Category Archives: 学生

当たり前じゃないんですね

2月5日(木)

昨日に引き続き、中級クラスの授業から。

母国と日本との違いについて語ってもらいました。国籍の異なる3~4人のグループで話してもらったのですが、どのグループもたいそう盛り上がっていました。授業中、指名されても蚊の鳴くような声でしか答えないZさんも、ジェスチャーを交えて自分の体験をメンバーに訴えていました。

そのZさんは、日本のバスは降車ボタンを押さないと停留所に止まらないことを挙げていました。国のバスは、どのバス停にも必ず止まるそうです。バスに乗ると、必ず降車ボタンを確認するのだとか。

Nさんはエスカレーターを歩く人に驚きました。国でそんなことをすると、マナーが悪いと言われるそうです。日本でも立ち止まって乗るのが定着しつつありますが、国際的に見るとまだまだなのでしょう。

Tさんは食券を買わないと料理が食べられないことを取り上げました。国ではQRコードですべて片が付くけれども、日本のインフラができた頃はインターネットがなかったからだろうと考察していました。

Jさんは、日本の街角にはゴミ箱がないことを不便に思っていました。でも、道にごみが捨てられていないことを不思議に思っています。外出したらごみを出さないように心がけていますからね。

電車が交通手段の主力だということを挙げた学生が3人いました。新宿駅で迷子になったり、デートも電車で行くことに驚いたり。電車は日本の象徴なのですね。

宅配便の配達員がすぐに不在連絡票を置いて行ってしまうことを挙げたのはYさんです。宅配便が来るタイミングで家にいないといけないのが不便だと。置き配は怖くてできないのかな。

国にはないスタバやマックが街にあふれていると言ったのはAさん。空港で見てびっくりだったようです。そして、日本は店に入ったとたん「いらっしゃいませ」と店員に声をかけられるのにも驚いていました。

Wさんは給湯器の修理にいろいろな手続きが必要で2週間もかかったことを嘆いていました。その間、ネットカフェのシャワールームで体を洗ったとか。

みんな、それなり以上に苦労しているみたいですね。

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U字曲線

2月4日(水)

“異文化適応のU字曲線”という話が中級の教科書に出ていました。留学を始めたばかりの時期はハイテンションで、生活全般に積極的になっています。その時期が過ぎると、ネガティブな面が見えてきたり辛いことが出てき始めたりで、気持ちが落ち込みます。その後、何かきっかけをつかめばまた気持ちが上向くという、心の変化を表したグラフです。

私のクラスでこれを扱いました。先学期の入学生Lさんに今はどの辺かと聞いてみると、もう落ち込む時期に入っていると笑いながら答えてくれました(ほんとうはそんなに落ち込んでいない?)。来日1年以上になるWさんは、その落ち込みも克服して、今は進学が決まったこともあり、気持ちが高まっているそうです。

留学の最初から最後まで高いモチベーションを保ち続けるのは、至難の業というか不可能でしょう。最上級クラスのSさんは2年近くKCPに在籍していますが、まさにこのU字曲線の連続です。モチベーションが下がると休みがちになり、出席してもスイッチが入っていないような態度になります。モチベーションが高い時は積極的に発言し、何にでも挑戦しようという姿勢が見て取れます。志望校に合格した時はハイな状態でしたが、今は落ち込むモードのようです。卒業式が近づき、大学入学後の姿が明確に描けるようになったら、また活発になるのでしょう。

Cさんは、留学開始直後のハイテンションな時期がなかったか、あっという間に終わってしまったか、新入生のころは生活に疲れたような顔をしていました。欠席も多かったです。しかし、進学するにはこれではいけないと思ったのか、去年の秋ぐらいから顔つきが変わってきました。進学先が決まったのが大きいのか、今は授業中にもよく答えるし、出席率もほぼ100%です。U字曲線ではなく、L字を倒したような変化です。

中級クラスには、4月に進学する学生もいれば、来年のこの学期まで勉強する学生もいます。進学する学生は、進学先でこのU字曲線を描くのでしょう。もう1年KCPで頑張る学生は、落ち込みを乗り越えて来年の今頃は幸せな顔をしているのでしょうか。

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鬼は外と漢字

2月3日(火)

節分です。中級クラスは授業の後半から日枝神社へ豆まきを見に行きました。しかし、火曜日の私は上級クラス担当で、出かける中級クラスの面々を横目に、選択授業で上級の学生に漢検の練習問題を解かせていました。月曜と水曜は中級担当なんですが、今年の節分は、残念ながら、ちょうどその真ん中でした。

さて、その漢検の授業ですが、自ら積極的に漢検の授業を選んだ学生と、消去法で漢検の授業が残って、しかたなくこの授業を取った学生とが如実に分かれます。消去法組は教室の後ろの方に座ります。積極組は前の方に陣取ります。問題用紙を配ると、消去法組は読み書き問題から取り組みます。しかも、スマホで調べながら。積極組は部首とか同音(訓)異字とか誤字訂正とか、スマホが使いにくい問題、頭を使う問題に、まず取り組みます。

スマホで調べながら漢字の読み書きの問題をしても、あまりいい勉強にはなりません。漢字熟語を語彙として覚えていくのであれば話は違ってくるでしょうが、私の目の前でスマホをいじっている学生にはそれだけの気迫が感じられませんでした、

一方、積極組は周りの学生と相談しつつも新しい課題に果敢に向かって行きます。Tさんはかたくなにスマホを使おうとしませんでした。あくまで自力で解くというのは、今時、タイパが悪いとされそうですが、深いところで理解した事柄は、記憶に残るものです。私に質問してくるのは、もちろん積極組です。

日枝神社の豆まきと学校での漢字の授業と、学生にとってどちらが勉強になったでしょうか。消去法組は、鬼は外の方がよかったのかな…。

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後ろ向きで出発

2月2日(月)

月初めの日のクラス担任には、重苦しい作業が待っています。事務局から前月の出席状況不良者のリストが回ってきて、それに載っている自分のクラスの学生の“欠席理由書”を作成しなければなりません。そして、翌日以降、それを本人に書かせるという仕事が課せられます。

まず、学生に書かせる欠席理由書を、所定の書式に則って作ります。これは入管に提出する書類となりますから、いい加減に作るわけにはいきません。その学生が遅刻や欠席をした日を調べ、欠席理由書に記入するという、単調かつ後ろ向きの仕事をしなければなりません。出席状況不良者ですから、欠席の日が1日や2日ではありません。それを出席データから拾い出して欠席理由書に写します。その日の授業の後半から来たとか、遅刻して1限目の授業だけ欠席扱いとか、面倒くさいことこの上ありません。これが何人もとなると、作業が終わることには目を開けているのもつらくなるくらいドライアイがひどくなります。

新しい月になり、“さあ、あるぞ!”という意欲が一気にそがれます。Sさんのように「国立大学受験準備のため」とか、Lさんのように「美術大学受験用の作品制作のため」とかいうのであれば、認めてあげたくもなります。しかし、JさんやRさんのように、寝坊とか腹痛とかというのを並べられると、“朝、決められた時間に起きるのぐらい、留学生活の基本だろう!”“お腹なんか痛くなるな!”と怒鳴りつけたくなります。

だから、重苦しく後ろ向きなのです。学生のみなさん、私に、“明日の授業の準備”という、前向きの仕事をさせてください。

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1月は行く

1月31日(土)

「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」というわけで、あっという間に1月が行ってしまおうとしています。新学期の準備と、その新学期を何とか軌道に乗せようとしている間に終わってしまった感じがします。最上級クラスは先学期から持ち上がりですから学生の様子はつかんでいますが、レベル5のクラスは今学期初顔合わせの学生が大半で、出席状況のよくない学生は、まだ顔と名前が一致しません。“見かけない顔だから、よく休むAさんだろう”なんていう推理を働かせながら授業をしているうちに、1か月が過ぎてしまいました。

4月に進学を予定している学生には、一刻も早く行き先を決めてもらおうと思っています。Kさん、Oさん、Pさんなどが確定組に入りました。CさんやHさんは、土日で関西遠征です。今頃はホテルで一息ついてるのでしょうか、明日に備えて最終チェックをしているのでしょうか。2人とも、出発の直前に面接のアドバイスを求めに来ましたが、それが役立ってくれるとありがたいのですけど、どうでしょう。

学生たちの方を見てばかりいるわけにはいきません。KCPは文部科学省の認定日本語教育機関になったので、4月から教育の中身を変えます。2月になったら、その準備も本格的に始めなければなりません。そちらも授業と並行して進めるとなると、これから忙しくなります。でも、2月に逃げられる前に形が作れるように、気合を入れて取り組みます。3月が去ったら、新KCPの第1期生をお迎えするのですから。

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退場

1月30日(金)

12月のJLPTの結果が発表されました。今回から合格者にはCEFRのレベルが表示されるようになった点が今までと大きく違う点でしょう。1点でも合格点より低かったら、このレベルは表示されません。学生たちにはあまり浸透していないようですが、今後のことを考えると、知らしめていかなければなりません。

合否に関しては、ざっと見たところ、大きな番狂わせはなかったようです。実力のある学生が、受かるべくして順当に受かったという感じがします。ただ、受かったけれども、もう少し高い点を取ってもいいんじゃないかなという学生は何名かいました。毎度のことですが、背伸びしてN1を受けた学生は、仲良く討ち死にでした。

今回は、合否欄に「退場」と記された学生が数名いました。これは、全科目の試験が終わる前にスマホを手にした学生ではないかと思います。「退場」の数名は私が知らない学生ばかりで、そういうことをやりかねないのかどうなのかはわかりません。まずは事情聴取をして、本当にスマホが原因かどうか確かめ、もしそうなら、学校の中でしかるべき対策を考えなければなりません。

これから先は、学校として教育の成果を挙げていくことが求められます。その1つがJLPTの合格です。合格する力があっても「退場」させられてしまったら、何の意味もありません。スマホを我慢する訓練が必要ですが、授業中もスマホを握りしめている学生の姿を見ると、頭を抱えてしまいたくなります。デジタルデトックスを本気で考えなければなりません。

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授業態度

1月28日(水)

Yさんは、授業中全くやる気を見せません。教室では、教卓から一番離れたところが定位置です。毎日行っている漢字の復習テストも、ほぼ白紙です。先週の文法テストは。選択式の穴埋め問題だけ記号で答えていました。今週も同様です。先学期からの引継ぎ簿を見ると、先学期の先生も持て余していた様子がうかがえます。学校や入管からにらまれない程度には出席する――というのが、Yさんのスタンスのようです。

9時数分前、私が教室に入ると、すでにYさんはいつもの席に着いていました。授業が始まったらすぐに漢字の復習テストと文法のテストがあるのですが、ずっとスマホに見入っていました。9時になり、「Yさん」と出席を取っても「はい」と返事をするわけではなく、かったるそうに手を半分挙げるだけです。

漢字復習テストを始めてもシャープペンシルを走らせるわけでもなく、回収すると名前しか書いてありませんでした。すぐに文法テストの用紙を配ると、2、3分は何かしていたようですが、その後は机を枕にびくともしませんでした。動き始めたと思ったら、スマホをいじってにやけていました。カンニングする気持ちすらないようでした。

漢字の時間、「Yさん、その次の文を読んでください」と指名すると、Yさんは一瞬だけ私の方を見ましたが、すぐまた下を向いてしまいました。私が黙ったままでいると、険悪な雰囲気を感じ取った隣の学生がどこを読むか教えました。しかし、Yさんは一向に読もうとしません。時間の無駄ですから、別の学生に読んでもらいました。

文法の時間のグループ活動にも参加しようとしませんでした。同じグループになった学生も、誘おうとしません。クラスメートにも愛想を尽かされているようです。Yさんは、他の学生たちが楽しそうに語り合っている中、1人で漢字の教科書を開いていました。

卒業式までこんな生活を続けて、楽しいんでしょうかね。

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信ショウ必罰

1月27日(火)

今学期の上級の選択授業では、身近な科学のほかに、“漢検に挑戦”を担当することになりました。初回は受講する学生たちの力とやる気を見なければなりませんから、先学期の先生から引き継いだ問題をしました。

いきなりスマホで調べられたら授業の意味が全くなくなりますから、まずは自分の力で解いてみるよう指示しました。さすがにこの授業を自ら選んで集まった学生たちです。スマホに頼らず、せいぜい隣か前後の学生と相談するくらいで、問題を解いていきました。

学生たちは、読み書きの問題はごく当たり前に取り組んでいましたが、苦労していたのが、漢語の構成を答える問題でした。似た意味の漢字からできているとか、上の漢字が下の漢字を修飾しているとか、当てはまる選択肢を選びます。日本なら小学校の高学年くらいから普通にやっていると思いますが、漢字の本場・中国では、こんな発想の問題はしないようです。これは、スマホで調べるにしても面倒がかかります。それでも、私が例を出して簡単に各選択肢の意味を説明すると、要領をつかんでどんどん答えていました。

誤字の訂正にも苦労していましたが、“楽勝だ”という声があがったのは、「容シ端麗」などというように、四字熟語の漢字を答える問題でした。教室内を歩き回って学生の答えをのぞき込んでも、できている学生が多かったです。そこで、ホワイトボードに答えを書かせても面白くないので、口で説明させました。「信ショウ必罰」などが、説明しにくかったようです。

来週は、学生の弱点をもう少しどついてやりましょう。

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第1歩の2問

1月26日(月)

Sさんは漢字が苦手な新入生です。毎日の漢字復習テストでいつも不合格です。「漢字の意味はわかるけど、書くのはどうしても苦手で…」と言っていました。本人もどうにかしようと思っているのですが、どうにもならないのが現状です。

漢字の復習テストは、前回の漢字の授業で勉強した漢字(熟語)の読み書き各5問で構成されています。6問正解で合格です。教科書に出てきた漢字やその熟語をそのまま問題にしていますから、復習してくれば合格点は取れるはずです。しかし、Sさんは書き問題で点が取れませんから、合格点に手が届きませんでした。

授業後、朝一番でした漢字復習テストを採点してみると、Sさんは6問正解で合格しました。初めての合格です。読み問題4問と、書き問題が2問正解していました。

書き問題は捨てて、読み問題5問を確実に正解すること。書き問題には、読み問題の漢字が使われるので、読み問題のどの漢字と書き問題のどの漢字が同じかわかれば、1問か2問は正解するはず。

実は、先週、上のようなアドバイスをしました。それがようやく実を結んで、書き問題2問の正解に結びつきました。“ねむい”を“眠むい”と書いた惜しい間違いもありましたから、大いに進歩したと言えます。明日以降も期待したいところです。

強固な苦手意識を克服するのは、たやすいことではありません。Sさんにしても、これで苦手意識が消え去ったわけではないでしょう。でも、その第1歩は踏み出したと言えます。これを契機に、漢字を書くことにもお、お城さを見出してもらいたいです。

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ノートを取る

1月23日(金)

選択授業が始まりました。私の担当は毎度おなじみの「身近な科学」です。でも、先学期から続けて取っている学生がいますから、先学期と同じテーマの再放送というわけにはいきません。新しいテーマで資料を整えようと思いましたが、まだ出来上がっていません。しかたがないですから、昔の資料をひっくり返して、先学期とかぶらないテーマを見つけてきました。

パワーポイントのスライドにざっと目を通したところ、データが古くて使えないスライドはなさそうでしたから、図表の配置や文字のフォントなどの微小な手直しを施して使うことにしました。同時に、しゃべる内容も思い出し、ここでこんなことに触れるんだなどと確認しました。

これまた「身近な科学」恒例の、B5の紙を配ってノートを取る練習をしてもらいました。最後にクイズを出し、どのくらい私の話を聞いていたか調べました。

ノートは取る気がないのか、取れなかったのか、白紙に近い学生が多かったです。しかし、几帳面な字で私の話を記録したAさんは、クイズも模範解答でした。きちんと聞いてくれた学生には、私の話が通じているんだと、意を強くしました。クイズをそのままAIに流し込んだのではないかと思われる答えもある中、実にさわやかでした。

私の話は科学の最先端を語るわけではありません。数式満載のスライドが次から次へと現れるわけでもありません。身近な題材をほんの少し違う角度から眺めるだけです。だから、受講生全員にAさんのようなノートを取ってもらいたいです。やればできるはずです。

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