Monthly Archives: 3月 2021

春ですね

3月31日(水)

「1月は行く、2月は逃げる、3月は去る」とはよく言ったもので、今年も3か月が過ぎてしまいました。世の中は、緊急事態宣言が出され、解除され、でもまた感染が広がりつつあるという、振出しに戻るみたいな感じでした。KCPはというと、泣く人も笑う人もいましたが、学生の進路がバタバタと決まり、卒業していきました。

進学実績を全体的に見ると、例年並みではないでしょうか。今シーズンは、昨シーズンまでとは大きく違う特殊な条件下での戦いでしたが、それがKCPの学生たちにとって有利に働いたとも不利益を被ったとも言えない状況です。もちろん、個々の学生レベルで見れば、望外の喜びを得たりまさかの結果に愕然としたり、文字通り人それぞれでした。見方を変えると、この状況を追い風にすることができなかったとも言えます。向かい風に吹き飛ばされてしまった学生も少なくなかったです。

じゃあ、どういう学生にとって追い風だったかというと、早くから動き始めた学生や、失敗に懲りて素早く軌道修正した学生や、志望校や学問に対する思いの強い学生や、焦らず腐らず努力を続けた学生です。結局、今までも成功したタイプの学生が勝者となったという、当たり前すぎる結論になりました。

この3か月の気象データも見てみました。今冬の一番寒かった時期は、1月の10日前後でした。最低気温が氷点下の冬日が続きました。しかし、今朝はコートなしでも全く寒さを感じませんでした。学校の中では、新入生を迎える準備が始まっています。3か月後は、汗をふいているんですよね…。

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手を離れる

3月26日(金)

今学期の進学データを整理しています。これから合否発表という所もありますが、それによる変動は“修正”程度でしょう。誰がどこを受けて結果はどうだったか、EJU、JLPT、英語試験の成績は何の科目が何点だったか、そういったデータをまとめています。

入学時に比べて大きく伸びた学生もいれば、伸び悩んでしまった学生もいます。同じような成績なのに結果は明暗が分かれてしまった例もあります。このデータに、授業中の態度や入試の準備の進め具合など、その学生を担当した教職員からの情報を付け加えると、その学生がKCP在籍中にどのように歩んできたかが見えてきて、同時に、私たちの指導の良し悪しも浮かび上がってきます。

そんなことをしていたら、Cさんが進学先や入管に提出する書類を受け取りに来ました。Cさんは、卒業式当日が試験日だったので、卒業証書をもらっていません。ついでと言っては何ですが、それも受け取っていきました。

そのCさん、11時に来ると約束したのに、姿を現したのは11時45分でした。大幅に遅刻するという連絡は、ありませんでした。入学以来、こういうだらしなさがあり、改まることはありませんでした。何校受験しても、出願書類が出来上がるのは消印有効日の夕方でした。間に合わなかったこともありました。受験日に向けて試験準備をすることもなく、不合格を繰り返しました。

Cさんは、入学直後に受けたEJUですばらしい成績を挙げました。しかし、そこから全く進歩がありませんでした。希望の星が、いつの間にかお荷物になっていました。Cさんのクラスの教師が総がかりでどうにかこうにかつかんだ進学先です。精神的にも大人になっていくでしょうから、就活か院試の時には、持てる力を存分に発揮してもらいたいです。KCPの教職員は、もうお世話をすることができませんが…。

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信頼

3月25日(木)

職員室で打合せをしていたら、W大学から電話だと呼び出されました。話を聞くと、Kさんが受かったというお知らせでした。Kさんは私も入っているクラスの学生で、進路がまだ決定していませんでした。1週間後は4月だという段階に及んで、ようやくこのクラスの学生は全員進学先が決まりました。

それはよかったのですが、なぜこんなぎりぎりまで無所属状態だったのかというと、日本語力不足と情報に惑わされ続けたからです。日本語力不足も、だれかから日本の大学なんか簡単に入れると聞いて、それを信じ込み、勉強に身を入れなかった面が見逃せません。オンライン授業では、いつの間にか消えていることもよくありました。教師の目が届かないのをいいことに、怠惰な生活を送っていたようです。

進学に関しても、どこかから仕入れた素性の定かではない情報に基づいて動いては、失敗を繰り返していました。私たちもあれこれ指導を試みましたが、Kさんの心をこちらに向けることはできませんでした。

オンライン授業では学生とのつながりをいかに築き上げるかが大切だと言われていますが、それはほんとうに難事業です。最初からあさっての方を向いている学生に対して、どのように指導すればその心をとらえることができるでしょうか。正解もマニュアルもありません。過去のある学生に有効だった方法が、今目の前にいる学生にも効果を示す保証などありません。まさにケースバイケースで対処法を編み出していくほかありません。

残念ながら、Kさんとはそういう関係になれませんでした。今、在籍している学生から“Kさん”を出さないように、気を引き締めていかなければなりません。

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朝から夜桜?

3月24日(水)

お昼は趣向を変えて、花見に出かけました。新宿御苑は昨日から再開園しましたが、予約制ですから思いついてすぐに入れるわけではありません。上野公園まで遠征する時間などありませんし、そこまで行ったらうちへ帰りたくなります。

私が行ったのは、丸ノ内線の四ツ谷駅です。桜の季節は毎朝お花見をさせてもらっていましたが、去年はホームに屋根を取り付ける工事のためよく見えず、今年は開花が早すぎて、日の出が追いつかず、外が十分に明るくなる前に四ツ谷駅を通過するため、目を楽しませることができません。そこで、今学期も期末テストまでこぎつけられたことだし、天気もいいことだし、見に行こうと思い立った次第です。

四ツ谷駅の新宿・荻窪方面行きホームは、屋根ができたため、桜は見にくくなってしまいました。しかし、私以外にも桜目あててホームに降り立ったと思われる人が何人かいました。けっこう咲いているようでしたが、よく見ると五分咲きくらいでしょうか。風が思ったより冷たかったですが、桜を愛でることはできました。

気象庁が、新しい平年値を発表しました。気温や降水量など気象観測値の平年値は、10年ごとに改訂されます。それによると、東京は年平均気温が0.4度上がり、年間降水量が76ミリ増え、桜の開花日は2日早まりました。

新平年値は、1991年から2020年までの観測値をもとに算出された数値です。現在の平年値は1981年から2010年までのデータでしたから、両者の違いは、1981年から1990年までのデータと2011年から2020年までのデータとの差だと言えます。30年間にこれだけ温暖化が進んだのです。

東京は、今年の桜の開花日は3月14日でした。また、新旧の平年値を比較すると、3月の平均気温は0.7度も上がっています。そのうち、私の出勤時のささやかなお花見は、夜桜見物になってしまうかもしれません。

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こちらの課題

3月23日(火)

レベル1の会話の期末タスクを担当しました。習った文法と語彙を駆使して、こちらから与えたキーワードをもとに自分たちで考えた場面で、会話を構成していくのです。会話を作り上げるだけなら、グループのメンバーに構成力のある学生がいれば何とかなります。しかし、それをみんなの前で披露するとなると、実際に話す力も要求されます。毎学期、頭でっかちの学生は、このタスクで落ちていきます。

今学期は先週までずっとオンライン授業でしたから、発話の訓練がどれだけできたか心配でした。もちろん、可能な限り口頭練習をしてきました。でも、目の前に教師がいませんから、学生にしてみれば、指名されたとき以外口を開けずに授業を終えることだってできました。そういう環境がどの程度影響を及ぼしているか、おっかなびっくりでタスクに臨みました。

学生たちは大健闘でした。ストーリーもきちんと作れていたし、発音もアクセントもイントネーションも、普通の日本人にも通じるレベルでした。文法も、日本語教師的には指摘したくなる点が多々ありましたが、街の日本人からは「日本語の勉強を始めたばかりなのに、上手ですね」と言ってもらえそうなレベルにはなっていました。採点は日本語教師の目でしましたから、発音は満点の学生が何人かいましたが、文法は満点をつけることはできませんでした。

こうしてみると、オンライン授業でも、発音は思った以上にどうにかなるようです。しかし、発話時の文法の正確性を追求するのは、なかなか難しいようです。これは学生の課題というより、教える側の改善すべき点です。来学期の授業に生かしていきたいです。

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やっとご対面

3月22日(月)

あさってが期末テストという日に至って、ようやく対面授業が実現しました。この稿でさんざんオンラインはやりにくいと言ってきたくせに、クラスの全学生が初対面となるとビビっている私がいました。

でもそれは授業が始まるまでで、教室に入って出席を取っているうちに“スイッチが入った”状態になりました。最初に文法のテストがあったのもラッキーでした。テストをしている20分のうちに、答案用紙の名前と学生の顔や服装の特徴とを結びつけ、どうにかクラス全員の顔と名前を覚えました。正確にはマスクをした顔ですが、授業を進める上では支障がありません。

おかげで、その後はポンポンと指名でき、オンラインでは到底実現不可能なペースで授業を進められました。何より、クラス全員でコーラスさせられるのが大きいです。学生も最初の1、2回は遠慮がちに声を出していましたが、いつの間にか換気のために開けてある窓から入ってくる街の音にも負けなくなっていました。

オンラインの時にはいい学生に見えたNさんは、実はノートもろくにとらず、こちらが油断するとすぐ母国語でしゃべりだすという悪い学生でした。その逆に、オンラインの時に目を付けていたSさんは、一生懸命日本語で考えて表現しようとする学生でした。こういう例を見せつけられると、オンラインの入試面接って、どこまで受験生の本当の力や意欲を見極められるのだろうかと、心配になってきました。記念受験に近い学生が受かったり、当確と思っていた学生が落ちたりしたのは、このあたりにも原因があったんじゃないかと思えてきました。

せっかく顔と名前を覚えた学生たちですが、これが最初で最後の対面授業でした。来学期、1つ上のレベルで会えることを願って、授業を終えました。

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大辛

3月19日(金)

久しぶりに漢字の書き取りテストの採点をしました。オンラインですから、学生が書いた答案用紙そのものを採点するわけにはいきません。学生に答えをノートに書き取らせ、それを写真に撮って送ってもらい、その写真をチェックするという、若干もどかしいやり方をしました。

写真は送られてきたのですが、写真の向きがまちまちで、1名だけですが逆さまなのもあり、採点するのに一苦労しました。う~ん、学生たちはそこまで気を使ってくれないのかな。

点数はそんなに悪くありませんでした。最低でも合格点の60点は超えていましたから。でも、学生自身が思ったよりは悪いのではないかと思います。一画一画がはっきりしない達筆すぎる字は×にしました。画と画のつながりが教科書と違っているのも×にしました。そういったあたりで減点された学生が多かったです。几帳面な楷書の字を書いたアメリカ人の学生が満点でした。中国の学生は、ちょっと悔しいでしょうね。

このクラスは一番下のレベルですから、基本に忠実ということを重視します。また、出願時に提出することが多い志望理由書は、手書きがほとんどです。それには流麗な文字は歓迎されません。下手でもいいですから、楷書で丁寧に書くことが求められます。達筆すぎて減点された学生たちは、半年もすれば志望理由書を書くことになるでしょう。だから、今から訓練なのです。

写真で答案を送ってもらうこの方式、1つだけいいことがありました。それは、学生が書いた文字を自由に拡大できることです。生の答案だと、老眼の私には読めない字もあります。そういう字も、パソコンの画面上なら拡大し放題です。だから、調子に乗って、ガンガン×を付けてしまったところもありますが…。学生のみなさん、辛い採点になってしまい、申し訳ありませんでした。

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苦い思い出

3月18日(木)

昨日から「スマホ脳」(新潮新書)を読んでいます。残すところ10ページちょっとですから、この後帰宅時の電車の中で確実に読み終わります。

あんまり詳しく書くとネタバレになってしまいますが、スマホでSNSをやると、その反応が気になり、また、より良い反応を求めるようになり、スマホが手放せなくなること、それゆえ集中力がなくなることというのが中心的な話題です。

これを読んでいて思い出したのが、何年か前の卒業生のXさんです。理科系のセンスがある優秀な学生でした。事実、国立大学に進学しました。

ただ、Xさんが挑んだ大学は、筆記試験がない大学ばかりでした。EJUとTOEFLと面接と出願時に提出する志望理由書などで合否判定がなされる大学を選んでいました。数学や理科の筆記試験がある大学は、志望校にはしていましたが、結局受験しませんでした。

つまり、マークシートなど選択式の試験には自信を持っていましたが、答案を書く試験では点が取れなかったのです。受験講座でも、EJUの過去問では力を発揮しましたが、「この時の物体の速さを求めよ」とか「なぜこのような反応が起こるか説明せよ」などという問題となると、計算メモや反応式を答案用紙の隅にくちゃくちゃと書くだけでした。答案が書けさえすれば最難関校も夢ではない頭脳を持っていましたが、どうにもなりませんでした。

そのXさん、授業中も常にスマホを握っていました。本人もスマホ依存症と言っていました。答案が書けないのは、明らかにスマホの影響だと思いました。そう注意しましたが、スマホを我慢するくらいなら第一志望校に行けなくても構わないと、聞く耳を持ちませんでした。

この本を読んだことで、Xさんの精神構造が見えてきたような気がします。今、KCPにいる学生たちはどうなのでしょう。対処する方法があるのでしょうか。

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結果は明らか

3月17日(水)

ある地域の大学の受験者・合格者を調べました。当たり前の話ですが、高いレベルほど多くの学生が受かっています。初級で受けた学生はボロボロ落ちていますが、超級はほぼ合格です。これは、文系も理系も美術系も共通の傾向で、“美術系は腕がよければ日本語ができなくても合格できる”という、学生が信じている(信じようとしている?)俗信を、ものの見事に打ち砕く結果が出ています。

やっぱり、日本語力がないと留学生入試は勝ち抜けないのです。その日本語力は、一般には面接で確かめられます。面接で自己表現できなかったら、コミュニケーションが取れなかったら、見通しは暗くなります。そうなると、学生がKCPに在学している間に何を鍛えるべきかも明らかです。私たちがすべきことも見えてきます。

一番難しいのは、学生を動かすことです。単に「受験の時に必要ですから…」では、こちらの危機感は学生には伝わりません。学生は、選択肢の問題ができれば、その文法や単語を使って上手に話せると思いがちです。そんなこと、絶対にありません。特に、今シーズンは話す訓練が足りていません。上級で星を落としたグループには、オンライン授業で話すのをサボっていた学生が名を連ねていました。

夕方、来学期の受験講座の説明会を開きました。KCPの受験講座は、日本語で総合科目や理科や数学を学び、日本語で進学指導を受ける点に意味があります。最初は苦しいでしょうが、そこを乗り切って本当の力をつけてもらいたいと思っています。1年前は日本語的にどうしようもなかったLさんも、受験講座にずっと出続けたことで、入試を勝ち抜く力が付きました。

学生にも言いましたが、入学するのは1年後ですが、入試は3、4か月後から始まります。オンライン授業で顔を隠している暇などありません。

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教科書を見ながら

3月16日(火)

卒業式の後は、ずっとレベル1のクラスに入っています。レベル1を教えること自体は今までに何回もありましたから、要領を思い出せばどうにかなります。でも、文法導入や練習などに使われている場面や状況などに、密を思わせて昨今の情勢に合わないものが意外と多いのです。

東京も桜の開花宣言が出され、さあ花見の季節だと言いたいところですが、花見の名所はどこも花見宴会禁止で、許されるのはせいぜい素通りのみです。しかし、教科書の挿絵では、みんなで集まって大いに盛り上がっています。学生たちも大人ですから、そんなことは重々承知でしょうが、大勢で騒いでいかにも楽しそうな例文を作らせるのは、ちょっと心が痛みます。

夢に描いた留学が、個習か孤学とでも表したくなるような日々になってしまい、学生の心にはもやもやしたものがあるに違いありません。それを思うと、一刻も早く緊急事態宣言が解除され、正常な授業に戻せるようになってもらいたいと思います。その一方で、急いては事を仕損じるとも言いますから、解除は新規感染者数をもっと押さえ込んでからの方がいいという気もします。

首都圏は人口が密集しすぎているから、患者数はそう簡単に減らないという説もあります。また、緊急事態慣れしてしまったから、緊急事態宣言をこれ以上続けても意味がないと考えている人もいます。海外では、日本の緊急事態宣言は緩すぎると言われています。どれもある程度以上は正しいでしょう。これにオリンピックという異次元の商業的要素も絡み、菅さんもどうしたらいいのかわかんなくなっちゃってるんじゃないかな。

「今年はぜひお花見をしたいですね」という、練習問題に対する学生の解答を聞きながら、あれこれ想像してしまいました。

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