Category Archives: 授業

4月23日(水)

授業が午後からでしたから、朝から昨日の選択授業で書かせた小論文を読みました。先週から始まり、昨日は第2回でした。先週の小論文は、どうにか規定の字数で原稿用紙のマス目を埋めたにすぎないような文章が大半でした。ですから、昨日それを学生に返すとき、次はこういうところに気を付けて書いてほしいとフィードバックしました。

その1つが「だろう」を多用しないことです。学生に「だろう」はどんな時に使うかと聞いたところ、推測とか予想とかという、正しい答えが上がりました。「今年の夏も暑くなるだろう」とか、「与党が参院選で勝つのは難しいだろう」というような使い方です。「毎日8時間勉強すれば、志望校に手が届くだろう」などという、仮定の表現と組み合わせてもいいでしょう。

しかし、現実は、そういうことがわかっていながら、学生たちは「バブル崩壊後、日本経済は低迷し始めただろう」「札幌はラーメンの本場だろう」というように不要な「だろう」をあちこちにばらまいていました。おそらく、断言するのが怖いからなのだと思います。「札幌はラーメンの本場だ」と言い切った後で、「博多こそラーメンの本場だ」と突っ込まれ、そこで変な論争に巻き込まれたくないという心理が働いているのかもしれません。

でも、論争覚悟で自分の意見や考えをぶつけるのが小論文です。尻尾をつかまれないようにと逃げてばかりでは、読み手の共感を得ることはできません。当然、採点官の心を揺さぶれるはずなどありません。

さて、朝から読んだ小論文ですが、確かに無駄な「だろう」は激減しました。しかし、有害無益な「だろう」の陰に隠れていた難点が、かえって目立ってきてしまいました。それを添削するのに、また一苦労しそうです。

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聞くは一時の恥

4月22日(火)

日本語プラス化学は、先週宿題にしておいた過去問の答え合わせをし、わからないところの質問を受け付けました。答え合わせは私が作った問題解説を配って自分でしてもらいますが、その問題解説を読んだだけでなぜその答えになるか理解できるかとなると、おそらくそう単純なものではありません。

そう思って質問タイムを設けたのですが、だれも質問しません。質問がないわけではなく、どう聞けばいいかわからない、何から聞けば理解が進むかわからないというのが本音だと思います。今学期2回目ですが、先週はオリエンテーションですから、実質初回です。しかもメンバー同士顔見知りでもなく、やっぱり質問しにくいのでしょう。

この場面を救ってくれたのが、Cさんでした。Cさんは日本語プラス3期目ですから、今回の問題も授業の各単元のどこかで見たことがあるかもしれません。「7番の問題を説明してください」と口火を切ってくれました。

どうやって7番の問題の答えを導き出したか解説し、その後、関連のある問題をいくつかまとめて解説しました。他の学生は、私の板書を写したり、パワーポイントを見て反応式か何かを書きとったりしていました。みんな、何かきっかけが欲しかったようです。

さらに、授業後、Kさんが質問に来ました。とてもいい質問でしたから、授業中にしてもらいたかったです。そんなことを言っても始まりませんから、Kさんにわかるように答えました。お互い牽制し合っているみたいです。化学クラスの学生同士、何でも言い合えるような雰囲気作りが必要です。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥です。

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早口言葉?

4月18日(金)

金曜日の最上級クラスには、「社会を知る」という授業があります。現代の社会問題に関して、動画を見たり新聞記事を読んだりなどして理解を深め、議論もするという内容です。たとえ理科系の学部や大学院に進学するにしても、現代社会に対して無知ではいけません。文科系なら面接や口頭試問、あるいは小論文において問われることだって考えられます。

授業の最初に、米の値段は高いかと聞いたら、全員が高いと感じているようでした。値段を聞くと4000円から5000円くらいで、現時点においては相場です。毎日ではないにせよ、自炊しているとのことですから、そのぐらいの出費はこたえるのでしょう。

その後、動画を見せ、それだけではわからない点を補足説明し、備蓄米放出までの背景や米不足に陥った原因などについて知ってもらいました。減反政策は、不思議な政策に映ったようでした。農家の高齢化も、学生にとっては気づきにくい点でした。

こういうように「社会を知る」ことがこの授業の主たる目標ですが、日本語の授業の一環ですから、普通の日本人と同じレベルの日本語理解力を着けていくこともまた、授業の太い柱です。学生たちに見せた動画の中に、2人の出演者のうちの1人がやたらと早口なのがありました。学生の様子を観察すると、途中からスマホをいじり始める学生が何人かいました。見終わった後で聞くと、やはり、早すぎてわからなかったと言っていました。

このクラスの学生が束になってもわからないとなると、少なからぬ日本人もわからないのではないでしょうか。それでは何かを訴えたことにはならないと思います。その方面では結構なのある方のようでしたが、本当に理解してもらえているのでしょうか。心配になりました。

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返却物を上手に使え

4月17日(木)

今学期は、週1回のクラスが3つあります。先週は初めての授業で、今週は2回目の授業でした。しかし、中6日で登板となると、先週覚えたつもりだった学生の顔と名前が、ものの見事に消え去っていました。非常に特徴のある学生は覚えていましたが、それ以外の学生は顔つきがかすかに記憶に残っている程度でした。

顔と名前をどうやって覚えるかというと、テストの時を利用します。テスト用紙に書かれた名前と外見を一致させます。学生たちは下を向いて問題を解いていますから、顔はよく見えません。そして、テストの時間が終わってテスト用紙を集めたら、それを見ながらどんどん指名し、テスト時間中に覚えた外見と名前と顔を一致させます。金髪短髪で丸顔の緑のジャケットはAさん、長髪小柄で茶色いフレームのメガネをかけているのはBさん、…というふうに記憶していきます。

返却物があると、ラッキーです。名前を読み上げると返事をしてくれます。その学生の席まで足を運んで、しっかり顔を合わせて渡し、記憶を強化します。返却物が複数あると、ラッキーと叫びたくなります。

木曜日のクラスも週1で2回目でした。名簿を見て顔が思い浮かぶのは、せいぜい5人。でも、昨日回収したと思われる例文が返却を待っています。名前を覚えることも練り込んで授業を組み立てていきました。

名簿を見ながらたくさん指名し、返却物は最後の仕上げに使いました。迷わず等の学生の席まで行って手渡せました。これで頭の中に入ったかな。でも、1週間たったら忘れているかもしれません。来週の木曜日が楽しみのような、怖いような…。

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間違って登録

4月14日(月)

先週末に日本語プラスの学生登録をし、各学生にメールで時間割を送りました。週が明けると、あちこちから登録訂正の依頼が来ました。こちらの入力ミスかもしれないと思い、学生がこちらに送ってきたデータと照らし合わせてみると、入力ミスはありませんでした。学生の入力ミスか勘違いばかりでした。

入力フォームはそんなに難しく作ったつもりはないんですがねえ。やっぱり、日本語が読み取れていないんだなあと思いました。入力フォームには時間割表までつけておいたのに、同じ曜日・時間帯の科目を2つ登録してしまった学生がいました。文系と理系の数学の両方にチェックを入れた学生もいました。

時間割を見ながら自分に必要な授業を見つけ出して科目登録するというのは、大学に入ったら毎学期必ずすることです。大学の科目登録よりもはるかに単純なKCPの日本語プラスの登録すら満足にできないようだと、先行きは明るくありません。

こういうことも含めて、日本で勉強していくには何が必要か、日本語でこんなことができるようになっていなければ進学先で困ってしまう、などということも実地に示して指導していくのも、日本語学校の役割です。そう考えて、メールを見て違うと訴えてきた学生には、ちゃんと話を聞いて、最終的には修正に応じます。

だから、一番困るのは、何も訴えてこない学生です。日本語プラスの時間割が送られてきているよとクラスの先生から言われているにもかかわらずメールをチェックせず、登録した授業に出ず、結局不本意な進学に甘んじざるを得なかった学生が、毎年必ず出てきます。

いずれにしても、2026年度入試の戦いはもう始まっています。2か月後の6月のEJUが最初の決戦です。

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看板を磨く

4月11日(金)

最上級クラスの授業をしました。先学期上級に在籍していて、3月に卒業しなかった学生たちを集めたクラスです。新入生もいます。先学期からの継続組は全員知っているので、新入生だけ顔と名前を覚えればいいわけです。昨日までとは打って変わって、ずいぶん楽でした。

いちおうこのクラスの担任ですから、担任がましいこともしなければなりません。始業日に今学期の目標、今年度の目標を書いてもらいましたから、比較的多くの学生が取り上げた事柄についてコメントしました。

最上級クラスですから、EJU350点以上とか、N1合格とかといった目標を掲げた学生が多いです。EJU350点はかなりの高得点と言えますし、N1に合格すると言っても、CEFRのC1に相当するとされる142点以上を取ってもらいたいです。このぐらいの成績を挙げるとなると、普通に勉強しただけでは足りません。正解を増やす、点数を上げるという発想ではなく、間違いを減らす、ミスをなくすということを考えていかなければなりません。日本語の実力そのものとは違った次元での戦いが待ち構えています。そんなことを伝えると、学生たちは驚いたような顔をしていました。

遅刻をしない、出席率80%をキープする、などといった目標もあちこちに書かれていました。そのためには夜早く寝るとか、病気にならないようにするとか書いている学生がほとんどでしたが、もう一歩踏み込んで考えなければ、この目標は達成できないでしょう。夜早くするためにはどうするのか、病気にならないための対策は何か、そこをはっきりさせずにただ漫然と目標を掲げるだけでは、いつまで経っても出席状況の改善にhつながりません。

アドバイスというよりは、小言ばかりを並べた感じになってしまいましたが、これが私の偽らざる感想です。このクラスは、今後1年間、KCPの良心であり、看板でもあります。それにふさわしい風格を、一刻も早く身に付けてもらいたいです。

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もう1年?

3月17日(月)

朝、S先生がご病気でお休みになるという連絡が入りました。S先生は中級クラスの授業をすることになっていましたから、代講を立てなければなりません。中級レベル担当のH先生に授業内容を聞くと、読解を力ずくででも進めなければなりません。となると、慣れない先生ではなく、この読解をやったことのある先生が適任です。ということで、急遽、私が代講をすることになりました。別の仕事を予定していたのですが、授業に穴をあけるわけにはいきませんから、引き受けることにしました。

教室に入ると、顔と名前が一致するのは2人ぐらいで、完全にアウェー状態です。でも、最初の30分がテストでしたから、その間に答案用紙の名前とその学生の雰囲気(学生は机の方を向いているので、顔は見えません)を一致させたり、答案を盗み見てその学生はできそうかどうか見極めたりして、態勢を立て直そうとしました。

テストの次は漢字です。「予習してきてわからなかったことがあったら質問してください」と全体に聞いたら、何人かが手を挙げました。その質問に対してぱきぱき答え、ここでこちらのペースに持って来て、山場の読解になだれ込みました。

読解は水についての読み物でした。水なら化学屋の端くれとして得意分野ですから、教科書の本文を元にして、新たな情報を付け加えたり、関連事項を学生に考えさせたり進めていきました。どうにか目標到達地点に達しました。代講教師としての義務を果たしました。

胸をなでおろしながら1階に戻ってくると、先週卒業したばかりのKさんがいました。「先生、もう1年、KCPで勉強させていただけませんか」と聞いてきました。留学ビザでの日本語学校在籍期間は、最長2年と定められています。学校としてはとてもうれしい申し出なのですが、法律的にかなえてあげることはできません。また、Kさんは最上級クラスまで上り詰めていますから、4月以降、Kさんの日本語力をさらに伸ばしてあげられるような授業ができるかどうかわかりません。そういうことを伝えて、「ごめんなさい」と言いました。

午前中の中級クラスに遅刻してきたNさんも4月から進学です。KさんよりもNさんに「もう1年勉強」という気持ちを持ってもらいたいところです。でも、手ぶらで教室に入って来たNさんには、そんな気持ちはみじんもないでしょうね。

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次の時代に

3月11日(火)

卒業式前日の上級の教室は、どこか浮き立っています。それでも、教師としては教科書の所定のページまで授業を進め、卒業生に対しては勉強の区切りをつけ、卒業式以後も勉強を続ける学生たちにはこれからも勉強が継続するというシグナルを与えなければなりません。

授業の最初に明日の卒業式のお知らせなんかをしてしまうと、卒業生の気持ちは完全にどこかへ飛んで行ってしまうでしょうから、そういったことはすべて後回し。姿が見えない卒業生もいましたからね。そして、昨日の続きの読解。本文は終わっていて、内容確認問題と、本文に出てきた表現・語彙の勉強をしました。

このクラスのいいところは、卒業生は浮ついているものの、残る学生たちは宿題もやってきたし、課題にも前向きに取り組んでいるところです。今までの経験から言うと、残る学生も卒業生につられてフワフワしてしまうことが多いのですが、このクラスの学生は友達に会うためだけに来ているような卒業生をしり目に、ノートをとったり例文を考えたりしていました。

現在の上級クラスで4月以降も勉強を続ける学生たちは、来年度の主力メンバーです。6月のEJUで高得点を取って“いい大学”に進学したり、7月のJLPTで満点かそれに近い成績を挙げたり、入学式をはじめとする学校行事で通訳などとして活躍したり、とにかくあらゆる場面で下級生の到達目標として君臨してもらわなければ困ります。ですから、向学心の片鱗がうかがわれる授業態度が頼もしく映りました。

授業の最後は校歌の練習です。明日の式で歌います。歌詞に出てくる言葉と“KCP”の関連を説明したら、2回目は、少しは声が出るようになりました。

明日からは、この教室は使いませんから、いすを机の上にあげて帰ってもらいました。整然と並んだいすと机を見て、卒業生たちが日本語を使って幸せになれますようにと、神様もいないのに祈ってしまいました。

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聞く力

2月27日(木)

木曜日のクラスで毎週続けてきたディベートは、今週が最終回。ということで、優勝チームを決めるディベート大会を開きました。だいたい力が同じになるようにチームを作り、トーナメント戦をしました。

今学期初めの頃は、自分の意見を言うので精いっぱいでした。相手チームの意見をしっかり聞いて、それに反論・質問するという、ディベートの基本ができた学生は2、3人しかいませんでした。それが、全員とまでは言いませんが、多くの学生が「確かに○○ということもありますが、□□は◎◎ではないかと思います」「××と言いましたが、△△の面ではどうですか」といった質問や反論がたくさん出るようになりました。

Pさん、Sさんなどは、初回から、相手の主張を几帳面にメモし、それを見ながら反論していました。これができるようになってもらいたいと思っていたのですが、KさんやLさん、Mさんたちも、私の目の前でメモを取っていました。そのため、ディベートの議論がかみ合うようになりました。短い間に成長したものだと思います。

KCPの学生は香車型が多く、自分の主張はできても、相手の主張をきちんと受け止めることはあまりしません。でも、今学期の訓練(?)の甲斐あって、このクラスの学生たちは、一歩下がったり、横に出て角度を変えて問題を見つめ直したりできるようになりました。喜ばしい限りです。

このクラスの学生の大半は今学期卒業して、進学したり就職したりします。この授業は、そういう学生たちへのはなむけになったでしょうか。

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さすが

2月19日(水)

最上級クラスの発表会をしました。社会問題について調べたことを、スライドを使って発表します。

昨日の夕方の時点でスライドが未完成の学生が数名いたので、スライドを完成しておくようにというメールを送っておきました。そして、今朝、学生たちのスライドをのぞいてみると、みんな出来上がっているではありませんか。朝、目が覚めたら、枕元にクリスマスプレゼントが置かれていたような気持ちでした。

何と言っても、学生たちが発表を怖がっていないのが、さすが最上級クラスですね。みんな、よく通る声で堂々と発表していました。授業中めったにしゃべらないSさんも、スライドを効果的に使って、わかりやすい発表をしてくれました。同じ上級でも、私が受け持っているクラスだと、ささやきかつぶやきかさもなければ聴力検査かわからなような声で、スマホに覚えてもらった原稿を読み上げるであろうと思われる学生の顔が、5人ぐらい思い浮かびます。

原稿を読んでいても、話し方が自然なんですよね、このクラスの学生たちは。漢字が読めなくて立ち往生してしまうことがありません。読み間違いはいくつかありましたが、大勢に影響がありませんでしたから、大目に見てあげましょう。欲を言えば、モニター画面を指し示しながらしゃべってもらうと、より一層、聞き手への訴求力が増すのではないかと思いました。

聴いている学生たちにも評価してもらいました。そのコメントが的確で、これまた感心させられました。話す力も聞く力も、CEFRの最高ランク、C2でしょうね。よくここまで伸びたものです。

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