Category Archives: 生活

朝の小旅行Ⅱ

7月2日(水)

1か月ほど前に、地下鉄の運転見合わせにぶち当たって、銀座から新宿まで小旅行をした話をこの稿に書きました。今朝は、運転見合わせとかではなく、いつもと違う経路で出勤しました。

いつもは最寄駅から地下鉄を乗り継いで新宿御苑前駅まで来るのですが、今朝はメトロの向かいにあるJR駅から電車に乗り、新宿まで来ました。

私が乗るんですから、朝の一番電車です。常磐線は1両に数名もいないくらいガラガラでしたが、日暮里からの山手線は座席がサラッと埋まる程度のお客さんがいました。田端で立つ人が出て、池袋から高田馬場までは反対側の窓が見えないほどの混雑でした。新宿では、私も含めた降りたのと同じくらいの客が乗ったのではないでしょうか。

新宿は、南口に出ました。地下鉄への乗り換えには遠回りになりますが、乗り換え時間が10分もあったので、めったに行かない街の様子も見てきました。5:20をちょっと回ったくらいの新宿駅南口は、すでに寂しくない程度の人が行き交い、車も、渋滞こそしていませんでしたが、両方向けっこうな台数が走っていました。バスタには夜行バスが到着し始めているころだったのでしょう。

メトロの駅まで地上を歩きました。朝から雨という予報が出ていたのに、薄日が差していましたから、夜の疲れがにじみ出ているはずの街が明るく見えました。どこかの店員さんが、ゴミを出していました。

御苑の駅には、いつもの電車より7分早く着きました。いつもファミマの前あたりですれ違う人とも出会わず、そのまま学校へ。

7分早い1日が始まりました。

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三軒茶屋と慰霊の日

6月23日(月)

おとといのブラタモリは、前週に続いて青山通り。そのまた前の週は三軒茶屋。三軒茶屋が特集されるのなら、大阪の松屋町や名古屋の今池、福岡の香椎や箱崎あたりも取り上げられていいと思います。ミナミや栄や天神では、格が違い過ぎます。東京の青山通りと釣り合うのは、大阪なら御堂筋ではなく、堺筋か千日前通りあたりではないでしょうか。でも、東京以外の街や通りは、ブラタモリで取り上げられていないんじゃないでしょうか。

毎週日曜日は「べらぼう」を見ています。私はBSで見ていますから関係ありませんでしたが、昨日は都議選の開票速報で、総合テレビは7:14からと、46分繰り上がりました。確かに、この都議選は参院選の前哨戦として注目されていました。でも、都議選は、首都とはいえ、一地方議会の選挙に過ぎません。その開票速報を全国放送で行うことに、どれだけの意味があったのでしょう。結果だけ報じれば十分だったと思います。

6月23日は、沖縄戦が事実上終結した日、沖縄慰霊の日で、毎年沖縄全戦没者追悼式が行われます。こちらも、一地方の一追悼式ですが、“過ぎない”で片付けられない重みがあります。NHKは30分の特番を組み、連続ドラマの開始を5分遅らせたようです。

私は東京の人間ですが、都議選に比べて、沖縄の追悼式の扱いが軽いように思えてなりません。米軍がイランを空爆するようなご時勢だからこそ、“沖縄”をきちんと伝える意義がより一層重いのではないでしょうか。石破さんがひめゆりの塔に献花したそうですが、そういうことも含めた報道がなされたのでしょうか。

放送局の本拠地が東京にあるからといって、東京を伝えることばかりに力を入れていてはいけません。

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防犯講習

6月10日(火)

防犯講習がありました。警察の方がいらっしゃって、電話やメールによる詐欺など留学生が巻き込まれやすい事件や、自転車の傘差し運転など留学生が犯しやすい法令違反について、わかりやすく説明してくださいました。私たち教職員にとっても、学生の生活指導のポイントを学ぶという意味で、有意義な講習です。

しかし、残念なことに、過去にはこういう講習を受けたばかりなのに詐欺に引っかかってしまった学生もいました。上級以外は学生の母語の通訳を入れるのですが、徹底するのは難しいです。また、他人事だと思って聞いている学生も少なくないのでしょう。

私のクラスの学生には、そんなことがないように、クラスに戻ってから、KCPの学生が巻き込まれた事件、犯した失敗などを付け加えて話しました。真剣に聞いていたようですが、少しは心に響いたでしょうか。こういうのに遭うと、事件にしても法令違反にしても、留学を続ける気力がそがれるでしょう。学生が嫌な思い出で留学を終えるのは、当の本人はもちろんのこと、私たちも心が痛みます。

でも、何より憎むべきは、人をだまそうと、悪意の電話をかけ、メールを送り付ける輩です。同国人をターゲットにする場合が多いというではありませんか。確かに、現代社会を生き抜くには生き馬の目を抜くことも必要でしょうが、弱い立場の留学生の目ではなく、強者の目を抜いてこそ、本当の勝者なのではないでしょうか。

KCPの名で留学生ビザを発給してもらうということは、学生の生活全般に責任を持つということでもあります。そういう筋の延長線上に、防犯講習は行われるのです。

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起きるころに寝る

6月3日(火)

Kさんは最上級レベルの学生で、来春大学に進学しようと勉強に励んでいます。今度のEJUの目標点は日本語350点、昨年11月よりも20点ほどの上乗せを狙っています。総合科目も20点ぐらい点を伸ばそうと考えています。Kさんの志望校に合格するには、それくらいの成績が必要なのです。

Kさんが一番恐れているのがケアレスミスです。本気で考えてもわからなかった問題ではなく、ちょっと慌てて解いたらやらかしちゃったという類のミスです。これは悔しいですよね。自分としてはそこそこ手ごたえを感じていたのに、それがまるっきり空振りになってしまった時、精神的に立ち直るのには、しばらく時間を要します。

もちろん、350点という目標は口先だけではなく、実行も伴わねばなりません。6月にこの点数を取らないと、Kさんは志望校を受験できません。11月のEJUの結果が出るころには、志望校の合格発表は終わっています。それゆえ、寝ている時間以外はほとんど勉強しているとも言っていました。心臓が張り裂けそうな日々が続いているのだと思います。

そんなストレスのため、よく眠れないそうです。どうやら、私が目を覚ます頃Kさんは寝落ちし、8時には目を覚まして登校するようです。目が覚める時間がちょっとでも遅れると、遅刻となってしまうのです。これもまたストレスになっているのかもしれません。

Kさんは早く受験勉強を終わりにしたいと言っていましたが、よくわかります。頑張れとしか言えない自分が、もどかしいです。

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ITを勉強したい?

5月29日(木)

授業後、Gさんと面接しました。Gさんは来春大学に進学すると言っています。しかし、話を聞くと、毎日10時間寝ているそうです。そして、学校の外ではほとんど勉強していません。睡眠時間と学校にいる時間と通学に要する時間と食事などにかかる時間を差し引いても、まだ6時間ぐらいあります。その時間は何をしていくかと聞くと、遊んでいるとのことでした。これじゃ、進学なんて夢のまた夢ですよ。6月のEJUは自信があるかときくと、首を振りました。ここにはとても書けないような点数を目標としているようじゃ、先は明るくないです。

Gさんは理系日本語プラスを受けていますから、大学でどんな勉強をしたいか聞いてみました。ITという答えが返ってきましたが、さらに突っ込んでも具体的な内容は出てきませんでした。漠然とIT、だからなんとなく理系という発想で日本語プラスに出てきたのでしょう。数学や理科はどうかと聞くと、全然わからないと言っていました。だから、先週あたりから数学や理科の授業を休むようになったのでしょう。10時間も寝ているのなら、本気で精神的に落ち込んでいるわけでもなさそうですが…。

かなりまずい状況ですねえ。このまま目標を見失ってしまうと、勉強もやる気が出ず、生活も惰性に陥り、留学生活が人生の無駄遣いになりかねません。漠然とITならそこにもう一歩踏み込んでみて、クリアなイメージを持つことが必要です。結果的にITに進まなくても、何かがつかめるはずです。

それにピッタリなのが、再来週の月曜日に行われる大学・大学院進学フェアです。毎年、何校かの大学の担当者に来ていただいて、説明会、進学相談会を開きます。そこに、ITが学べるT大学が参加しますから、GさんにはT大学の先生の話を聞けと指導しました。Gさんが、これで上向いてくれればと思ています。

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悩み

5月26日(月)

授業後、レベル1のMさんと面談をしました。Mさんは国で働いていたこともあり、他の学生より少し年上で、落ち着いた感じのする学生です。4月に来日したばかりなのに、あさって引っ越しすると言います。来日した時、適当な家が見つからず、仮住まいのつもりで現在の住まいに入りました。Mさんの話によると、そこは又貸しの又貸しの…という具合で、ブラック物件のようなのです。そこで、つい先日、その住まいから抜け出し、今週はホテル住まいだそうです。何とか適当な物件が見つかり、あさって入居の運びとなったそうです。でも、電気、ガス、水道の申し込みには自信がないそうで、そういう時には事務所のスタッフに通訳を頼みなさいとアドバイスしました。

引き続き、同じクラスのYさんの話を聞きました。Yさんは目立たない学生で、決して素晴らしくよくできる学生でもありません。自分でもそれを自覚していて、“私は馬鹿ですか”と翻訳アプリを通じて聞いてきました。決してそんなことはありません。確かに再試になったテストもありましたが、その再試を教師から急かされることなく受け、ちゃんと合格しています。日本語がペラペラとは言い難いですが、学期の最初の頃と比べたら、大きく進歩しています。さらに話を聞くと、国にいた時いじめにあい、それで自信をなくしているようでした。日本で大学院に進んで、教育心理学を学び、自分のような境遇の子どもを助けたいと言います。そのぐらいの気持ちがあれば、大学院合格ですよ。Yさんが自信を持てるような授業の進め方をしなきゃと思いました。

レベル1の学生は、上級の学生とはだいぶ毛色の違った悩みを抱えています。教師がそれに1つ1つ向き合っていくことが、この学生たちの明るい留学生活につながるのです。

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診てもらいました、見せてもらいました

5月23日(金)

ここ10日ほど、咳と鼻が出続け、収まる気配も見えません。最近のどが渇くのですが、水分が鼻水として出て行ってしまうからだろうかと疑いたくなるくらいです。咳をし過ぎたせいでしょうか、きのうあたりから右胸の筋肉が痛いです。変な態勢でせき込んだのに気づいていなかったんだと思います。そんなわけで、午後、近くの耳鼻咽喉科へ見てもらいに行きました。

予約制ではないところでしたが、15分待ちぐらいで順番が回ってきました。症状を聞き、「じゃ、口を開けて。左の方を向いてください」と、医者は口の中が映し出されるモニターを見るように指示を出します。「のどは赤くなっていませんね」と言いましたが、確かにその通り。赤くただれているのではないかと思っていましたが、拍子抜けでした。続いて鼻の中にカメラを突っ込むと、鼻水が絡まった鼻毛の束が大写しにされました。こちらも取り立てた異状はありませんでした。こういった患者自身が自分の身体を直接確認できるような医療器具が広く普及しているようです。たまに町の医者に行くと、勉強になるものです。結局、単なる風邪という診断でした。

処方箋をもらって薬局へ。医者の話によると、最近は風邪が流行っているので、病院に一番近い薬局では咳止めの薬がなくなってしまったとか。学校の近くで探すことにしました。

しばらく前のこの稿に書きましたが、病院からの処方箋調剤の場合、その薬局にない薬が1種類でもあったら、他のすべての薬も出してもらえません。ですから、事前に処方箋調剤薬局の位置を調べ、1軒目に入りました。すると、白衣の薬剤師さんが「1日3回、毎食後、2錠ずつ飲んでください」とスマホに向かって話していました。その向かい側には背の高い外国人のお客さん(患者さん)。用法を翻訳アプリに吹き込んでいたのです。スマホの画面を確かめたお客さん、満足気に「ありがとう」と言って店を出て行きました。

薬が出てくるまで時間がかかりましたから少し心配になりましたが、処方箋の薬は無事全種類そろいました。驚いたのはその値段です。1日当たり90円。ジェネリックにしてもらったからということもあるでしょうが、申し訳ないほどの安さです。この1週間分で、何とか治さなくちゃ。

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震える

5月21日(水)

Cさんが授業前に職員室へ寒いと訴えに来ました。「暑い」「寒い」の感覚の違いは、毎年この時期に露わになります。急に気温が高くなり、それをそのまま暑いと感じて冷房を入れる学生がいる一方で、その冷風に耐えられないと感じる学生もいます。Cさんは耐えられない組です。

担任のN先生によると、以前にもこういう感覚の違いから「寒い」となってしまったことがあったとのことです。それなら、危険予知して羽織るものぐらい持って来ればいいのにと思いますが、生活力のない若者に要領よく振る舞えと求めることにも無理があります。

去年のBさんを思い出しました。Bさんも「寒い」を連発しました。寒かったら窓際に席を取ればいいとアドバイスすると、窓際の席だとホワイトボードの字が見えないと言って、冷気の吹き出し口近くの、教卓のそばを定位置としていました。多少は厚着をしたものの、授業中は冬(夏?)眠よろしくびくとも動かないこともありました。

そのBさん、進学先のD大学でどうしているでしょう。寒くて震えあがっているのでしょうか。授業が終わるたびにキンキンに冷え切った体を、初夏の陽光が降り注ぐキャンパスの芝生で温めている図が思い浮かびます。

Cさんには、私のカーディガンを貸しました。手渡すとすぐに着込んで、ボタンを几帳面に全部止めていました。そして、授業後に、「先生、ありがとうございました」と、教卓のところまでわざわざ返しに来ました。Cさん、こんな言葉が使えるんだと、失礼ながらそう思ってしまいました。

私は、レベル1のクラスなら、多少冷房が強かろうと、半袖シャツで十分です。知らず知らずのうちに、それだけ激しく動いてるのです。

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看板を磨く

4月11日(金)

最上級クラスの授業をしました。先学期上級に在籍していて、3月に卒業しなかった学生たちを集めたクラスです。新入生もいます。先学期からの継続組は全員知っているので、新入生だけ顔と名前を覚えればいいわけです。昨日までとは打って変わって、ずいぶん楽でした。

いちおうこのクラスの担任ですから、担任がましいこともしなければなりません。始業日に今学期の目標、今年度の目標を書いてもらいましたから、比較的多くの学生が取り上げた事柄についてコメントしました。

最上級クラスですから、EJU350点以上とか、N1合格とかといった目標を掲げた学生が多いです。EJU350点はかなりの高得点と言えますし、N1に合格すると言っても、CEFRのC1に相当するとされる142点以上を取ってもらいたいです。このぐらいの成績を挙げるとなると、普通に勉強しただけでは足りません。正解を増やす、点数を上げるという発想ではなく、間違いを減らす、ミスをなくすということを考えていかなければなりません。日本語の実力そのものとは違った次元での戦いが待ち構えています。そんなことを伝えると、学生たちは驚いたような顔をしていました。

遅刻をしない、出席率80%をキープする、などといった目標もあちこちに書かれていました。そのためには夜早く寝るとか、病気にならないようにするとか書いている学生がほとんどでしたが、もう一歩踏み込んで考えなければ、この目標は達成できないでしょう。夜早くするためにはどうするのか、病気にならないための対策は何か、そこをはっきりさせずにただ漫然と目標を掲げるだけでは、いつまで経っても出席状況の改善にhつながりません。

アドバイスというよりは、小言ばかりを並べた感じになってしまいましたが、これが私の偽らざる感想です。このクラスは、今後1年間、KCPの良心であり、看板でもあります。それにふさわしい風格を、一刻も早く身に付けてもらいたいです。

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2人の卒業生

4月10日(木)

「先生、少し前の卒業生なんですが、先生に会いたいって来てます」と声をかけられ、受付まで出て行くと、Aさんがいました。もう少し正確に言うと、すっかり大人になったAさんが立っていました。KCPで勉強していた時は、まだ幼さが残っていましたが、目の前のAさんは、大人の雰囲気をまとっていました。来日したお母様と一緒だったので、孝行娘が親を案内してきた感じがして、しっかり者になったなあと感じ入りました。

Aさんはオンライン授業やイレギュラー入試を体験した時期の学生で、“お互い苦しい時期を乗り切ったね”という連帯感みたいなものも共有しています。日本へ来たはいいけれども、その後“鎖国”になってしまい、何が何でもKCPで勉強を続けるほかなく、さぞかし心細かったことでしょう。Aさんはそれを跳ね返そうとしていたのか、いつもまなじりを釣り上げて気負っているふうに見えました。語気の強い話し方が印象に残っていました。私に向かって話しかけているAさんは穏やかな目元をしていましたが、語気の強さはあのころと変わっていませんでした。あの頃の教室の雰囲気を思い出しました。

AさんはKCP卒業後Y大学に進学しました。そこを卒業し、今はT大学の大学院に通っています。今の研究を活かして起業するかもしれないなど、夢を語ってくれました。「会社が大きくなったら、KCPに寄付してね」なんて軽口をたたいたら、「もちろんそうします」と、かつてのAさんの口調で力強く宣言してくれました。10年後ぐらいかなあ、寄付が実現するのは…。

その後、ちょっと外に出たら、学校の前に車が止まっていました。3月に卒業したOさんが車のそばに立って、「運転してきました」と言うではありませんか。学校の駐輪場に置きっぱなしにしていた自転車を回収に来たそうです。確かに、卒業の直前に、運転免許の試験で学校を休んだこともありました。その車、1850万円だそうです。こちらは、親のすねをかじりまくる道楽息子のオーラが出まくっていました。

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