Category Archives: 授業

愚痴は愚痴として

8月4日(火)

「K先生、お疲れ様です。授業、いかがでしたか」「学生があまり反応しないので、なんだかやりにくいですね」「それはマスクをしてるからですよ。それに、あんまりしゃべるなって指導してますから」「そうですよねえ。しゃべり過ぎたら何が起こるかわかりませんからね。それから、誰が発言したかわかりにくいですね」「自由に答えさせると誰が答えたかつかめませんから、私はどんどん指名してるんですよ、名簿を見ながらでも。そうすれば教師がコントロールできますから」「確かにそうですね。あと、マスクしてると反応も見えませんね。わかってるのか、わかってないのか、なんだかつかめなくて…」「ありますね、それは。しなくてもいい説明をしちゃったり、しなきゃいけない説明を飛ばしちゃったり…」「安全サイドに走ると話が延びちゃうんですよ。それに加えて、グループで話し合いもさせられないでしょ。これも辛いですね」「そうですよねえ。まあ、どういう授業をしても、わかるやつはすぐわかる、わからないやつはいつまでたってもわからないっていうのが真実じゃないんですか」

…と、まあ、午前の授業が終わった昼休みに、マスク越しの授業の愚痴を言い合いました。こういう情勢ですから、教師がしゃべりまくるという、養成講座などで絶対にしてはいけないと教わった授業をせざるを得ません。学生から話を引き出すのを必要最低限に抑える授業なんて、KCPではありえなかったんですけど。

それでも、対面授業には、学生のかすかな反応を瞬時に捕らえてそれに対応したり、カメラを通してはできない大きな説明ができたり、学生と学生が顔を合わせることによって生じる相乗効果が見られたりなど、捨てがたい長所があります。わざわざ日本という、学生にとっては異国まで足を運んできてもらっているのですから、その期待に応えられる授業をしていきたいです。

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気を抜くな

7月29日(水)

オンライン授業だと、Zoomの画面に学生の名前が並びますから、誰が出席しているかわかります。でも、授業の最初に名前を呼んで返事をしてもらって出席を確認します。つなぐだけつないで授業に参加しているふりをして、好き勝手なことをしているなどという不届き者が現れないようにするためです。顔も出させるし、次々と指名もして、授業時間内はこちらに集中してもらいます。オンライン授業が始まったばかりの頃は、授業中に指名してミュートを解除したらいびきが聞こえてきたなどという事例もありましたから、その辺は抜かりなくやっています。

もちろん、9割以上の学生は真面目に勉強しています。進学の意志があやふやな学生たちはほぼ帰国してしまい、今在籍している学生たちは、本気で進学しようと考えている、いわば精鋭たちです。ですから、オンラインであれ対面であれ、前向きな姿勢で課題に取り組み力を伸ばそうとしています。

水曜日は、オンライン授業の日。朝9時にFさんの名前を呼んで出席を取ると、眠そうな声で返事が。いかにも今起きたという雰囲気を漂わせていました。これはまずいと思い、すぐに指名すると、授業で使うことになっているプリントを用意していないと言います。やはり寝起きだったのです。その後何回か指名して、声がしゃきっとしてきたのが11時ごろ。ということは、9時からのオンライン授業にすっきりした頭で出席するには、7時に起きなければならないという計算になります。起きるべき時間は、通学する日と同じです。

だけど、授業終了間際に指名した時は、的外れな答えだったなあ。オンラインだと気合が入らないんでしょうか。世の在宅勤務のみなさんはどうなのでしょう。社会人は責任がありますから、ピシッとやってるはずですよね。

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横綱のお相手

7月22日(水)

先週の水曜日は日本語教師養成講座のオンライン講義でしたが、今週は最上級クラスのオンライン授業でした。メンバーの半分ぐらいは何となく知っていますが、その中には教えたのは初級以来という学生もいて、実質的には初顔合わせに近いクラスです。全員が大学院か大学への進学を希望しています。

しなければならない課題をすべて終えても時間が少しあったので、先週上から2番目のクラスでやった問題をこのクラスの学生たちに送って、解いてもらいました。先週のクラスもよくできるクラスでしたが、でも、間違いが少なくありませんでした。このクラスはどうだろうという興味も少しありました。さて、結果はどうでしょう。

ある程度時間をあげてから答え合わせをしてみると、ほとんどミスがありませんでした。オンラインだからこっそり何かで調べたということも考えられますが、にわかに調べたところで答えにたどり着けない問題も含めて正解ばかりでした。立派なものです。この最上級クラスが横綱だとしたら、2番目のクラスは大関か、下手をすると関脇ぐらいでしょう。それくらい、力の差が際立っていました。

また、ちゃんと予習して授業を受けるという勉強のスタイルが出来上がっています。そう感じたので、学生たちの予習が及んでいなさそうな点を衝いて質問してみました。根性のねじ曲がった私の質問には、さすがになかなか答えられませんでした。でも、来週からもこうして授業が楽しめるのかと思うと、胸が弾みます。

横綱のみなさんには、横綱相撲を続けて、志望校まで勝ち進んでもらいたいです。

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初めてのカーディガン

7月16日(木)

昨日の夜、学校を出たら半袖シャツから出た腕が寒かったです。丸ノ内線でも銀座線でも、私の周りに人たちは長袖が主流でした。季節が1つ戻ったような感じでした。

今朝、家のベランダに出るアルミサッシにうっすら水滴がついていました。開けると、冷気ではなく寒気と呼びたくなるような空気が部屋の中に入ってきました。これはちょっと耐えられないと思い、先月、ユニクロの安売りで買っておいたカーディガンを着て家を出ました。

家の外はカーディガンを羽織るくらいでちょうどよく、電車も窓を開けていますから暑いと感じることもなく、学校まで来てしまいました。職員室に入るとけっこうな気温で、カーディガンを脱いでしまいました。おそらく、鉄筋コンクリートに先週までの熱が蓄えられていて、それにコンピューターの排熱も多少は加わってたのでしょう。

午前午後ともに授業でしたが、ずっと半袖で過ごしました。最近の授業は学生にあまりしゃべらせるわけにはいきませんから、どうしても教師の発話が多くなります。そうすると知らず知らずのうちに体を動かし、だから体力を使い、ゆえに熱が発生し、そのためカーディガンなど不要となります。しゃべらなくても授業時間中3時間立ちっぱなしだし、学生の様子や理解度を見るために教室中を歩き回りますから、はたで見るよりずっと肉体労働です。

昨日は1日中オンライン授業でしたが、帰宅時まで全く寒さを感じませんでした。気が付くと、1人きりの教室で、パソコンのカメラとマイクに向かって必要以上の大きな声でしゃべっているんですねえ。「仕事に熱が入る」とよく言いますが、こういうのもその中に入るのでしょうか。

というわけで、カーディガンは私の机の上で丸まっています。でも、外に出たらひんやりするんでしょうから、また家まで活躍してもらいます。

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大活躍

7月14日(月)

午前中はM先生の代講で中級クラス、午後は今週から始まった受験講座の生物と、対面授業を6コマこなしました。こんなにたくさんの対面授業は、2月の下旬以来ですから、4か月半ぶりになります。

午前のクラスの何名かは、先学期、1つ下のレベルで先月1か月だけ受け持っていた学生でした。でも、大部分は初対面ですから、アウェー気分です。そんなことお構いなく、名簿を見ながらバシバシ指名してテンポよく答えさせられるのが、対面のいいところです。オンラインだと、学生側のマイクのON/OFFがあるため、どうしても流れが滞りがちです。そして、私自身マスク越しの対面授業にも多少は慣れてきたのか、アウェーであるにもかかわらず、何回か笑いを取ることができるようになりました。明後日、今学期受け持っているクラスの授業をする時に、この経験を生かしていきたいです。

午後の受験講座は、先学期はずっとオンライン授業でした。同じようにパワーポイントを見せながら授業を進めましたが、実物の学生が目の前にいると、反応もしっかりつかめますし、問いかけもしやすいです。復習問題や応用問題を出して考えさせることができます。オンラインでも考えさせる問いかけはできますが、もう少し考える時間を与えれば答えにたどり着きそうなのか、これ以上時間をかけても答えが出てきそうにないのか、その見極めができません。対面だとちょうどいいタイミングで解説に入れます。

受験講座の各科目は、これからは口頭試問も念頭に置いて、日本語で論理的に話す練習も少しずつしていく必要があります。オンラインでもできないわけではありませんが、対面の方がやりやすいことは確かです。学生に話させてみると、思ったことが日本語で表現できず、非常にもどかしそうな顔をしていました。

明日は、オンラインで6コマ。どんな授業になるでしょうか。

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進学したけど

7月11日(土)

3月の卒業したSさんが、ビザ更新に必要な書類を取りにKCPへ来ました。第一志望のR大学に進学したSさんですが、キャンパスでの対面授業はもちろんのこと、オンライン授業もほとんどありません。一部の語学の授業を除いて、実質的に学生が自習することになっています。自分で教科書を読んで、演習問題をやって…という毎日だそうです。前期は定期試験もなく、後期も対面授業は望み薄のようです。

教師が計画的に授業を進めていくのなら、科目間の連絡も取れていて、学習がスムーズに進むことでしょう。しかし、学生が自分で教科書を読み進むとなると、そのバランスも崩れてしまいます。授業Aで習ったことを応用すると授業Bの理解が深まり、それを基礎に演習科目Cに取り組むとその専門分野が立体的にとらえられる―というようになっているはずです。Sさんはそれがうまくできず、進んだり戻ったりしていると言っていました。

確かに、R大学には優秀な学生が集まっていますが、大学院生ではなく学部の1年生に専門分野の自習を求めるのはかわいそうです。1年生の授業に集中的に教師を割り当てられなかったのでしょうか。Sさんはそんなことは言っていませんでしたが、「授業料半分返せ」という声も十分理解できます。

他の大学に進学した卒業生たちはどうしているでしょう。どこも去年までとは全然違う形の授業になってるでしょうが、多少なりとも大学生活らしい生活が送れていることを祈るばかりです。同時に、在校生への進路指導も、こういう異常事態下であってもきちんとした勉強ができるところを薦めるようにしていきたいです。

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一緒がいい

7月10日(金)

授業後、先学期私が受け持っていたHさんが職員室に呼び出されていました。Hさんは、今学期の担任の先生に恋人と同じクラスにしてほしいと訴えていました。恋人と一緒に勉強できればやる気も湧いてくると言います。

KCPでは、恋人同士は同じクラスにしません。一緒のクラスにすると、ろくな結果を生まないというのが今までの経験からわかっています。学校にいる3時間かそこらの間くらい別々に過ごしたって、恋人は逃げたり消えたりしません。同じ教室で隣に座り、先生よりもお互いの方に目を向けていたら、成績が上がるはずがありません。

YさんとMさんも恋人同士でした。新入生の時、2人とも私のクラスでした。2人の住所が全く同じで、ゲストハウスとかルームシェアとかという形態ではないところでしたから、確かめてみると一緒に暮らしているとのことでした。一緒に暮らすなとまでは言いません。でも、生活を教室まで持ち込んで、いつもくっついているというのはいただけません。座席指定制にして離れた席にしたり、グループワークでは必ず別々にしたりと、こちらも2人が日本語に集中できるようにと工夫しました。もちろん、次の学期からは違うクラスにしました。

でも、2人は休み時間になると、七夕の織姫と彦星よろしく、非常階段やラウンジで会っていました。そんな2人を見ているとほほえましくもありましたが、教室でも同じ調子でやられたらかないません。心がほんの少し痛みましたが、クラスは分けて正解だったなと思いました。YさんとMさんは卒業後も一緒だそうです。

仲がいいのはまだしも、2人が険悪な関係になってしまうと、教室全体に暗雲が立ち込めることもあります。2人は全然違う意味でお互いしか見えませんから、これまた厄介です。教師が下手に口や手を出すと、余計にこじれてしまいます。

Hさんのクラスは変えるつもりはありません。恋路は学校の外で歩んでもらいます。

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ご無沙汰してました

7月6日(月)

前回の出勤が6月23日ですから、実に13日ぶりの出勤です。去年の10連休以上に休んでしまいました。厳密にいうと、7月2日に病院へ行く道すがらちょっとだけ顔を出しましたから、この間まるっきり学校に近づかなかったわけではありません。

さて、再起動最初の仕事は養成講座の講義でした。私が担当しているのは演習や実習ではなく講義形式ですから、オンラインです。オンラインだとマスクもフェイスシールドも必要なく、鬱陶しい思いをしなくて済みます。窓も開けなくていいので、隣のビル工事の騒音にも悩まされません。ZOOMの使い方にも慣れてきましたから、椅子に腰かけてのんびり授業ができるようになりました。

日本語の先生になりたいというくらいの方たちですから、けっこう活発に意見や質問が出てきます。日本語に対する勘もよさそうで、5月までの講義は予想以上に進みました。ですから、今月からの講義はあれこれ考えてもらうパートを増やし、私の話が上滑りしないように、3歩進んで2歩下がるくらいの構えでいこうと思っています。

次の講義はあさってです。休みの前に集めておいた資料を読み込んで、受講生の知的好奇心を触発するような講義を作り上げたいと思っています。だけど、次回は敬語が中心ですから、今までの経験からいうと、いかに優秀な受講生でも、講義を楽しむより敬語の忘れっぷりに愕然とすることが多いようです。ボコボコにならないように予習してくるように言っておきました。受講生のみなさんも巣ごもりの日々でしょうから、その暇つぶしに取り組んでくれるのではないかと期待しています。

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よくそうにつかう

6月16日(火)

先週に引き続き、中級でもできるクラスの聴解の授業をしました。そのセリフの中に、「~浴槽につかることが好きな人が~」ということばがありました。学生たちは、これを「~浴槽につかうことが好きな人が~」と聞き取ってしまいました。精神を集中させて聞かせても、全学生が「浴槽につかう」と聞き取るのです。

いかにできるとは言っても、中級の学生にとって“つかる”は未知の語彙でしょう。一方、“つかう”は初級の語彙で、今まで数えきれないほど書いたり話したり聞いたり読んだりしてきたはずです。ですから、“つか…”と耳に音が入ってきたら、“…”に当てはまる音は“う”であっても“る”など想像もできないに違いありません。学生たちの耳には確かに子音rが届いて鼓膜を震わせているはずなのですが、脳はそのr音を無視して情報処理してしまいます。

知らない単語は聞き取れないという典型例です。「浴槽」だって、学生たちには聞いてすぐわかる単語ではありませんから、「~浴槽につかうことが好きな人が~」は意味不明なセリフだったことでしょう。絵を描いて、これが「浴槽につかる」だと説明し、もう一度聞かせたら、ようやく学生たちは眉を開きました。

日本語は語彙が多い言語です。「浴槽につかる」だって、「風呂の中に入る」とか「お湯に浸る」とか別の言い方もあり得ます。それを網羅するには、ライシャワーさん並みに、それこそ日本文化にどっぷりつからねばなりません。入試までの短時日でそこまで至るのは不可能です。でも、可能な限り引き上げてやりたいと思っています。

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意欲×意欲

6月15日(月)

午後の授業後、進学コースの学生に対して、来学期の受験講座の説明をしました。いつもの学期なら、教室の椅子が全部埋まるか、それでは収まり切れなくて講堂で実施するかしていたのですが、今学期は普通の教室でも3密に程遠い程度の学生しかいませんでした。

でも、集まった学生たちはみな熱心で、私の話を、メモを取りながら聞いていました。初級で、こちらが何も言わないのにメモを取り始める学生は珍しいです。先生から言われていたのかもしれませんが、それでもそれがすぐにできるというのは、なかなか有望です。

また、質問があるかと聞いたら、全員が質問してきました。どれもが本質的な内容で、質問すべきことをまとめて来ていたのかもしれません。私の回答を聞いてそれに対してさらに質問を重ねるという、上級顔負けの議論もできました。もちろん、初級の学生がわかるようにですから、語彙や文法のレベルは下げましたが、確かな手ごたえのある質疑応答ができました。

今月から通学授業が再開されましたが、教室での授業がどうも滑らかに進みません。マスクをしていることで気分的に発言が控えられ、教師側も発話が多くなり過ぎないように抑えている面もあります。ですから、このように活発な質疑応答は本当に久しぶりで、わずかな時間でしたが、とても気分よく過ごすことができました。

こういう意欲あふれる学生たちを見ると、こちらも彼らの力になりたいという思いが湧き上がってきます。教師の意欲をたきつけるほどの学生です。その夢を何とかかなえてあげたいです。

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