Monthly Archives: 6月 2024

まだ見ぬ受講生へ

6月28日(金)

学生たちは学期休み、先生方は今学期の成績不良者の対応と新学期の準備にいそしんでいます。私は毎日のように養成講座の授業があり、私の周りだけ別の時間が流れているかのようです。

私が担当している養成講座の授業は多岐にわたり、なおかつ半年に1回のペースですから、授業の前に資料を読み込んでおかないと立ち往生しかねません。しかも、コース名で「少人数」とうたっていますから、受講生のペースに合わせて講義の中身も多少調整します。

現在の受講生の方々は優秀ですから、ちょっと難しめの話題を盛り込んだり、あるテーマについて深掘りしたりして、受講生に押し負けないようにしています。そのためには、結果的に没になることも覚悟のうえで手持ちの資料を膨らませておきます。これは、頭を悩ませられることではありますが、やっていて楽しいことでもあります。今朝も2時間ばかりあれこれ考え、一応この線で行こうと、以前の資料を手直ししました。

授業は順調に進みましたが、優秀なだけに質問も多く、その方面の議論が盛んになりました。その議論は考えさせられるところが多く、私自身も勉強になりました。そのかわり、今朝の2時間は、出番がありませんでした。

午後は、通信で養成講座を受講している方の試験問題を作りました。申し訳ありませんが、通信の方には実際にお会いしたことがありません。どんな方がどんなふうに、私が作ったオンライン教材を使っているのか見えません。私がカメラの前で力を込めたことが、パソコンの向こう側の受講生に伝わっているのでしょうか。そんな心配をしながら、キーボードをたたきました。

このテストは、来週行われるそうです。採点が、ちょっと怖いです。

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騒音にも負けず

6月27日(木)

先月の健康診断の結果、再検査・精密検査となってしまい、午後からMRIを受けてきました。MRIは、30年以上前にぎっくり腰になった際に受けたような気がしますが、記憶がはっきりしません。

そういう検査専門の施設に行くと、まず問診票。この問診票の注意書きによると、マイナンバーカードを保険証として使っていると、最近の病歴に関する質問には答えなくてもいいとのことでした。こんな形で情報が巡っているんだと感心させられました。私の場合、最近のめぼしい病歴と言えば、足の骨折と歯の根っこの膿を手術で取り出したあたりでしょうか。どちらも、もう治療が終わっています。あとは、定期的に診てもらいに行っている病院通いぐらいです。誰かがこんな情報を手に入れたところで、何の役にも立たないでしょう。でも、中には他人に絶対知られたくない病歴を持っている方もきっといます。そういう方は、この問診票の注をどう気持ちで読むのでしょう。

検査着に着替えて検査室へ。頭を固定する器具が備わったベッドに横たわると、検査中はうるさいからと、ヘッドホンを渡されました。そのヘッドホンを付けると、白いトンネルの中に送り込まれました。ヘッドホンからはヒーリングミュージックみたいなのが流れてきましたが、MRIの機械から発せられる音は、そんなのをものともせずに耳に響いてきました。MRIは強力な磁場を利用した検査ですが、磁場を発生させる際に大きな音を伴うとは、どんな発生法だろうと考えているうちに、検査は終わってしまいました。

結局、磁場の発生法は、わかりませんでした。来週は、検査結果を聞きに、また病院へ行きます。

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農業県

6月26日(水)

「日本一の農業県はどこか」(山口亮子、新潮新書)を読みました。農業の見方が変わりました。

田植えが終わったばかりの水田、夏の強い日差しを浴びて勢い良く成長している稲、たわわに実って頭を垂れている稲穂、稲刈りが終わった後の稲架、私にとってはどれも心を和ませてくれる風景です。棚田はいつまで見ていても見飽きることがありません。しかし、この本によれば、米作こそ日本の農業の活力を低下せしめている元凶なのだそうです。もう少し正確に言うと、米作を支えている補助金が最大の戦犯なのです。

また、カロリーベースの食料自給率が低いことが日本の農業の最大の問題点のように言われていますが、この指標は日本ならではのガラパゴス指標だそうです。カロリーベースのため、野菜はカロリーが低いですから、いくら作ってもこの自給率の上昇にほとんど寄与できません。一方、米などはカロリーが高いので、米を大量に生産すれば数値はあっという間に改善します。しかし、現在、日本人は米を食べなくなりました。ですから、カロリーベースの食料自給率は、日本の農業の姿を正しく反映した指標だとは言えません。

日本の農政は、そんな指標に基づいて進められています。その結果、やる気のある農家の頭を押さえつけてしまう政策も実施されています。それにも負けず、工夫を重ねて農業経営を行っている農家が多い県こそ、日本一の農業県だと、筆者は訴えています。具体的にどこが日本一の農業県かは、この本をお読みになってお確かめください。これ以上はネタバレになりますから、書きません。

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低空飛行の果てに

6月25日(火)

今学期の出欠状況を見てみると、まだ6月なのに出席率が崩れてしまった学生がいます。本人はあれこれ理由を並べ立てますが、多くは私を含め第三者が納得できるものではありません。

進学のための塾に通っているから、疲れてKCPには出て来られないと言い訳する学生が少なくありません。塾に100%出席しても、KCPを休んだら出席率は下がります。出席率が下がると、最悪の場合、ビザが出ません。ビザが出なかったら、日本で勉強を続けることはできません。

確かに、音楽大学に進学したいという学生に対し、KCPは音楽の専門的な授業はしていません。美術の指導ができる先生はいらっしゃいますが、音楽の指導ができる先生はいらっしゃいません。私も理科系出身ではありますが、大学院入試の物理や化学や数学は全くできません。EJUの試験科目にしても、週末も含めて毎日ビシバシ鍛えるほうが、学生の目には効果的に映るのでしょう。だから、塾に通うななどとは言いませんが、本末転倒はいけません。

出席率だけではありません。学校に出て来なくなると、日本語力が如実に落ちます。日本語に対する反応が鈍くなるのです。こちらが何か問いかけても、ぽかんとしていたり的外れな応答をしたりして、コミュニケーションが進展しなくなります。となると、留学生入試に付き物の面接試験で落とされてしまいます。書類審査だけの所に合格しても、入学してから苦労することは明らかです。2年生に上がれずに退学を余儀なくされた学生もいます。

進学してから驚くほど会話力をつけた卒業生もいます。しかし、そういう学生はKCPでその素地を身に付けていたのです。机に向かって勉強することしかしなかったら、そうなる可能性は0と言っていいでしょう。

ところが、少子化にともなって日本人の志願者が減ってしまい、海外で直接募集する大学が増えてきました。しかるべき選抜が行われていれば、日本で勉強したい学生のためになります。しかし、そうでもなさそうなケースも見られます。選抜らしい選抜をせずに連れて来た留学生にどんな教育をするのでしょう。日本に留学したばかりに人生を捻じ曲げられた、などと思う人を量産されたら、日本の国益にも悪影響が及びます。

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早い? 遅い?

6月22日(土)

中国地方と北陸地方が梅雨入りし、日本列島はいよいよ雨の季節が本格化…と言いたいところですが、今年は、すでに、おととい沖縄が梅雨明けしています。東京を含む関東甲信地方の梅雨入りは昨日でしたから、東京も沖縄の梅雨が明けてから梅雨入りしたことになります。

気象庁の記録によると、このように、沖縄の梅雨明けより遅れて東京が梅雨入りしたのは、過去に1967年と2007年の2回だけです。どちらも、沖縄の梅雨明けが早かったのではなく、東京の梅雨入りが平年よりだいぶ遅れたためにこうなりました。それで、東京のこの2年は何か特別な気候になったのかと調べてみました。梅雨の期間の雨量は、67年がやや少なめ、07年がやや多めで傾向がつかめず、夏の暑さは前後の年よりやや暑いようですが、67年や07年より暑くなった年もあります。要するに、沖縄の梅雨明けより遅く梅雨入りしたからと言って、特別にどうということはなさそうです。

現在、日本付近はエルニーニョでもラニーニャでもありませんから、その影響でこんなことが起きているわけではなさそうです。そうすると、地球温暖化とか海水温の上昇とかに原因を求めたくなりますが、安易にそちら方面に話を持って行くのはよくないです。もうしばらく思考実験をしてみたいですが、そんなことをしているうちに秋になってしまうでしょう。

何も起こらず、ほどほどに雨が降り、ほどほどに暑い夏が訪れてくれればそれでいいです。KCPの夏休みの期間はいいお天気になってほしいですが…。

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日本人客?

6月21日(金)

養成講座の授業の休憩時間に1階に下りると、ロビーでL先生、F先生と親しげにしゃべっている人がいました。学生と同じくらいの年頃ですが、見かけぬ顔です。7月期の新入生にしては、話が弾みすぎています。L先生とF先生を相手に談笑しているのですから、怪しい人ではないのでしょう。そんなに時間の余裕もありませんから通り過ぎようとしたところ、「先生、Mさんですよ」とF先生に呼び止められました。改めてしげしげと顔を見ると、確かに卒業生のMさんでした。

Mさんはもうだいぶ前の学生で、W大学の大学院に進学しました。大学院修了後、F先生の地元の近くの会社に就職したそうです。昨日の夜行バスに乗り、今朝早く新宿に着いたとのことでした。

在学中のMさんは、午前クラスなのに夕方まで学校にいる学生でした。今目の前でしゃべっているみたいに、いろんな先生を捕まえては話をしていました。本当は違うかもしれませんが、私にはそんな印象が残っています。よっぽど学校が好きだったんでしょうね。

話し好きでしたから、会話力は高かったと思います。大学院でも就職してからも、周りの日本人にどんどん話しかけているのでしょうね。その会話力にさらに磨きがかかっていました。相槌の打ち方やちょっとした言葉の返し方が、日本人そのものでした。発音・イントネーションもタイミングも、違和感がみじんもありませんでした。いや、外国人だと思って聞くと、逆方向の違和感が湧き起こってくるくらいです。

学校の友達は同国人ばかり、授業後は国の言葉で教えてくれる塾へ、買い物は自動販売機か無言でセルフレジ、食事は国の言葉が通じる店、アルバイトはせずにまっすく帰宅…という毎日を送っている学生は、話す力が付くわけがありません。期末テスト前なら、Mさんにお説教をしてもらうところなんですがね。

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堕落

6月20日(木)

もうすぐ区議選だっけ? 2週間ほど前でしょうか、学校の近くの公園に設置された大きなポスター掲示板を見かけたとき、そう思いました。区議選なら何十名も当選しますから、幅数メートルの掲示板でも不思議ありませんが、このバカでかい掲示板が都知事選のものだと知った時、えーーーっと思ってしまいました。確かに都知事選は昔から立候補者が多かったですが、48名分の掲示板は大きすぎるんじゃないでしょうか。ニュース映像などに出てくる県知事選のポスター掲示板は、普通は4人分ですよ。

東京都知事選が告示されました。56人が立候補しました。掲示板は足りませんでした。NHKから国民を守る党は、24名もの候補を立てました。区議選ならともかく、当選者が1名の知事選に1つの党から複数名立候補すること自体がおかしな話ですが、これは百歩譲って大目に見ることにしましょう。これに加え、この党は、立候補者が得たポスター掲示板にポスターを張る権利を、他者に売って利益を得るそうです。候補者乱立を防止するために設定された供託金を没収されても、十二分な収益が上がると報じられています。こういうことは公職選挙法の想定外で規制はなく、法律違反にはならないそうです。

昨日は政治資金規正法の改正案が可決成立しました。政治にはお金がかかるものです。だから、私は政治家がお金を集めることを全面的に禁止せよとは言いません。しかし、この改正法は、昨今問題になっているお金の汚い集め方について何ら規制していません。ですから、自民党のみなさんは、法律に書かれていないという理由に基づき、今まで通りの汚い集め方を続けるのでしょう。これは、NHKから国民を守る党の、ポスター掲示板ぼろもうけの発想と通底しています。

政権与党がこのざまです。いつから、日本人は、法律に書かれていなければ何でもしていいなんて思うように堕落してしまったのでしょう。これが、日本の停滞をもたらしている最大の原因のような気がしてなりません。

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朝日を浴びて

6月19日(水)

昨日は98ミリの雨が降りましたが、帰宅時にはほとんど上がっていました。天気予報も晴れだと言っていたので、チャンスだなと思いました。

今朝4時、空の大部分はまだ暗かったですが、北東の空にはきれいな朝焼けが見えました。あさってが夏至ですから、この時期の朝日は東からではなく、北東に近い方角から昇ります。ネットで調べると、真北から60度東、真東から30度北からですから、昔流の言い方をすれば、寅の方角です。雨の日の翌朝ですから水蒸気が多く、筑波の峰はそのかなたでしたが、気にせず出発しました。

朝の早いこの時期、家から直線距離で3キロちょっと離れた上野駅まで歩くと、途中で夜が明けます。特に今朝のような雨上がりは、空気が澄んでいて、かつ速足で歩いてほどほどに体が温まる程度の気温なので、本当に気分爽快です。

少し遠回りをして、上野公園を抜けました。昨日の雨をたっぷり吸い込んだアジサイが、朝の光を受けて、生き生きとみずみずしく赤、白、青、色とりどりに咲いていました。上野公園と言えば春の花見ですが、この季節もなかなか捨てたものではないと思いました。

さて、学校は期末テスト。期末テストの日は、アメリカの大学のプログラムで来ている学生の修了式があります。今学期はいつもの学期と違って、琴クラブの発表会がありました。もうすぐ帰国する学生が、見事な演奏を披露してくれました。

朝のすがすがしい空気の中を歩いて始まった一日が、美しい琴の音色で終わりました。

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はじめまして

6月18日(火)

朝一番の仕事は、新入生へのインタビューでした。先週実施した7月期の新入生のプレースメントテストの結果中級以上と判定された学生に、改めてインタビューして、レベルを決定しようというわけです。

Yさんは今アメリカにいます。時差の関係で、日本の早朝が向こうでは昨日の昼下がりです。プレースメントテストは夜に頑張ってもらいましたから、インタビューはYさんの頭が一番活発に動いている時間帯に設定しました。

オンラインがつながると「こんにちは」とYさん。「日本はおはようございますの時間です」「あ、そうですね」「今、東京は雨が降っていますが、そちらはどうですか」「いい天気ですよ」といった調子で緊張をほぐしながらインタビューを進めました。

Yさんはずっと国で勉強していましたからでしょうか、日本語を話し慣れていない感じがしました。現に、KCPでは会話の勉強がしたいと言っていました。

午後もインタビューでした。RさんはJLPTを5回受けました。だいぶ前にN1に合格したのですが、去年はN2を受けました。N2はN1に比べて実用的な日本語が出てくるので、その勉強をしたうえで受験したそうです。結果は満点。数年前の在校生Nさんが、同じようにN1に受かった後でN2を受けて満点を取りました。Nさんは話す、聞く、書く、読む、すべてに秀でていて、どんな日本語にも対応できました。そんな学生が入ってくるのでしょうか。

最後はLさん。雑談の時に日本でどこへ行ってみたいかと聞いたら、熱海という答えが返ってきました。関西とか北海道とか富士山とか広島とかというのは聞いたことがありますが、熱海は初めてでした。レベル判定そっちのけで、興味本位で「どうして?」と聞いてしまいました。熱海の花火大会の映像を見てきれいだと思ったので、ぜひ実際に見てみたいのだそうです。今年はKCPの夏休み期間中の8月18日にあるようですから、ぜひ見に行ってほしいです。

入学式までまだ間がありますが、Yさん、Rさん、Lさんに会うのが楽しみです。

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地下活動

6月17日(月)

午前中の養成講座の授業が終わって一息ついていたら、「ちょっと地下室まで来ていただけませんか」とN先生に引っ張られました。「あ、練習ですね」と言いつつ下りていきました。

地下室では、演劇部が練習に励んでいました。次の公演は、来学期のコトバデーです。私もチョイ役を頼まれていましたから、どんな感じか見に行ったという次第です。

練習が始まって日が浅いのでしょうか、出演する学生たちは台本を見ながら立ち位置と動きを確認しつつセリフを言っていました。私も台本を渡され、登場場面でセリフを言いました。学生たちは「先生、上手ですね」という顔をしていましたが、こちとら60年以上も日本人をやっていますから、1行足らずのセリフを感情込めて言うくらい、朝飯前です。

以前も演劇部のステージに立ったことがありますが、今回はそれよりもセリフが多いです。最近記憶力が衰えてきましたから、セリフが全部覚えられるかどうか心配です。学生相手出なければアドリブでどうにかするという手も使えますが、突然台本にないセリフを聞かされたら、学生は混乱に陥るでしょう。ですから、せめて台本に近い内容のことを言わなければなりません。

台本がスラスラ読めたのは上級のSさんぐらいで、初級や中級の学生はつっかえつっかえで棒読みにもなっていませんでした。でも、つっかえたところを教え合ったり、身振り手振りを加えたり、動きながらストーリを確認したり、本番を成功させようという意欲はひしひしと伝わってきました。

本格的な練習は新学期が始まってからでしょう。間違っても足を引っ張ることなどないように、私も努力し寝ければ。

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