Category Archives: 進学

心配性

3月4日(水)

Yさんは昨日のSさんより少し上のレベルの学生です。すでに、行こうと思っていた専門学校に合格しています。しかし、Yさんは、どこかのクラスの学生たちとは違って消化試合などにはならず、毎日真剣に授業を受け、宿題も必ず提出します。会話力に自信がないから、授業中の受け答えなどで変なところがあったらどんどん注意してもらいたいと言います。中間テストの答案用紙を見せると、100点の科目には目もくれず、77点の科目の間違えたところについて、なぜ自分の答えではいけないのかと質問してきました。

専門学校に合格はしたものの、現状の自分の日本語力では専門学校の授業についていけるか自信がないので、KCPにいるうちに可能な限り日本語力を高めたいのだそうです。進学が決まった学生の鑑ですね。誰もがこういう姿勢で卒業まで真剣に勉強してくれれば、日本語がわからないために進学先の授業がわからず、退学を余儀なくされる学生がぐんと減るはずです。

専門学校や大学の側も、“合格=日本語力十分”だとは思っていません。“3月の日本語学校卒業まできちんと勉強を続ければウチの学校の授業について来られるぐらいの日本語力まで伸びるだろう”という見込みで合格にしているに過ぎません。進学先の先生方もそうおっしゃっています。いわば仮免許みたいなものです。にもかかわらず、受かった学生は浮かれて日本語の勉強がおろそかになりがちです。授業料や生活費がもったいないから退学して進学先への入学直前まで帰国するなんて、もってのほかです。国の言葉で生活していたら、日本語力は退歩してしまいます。

Yさんは、むしろ心配性なくらい、少しでも高度な日本語を身に付けなければと思っています。JLPTのN2は持っていますから、7月のJLPTに向けてN1の勉強を始めていると言います。そういう姿勢で日本語に臨んでいる限り、余計な心配は不要でしょう。

爪の垢でもフケでもいただいて、わがまま放題を繰り返している大バカ者どもに飲ませてやりたいです。

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雨の日

3月3日(火)

本来だったら江ノ島小旅行の日ですが、朝から雨でした。延期して大正解でした。

お天気のせいか欠席が多い中、Cさんは朝から教室にいました。しかし、明日が国立大学の受験日なので心ここにあらずの体でした。クラスの学生に課題を与えている時に近寄って「明日が最後か」と聞くと、「緊張しています」と答えました。その後の選択授業の最中も、内職をしていたそうです。学校に出て来ただけでもよしとしなければなりません。せめて今夜はよく寝て、教師のお目こぼしに応えてもらいたいものです。

私の選択授業・漢検に挑戦も、受講している学生の大半が卒業対象者ですから、卒業認定試験の終わった今は、消化試合みたいなものです。先週までの活気が感じられませんでした。気を吐いていたのは、Dさんなどごく数名の漢字大好き学生だけでした。窓の外雨と相まって、教室内の空気は淀んでいました。

午前中の授業のまとめとその後に控えている日本語プラスの授業の準備をしていると、N専門学校から電話がかかってきました。受験したSさんの会話力が低くて、合否判定を保留しているという連絡でした。今度の日曜のオープンキャンパスに来て、改めて担当者との会話テストを受けてほしいとのことでした。

Sさんはレベル3の学生で、ずば抜けて成績がいいというわけではありません。ごく普通のレベル3の日本語力では、専門学校の授業にはついていけないでしょう。Sさんの担任の先生が言うには、レベル5の友人がN専門学校に進学するので、自分もと思ったようです。そんなことで無理して進学したら、Sさん自身のためになりません。合否判定保留ではなく、否が本人のためです。

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雨中行軍

2月25日(水)

毎年、2月25日は、国立大学の留学生入試の独自試験がいちばん集中する日です。最上級クラスの学生も何名かが受験に行っています。Mさんは受験勉強に集中したいと、先週末ぐらいから学校を休んでいます。この期に及んで何かしてもどうにかなるもんじゃないよと言ってやりたいところですが、そんなことを言っても聞く耳を持たないでしょうし、変に気持ちが揺らいでしまったら逆効果ですから、何も言いませんでした。きちんと私に連絡して来たんですから、ちゃんと周りは見えているのでしょう。

Hさんはすでに国立大学1校、私立大学1校に受かっています。第1志望の大学は記念受験的な面もありますが、それなりに準備もしてきました。誰もが行きたい大学を狙っているのですから、面接試験でも厳しい質問が飛んでくるのでしょう。でも、気楽に勝負できるという面からは、“もしかすると”という期待を抱きたくなります。

Cさんも1校合格を勝ち得ていますからのびのびと受験できるはずですが、今学期に入ってからはかなり気合を入れて受験準備をしてきました。難関校ばかり受験してきましたが、昨シーズンの受験のリベンジでもありますから、簡単に引き下がるわけにはいきません。昨日の帰り際、私に握手を求めてきました。私は天神様でも大黒様でもパワースポットでもありませんが、精一杯力を込めて握り返しました。

結果が出るのは江ノ島小旅行の頃でしょうか、もう少し後でしょうか。正夢になれと祈りつつ、しばらく夢を見させてもらいます。

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仲良し

2月20日(金)

TさんとGさんは仲良しで、教室ではいつも隣に座ります。ペアワークも2人でやります。いつも同じペアになるのは好ましくない点もありますから、この2人が組まないようにあえてクラス全体をシャッフルし、席の離れた学生と組ませることもあります。

授業中に仲がいいのは構わないのですが、この2人は欠席する時も調子を合わせているようです。本人たちに欠席理由を聞いてもそんなことは言いませんが、よく同じ日に休みますから、そんなことを疑っています。2人とも進学先が決まり、卒業式までの学生ですから、授業から何かを得ようという気持ちも薄れているように見受けられます。“楽しい勉強”に傾き過ぎているきらいがあります。

私たちは、進学してから困らないだけの日本語力をつけてもらおうと思い、授業や教材や教室活動などを考えています。そういうことをはっきり言うこともあります。理解してそういう方向に動いてくれる学生もいますが、左の耳から右の耳へ抜けていく学生もいます。TさんとGさんは、残念ながら、後者の典型です。KCPの教室の中ではそこそこできますが、進学先の教室ではどうでしょう。大きな大きな疑問符をつけざるを得ません。

卒業式までカウントダウンに入ったこの期に及んでは、もはや打つ手はほとんどありません。“合格=その学校の授業が受けられるだけの日本語力が保証された”と思い込んでいます。そう思い込んでしまった学生の信念を変えさせるのは、至難の業なんていうものではありません。2人は今から勉強しても手遅れかもしれませんが、そういうマインドだけは持ってもらいたいです。

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逃げ足

2月12日(木)

朝、教室に入ると半分ほどの学生しかいませんでした。チャイムが鳴り出席を取る段になっても、TさんとKさんは現れませんでした。2人とも進学先が決まり、あとは卒業式を待つばかり。もはや、消化試合なのでしょう。殊に今朝はテストがありましたから、敬遠したに違いありません。現に、2人は後半の授業には出席し、授業が終わるや否や脱兎のごとく教室を出て、私がテストを受けてから帰れと止めたにもかかわらず、「明日!」言い残して逃げて行ってしまいました。明日の先生に引き継ぎましたが、明日は「来週!」と言って帰ってしまうに違いありません。この文では、来週火曜日の中間テストもどうなることかわかったもんじゃありません。

これが最上級クラスの学生なら、進学先でやっていけるだけの日本語力があると見て、苦笑いをしてもあげられます。でも、中級クラスの学生となると、合格で受かれている場合じゃないよと言ってやりたくなります。TさんとKさんに関しては、進学後が心配でなりません。

大学は、年が改まる前に留学生入試の合格発表をします。でも、それは、その時点の日本語力で大学の授業に十分ついていけるという意味ではありません。合格発表後も日本語学校で勉強し、順調に日本語力を伸ばしていけば、その大学で実りある学問ができるであろうという推測に基づいた判定に過ぎません。前半部分の仮定を蔑ろにしたら、当然、後半部分の結論も違ってきます。

Tさん、Kさんをはじめ、この理屈が理解できない、あるいはしようとしない学生が多くて困ります。そういう学生の末路を全て追跡したわけではありませんが、一部の大学・専門学校は入学した学生の様子を報告してくれます。「○○さんは、残念ながら帰国しました」という例もよく耳にします。その中には“やっぱりね”と思える学生もいます。そんな学生を送り込んでしまったことに申し訳なさも感じます。

いつの間にか、卒業式まで1か月を切ってしまいました。

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落ち着かない

2月6日(金)

「先生、9時に発表です」と、一刻たりともじっとしていられない様子のGさんが、せわしなくスマホをのぞき込んでいました。9時のチャイムが鳴り、出席を取り始めた私など眼中にないかのごとく、Gさんはスマホをいじります。寒気の叫びか悲嘆の涙か、どちらが襲い掛かってきても対応できるよう心の準備をしつつ各学生の名前を呼び続けました。呼び終わりましたが、教卓の脇のGさんは相変わらずです。直前の面接練習の受け答えからすれば受かってもおかしくないと、自分自身に言い聞かせている私がいました。

連絡事項を伝え、授業を始めましたが、Gさんの様子に変化は見られません。こちらから聞くわけにもいかず、授業を進めるほかありません。他の学生もGさんのことは気になりますが、ツッコミは入れられません。Gさんを横目で見つつ、でもGさんは無視して、配ったプリントを読ませたりその内容について考えさせたりしました。

こういう形式の授業の際に真っ先に意見を述べるのがGさんですが、今は戦力外です。だから授業を進めにくかったです。どちらの結果でもいいから、早く伝えてくれと思いましたが、Gさんはスマホをいじるばかりで、私の方など見向きもしませんでした。

遂に10時になりました。Gさんが動き始めました。ガッツポーズが出ました。「先生、合格しました」と、Gさんにしては小声で短く一言。教室の中から静かに拍手が湧き起こりました。どうやら、何らかの事情で合格発表が1時間遅れたようです。でも、めでたし、めでたし。

Gさんは本命の大学の試験がすぐそこに迫っています。この合格は景気づけにはなっても、気を緩めるわけにはいきません。来週は、また、面接練習かな…。

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今から準備

1月20日(火)

新学期の日本語プラスが始まりました。私の今学期の担当は、理科3科目に加えて「大学進学準備」という、そもそも日本の大学に進学するとはどういうことかというところから始める授業もあります。初日は、その大学進学準備からでした。

KCPの学生がのんびりしているからかどうかわかりませんが、毎年、今頃になって焦り始める学生が現れます。現在、私の周りにも数人います。そういう学生を撲滅しようと、大学入学まで1年以上あるこの時期から教育を始めるのですが、なかなか実を結びません。

入学の半年も前に入試があり、EJUをその入試に使うには入学9か月前の、前年6月のEJUを受けなければなりません。そして、そこでそれなり以上の高得点を挙げておく必要があります。そのためには、入学1年以上前の今から準備を始めないと間に合いません。

そういうことを、レベル3、4あたりが中心の学生たちに説きました。今、レベル3か4というと、6月のEJUの時はレベル4か5です。高得点を挙げるためには、かなり気合を入れて勉強しなければなりません。でも、そういう実感が持てていなさそうな顔をしていました。

お金の話もしました。私大に進むとなると、EJU、TOEFL、大学の受験料だけで10万円ぐらいになります。EJUやTOEFLを複数回受験し、大学も数校受験するとなると、30万円とかもっとという金額になります。合格したら入学金や施設費や前期の授業料などで、入学するまでに100万円ぐらいかかります。

お金関係は、さらにピンと来ていないように見受けられました。でも、来年の今頃、私に深刻な相談を持ち掛けてくることのないように願いたいところです。

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ちょっと足りない

12月11日(木)

Kさんが欠席しました。昨日、志望校出願のためには出席率90%が必要だけど、現状では少し足りないという話をしたばかりなのに、出願がさらに遠のくことをしてしまいました。電話をかけて欠席理由を聞くと、お腹の調子が悪かったと言います。KCPの学生は、実に頻繁にお腹が痛くなります。性別、国籍、レベル、住所、あらゆる要素に関係なく、すぐにお腹の調子が悪くなって学校を休みます。私なんか、KCPに勤め始めてから、お腹が痛くなったことなんてないんじゃないかなあ。

入学から今まで、こんなふうに気安く休んだ結果が“志望校に出願できなかった”なのに、まだ休もうというのです。Kさんは日本で進学して日本で就職したいはずなのに、このままでは帰国街道まっしぐらです。志望校に合格して楽隠居みたいな学生もいる一方で、出願すらできずにいるのです。来年の3月までしかKCPにいられないのに、4月以降のことが何一つ決まっていません。非常に心配な状況です。

毎年、卒業式を迎えても無所属新人という学生が必ずいます。とにかく日本に残りたいので、形だけの不本意な進学をする学生もいます。そういう学生は、卒業後、消息を絶つことが多いですから、笑顔のある留学生活を送ってるのかどうかは、なかなかわかりません。たまに、仮面浪人の末に志望校に手が届いたと報告に来てくれる学生がいるくらいです。

Kさんは今後どうするつもりなのでしょう。救いの手を差し伸べたいのはやまやまですが、これ以上ひどくなってしまうと、私たちにはどうすることもできなくなってしまいます。

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ある合格

12月9日(火)

朝、午前中の授業の準備をしていたら、Jさんからメールが届きました。見ると、R大学とK大学に受かって、R大学に進学することにしたと書いてありました。

Jさんは入学以来出席状況が悪かったです。このまま来年の3月まで在籍したら、大学に合格してもビザがもらえないということになりかねないと判断し、退学を勧めました。日本に未練があり、渋々という感じもありましたが、最後にはJさん自身で決断し、帰国しました。

KCPで上級クラスでしたから、日本語力はそれなり以上にあります。国で小論文や面接など、もともと持っている日本語力を生かす訓練をしたうえで受験したのでしょう。それが大学合格につながったに違いありません。ですから、Jさんにとっては、KCPは合わなかったのです。毎朝9時から、20人のクラスで、決められた時間割に従って、毎日のように発言を求められ、テストも宿題も多く、…という方式に息苦しさを感じていたのかも知れません。そこから逃れたくて学校を休んだと考えられなくもありません。国へ帰ったJさんは、自分のペースでより実のある勉強ができたのではないでしょうか。

1人でも多くの学生から支持されるようにと思って学校を運営していますが、どんな人でも取り込めるわけではありません。Jさんのような優秀な人材を取り逃がすことだってあるのです。Jさん以外にも、KCPの勉強法に背を向けて去っていた学生はいます。もちろん、昨日のこの稿のCさんのように、KCPにどっぷり漬かって進学した学生も大勢います。

Jさんの本当の勉強は、大学に入ってからです。大学は日本語学校より自由度が大きいですから、Jさんに合っているかもしれません。でも、その自由度に溺れてしまったら、何も得ることなく大学を後にしなければなりません。その意味では日本語学校よりも厳しいところです。大学をやめるのとKCPをやめるのとでは、その人の人生に与えるショックが桁違いです。

そういうことも考えつつ、Jさんには心の中で拍手を送っています。再来日した際には、顔を見せてくださいね。

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18日帰国

12月4日(木)

Bさんは、指定校推薦でC大学に受かりました。“一番勉強したいことが勉強できることになってよかったねと”、Bさんを教えた教師誰もが拍手しました。面接を指導した担任のH先生も、心の底から祝福しました。私も本番直前に最後の面接練習をしました。自己表現が不器用なBさがこれほどまでになるとはと、感慨深いものがありました。目標に向かってひたむきに前進を続けるBさんに、大いに期待するものがありました。

Kさんの面接練習を終えて仕事をしていると、H先生が来ました。「Bさんが18日に帰国すると言っています」と訴えました。今学期の期末テストは19日です。ですから、このままだと、期末を受けずに帰国することになります。なぜ18日に帰国したいかというと、18日の方が、チケットが安いからだそうです。“問題外の外”っていうやつですね。

もし、本当に18日に帰国したら、卒業するまでずっと模範生でい続けるという、指定校推薦を受けるにあたってBさんがサインした誓約書にも違反します。こちらとしては、悪い学生を推薦してしまったということで、C大学に事情を報告し、その判断を仰がねばなりません。C大学が合格取り消しと言ったら、それまでです。

かつて、指定校推薦で合格した学生が、気が緩んで休むようになり、出席率がその大学の推薦基準を下回ってしまったことがありました。その時は、本人の目の間でその大学に電話を掛け、担当者に状況を伝えました。その方から合格取り消しにはしないというお言葉をいただきましたかr、事なきを得ました。

指定校推薦は、大学とKCPの間の信頼関係に基づいて成り立っています。学生一個人の問題ではありません。とはいえ、こんなこと、20歳になるかならないかの子どもには、わからないかもしれません。上述の目の前で電話を掛けられた学生も、私が大学の方と話している間は真っ蒼になっていました。

Bさんには、明日、H先生がもう一度話をしてくださいます。それでも18日に帰ると言い張るのなら、私が出て行くほかないでしょう。

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