Category Archives: 進学

ついでに

10月19日(土)

ある学生の出席状況を調べたついでに、Kさんの今学期の出席率も見てみました。始業日から昨日まで、遅刻もせず100%でした。Kさんは先学期私のクラスにいた学生で、顔を合わせるたびに休むなと言い続けてきた記憶があります。学期が始まってまだ8日ですから100%で当たり前と言ってしまえばそれまでですが、先学期は注意しても1週間と持たなかったのですから、Kさんにしては立派なものです。

Kさんが入学したのはちょうど1年前です。入学した月は出席率100%でしたが、翌月は早くも80%を割り、危険水域に突入しました。初めて休んだのは去年の11月9日で、以後、週に1日か2日ずつ休むようになりました。休み癖がついてしまったのでしょう。

Kさんは体があまり丈夫ではありませんから、冬の入り口で風邪をひいたのかもしれません。でも、その後、担任に几帳面に連絡は入れていたようですが、ちょこちょこと休んでいます。連絡さえすれば休んでもいい、せいぜい先生からがみがみ言われるだけだ、それさえ我慢すれば、持ちこたえれば、聞き流せば、楽ができる、好きなことができるという発想に流れてしまったような気がします。

この調子で進学のための特別授業も欠席を繰り返し、日本での進学に関する基礎知識を持たないまま、1年が過ぎてしまいました。ですから、来年3月にはKCPを出なければならないのに、進学については何ら具体的に動いていません。Kさんを受け持った先生方が、硬軟取り混ぜて指導してきたはずです。でも、Kさんの心には響かず、行いを改めさせるには至りませんでした。

そして、先学期末には、恥ずかしくてここには書けないような出席率になってしまいました。今学期、たった8日間ですが、出席率が100%なのは、この数字では絶対にビザが出ないから国へ帰れと、私に厳しく言われたからでしょう。尻に火が付いたのでしょうが、最近の入管の厳しい対応からすると、たとえ今学期ずっと100%を続けても、安心はできません。

Kさんと同じ学期に入学した学生の中には、進学先が決まった人もちらほら出てきました。先が見通せないKさん、ずいぶん差をつけられてしまいました。

危機管理

10月15日(火)

朝一番で学校内外を見回りましたが、いつも通りたばこの吸い殻が2、3本落ちていただけで、異常ありませんでした。駐輪場入り口に置かれた土嚢が水をたっぷり吸って、すぐにはどけられず、腰が痛くなってしまいました。

午後、C大学の先生がいらっしゃいました。C大学は他大学にはない学部を持っていて、それを武器に躍進を図ろうとしている大学です。私は以前からその学部に興味を持っており、どんな勉強ができるのか知りたいと思っていました。話を聞くと、その学部は私が思っていたより幅広い学問ができるようで、文系理系の学際的分野の一つと言えそうな研究をしているようです。KCPからはまだ進学者はいませんが、こういう方面を修めた人材がやがては必要とされると思いました。

C大学の最大の弱点は、東京の大学でないことです。都内にキャンパスがあれば、もっとずっと話題になっていたに違いありません。4年間東京を離れたとしても、日本で数少ない専門性を有した人材になれるのですから、長い人生で見れば十分元が取れると思います。これを機会に、学生に積極的に進めていきたいです。

C大学の先生がお帰りになって職員室に戻ると、卒業生のTさんがいました。週末の台風で進学先のM大学が水没し、しばらく休校になったそうです。水が引いたとしても、キャンパスが元通りに使えるようになるまでには、きっと時間がかかるでしょう。泥をのけなければならないでしょうし、機器類が水に漬かっていたら、学校運営に影響が出るかもしれません。

こういう時にこそ、ついさっき話を聞いたC大学の学部での勉強が役に立つのではないかと思いました。近年の日本は〇十年に一度の災害が毎年のように発生しています。週末の台風は狩野川台風以来と言われましたが、狩野川台風が上陸したのは9月27日でした。夏の名残の気象条件が2週間遅れているとも言えます。それだけ温暖化が進み、10月半ばといえども台風への備えを緩めることはできなくなったのです。学校の周りがなんともなかったからと言って喜んでいる場合ではないのです。

初練習

10月2日(水)

午後から、来週末K大学を受けるEさんの面接練習をしました。理科系の学生で、ずっと受験講座を受けてきましたから、担任でも何でもありませんが、私が見ることにしました。

まず、姿勢が悪いです。膝から下を、ブランコをこぐときのように椅子の奥に引いてしまい、しかも背中を丸め、目は正面の私ではなく左前方の窓の方を向いてしまっていました。手が落ち着きなく動き、緊張していることがありありとうかがえました。この1年間しょっちゅう顔を合わせてきた私に対してこんなに緊張していたら、本番は絶望的です。

答えの中身もパッとしません。的外れなことを話しているわけではありませんが、メモを取っても何のことだかわからなくなるほど印象が薄いのです。受験講座の際にも“自分のウリな何か”とさんざん問いかけてきたのですが、その効果が全くありませんでした。

EさんはK大学のオープンキャンパスに行っているのですが、その話に全然触れませんでした。大きなアドバンテージがあるのに全く活用しようとしないのです。K大学は東京ではなく京都の大学ですから、そのオープンキャンパスに足を運んだとなれば、面接官の心証はぐっと良くなるはずなのです。どうしてこんなに自分を売り込むのが下手なのでしょう。

このままにしておくわけにはいきませんから、一通りの練習が終わってから、私なりの模範解答を示しました。このぐらいの作戦は自分で立てられなきゃダメじゃないかと心の中で毒づきながら、Eさんの感心したような顔を見ていました。初めての面接練習ですから、緊張するのも答え方のポイントがつかめないのも、しかたがないのでしょうか。

次の練習は、来週の火曜日です。仕上げて来てもらいたいです。

悩み

9月21日(土)

受験講座EJU日本語の授業後、Kさんの進学相談に乗りました。心理学を勉強したいということで、都内のT大学、N大学、S大学を志望校として考えています。これらの大学の“相場”を知りたいというのが相談の内容です。

手持ちのデータを見せると、「6月の点数ではだいぶ足りませんね。11月は50点ぐらい伸ばさないと…」とつぶやいていました。Kさんの成績で合格できそうな大学は東京にはなく、関西になってしまいます。でも、Kさんは東京を出るつもりはありません。じゃあ、11月に50点上積みできそうかというと、受験講座でやった問題の答案を見る限り、疑問符を付けざるを得ません。

最近、定員厳格化で都内の大学の“相場”は上がっています。また、東京だけが日本ではないということも知ってもらいたいこともあり、東京の外の大学を積極的に進めています。今年は、京都の大学の担当者に来ていただいて、進学説明会も開きました。そうやって大いに力を入れているのですが、Kさんをはじめ、学生の気持ちを動かすには至っていないというのが現状です。

思い切りよく自分の国を出て日本へ来た留学生なら、東京・京都間の距離ぐらい目じゃないと思いたいところですが、多くの学生が東京にどっしりと根を下ろしてしまうのです。進学アンケートなどで「進学先は東京以外でもいい」と回答していた学生も、いざ出願となると、東京の大学を選んでしまいます。

東京で生まれ育ったG先生によると、大都会でしか暮らしたことがないと、電車が来ないとかお気に入りの店がないとかという生活には耐えられないのだそうです。また、大都会出身でないと、大都会にあこがれるものですから、結局、学生は東京に集まってしまうとも考えられます。

来学期は、そういう学生を東京から引きはがす大仕事が待ち受けています。

有難迷惑?

9月20日(金)

「えっ、Wさん、再試受けないで帰っちゃったんですか」「はい。期末タスクの面倒を見ていたらいつの間にか消えていました」「いったい、どうするつもりなんでしょう。来学期もWさんのクラスなんて嫌ですよ」

授業後の引継ぎの時に、こんな会話をしてしまいました。来週の金曜日が期末テストで、しかも、月曜日は秋分の日でお休みときています。再試が受けられる日がほとんどないのに、Wさんは不合格の文法テストを2つも抱えています。それも、惜しいところで不合格ではなく、箸にも棒にもかからない、堂々たる正真正銘の不合格です。たとえ期末テストで満点を取ったとしても(取れっこないけど)、挽回不可能でしょう。

そもそも、Wさんに進級しようとする意志があるかどうかも怪しいところです。大学院進学を目指していますが、日本語学校は受験のベースキャンプみたいに思っている節があります。日本語は上手にならなくてもいいというか、自分の日本語力は十分に高いと信じ込んでいます。ですから、入管ににらまれないように授業には出席しますが、授業から何かを得ようという姿勢は感じられません。もう一度同じレベルになったとしても、痛くもかゆくもないのです。自分のペースで進学準備をしていますから、クラスに友達がいなくても平気ですし、友達を作る気もなさそうです。みんな進級したのに自分だけ取り残されても、何とも思わないでしょう。

Wさんの日本語力では、大学院入試が突破できないことは明らかです。専門知識が豊富だったとしても、それを面接官に伝えることはできません。担当教師全員が「王様は裸だ」と叫び続けているのに、その叫びは確実に耳に入っているのに、無視し続けています。

最近、こういう学生が増えてきました。自分で決めた道をひたすら突き進むといえば聞こえはいいですが、無知蒙昧なまま猪突猛進しているにすぎません。でも、こういう学生に限って、すべてが手遅れになってから教師を頼りだすんですよね。そして、最終的にうまくいかなかったら学校のせいにするのです。来年の今頃、初級レベルの主となったWさんに恨まれているのかなあ…。

勝負はいつ?

9月19日(木)

Nさんは今学期から受験講座を始めて、11月のEJUを受けようと考えています。理系科目には少々自信があるようですが、まだ初級ですから、日本語でどれくらい点が取れるか心配しています。6月は230点ぐらいしか取れなかったので、かなりの上積みを狙っています。そううまく事が運ぶでしょうか。

KCPの学則上では、Nさんは2021年3月まで在籍できます。しかし、できれば来春進学したいと思っています。もちろん“いい大学”への進学を望んではいますが、それが無理っぽいところにNさんの悩みの根源があります。300点以上取れれば実現の目も出てきますが、そこまでの自信はないのです。

理科系の場合、若い頭脳で専門について深く考えることが重要ですから、1年でも早くというNさんの考えは間違っていません。無名の大学に進学することが心配なようですが、そこで必死に勉強すれば有名大学の大学院に進学することも可能です。でも、これには4年間必死に勉強すればという重い条件が伴いますから、これがNさんにとって頭痛の種でもあります。また、今の日本語力で大学の授業についていけるかという点にも不安を感じています。

じゃあ、2021年3月までKCPで勉強すればいいかというと、これから1年以上受験勉強を続けることにたえられるかという別の問題が持ち上がります。「その大学なら去年に入れたよね」という学生が、残念ながら、今までに多数発生しています。「初心忘るべからず」と言いますが、これが容易でないからこそ、格言となっているのです。

結局、Nさんはもう1年勉強を続けることにしました。進学するのは1年半後だけど、本当の勝負は来年6月のEJUなんだよと太いくぎを刺しておきました。いずれにしても、来学期は過去問で鍛えて理系科目の自信をつけさせていきます。

1年後を危ぶむ

9月6日(金)

来学期から受験講座を受ける初級の学生に、受験講座の説明をしました。来学期から受講するの学生たちは、11月のEJUの時点でもまだ初級ですから、高得点は期待できません。ですから、来年6月のEJUに向けて10月から勉強と練習を始めて、6月までに実力をたっぷり蓄え、高得点を取ろうという算段です。2学期にわたって基礎固めをし、来年4月期に実戦演習を繰り返せば、十分に達成可能な計画です。

しかし、こちらの思った通りに動いてくれないのが学生です。ちょっとできるようになると、受験講座をサボりがちになります。塾かどこかできちんと勉強していてくれればいいのですが、そうじゃない学生が多数派です。そういう学生に限って、ぎりぎりのところへ追い込まれてから、急にこちらを頼りだすのです。でも、それじゃあ手遅れです。

逆に、最初の1回か2回で教師の日本語についていけなくなり、挫折する学生も後を絶ちません。初級の学生向けにやさしく話していますが、専門用語はやさしくしようがありません。それをかみ砕いた言葉で教えたところで、どこかで難しい言葉も覚えなければならないのです。最初の苦しいところを乗り切れば、あとはどんどん楽になるのに、そうなる前にあきらめちゃうんですよね。

この説明会に出られなかったSさんが、後刻職員室へ来ました。Sさんは、「EJUは国の大学入試よりやすいです」と言います。出たぞ、税抜き98円! 「EJUの問題をしましたが、全部わかりました」。うそこけ、答えを見てわかった気になっただけだろうが! 「今度のEJUでいい点数をもらいますから、N大学もO大学も大丈夫です」。点数をもらっているうちは大丈夫なわけがないだろ、アホンダラ!

こういうことをへたくそな日本語で述べ立てる学生は、毎学期います。志望校に受かったためしがありません。Sさんも、その王道を突き進んでいくようです。1年後に尾羽打ち枯らしたSさんを見たくはないのですが、果たしてどうでしょう。

変身できたかな

9月2日(月)

今朝は、馬子にも衣裳みたいな、どことなくぎこちないスーツ姿の学生が何人も職員室の前を通っていきました。お昼の時間に、面接身だしなみ講座があるからでです。スーツ屋さんの店長さんがいらっしゃって、スーツの着こなしや、男性ならネクタイの結び方、女性ならメイクのポイントなどを教えてくださいます。去年開催して好評だったので、今年もそろそろ入試の面接シーズンに突入しますから、また開くことになったのです。

「人は外見よりも中身が大切だよ」と日ごろから言っていますが、「人は見た目が9割」なんていう本がベストセラーになってしまうほどですから、表面的なものも無視はできません。初めて入ったクラスで、初めて顔を合わせた学生に対しても、やっぱり第一印象で判断してしまう傾向はあります。クラスの学生なら、その後いくらでもその第一印象を修正するチャンスはありますが、入試の面接は一発勝負です。中身の素晴らしさが伝わる前に拒絶されてしまうことの方が多いのではないでしょうか。

また、こういう講座を受けて、それに基づいて身支度を整えて面接に臨んだとなれば、それが試験場での自信につながると思います。堂々とした態度で面接官の前に立てば、面接官の目を引き付けることもできるでしょう。逆に、「こんなスーツの着方で面接官に変に思われないだろうか」などとびくびくしていたら、その自信のなさを面接官に見抜かれて、減点されてしまうかもしれません。昨今の留学生入試はどこも競争が激しいので、減点の要素は1つでもなくしておかなければなりません。

朝、馬子にも衣裳だった学生たちはどうなったでしょう。帰りがけの姿を見逃してしまいましたから、講座の効果をすぐに確かめることはできませんでした。でも、入試の結果で効果を示してもらえれば、それで結構です。

君子豹変す

8月30日(金)

Kさんは先学期の新入生で、私のクラスでした。シャキッとしたところがなく、特別な理由もなく遅刻したり欠席したりし、来ても筆記用具を持ってこなかったり、持って来てもろくにノートを取らなかったり、成績といえば、テストでかろうじて合格点を取り、どうにか墜落は免れるという超低空飛行でした。テストや作文の字は汚く、読むのに一苦労しました。授業で指名しても、ぼそぼそと答えるだけで、やる気とか元気とか覇気とかいうものとは無縁の学生でした。進級させるかどうかさんざん迷ったのですが、数字的には合格ですから、目をつぶって上げてしまいました。

そのKさんが、お昼から行われた専門学校フェアに姿を現しました。まず、自分から進んでこういう場に現れたことに驚いてしまいました。進路について前向きに考え始めたのなら、大きな進歩じゃありませんか。そして、2校のブースで、それぞれかなり長い時間、話を聞いていました。専門学校の方に一方的に話されて理解できるのかなあと心配になりましたが、どちらのブースでも姿勢が前のめりになっていましたから、何かに引き付けられているのだろうと思っていました。いや、そうだと信じようとしていました。

学生たちが帰った後、Kさんと話していた2校の方に、ご挨拶も兼ねて、お話を伺いました。「…Kという学生がお邪魔したかと思いますが、いかがでしたか」「あーあ、Kさんですね。真剣に話を聞いてくださいましたし、こちらの方面にとても強い興味をお持ちのようでしたし、何より質問が的を射ていましたね。本気で考えていることが伝わってきました。先生からも是非当校にと薦めていただけませんか」。え、あのKさんが的を射た質問? とても信じられませんでしたが、外交辞令ばかりだとは思えませんでした。

目指す地点が明確になると学生は強くなるものですが、Kさんも自分の将来像が描けてきたのでしょう。Kさんの進学する上での最大の弱点は出席率です。86%と聞いた専門学校の方は、来年3月まで頑張ればいい数字になると励ましてくださいました。

来週は9月。専門学校の出願がぽつぽつ始まります。

直しにくい

8月29日(木)

夏休みが明けてから、いろいろな学生から進学相談を受けています。今年も受験シーズンに突入したんだなあと実感しています。

初級クラスのYさんは、Z大学に出す志望理由書を持って来ました。分量的にも内容的にもかなりの力作ですが、どう見てもだれかの手が入っているとしか思えません。言い回しが妙に難しいのです。でも、日本人が書き直したんじゃないでしょうね。間違え方がいかにも外国人なのです。おそらく、身の回りの同国人か、Z大学に進学した先輩化に見てもらったのでしょう。確かに言いたいことはよくわかりますが、中途半端にうまい日本語だと、かえって直すのが難しいのです。

上級クラスのTさんはA大学を目指しています。Tさんの志望理由書は、明らかにTさんが独力で書いたものです。Tさんの話し方がそのまま文章になっています。黙読すると、Tさんの声が聞こえてきます。他人に頼らずに書き上げた点は評価しますが、このままでは書類審査で落とされかねません。私はTさんの事情をよく知っていますから、この志望理由書でも意味はわかります。しかし、冷静に考えて、Tさんのことを全然知らないA大学の先生には、Tさんの思いは伝わらないでしょう。

また、2人とも、余計なことを書いているため、面接でそこを突かれて沈没するおそれがあります。初級のYさんはしかたないにしても、上級のTさんはどこかで教わっているはずなのに。

ということで、YさんのもTさんのも、ほぼ全面的に書き直しとなりました。Tさんのは直すところだらけで、ゼロから私のペースで書けます。“日本語教師が手伝いました”という文章にならないように注意しながら書きました。ところがYさんのは元の文章を生かそうとすると、非常に添削しにくいのです。思いのほか時間がかかってしまいました。

留学生入試の競争が激化していますから、各学生の出願校数が増えそうです。ということは、これからこういう仕事が増えるということです。学生の皆さん、お手柔らかにお願いしますよ。