Category Archives: 授業

鬼は外と漢字

2月3日(火)

節分です。中級クラスは授業の後半から日枝神社へ豆まきを見に行きました。しかし、火曜日の私は上級クラス担当で、出かける中級クラスの面々を横目に、選択授業で上級の学生に漢検の練習問題を解かせていました。月曜と水曜は中級担当なんですが、今年の節分は、残念ながら、ちょうどその真ん中でした。

さて、その漢検の授業ですが、自ら積極的に漢検の授業を選んだ学生と、消去法で漢検の授業が残って、しかたなくこの授業を取った学生とが如実に分かれます。消去法組は教室の後ろの方に座ります。積極組は前の方に陣取ります。問題用紙を配ると、消去法組は読み書き問題から取り組みます。しかも、スマホで調べながら。積極組は部首とか同音(訓)異字とか誤字訂正とか、スマホが使いにくい問題、頭を使う問題に、まず取り組みます。

スマホで調べながら漢字の読み書きの問題をしても、あまりいい勉強にはなりません。漢字熟語を語彙として覚えていくのであれば話は違ってくるでしょうが、私の目の前でスマホをいじっている学生にはそれだけの気迫が感じられませんでした、

一方、積極組は周りの学生と相談しつつも新しい課題に果敢に向かって行きます。Tさんはかたくなにスマホを使おうとしませんでした。あくまで自力で解くというのは、今時、タイパが悪いとされそうですが、深いところで理解した事柄は、記憶に残るものです。私に質問してくるのは、もちろん積極組です。

日枝神社の豆まきと学校での漢字の授業と、学生にとってどちらが勉強になったでしょうか。消去法組は、鬼は外の方がよかったのかな…。

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授業態度

1月28日(水)

Yさんは、授業中全くやる気を見せません。教室では、教卓から一番離れたところが定位置です。毎日行っている漢字の復習テストも、ほぼ白紙です。先週の文法テストは。選択式の穴埋め問題だけ記号で答えていました。今週も同様です。先学期からの引継ぎ簿を見ると、先学期の先生も持て余していた様子がうかがえます。学校や入管からにらまれない程度には出席する――というのが、Yさんのスタンスのようです。

9時数分前、私が教室に入ると、すでにYさんはいつもの席に着いていました。授業が始まったらすぐに漢字の復習テストと文法のテストがあるのですが、ずっとスマホに見入っていました。9時になり、「Yさん」と出席を取っても「はい」と返事をするわけではなく、かったるそうに手を半分挙げるだけです。

漢字復習テストを始めてもシャープペンシルを走らせるわけでもなく、回収すると名前しか書いてありませんでした。すぐに文法テストの用紙を配ると、2、3分は何かしていたようですが、その後は机を枕にびくともしませんでした。動き始めたと思ったら、スマホをいじってにやけていました。カンニングする気持ちすらないようでした。

漢字の時間、「Yさん、その次の文を読んでください」と指名すると、Yさんは一瞬だけ私の方を見ましたが、すぐまた下を向いてしまいました。私が黙ったままでいると、険悪な雰囲気を感じ取った隣の学生がどこを読むか教えました。しかし、Yさんは一向に読もうとしません。時間の無駄ですから、別の学生に読んでもらいました。

文法の時間のグループ活動にも参加しようとしませんでした。同じグループになった学生も、誘おうとしません。クラスメートにも愛想を尽かされているようです。Yさんは、他の学生たちが楽しそうに語り合っている中、1人で漢字の教科書を開いていました。

卒業式までこんな生活を続けて、楽しいんでしょうかね。

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信ショウ必罰

1月27日(火)

今学期の上級の選択授業では、身近な科学のほかに、“漢検に挑戦”を担当することになりました。初回は受講する学生たちの力とやる気を見なければなりませんから、先学期の先生から引き継いだ問題をしました。

いきなりスマホで調べられたら授業の意味が全くなくなりますから、まずは自分の力で解いてみるよう指示しました。さすがにこの授業を自ら選んで集まった学生たちです。スマホに頼らず、せいぜい隣か前後の学生と相談するくらいで、問題を解いていきました。

学生たちは、読み書きの問題はごく当たり前に取り組んでいましたが、苦労していたのが、漢語の構成を答える問題でした。似た意味の漢字からできているとか、上の漢字が下の漢字を修飾しているとか、当てはまる選択肢を選びます。日本なら小学校の高学年くらいから普通にやっていると思いますが、漢字の本場・中国では、こんな発想の問題はしないようです。これは、スマホで調べるにしても面倒がかかります。それでも、私が例を出して簡単に各選択肢の意味を説明すると、要領をつかんでどんどん答えていました。

誤字の訂正にも苦労していましたが、“楽勝だ”という声があがったのは、「容シ端麗」などというように、四字熟語の漢字を答える問題でした。教室内を歩き回って学生の答えをのぞき込んでも、できている学生が多かったです。そこで、ホワイトボードに答えを書かせても面白くないので、口で説明させました。「信ショウ必罰」などが、説明しにくかったようです。

来週は、学生の弱点をもう少しどついてやりましょう。

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ノートを取る

1月23日(金)

選択授業が始まりました。私の担当は毎度おなじみの「身近な科学」です。でも、先学期から続けて取っている学生がいますから、先学期と同じテーマの再放送というわけにはいきません。新しいテーマで資料を整えようと思いましたが、まだ出来上がっていません。しかたがないですから、昔の資料をひっくり返して、先学期とかぶらないテーマを見つけてきました。

パワーポイントのスライドにざっと目を通したところ、データが古くて使えないスライドはなさそうでしたから、図表の配置や文字のフォントなどの微小な手直しを施して使うことにしました。同時に、しゃべる内容も思い出し、ここでこんなことに触れるんだなどと確認しました。

これまた「身近な科学」恒例の、B5の紙を配ってノートを取る練習をしてもらいました。最後にクイズを出し、どのくらい私の話を聞いていたか調べました。

ノートは取る気がないのか、取れなかったのか、白紙に近い学生が多かったです。しかし、几帳面な字で私の話を記録したAさんは、クイズも模範解答でした。きちんと聞いてくれた学生には、私の話が通じているんだと、意を強くしました。クイズをそのままAIに流し込んだのではないかと思われる答えもある中、実にさわやかでした。

私の話は科学の最先端を語るわけではありません。数式満載のスライドが次から次へと現れるわけでもありません。身近な題材をほんの少し違う角度から眺めるだけです。だから、受講生全員にAさんのようなノートを取ってもらいたいです。やればできるはずです。

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ゲストがいらっしゃいました

1月16日(金)

最上級クラスにゲストが来ました。このクラスは日本人の高校生向けのテキストを使うなど、典型的な日本語学校の授業とはかなり違う授業をしていますから、見ても参考にならないことが多いのです。しかし、今回のゲストは、国の大学で専門的に日本語を勉強している現役の学生さんたちですから、他流試合に来たといったところでしょうか。ということは、こちらも負けるわけにはいきません。“なあんだ、KCPって、こんな程(低?)度か”なんて思われたらたまりません。

読解のテキスト音読は、いつもスラスラ読んでくれる学生を指名しました。その学生たちは期待に違わず、実に滑らかに読んでくれました。初見のテキストではありませんから、当然と言えば当然なんですがね。文章の内容について質問すると、こちらが狙った以上の答えが出てきました。こいつら、結構力をつけたなあと、私も感心させられました。ゲストにはその答えがどう聞こえたでしょうかねえ。

読解の次は、昨日発表された東洋大学の現代学生百人一首をネタに、ゲストも交えてグループ討論をしました。ゲストは現役の大学生ですから、クラスの学生とはだいたい同年代です。お互い意見が言いやすかったのではないでしょうか。少しは打ち解けたかなといった感じでした。

ゲストのみなさんは次の予定が迫っていましたから授業の途中で抜けましたが、また月曜日にもいらっしゃいます。その時には、Y先生がもっとしっかりした授業をしてくださることでしょう。超級は楽しいというよりも歯ごたえのある授業を目指しています。ゲストのみなさんには感じていただけたでしょうか。

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漢字のスリル

1月15日(木)

レベル5には漢字の授業がありますが、私は漢字を教えません。その日に教科書のどのページをやるか決まっていますから、学生にはがっちり予習して来いと言ってあります。予習していろいろ調べたけれどもわからなかったことを、授業の時に私に聞くことにしてあります。

学期の初めはこのやり方が浸透していないのと、こんなこと質問してもいいのだろうかという(教師の立場からすると)余計な心配と、その他種々雑多な感情がないまぜになって、手を挙げる学生がなかなかいません。しかし、誰かが口火を切ると、少しずつ学生の疑問点が表に出てきます。

学生たちがこの授業スタイルに慣れてきて、質問に対するハードルが低くなると、次から次へと質問が出てくるようになります。30分で終わらせる漢字の授業が1時間近くになることもあります。そんな時は、私の与太話を削って帳尻を合わせます。

逆に質問が足りないときは、こちらから逆質問します。昨日は、“逃がす”と“逃す”は何が違うかと聞きました。そして、こういうところまで調べるのが予習だよと、予習の観点を教えました。ちなみに、逃がす”と“逃す”、ちゃんと読めますか(これも学生に教えました)。

学生からの質問に答えることでその日に伝えなければならない事柄がすべて網羅されたならそれでいいのですが、そういう日もめったにありません。中国の漢字との字体の微妙な違いや、学生がよく間違えるポイントや、今勉強している他の科目との関連など、教師の視点からの注意事項を付け加えます。

このやり方はどんな質問が飛んでくるかわかりませんから、危険と言えば危険です。でも、そのスリルが楽しいんですよね。

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ゲーム正月

1月14日(水)

中級クラスの授業の最初に、ウオーミングアップと口慣らしを兼ねて、「休み中、何した?」というテーマで、隣の席の人と会話をさせました。新クラスになってまだ2日目なので、まだお互い顔もよく知らない程度の関係です。ですから、「はい、どうぞ」と始めた直後はあまり盛り上がっている感じはしませんでした。でも、3分ほどの間になじんできたのか、笑顔も見られるようになりました。

会話を終わらせ、「じゃあ、どんなことをしたか、何人かに聞いてみましょう」と最初に指名した学生は、「うちでゲームをしました」と答えました。パッとしない答えでしたから、次の学生を指名しました。その学生も「うちでゲームをしました」でした。一時帰国して実家でゲームをしていたそうです。

「みんなもゲームしていたんですか」と」クラス全体に聞くと、うなずく学生があちこちにいました。学生の母国は日本ほど気合を入れて新年を祝う風習はないでしょうが、日本にいたにせよ帰国したにせよ、休み中ゲーム三昧だったという学生が少なくないというのは驚きでした。

こんなのは私のクラスだけかと思って他のクラスの先生にお聞きしたら、「私のクラスもゲームの学生が多かったです」とのことでした。ということは、KCPの学生の相当数がゲームに打ち込んでいたのでしょうか。せっかく異国で暮らしているのに、どこでもできるゲームで時間をつぶしてしまうなんてもったいないと私は思ってしまうのですが、学生は違うのでしょうかね。深く突っ込んでみたかったですが、授業も進めなければなりませんから、「じゃ、漢字の教科書を開いてください」と話題を切り替えました。

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初日の風景

1月13日(火)

始業日を迎え、先生方は新しいクラスの学生との顔合わせを楽しみにしているようでもあり、未知との遭遇に一抹の不安を抱いているようでもあり、一種独特の雰囲気が職員室を包んでいました。先学期の先生から情報を得ようとしたり、要注意の学生の申し送りをしたり、あちこちで情報交換も行われていました。

私はそんな学期初日の空気の埒外にいました。なぜなら、私が担当するクラスは、全員先学期からの持ち上がりだったからです。今学期の火曜日は最上級クラス担当です。このクラス、先学期の最上級クラスから1名卒業生が抜けただけで、メンバーは変わっていません。だから、自分から自分への申し送りしかないのです。

教室に入ると、先学期と同じ位置に同じ学生が座り、全く変わり映えがしませんでした。学生も教師も顔なじみですが、今学期はまだ行き先が決まっていない学生を志望校に押し込むことが、クラス担任としての最大の仕事です。責任を持って骨を拾うつもりです。

午後は教科書販売に立ち会いました。先学期レベル1で教えた学生が進級したクラスの先生に率いられて教科書を買いに来ると、みんな懐かしそうに「先生!」と声をかけてくれたり手を振ってくれたりしました。レベル2の教科書を渡すときに「Aさん、この教科書、難しいんじゃないの? あそこに易しい教科書、あるよ」とレベル1の教科書を指さすと、「大丈夫です」「難しくないです」「いいえ、いいえこの教科書です」とかという反応が返ってきました。ポカンとしたまんまの学生がいなかったということは、私の言葉の意味をとらえ、きちんと返答できたということであり、レベル1の最終会話テスト合格と言ってもいいでしょう。レベル2でもしっかり力をつけてもらいたいです。

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しばしの別れ

12月17日(水)

「えーっ、これ、便利!」 教科書巻末の文型一覧表を発見したSさんが叫ぶと、学生全員がその一覧表のページを開いて、ああだこうだ言い始めました。期末テスト2日前にしてやっと気がつくというのは遅すぎる感じがしますが、その表を使って2日間集中的に勉強すれば、今学期その教科書で勉強したことがしっかり身に付くでしょう。それが来学期以降の土台になります。

一番下のレベルと言っても侮ることはできません。その気になれば既習事項を組み合わせてかなり複雑なことも表現できます。こちらも、そういうことを念頭に、意識的に長い文を作らせたり、時事ネタをちょっと扱って社会性を持たせたりと、難しいことができるようになったんだよというメッセージを送っています。

レベル1はこれから先の日本語学習の基礎作りですが、同時に高い到達点も指し示してあげたいです。上も見るんだよと訴え続けてきました。伸びる素養にある学生をしっかり伸ばしてあげることも、教師の大きな役割です。私のように上級にも顔を突っ込んでいる教師なら、なおのことそういう仕事をしていけなければなりません。

初級クラスの最後の日には、「次は、レベル1のクラスじゃなくて、中級か上級の教室で会いたいですね」とあいさつします。実際に中級上級のクラスで再びまみえるケースはそんなに多くはありませんが、でも、絶対にゼロではありません。来年の夏ぐらいに、目の前にいる学生のうちの数名が、成長した姿でまた一緒に勉強するのです。今から、楽しみです。

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押し詰まってきました

12月15日(月)

今週末が期末テストですが、そこへ向けてレベル1は厳しい戦いが続いています。中間テスト付近から“○○形”が続々と登場してきましたが、遂にラスボス・条件形が現れました。

作り方の説明の日本語は、みんなすぐに理解します。しかし、それに従って条件形が作れるようになるかというと、全くそんなことはありません。クラス全体に聞くと、できる学生につられてみんななんとなく言えたような気になります。しかし、ひとりひとりに聞くと、“あるきます―あるければ”“さがします―さがすれば”などというのが至る所から芽を出します。今のうちにこの芽を摘み取らねばと思いますが、なかなかうまくいきません。

こういうのは、1日で決着がつかなければ、長期戦に持ち込んでじわじわ浸透させていくのがいいのですが、なにせすぐ期末テストですから、悠長に構えているわけにはいきません。あの手この手で言わせてみようとしますが、そうたやすくうまくいくものではありません。結局、ほかにもやることがありますから、うちでも練習しろという方向に逃げてしまいました。

今使っている教科書は、会話が中心です。会話だと、勢いで目標としている文法項目が使えているように聞こえてしまうことがよくあります。しかし、筆記試験ではそうはいきません。正確さが要求されます。口頭では視覚的に何も残りませんが、筆記では厳然たる証拠が、学生にも教師にも突きつけられます。両者、それを見て青くなるという次第です。

このクラスに入るのは、あと水曜日だけです。その日に何とか仕上げなければ…と思っています。

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