Category Archives: 生活

磨き上げる、研ぎ澄ます

10月1日(木)

月が替わり、10月期が始まりました。それと同時に日本語教師養成講座も新規受講生を迎えて開講しました。

私はいつも通り文法の講義を受け持ちます。初めのうちは、受講生の思考回路を変えることに力点を置きます。文法に敏感になる、何気なく聞いたり読んだり、いや、もっと受動的に自然に目や耳に入ってきた日本語の中から「あれっ」とか「おや?」とか「ちょっと待って」とか感じた言葉の使い方を拾い上げる感覚を身に付けてもらいます。そして、何がその違和感の元なのか分析し見極める感覚を磨くことが、日本語教師には不可欠だと思っています。

初回のネタには、ある新聞記事を使いました。助詞の使い方が悪いため誤解が生じかねない見出しの実例です。記事に出ていた1つは私も見かけてこれはひどいと思っていたものです。私がわざわざ取り上げたくらいですから、受講生のみなさんはみんな何がどう悪いのか気づきましたが、そういう心構えなしでこういう見出しに触れていたら、知らず知らずのうちに、文法的ではないけれども合理的な意味に解釈してしまったに違いありません。

確かに、文法的には変でも、話し手・書き手の言わんとしていることが感知できれば、その発話や文の文法性についてとやかく言うことはめったにありません。もちろん、誤解が生じたときは助詞が間違っているとか多義的に解釈できるとか、文句は言うでしょう。日常生活においては、それで全く問題ありません。というか、敢えて波風を立てることはしないでしょう。しかし、日本語教師の仕事は言語的に日常生活ではありません。一般庶民とは違う次元の空間に存在しています。その空間を自由に漂い、ましてやお金を得ようというのなら、その方面の感覚を研ぎ澄ますことが求められて当然です。

これから2週間ほどは、養成講座講師の日々が続きます。帰る前に明日の資料の準備をしておかなければ…。

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初みかん

9月17日(木)

今学期最後の授業を終え、教卓まわりの片づけをしていると、Mさんが面接練習をしてくださいと言ってきました。I先生から引き継ぎを受けていましたから、すぐに始めました。

部屋の入り方もきちんとできているし、声もよく通るし、姿勢も背筋をピンと伸ばして見事なものだし、視線も泳いでいないし、外観は合格です。答えも、大きな破綻はありませんでした。ちょっと文法を間違えたり、文が滑らかに言えなかったりもしましたが、コミュニケーションに影響を及ぼすものではありませんでした。しかし、インパクトがないのです。

志望理由も大学で勉強したいことも将来の計画もそれなりに言えています。不可ではないという意味で、10人の中の5人には残れるでしょう。しかし、このままでは10人の中の1人にはなれません。自分を売り込むという要素が乏しいのです。面接官の記憶に残る何かがなく、平板な印象しか与えません。

Mさんにそういうことを指摘すると、本人もうすうすとは感じていたようで、盛んにうなずいていました。本番の面接は来月に入ってからですから、答えを組み立て直す時間はあります。学期休み中にもう一度やることになるでしょうね。

面接練習を終えて食事に出た帰り道に近くの青果店をのぞいてみたら、信号機や山手線なんか問題外の緑色のミカンが店頭にあるではありませんか。待ちに待った酸っぱいミカンです。もちろん、即、買いました。ハウス物はだいぶ前から出回っていましたが、私は毎年露地物が出るのを待って、そのシーズンの初物を買います。お店の人の話によると、今シーズン初入荷とのことでした。今晩、うちで早速食べてみます。Mさんの面接の答えにも、緑色のミカンのような聞き手をキュッとさせるくらいの刺激が加わることを祈りながら…。

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7区

8月31日(月)

8月が終わってしまいました。今年の8月は、夏休みもなく、ひたすら家と学校の往復に励んだ1か月でした。足を踏み入れたのは、足立、荒川、台東、千代田、中央、港、新宿の7区と、23区の1/3にも及びません。そのうち港区は赤坂見附駅で乗り換えたというにすぎません。中央区・千代田区も、先々週の土曜日に運動不足解消のために朝早く隅田川の河川敷を勝鬨橋まで、そこから晴海通りを有楽町まで歩いたというのを除けば、毎日地下鉄のトンネルで通り抜けただけです。今月の交通費は見事に0円です。

夏休みは、博多に宿を取って、福岡県を中心にあちこち回ろうと考えていました。世界遺産に指定された三池炭鉱、同じく世界遺産の宗像大社(もちろん、沖ノ島へは行けませんが)、いつも通り過ぎるだけの久留米、いつも乗換えと泊まるだけの福岡市内といったあたりを中心に、1日ぐらいは佐賀まで遠征してもいいかなと考えていました。長崎街道を歩いて冷水峠を越えるなんていうアイデアもありました。それがすべて消えてなくなり、気が付いたら60歳になり、安倍さんが辞めていたというのが、今年の8月です。

そして、暑い1か月でした。気象庁が公表している真夏日・猛暑日のデータによると、今年はもしかすると今までで一番暑い8月になるかもしれません。8月の晦日なのに真夏日489地点(観測地点の過半)、猛暑日111地点もあります。それ以上に、7月と8月の暑さの差が激しかった年として記録されるかもしれません。

そう考えると、家と学校の間を地下鉄に乗って行ったり来たりしているうちに半端じゃない日中の暑さをやり過ごしたというのは、健康的だったとも言えます。長崎街道の道端に熱中症で倒れ込んでいたというのでは、シャレになりませんからね。

9月になっても、気温がかなり高い状況が続くようです。せめて、ことわざ通り、彼岸までには夏将軍に撤収してもらいたいものです。

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目標を見据えて

8月26日(水)

超級クラスの授業で、東大の学生は目標を明確にしてそれに向かっているという内容の生教材を読みました。毎日、何となく生活しているのではなく、具体的な数値目標を立ててそれを達成するよう努力を重ねていると書かれていました。

超級の学生たちに聞いてみると、ぼんやり生きているわけではありませんが、生教材に書かれていたほどの意識には達していないようでした。普通はそうでしょうね。社会人になれば数値目標だらけで頭が痛くなってしまいますが、学生でそれがきちんとできる人はまれでしょう。逆に言えば、そういうことができたから、他から抜きんでて、東大に入れたのでしょう。

“EJUの日本語で360点”など、ほどほどの期間の目標は立てやすいです。しかし、その目標に到達するために、毎日何をどう積み重ねていくかとなると、緻密な頭脳が要求されます。「1日ぐらいサボってもいいか」の繰り返しが、目標の未達をもたらします。目標の切り下げが度重なることが挫折です。

入学した時は、みんな国立とか早慶とかと言います。そう言った学生の中で、日々の目標を掲げ、一歩ずつ確実に前進し続けられる学生は、残念ながら、非常に少ないです。超級の学生たちは、その中でもよじ登り続けられた精鋭と言ってもいいでしょう。確かに今は東大の学生のレベルには及びませんが、背伸びすれば手の届く範囲にいると思います。だから、この記事に刺激されて、その背伸びをしてもらいたいのです。

クラスの中には東大を志望校としている学生もいます。その後押しになればと思っています。

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猛暑日

8月21日(金)

それにしても、暑い日が続きますねえ。今年は立秋を過ぎてから暑くなり、暦の上の秋が盛夏となっています。残暑が猛暑で、ことわざ通り本当に彼岸まで暑さが続くかもしれません。本来ならそろそろ甲子園の決勝戦で、そのころになると、中継のアナウンサーが「秋風が立ってまいりました」なんて言うのですが、今年はそんな気配など、みじんも感じられません。

8月10日から、毎日、全国で100か所以上が猛暑日を記録しています。最多は15日の278か所です。真夏日に至っては、最多が11日の778か所で、最低でも18日の586か所です。全国の観測地点は921か所ですから、778か所とは85%に当たります。北海道の北半分や本州の高地のような暑くなりにくいところを除くと、人の住んでいるところはすべて30度以上になったと考えいいでしょう。

そのため、熱中症で命を落とす方が多くなっています。日々の死者数だけで物を言えば、今は肺炎よりもこちらの方がはるかにこわいです。KCPでも、学生たちに熱中症の予防に心がけるよう呼び掛けています。校内だけでなく、家の中での注意点も伝えています。

いざとなったらマスクを外せと言われ始めたのものも、わからないではありません。そのためなのか、最近はマスクを外して街を歩いている人を見かけるようになりました。ただ、困ったことに、外で口を出している人を見ると、見てはいけないものを見てしまったような気になり、目のやり場に困ってしまうのです。そのたびに心臓がどきんとし、熱中症よりも体に悪いんじゃないかとすら感じます。

午後5時までの最高気温、36.0度…。

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ドームが満席

8月11日(月)

新型肺炎の累計感染者数が5万人を超えました。春先に中国の感染者数が8万人以上になった時、いくらなんでもあそこまでひどいことにはならないだろうと思ったものです。ですが、今や、中国の背中が見えたどころか、この勢いなら今月中にも中国を追い越してしまうかもしれません。

もはや、感染者をクラスターレベルでとらえることも、感染経路を明確に把握することもできません。市中感染が広がっていると言われていますが、誰もが無症状感染者であると言ってもいいのではないでしょうか。ですから、大勢が集まってマスクを外して会食し談笑すれば、病原体の密度が高まり、より多くの病原体を体内に取り込むことになります。その中には自分が持っているのと違うタイプの病原体もあり、免疫の力が及ばず、発症に至ることもあるでしょう。

日々、自分がウィルスをまき散らしているかもしれないと思って生活すべきです。私は、必要最小限しか口を開かないことにしています。最近は買い物をするたびに「袋は要りますか」と聞かれますが、首を振って拒否の意思を示します。昼食は店が空いている時間帯を狙っていきますから、11時台か2時以降です。学校の外では一言も口を利かず、電車の中ではひたすら本を読みます。

不思議なのはエスカレーターでのアナウンスです。「手すりにつかまって…」と言いますが、電車のつり革や握り棒もつかむと危ないと言われているのに、どこの誰がつかんだかわからないエスカレーターの手すりなんか、触っていいわけがないじゃありませんか。みなさん、足腰の鍛錬と感染防止のために、階段を使いましょう。

5万人と言えば、各地のドーム球場の最大キャパです。猛暑日が続いていますが、冬の寒さをやり過ごすがごとく体を固くして、マスクが外せる日を待っています。

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8月の始まりは夏の始まり

8月1日(土)

久しぶりに、天気予報に晴れマークが並んでいましたから、“もしかしたら”と思っていたら、やっと関東甲信地方も梅雨が明けました。天気図を見ると、おとといあたりまで本州を東西に分断するようにのさばっていた梅雨前線が、本州のはるか東に退いています。ただ、天気図を見る限り太平洋高気圧がでんと構える感じではありませんから、お昼に出た時に見上げた空には、梅雨っぽい雲も広がっていました。

日照不足で農作物が高騰しています。“梅雨明け十日”といって、梅雨が明けた直後はお天気が安定するものですから、カーッと日照りが続いて生育不良を挽回してもらいたいところです。夏が暑くないと、コメをはじめとする秋に収穫期を迎える農作物にも悪影響が現れかねません。週間予報によると、東北から沖縄までは晴れが主体のようですから、あまり心配しなくてもよさそうです。

夏の暑さが本格的になると、マスクが鬱陶しくなりそうだと方々で言われています。暑苦しいからってみんながマスクを外したら、そうでなくても増えつつある感染者が一気に天井を突き抜けてしまうかもしれません。暑かったらうちの中でエアコンをつけてじっとしているのが一番だということなのでしょう。やっぱり今は、“Go To”じゃなくて“Stay Home”みたいですね。新型肺炎が広がり始めた頃、“夏になって真夏日が続くようになったら、こんなの消えてなくなる”などという説もありましたよね。もちろん、今、そんなのを信じている人などどこにもいません。

換気のために開けた職員室の窓から、セミの声が入ってきます。KCPの周りにセミが止まれるような木があったかどうか記憶にないのですが、夏らしさを盛り上げてくれています。

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灯台下暗し

7月27日(月)

先週、H先生が出勤するなり「新宿駅に広い通路ができたんですよ」と、JR新宿駅に新設された東西連絡通路について語ってくれたことがありました。ネットのニュースで見てみると、確かに今までにない空間が生まれていました。

それが何となく気になっていましたから、連休中のある日、新宿に所用があったので、ついでにJR新宿駅まで足を延ばして見てきました。行ってみると、東口と西口の改札をなくして、JR線の地下にサッカーができるんじゃないかというくらいの広場(?)がデーンと構えているじゃありませんか。休日の、しかもお昼ちょっと前という人手の比較的少ない時間でしたから、人がいっぱいという感じではありませんでした。でも、地下鉄の上のメトロプロムナードは明らかに人が減っており、その分がJR側に流れたことは確かです。

そうそう、東口・西口の券売機が、新通路に面した新改札口の横に移動していました。みどりの窓口も移動するみたいです。その跡地はどうするのでしょう。JR得意のエキナカにして、新たな稼ぎ口にするつもりなのかな。

そのJRの通路をしげしげと眺めたところ、新宿駅長、新宿区長をはじめ、関係者の顔写真とあいさつが壁に出ていました。それは当然かもしれませんが、その関係者全員が男性でした。あーあ、まだ男社会なんですね。小池さんは忙しくてあいさつ文を考える暇もなかったのでしょうか。

新宿で働いているんだから、新宿駅くらいすぐに行けるんじゃないかとお考えの方もおいででしょう。しかし、私の通勤経路は新宿駅を経由せず、仕事帰りに逆方向に向かう元気はなく、新宿駅付近で昼ご飯を食べたら密に巻き込まれそうだし、結局、寄り付くきっかけがないんですね。いや、活動力の低下は、老化の動かざる証拠です。

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あさイチの冒険

6月13日(土)

関東甲信地方が梅雨入りしたおととい、朝、ちょっとした冒険をしました。最寄駅から3つ新宿御苑前寄りの駅まで約4キロを、マスクをしないで歩きました。“朝”といっても、みなさんの感覚よりもはるかに早い時間帯で、曙の頃です。ですから、人ごみの中を歩いたわけではありません。

新聞を読みながら朝食を済ませ、ちょうど4時ごろ出発。日の出は4:24でしたから、その約20分前で、上空の雲がどうにか途切れているのがわかる程度の明るさでした。だんだん明るくなっていく街を歩くと、なんだか希望が湧き出てきます。だから、私は好きですね。

こんな早い時間に歩いている酔狂な人などいないだろうと思っていたら、4キロの間に10人ぐらいいましたね。散歩とかジョギングとかの人もいれば、自転車に乗っている人にも出会いました。スーツにネクタイではありませんでしたが、半袖のワイシャツに大き目のかばんという私の姿は、そういう人たちの目にどう映ったでしょう。

マスクをしている人としていない人と、半々くらいでした。半径2m以内に人がいなければ、マスクをしなくてもうつしたりうつされたりする恐れはないと言いますが、すれ違う時でも十分それくらいの距離を取ることができました。そうです。私はマスクをしない日常に戻る第一歩を記したかったのです。速足で歩き、久しぶりに、外の空気を鼻から直接、マスクを通さずに吸いました。明け方なのに車が多い幹線道路に沿って歩きましたからおいしいとまでは言えませんが、早朝のしっとりひんやりした空気は、鼻にも肌にも心地よかったです。

目的地に着いたら、地下鉄駅の入り口でマスクを装着。冒険は40分ほどで終わりました。

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文化の違いを乗り越えろ

5月27日(水)

6月から週に何日かは学校での授業を始めようと準備を進めています。3密を避けるために常に学生がたむろしていたラウンジをどうするか、授業後の除菌・消毒をだれがどのように行うか、そういった問題をひとつひとつつぶしています。登校した学生の体温測定をどうするかも大きな問題です。職員が非接触型体温計で測るところまではいいのですが、計測のために行列ができてしまっては意味がありません。学生全員が定刻までに来てくれれば話は単純なのですが、遅刻されると問題が複雑になります。

そんな問題よりはるかに大きな、おそらく解決不能な難題があります。手洗いの励行が感染防止に有効なことは論を待ちません。また、学生たちも手を洗いはします。しかし、洗った手をどうするかというと、自然乾燥か服や髪で拭くというのが一般的です。そんなことでは、せっかく洗った手が、服や髪についていた雑菌・ウィルスで汚れてしまいます。ちょっと考えればそのくらいわかるはずなのですが、ハンカチやタオルを持っている学生は、皆無に近いです。長年にわたって口を酸っぱくして注意しても、まったく効き目がありません。

ハンカチを持つことを厳しくしけるのは、日本の文化のようです。学生たちはそんな教育を受けて来ていませんから、突然持てと言われても、その意義が理解できません。教師が意義を説いたところで、心から納得するには至りません。学生の食習慣や勉強のしかたなどに違いを感じることはよくあります。でも、そのあたりは学生の方から日本流に歩み寄ることが多いです。ところが、このハンカチを持たない文化だけは、微動だにしませんね。

刻一刻と学生の登校日が迫っています。うまい対策がないものですかね。

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