Monthly Archives: 9月 2022

力を伸ばすには

9月2日(金)

A先生の代講で、中級クラスに入りました。まずは漢字テスト。漢字の読み書きだけではなく、漢字の時間に出てきた語彙を使って例文を作る問題もあります。学生の力を見るには好適な問題です。

授業後、採点してみると、漢字の読みができていませんでした。濁音か清音か、長音になるかならないか、促音の有無など、引っ掛かりやすいところでみんなつまずいているようでした。日本語の音が完全に入っていないのかもしれません。このクラスの学生は日本語力が今一つだと聞いていましたが、こんなところにその一因があるような気もしました。

例文は、上述のようなミスには目をつぶると、語彙の意味が全然わかっていないようなものはありませんでした。しかし、初級で勉強してきたはずの小技が使えないんですねえ。「お酒を飲んで泥酔しました」じゃ、〇はあげられません。せめて、「お酒を飲みすぎて泥酔してしまいました」としてもらいたいところです。まあ、これはこのクラスの学生に限ったことではなく、中級の学習者全般に当てはまりますが。

音がきちんとつかめていないと、正確な発音ができません。すると自分の発話力に自信が持てなくなり、黙ってしまいます。相手の発話も聞き取れないとなると、コミュニケーション力などゼロですよ。小技なしの文を並べ立てられたら、日本語教師以外の日本人は違和感にさいなまれて頭痛がしてくるでしょう。自分の心のひだを伝えられなかったとしたら、これまたコミュニケーション力に“?”を付けざるを得ません。

どちらも、学生独りでは力を伸ばしきれないでしょう。教師が、腕を引くのかお尻を押すのかわかりませんが、学生のお手伝いをすることが必要です。

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大改造

9月1日(木)

朝、Kさんが志望理由書を持って来ました。明日の消印有効のE大学に出願する書類ですから、大急ぎで読んで添削しました。

Kさんの志望理由書は、この前読んだHさんのみたいに文字は日本語だけど文は日本語ではない、という代物ではありませんでした。E大学を選んだわけや将来の計画など、要点はわかります。志望理由書としての必要最低限の内容は備えています。しかし、そこまででした。訴える力がありません。読み手の興味を引くものがありません。だから、印象にも残りません。「これじゃ、厳しいだろうな」というのが、偽らざる感想でした。

まず、全体的に文が長すぎます。1つの文だけで構成されている段落がいくつかありました。こういう文は、概して主述や修飾被修飾の関係が不明確で、一読では意味をつかみかねます。だから、パンチが弱くなります。

それから、E大学進学の目的が、書いてはありますが、目立ちません。やはり、これは、ドカンと先頭に持って来ましょう。“結論は先に”です。

そして、E大学について調べた成果も、せっかくですから明示しましょう。Kさんも、そこはかとなくにおわせていますが、それでは弱いです。ここはしっかり自己アピールしなきゃ。

という調子で、Kさんの志望理由書の土台は残したまま、大改造を施しました。「私の言いたいことがはっきりしました。これから何校か出願するつもりですが、志望理由書が上手に書けるようになるでしょうか」と、Kさんが不安げに尋ねてきました。「ま、どの学生も初めての志望理由書はこんなもんですよ。だんだんすらすら書けるようになりますよ」と答えたら、多少は不安が消えたみたいです。

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