループ討議をしてもらいました。いつもより話し声が大きかったような気がしました。

しかし、中には一言もしゃべらない学生もいます。Sさんはそんな学生の1人です。同じグループの学生が水を向けてもうつむいたままでした。確かに、人前で話すことに何らプレッシャーを感じない人がいる一方で、そういうことに極度の緊張を覚える人もいます。しかし、学生の場合は、授業中に話すことにどれだけの価値を認めているかという、全く別の物差しが存在します。Sさんは“書く≫話す”派のようです。あんなに一生懸命動画を見ていたのに、それに関する話し合いに加わらないなんて、もったいない限りです。メンバーの1人がほとんどしゃべらないのですから、Sさんのグループは早々に話し合いが終わってしまいました。

Sさんは明日のBBQでどんな活躍をするのでしょう。“ワタシ、食べる人”を決め込むのでしょうか。

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お久しぶりです

10月29日(水)

朝は代講でレベル3のクラスに。ドアを開け教室に入ると、大部分の学生が怪訝な顔をしました。数名、表情が明るくなった学生がいました。いずれも2学期前の4月期にレベル1で教えた学生でした。もちろん、校内で顔を合わせることはありますが、授業で向かい合うのは半年ぶりです。懐かしさが顔に出たのでしょう。そういう顔を見ると、こちらも自然と表情が緩んできます。こういう再会がありますから、レベル1あたりで種をまいておくのはやめられません。

そのクラスで顔と名前が一致する学生は、レベル1で教えたその数名だけです。だからと言って、名前のわかるその学生たちばかりを指名するわけにもいきません。名簿を頼りに「Aさん」などと指名すると誰も答えてくれず、1拍遅れぐらいで「先生、Aさんは休みです」と教えられてずっこけてしまうこともしばしばです。

それはともかくとして、半年ぶりぐらいに教えると、やはり学生の成長を感じます。上手になったなあとか、。こんな気の利いたことが言えるのかとか、ずいぶん難しい言葉を覚えたんだねとか、何事もないような顔つきをしていますが、心の中は驚きの連続です。私はこれを秘かに刈り取りとか収穫とかと呼んでいます。学生も、ろくに日本語がわからなかった頃に教わった教師に自分の成長した姿を見せるのは、誇らしく思えることではないでしょうか。

午後は、今学期のレベル1のクラスでした。あさってに迫ったBBQについての説明をしましたが、日本語だけでは伝わらないので、ジェスチャーやら図を描くやら、面倒くさいからモニターに画像を映し出すやら、思いつく限りの手を尽くしました。こういう共同作業をするから、上のレベルで再会した時、学生も教師も懐かしさを感じるのかななんて思ったりしました。

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突然の放送

10月28日(火)

3:15の始業チャイムが鳴り、さあ化学の授業を始めようとしたところ、臨時一斉放送のチャイムが鳴り響きました。化学の授業のために集まった学生たちと一緒に耳を傾けました。近隣のビルから、KCPの学生が敷地内でたばこを吸っているという通報と抗議があったという内容でした。午後は初級クラスばかりですから、教師向けの日本語のほかに、各国語訳も入りました。英訳は強い調子だなとわかりましたが、他の翻訳も同じようにきつく注意していたのでしょう。

新宿区は、条例によって屋外は全面禁煙とされています。また、KCPとは無関係のビルは、敷地に無断で入り込んだだけで不法侵入です。こういうことは新入生へのオリエンテーションでも、毎学期の始業日にも、繰り返し言っています。15分の休憩時間内に行って戻って来られる喫煙所の場所も教えています。それでもこうして抗議されてしまうようなことをやらかす学生が後を絶ちません。

私はたばこを全く吸いませんから、喫煙者の本当の心理は理解できないものがあります。喫煙所まで行くと人ビリたばこが吸えないから近場でどうにかしようと考えているのでしょう…というぐらいのことしか言えません。授業が終わるまでたばこが我慢できないとなると、依存症を疑った方がいいかもしれません。いけないことと知りつつほかのビルの敷地で吸ったとすれば、入院治療をお勧めしたくなります。そういう人は、火気厳禁のところでも吸いかねません。

この放送によって、午後のすべてのクラスで授業が約5分つぶされました。各クラスの出席学生数と教師数の合計を掛け合わせると、20時間かそれ以上になってしまうでしょう。それだけの時間を無駄にしたということも、この愚かな喫煙者どもに突きつけたいです。

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教科書に時間を奪われる

10月27日(月)

先週末、私が学校を休んでいる間に、大変なことが発覚しました。学校の図書室の机の上に教科書やノートなどを置きっぱなしにしている学生がいたのです。うち1名は、書架に教科書を突っ込んでいました。土曜日にT先生がそれらを回収したところ、教科書が消えてしまった学生が困って事務所へ来ました。そりゃそうでしょう。教科書がなかったら、授業を受けても半分ぐらいしか意味がわからないでしょう。

ある学生は、教科書をいちいち家に持ち帰るのは重くていやだと言います。だったら、せめて、タブレットに取り込むぐらいの努力をしてくださいよ。私のクラスのGさんはそうしていますよ。数年前に卒業したSさんも教科書用のタブレットを持っていました。家でどうやって勉強しているのでしょう。少なくとも、先週末は全く勉強する意志はなかったのでしょう。

そもそも、KCPの図書室は、物を置いて席取りをすることは禁じられています。このルールは教科書を置きっぱなしにする学生を念頭に置いて作ったものではありませんが、図らずもこれに当てはまる学生が生まれてしまいました。こういう形でこのルールが生きるとは、思いもしませんでした。

ちなみに、先学期は、Pさんが駐輪場の自転車のかごに教科書を置きっぱなしにしていることが発覚しました。これまた、教科書は思いから持って帰るのは嫌だと言っていました。学生にとって、教科書はおもりでしかないのでしょうか。予復習しなくてもKCPの授業ぐらいわかってしまうのでしょうか。それにしては、JLPTやEJUなどの日本語テストの成績が振るいませんが…。

私たちは教科書に沿って授業をしていますから、教科書がなければ予習も復習も宿題もできません。そうなると、授業で習ったことの理解度も深まりません。これでは日本語力が伸びるはずがないではありませんか。

なにより、この不届きな学生どもに説教をしなければならない私の貴重な時間を返してもらいたいです。

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寒くなりましたね

10月24日(金)

1か月ほど前のこの稿に“秋の気温は釣瓶落としではないか”と書きましたが、それが現実のものとなりつつあります。コートはもちろんのこと、ダウンジャケットではないでしょうが、もこもこの防寒着を着込んでいる学生が目立つようになりました。おとといでしたでしょうか、日中外に出たら、吐息がかすかに白くなりました。秋どころか、初冬の趣です。

私も、先週までは夏用の薄いスーツでしたが、今週からは裏地付きの冬のスーツを着ています。それでも、おとといあたりは、朝、外に出た瞬間、マフラーがほしいと思いました。もう一歩季節が進めば、いよいよヒートテックの出番です。コートは11月からと考えていますが、来週は寒さに耐えられるでしょうか。

さて、ちょうど1週間後、来週の金曜日はバーベキューです。気象庁をはじめとする予報によると、31日(金)の東京地方は、曇りで最高気温は20度くらいとのことです。最低気温が12~13度だそうですから、真冬の最高気温ぐらいです。調理で火を使うものの、やはり着込んできた方が無難でしょう。

午前中に入った上級クラスで、バーベキューのメニューの話し合いをしました。毎年のことですが、学生たちは食材を買い込みすぎて余らせがちです。このクラスでも、牛2キロ、豚2キロ、鳥2キロ…などと言い始めましたから、抑えに回りました。昨日のクラスでも学生たちが暴走しそうになりましたから、なだめ役を務めました。でも、こういうのって、計画を立てている時が、いくらでも想像を膨らませられて楽しいものなんですよね。

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欠席のお詫びとご連絡

10月23日(木)

3:15からの日本語プラス物理の授業に行く前にメールをチェックすると、Aさんからのメールが届いていました。Aさんは私が担任をしているクラスの学生ですが、そのクラスは、木曜日は私の担当日ではありません。「欠席のお詫びとご連絡」というタイトルからすると、きっと学校を休んだのでしょう。

メールを開くと、いきなり、「いつも大変お世話になっております。」ときました。確かに担任としてお世話はしていますが、メールでこう言われちゃうとねえ…。

次はクラスと名前で、これは問題なし。そして、欠席理由を述べ、「…誠に勝手ながら、本日10月23日(木曜日)の授業を欠席させていただきます。」と書いてありました。事前連絡なら“欠席させていただきます”でいいですが、メールが届いたのは2時過ぎですから、明らかに事後連絡です。最低でも“欠席させていただきました”ですよね。私は、こういう状況で学生が“させていただく”を使うことはいかがなものかと思っています。“欠席しました”で十分、“欠席いたしました”が許容限度でしょう。

そして、「授業を欠席することにより、ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。」と続きます。授業を担当していない私はもちろん、授業内容からすると授業をされたY先生も、Aさんが休んだことで迷惑をこうむってはいません。迷惑をかける相手は、教師よりもクラスメートでしょう。私に詫びるとすれば、欠席連絡が遅くなったことについてです。こんな空虚な言葉よりも、明日はちゃんと学校へ来るのか書いてほしかったですし、「宿題はありませんか」ぐらい聞くのが学生としての礼儀だと思います。

普段のAさんの態度を見ていれば、Aさんに悪意があったとは思えません。私に対して失礼があってはいけないと思い、欠席連絡の文例を検索し、それに則って文面を作成したのでしょう。しかし、Aさんが模範としたのはビジネスメールであり、残念ながら学校の欠席連絡にはふさわしくない文例でした。Aさんなら、自分で文面を考えても、私を納得させるメールが書けたはずです。それぐらいの実力は私が保証しますから、自信を持ってもらいたいです。

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