Category Archives: 会話

雪に思う

3月22日(木)

それにしても、昨日は寒かったですね。雪もちらつくほどでしたから。でも、夕方の予報では「明日は19度」とか言っていましたから、コートはうるさくなるだろうと思い、今朝、スーツ姿でマンションの外へ。思わずブルッと震えてしまいました。その後も天気の回復が遅れ、結局、最高気温は14.5℃。平年並みでした。

そんな気温でも、アラスカ出身のBさんには暖かく感じるらしく、半袖のTシャツでした。1月の雪の日も、薄手のジャケットを羽織るだけで済ませたとか。国の家のそばにはクマが出現するらしく、クマの写真をたくさん撮ったとも言っていました。そのBさん、日本で一番驚いたのが朝のラッシュだそうです。2m近い身長のBさんにとっては、つり革をぶら下げるバーが邪魔くさく、天井が頭上すぐそばまで迫って気になるとか。

テキサス出身のAさんは、東京で生まれて初めての雪体験。ホームステイの家が駅から20分ぐらい歩くので、あの雪の日はかなり難渋しましたが、それもまた楽しい思い出になったようです。寒いのは大嫌いだけど雪は大好きという、わがまま極まりない好みを述べていました。日本留学で、思いも寄らぬ得がたい経験をしたようです。こちらは、Bさんとは違って、厚手のコートを着込んで厳重装備でした。

期末テストが近いこの時期、初級の学生の会話テストを担当することがあります。世間話をしながら会話力を見るのですが、その過程でこんなおもしろい話が聞けます。それが楽しみで、テストを引き受けている面もあるんですがね。

センサー

2月22日(木)

卒業認定試験が来週の月曜日にありますから、超級クラスでそれに向けた練習問題をしました。今学期勉強した文法項目に関する問題ですが、出来はあまりよくありませんでした。学生たちに実力がないからではなく、問題が難しかったからです。

どうすれば問題を難しくできるかというと、動詞の形を変える問題にすればいいのです。超級ですからて形とかた形とかは、さすがにめったに間違えません。弱点は受身、使役、使役受身です。さらに、「~て/おく/しまう/みる/もらう/くれる」などの補助動詞を使うパターンも、思ったとおりに引っかかってくれます。そんな文法は初級で勉強するじゃないかと思うかもしれませんが、

隣にビルを「建てて」からというもの、日が全く当たらなくなった。

なんていう答えになってしまうんですねえ。

初級文法が臨機応変に使えるようになるには、長い時間がかかります。卒業間近になっても、上述の文法を理想的に使ってくれる学生などめったにいません。特に、“暗記の日本語”に頼っている学生は、「読んでわかる」止まりで、話すときは“ガイジンの日本語”を使い続けることでしょう。

この壁を突破するには、日本人の日本語から栄養を摂取することが必要です。“なるほど、「~てしまう」ってこういうときに使うんだ”“ここで使役が出てくるなんてシブイなあ”とかって感じ取れるだけの触覚がどうしてもほしいところです。それには、まず手始めに、教師の日本語に耳を傾けることです。

今週末が国公立大学入試の最後の山場です。それが過ぎたら心にゆとりもできるでしょうから、こんなことにも是非挑戦してもらいたいです。

自信を持つ

2月20日(火)

今週末に受験を控えるGさんが初めての面接練習に臨みました。「どうして本学で勉強しようと思ったのですか」「日本へ来た前、先輩に薦められました。生物工学科は日本初に設立しましたから、有名です」「はあ、そうですか。では、本学で何を勉強しようと思っていますか」「生物の基礎の勉強をして、大学院で分子生物学を勉強をして、将来は研究員になりたいです」「どうして分子生物学を勉強しようと思ったのですか」「ノーベル賞をもらったトウヨウヨウさんは植物からある物質を分離して薬にしました。それはすばらしいです」「そういう勉強なら薬学部のほうがいいんじゃないですか」「薬学部は薬を作りますが、私は物理を分子生物学に応用します」…

なんとなく話がかみ合わないまま、話が終わってしまいました。予想外の質問に出くわすと白目をむいてしまうので、心の動きが手に取るようにわかりました。最大級のダメ出しをして、受験日直前に再度練習することにしました。

Gさん自身も答えの内容には自信が持てなかったようでした。どんな考え方で答えをまとめたらいいか、どういう話の進め方をすればいいカなど、自分の答えを改善していこうと言う姿勢が見られました。一方、発音や話し方は完璧のつもりだったようです。しかし、どうひいき目に見ても、日本語教師ならわかるけれども、大学の先生はついていけないだろうなという話しっぷりでした。どうしてここまで自信が持てるのか、不思議でした。

はっきりいって、Gさんの答えや話し方には、半年前にはクリアしていなければならない課題が手付かずで残っていました。今まで何をしていたのかと説教したくなりました。あと数日で半年分の遅れを取り戻すのは絶望的ですが、これだけは押さえてほしいというポイントを伝えて、次回までの宿題としました。

要するに、自分の頭の中でシミュレーションすると面接がうまく進むのですが、生身の人間を相手に練習すると思ったとおりに答えられないのです。本番5日前でそれに気づいたGさんは、どのように軌道修正するのでしょう。

狭いなあ

2月10日(土)

昨日からオリンピックなので、クラスの学生たちにオリンピックについて自由に語ってもらおうと思いました。3人1組で話を始めてもらったのですが、あるグループは30秒もたたないうちに静かになってしまいました。「どうしたの?」「私たち、だれもオリンピックに興味がないんです」「冬のオリンピックじゃなくてもいいんだよ」「夏も冬も全然知らないんです」…ということで、そのグループは盛り上がることなく制限時間になってしまいました。

私もオリンピックに特別強い興味を持っているわけではありません。それでも笠谷幸生から浅田真央まで、それなりに語れますし、よほどオタクっぽいトリビアでない限り相手の話題にもついていけます。マイナーなスポーツならいざしらず、オリンピックですよ。全く語れないというのは、常識に欠けているとされても文句は言えないでしょう。

最近、こういう、興味の範囲の狭い学生が増えているような気がします。読解にしても、読解力以前の、興味関心のレベルが低すぎてテキストの読み込みができない学生がいます。昨日の3人にしても、勉強ができないわけではありませんが、このまんまだと面接試験に耐えられるかどうかわかりません。進学できたとしても、学問を進めるなら今のうちから視野を広げておく必要があります。

Cさん、Hさん、Tさん、Sさん、Lさん、Dさん、みんな4月から進学ですが、私の目には危なく映ります。手を拱いていたわけではありませんが、この学生たちの目を外に向けるには、私は力不足だったようです。卒業式までちょうどあと1か月ですが、どうにかできないものかと思っています。

独自路線

2月9日(金)

来週G大学を受験するFさんが、受験準備ということで欠席しました。Fさんは、この1年、G大学を目指して努力を重ねてきましたから、最後の仕上げにもう一頑張りという気持ちはわからないでもありません。でも、この期に及んで学校を休んだところで、どんな準備ができるでしょう。この期に及んでも準備が足りないと思っているようでは、見込みが薄いと思います。何より、Fさんの最大の弱点は話すことです。面接試験できちんと受け答えできるかどうか、私は心配でなりません。これは、学校を休んでも改善されることはなく、学校で何回も練習して初めてどうにかなるものです。

その点、同じく受験を間近に控えたWさんは、毎日職員室で先生方に痛めつけられています。でも、そのおかげで、最近目に見えて受け答えが安定してきて、落ち着きすら感じられるようになりました。ただし、立ち居振る舞いは日本人の基準に照らすと美しくなく、つい先ほどまで厳しく指導されていました。

Fさんも、Wさんのように毎日しごかれるべきでした。でも、練習せずに本番を迎えることになりそうです。日本語教師の自動翻訳機能を駆使してようやくコミュニケーションが成り立つ低度ですから、それをお持ちでないG大学の先生方には話が通じないのではないかと危惧しています。

LさんもG大学に挑戦します。Fさん同様会話力に問題ありですが、こちらは想定問答を丸暗記しようという魂胆のようです。夕方、質問に対する答えを書いて、私のところへ持って来ました。文章を読めば、漢字を頼りにLさんの気持ちは理解できますが、それをそのまま話されたら、聞かされるほうは理解不能だろうなと思いました。朱を入れて返しましたが、これを丸暗記してG大学に受かったところで、入学後に地獄が待っているだろうと思いました。

Fさん、Wさん、Lさん、しばらくはオリンピックどころではありませんよね。

最高

2月5日(月)

毎日、ウォーミングアップ代わりに、学生たちにあるテーマについて3分間ペアで話させます。今朝のテーマは「今度国へ帰るときのお土産」。具体的なモノのお土産でも、「私の笑顔」みたいなものでも、何でも構わないから、国のだれかにあげるお土産を語ってくれというタスクです。

3分後に何人かの学生に何を持って行くか聞いたところ、日本のお菓子という答えが多数を占めました。日本のお菓子はおいしいかときくと、教室全体がうなずいていました。

私はビジネスのお付き合いでのお土産を渡した経験しかありませんから、家族にあげる日本のお土産って何だろうと興味がありました。アメリカの大学から来ている学生は、和風の小物をよく買うようです。また、原宿あたりで買ったTシャツなんかも人気があります。でも、お菓子というのは、いても少数派でしたね。

上級はアジアの学生がほとんどですから、好みが多少は変わるでしょうが、お菓子がここまで支持されるとはねえ。中には「白い恋人」などと商品名まで挙げる学生も。商品名はともかくとして、おそらく全員が何らかのお菓子を頭の中に具体的に描いていたここと思います。

お菓子の勉強に日本へ来る学生が毎年何人かいますから、日本はお菓子に先進国なのだと思っていました。ここまで学生たちの国々での支持が強いとなると、お菓子を武器にして日本を再興できないかと考えたくなります。学生たちが持って帰ろうとしているのは、和菓子よりは洋菓子でしょう。洋菓子と言っても換骨奪胎されて、ヨーロッパなど発祥の国へ持って行ってもその地の人々の舌を魅了するに違いありません。

卒業式が終わったら帰国する学生も多いです。その学生たちのスーツケースにはどんなお菓子が入っているのでしょうか。

直前なのに

1月18日(木)

授業後、今度の日曜日に面接があるというBさんの面接練習をしました。本番3日前ですから仕上げの練習と思いきや、久しぶりに聞く行き当たりばったりの受け答えでした。「どうして本学で勉強したいんですか」「貴校は2年生の時、海外に行きます」「ああ、海外プログラムですね。海外で何をしたいですか」「会社を見たいです。それからスポーツサークルに入ります」「会社を見たい? スポーツサークル?」「国でバスケットボールをしました」…。夏ごろの、まだ面接慣れしていない学生でも、もう少しましな答えをします。

中身もないし、ストーリー性もないし、志望校についても知らないし、しかも早口で発音も悪いし、どうしてこんな学生が野放しになっていたのでしょう。Bさんは同級生よりも口数が多いですから、自分は話すのが上手だと勘違いしています。友達と単語だけで話したり、教室で教師がクラス全体に聞いたときに真っ先に答えたりするのと分けが違うのです、面接は。ある程度の長さの話を、論理的にしなければなりません。面接官という聞き手を意識して、その人の心に訴える話し方が求められます。

途中から面接練習ではなく進学相談っぽくなってしまいましたが、わかったのは、Bさんが入試をなめてかかっていたということだけ。Bさんは、だいたいこんなことを話せばいいと思って、志望理由や将来の計画などを突き詰めて考えたことがないのです。ダメ出しをし続け、どうにかこうにか土壇場に追い込まれていることに気づかせました。普通、Bさんのレベルの学生にはさせないのですが、進学についてきちんと最後まで考えさえるために、想定問答をノートに書いてくることを命じました。

Bさんは、この宿題をやってくるでしょうか。

原石発見

12月15日(金)

先学期の始めから、かれこれ半年間、上級の大学進学希望の学生たちには、志望理由書、小論文、面接など、出願から入試にいたるまでの進学指導をしてきました。私以外にも上級担当の先生方があれこれと手を尽くしてくださっていますから、漏れや抜け落ちはないと思っていました。ところが、細かい網の目をどうかいくぐったか知りませんが、天然のダイヤ原石が発見されました。

Lさんは新年早々C大学の入試が控えています。それで、初めての面接練習に臨みました。「Lさんはどうして本学を志望したのですか」「はい。C大学は結構有名だし、先輩が推薦してくださったし、いいと思いました」「はあ、そうですか。では、本学で何を勉強しようと思っていますか」「精密機械工学科です」「精密機械工学科で何を勉強するつもりですか」「機械について勉強します」「じゃあ、卒業したらどうしたいですか」「エンジニアみたいな仕事がしたいです」…。

絶句したい気持ちをどうにか抑えて質問を続けましたが、どこから指導したらいいかわからないほどの受け答えばかりでした。しかも、日ごろのLさんの癖で、口をあまり大きく開けずに早口で話すものですから、Lさんのこういう話し方を知っている私だからこそかろうじて理解できたものの、初対面のC大学の面接官には、絶対にわかってもらえないでしょうね。

Lさんは、根は悪い学生ではなく、学習意欲も専門に対するセンスもありますが、こんな答え方ではそういった美質が大学側に伝わりません。今週末の宿題をいっぱい抱えて帰りました。来週、また練習すると言っていますが、どこまで軌道修正してきてくれるでしょうか。

未発見の原石は、もうないですよね。

沈黙は錆

11月1日(水)

水曜日のクラスはおとなしいクラスです。テストの成績が悪いわけではありませんが、教師がクラス全体に問いかけても、反応があまりないのです。誰かが答えるのを待っている、教師が説明してくれるのを待っている、指名されたら答えるけれども指名されなかったら黙っている、そういう学生が集まってしまったようです。

口を開かせるにはプレッシャーをかけるしかありません。指名した学生がたまたま間違った答えを言った時、「問1はアでいいですか」「…」「特に意見がなければアということで、次にいきます」「(蚊の鳴くような声で)あ、先生、イ……」「いそいでください? じゃ、急ぎましょう」「いいえ、問1はイだと思います」なんていう感じで、無理やりしゃべらざるをえない状況を作ります。それでもこんな程度ですから、ほうっておいたら教師の独演会になってしまいます。

このクラスの学生は全然しゃべれないのかというと決してそんなことはありません。1対1だと単語ではなく、複文で論理的にきちんと答えられる学生もたくさんいます。性格的に引っ込み思案、恥ずかしがりやなだけなのかもしれません。また、国での勉強の方法が、教師の話を聞くだけで、学生は一言も口を利かなくてもよかったという話も聞いたことがあります。

いずれにしても、語学の習得において、受身の姿勢というか、棚ぼたを待っているようでは、実践的な力はつかないでしょう。N1には受かってもさっぱり話せないというのは、こういう人たちです。進学したら、プレゼンが山ほどあるんですよ。入試はどうにかごまかしきって合格できたとしても、話せなかったら卒業できません。

大学・大学院は、日本語「で」勉強するところです。日本語「を」じっくり勉強できるのは、KCPにいるうちだけです。このチャンスを逃さず、実りある留学の基礎を築いてほしいです。

台風前夜の心理学

9月16日(土)

台風18号が西日本に接近中です。愛媛県の天気予報を見ると、明日は大荒れのようです。これが2週間前、夏休みの最終日だったら、松山から東京までの飛行機が飛ぶかどうかわからず、私はまんじりともせずにニュースや天気予報を凝視していたことでしょう。

2年前の夏休みは、台風が九州を直撃した日に博多にいて、動いている交通機関が地下鉄だけという経験をしました。博多駅前のホテルに泊まっていたので、地下街を通って博多駅付近のビルへは行けましたが、ビル内のお店はほとんどが臨時休業で、全く時間つぶしになりませんでした。動いていた地下鉄で福岡空港へ行くと、飛行機は欠航でしたが、空港ビルのお店は大半が開店していて、思わずマッサージ屋さんに入って、半日マッサージで過ごしました。

今回の台風で東京はそんなことにはならないでしょうが、連休中に台風が通過することになりますから、外回りを点検しました。校庭に置いてあるベンチはかなり重いので飛ばされることはないでしょうが、テーブルといすは1人で楽々持ててしまいますから、強風にあおられるとどうなるかわかりません。ですから、屋内にしまうことにしました。

教師数名がよろよろしながら校庭の片づけをしていると、2年前の卒業生のAさんが自転車で学校の前を通りがかりました。Aさんはわざわざ自転車を降りて、テーブルを運ぶのを手伝ってくれました。八王子の大学に進学したのですが、週末のアルバイトはKCP時代から変えていないそうで、ちょうど移動しているところだったそうです。

運び終わってから大学生活を聞くと、毎週1万字ぐらいのレポートを書いているとか。文献も大量に読み込まなければならず、日々日本語が鍛えられているようでした。心理学は大学に入ってからが大変だとよく聞きますが、でも、そのおかげで日本語が見違えるように上手になっていました。思わぬ余禄に与れました。

明日は約束があって出かけますので、台風さん、お手柔らかにお願いします。