Category Archives: 進学

心の鬼

2月3日(金)

節分の日は、かつては赤坂の日枝神社の豆まきを見に行ったものですが、日枝神社は今年も豆まき中止です。手近なところで午前中に豆まきをしている神社仏閣は少なく、今年は節分の翌日は立春ということで、春を探しに新宿御苑巡りをすることにしていました。しかし、日中も日が照らず、気温も上がらず、受験生に風邪をひかせては取り返しがつきませんから、教室で過ごすことにしました。

私のクラスでは、各人の心の鬼を発表してもらうことにしました。怠け心、傲慢さ、ゲームで派手に課金してしまうことなどといういかにも心の鬼といった回答が多かったです。その中で、Nさんは「自信がありすぎること」と答えました。

授業中のNさんは几帳面にノートを取っており、指名するとやや小さめの声で答えます。とても自信があるような答え方には見えません。でも、本人としては自信過剰なんですよね。確かに、Nさんの志望校はK大学をはじめ、超一流校ばかりです。冷静に見て、今のNさんでは、K大学には手が届かないでしょう。それでも受かると思っているとしたら自信過剰でしょうが、そういう自分自身を自信過剰だと評価しているのなら、謙虚なものではありませんか。一体、どちらなのでしょう。

受験生の心は不安定なものです。ある日自信過剰でも、翌日はそのすべてを失っていることだってあります。教室では表情を変えないNさんですが、私たちのうかがい知らないところで大きな波にもてあそばれているのかもしれません。

こういうことがわかったのも、福の神のお力でしょうか。

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また休みました

2月1日(水)

Yさんがまた休みました。授業後電話をかけましたが、出ませんでした。おとといの私の授業も休みましたが、その時は電話には出ました。精神的に参っているようでした。

Yさんは有名大学に進学すると言って、去年の4月に入学しました。最初のつまずきは数学でした。文系志望ですが国立を狙うということで数学も勉強し始めましたが、だんだん手が回らなくなり、夏までに撤退しました。数学よりも総合科目に注力し、私立のいいところに入るという手は、多くの先輩がやってきました。

夏を過ぎたあたりから、授業中の内職が激しくなりました。机の上に堂々と総合科目の参考書を出し、教師と衝突することも目立ってきました。焦りが募ってきたのでしょう。でも、このあたりからYさんの日本語力は、読解力に偏りだしました。話す力がある点が、Yさんが同じレベルの学生より勝っている点でしたが、それがだんだんそうでもなくなってきました。内職のおかげ(?)で読む力は伸びているようでしたが、授業中に教師の話を聞かず、教師からも相手にされなくなってきましたから、話す力は伸び悩んでしまったのです。

受験した大学に落ち、精神的に追い詰められていきました。そうすると内にこもってしまって、負のスパイラルに陥ってしまったようです。教師とつながっていたいような、放っておいてもらいたいような、微妙な心境なのだと思います。もはや有名校もへったくれもなく、入れるところに入るという考えになっています。どこか1校でも合格すれば気分が大きく変わるのでしょうが、それができないからこそつらいのですよね。

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85%

1月16日(月)

午後、F専門学校の留学生担当の方が学生募集の説明にいらっしゃいました。KCPからも毎年のように進学している学校ですから、どこの学科が定員になったという情報以外、取り立てて新しい話はありませんでした。募集を打ち切った学科も「ぜひ学生を送ってください」と言われた学科も、恐らくそうだろうなという感じでした。年が明けても定員になっていない学科は、学生募集にテコ入れしないと3月までに定員を埋められないかもしれません。今週はこのF専門学校のほかに、もう1校来校予定があります。

「出席率の基準はどの辺でしょうか」と聞いてみると、「出願資格は“80%以上“となっていますが、今は90%以上が常識でしょうね。85%でも印象は悪いですね」という答えが返ってきました。F専門学校は学生募集にテコ入れを始めたようですが、出席率に関しては妥協するつもりがないようです。出席率85%だったら、面接で休んだ理由を聞くとも言っていました。

こちらも、そうやすやすと妥協してほしくはありません。留学ビザは勉強するためのビザですから、出席率80%=欠席率20%では留学ビザで日本にいる意味がありません。出席率80%とは、平日5日のうち1日休んでいるということです。つまり、週休3日です。仕事なら段取りを上手につければそれも可能でしょうが、語学の勉強で週休3日はいただけません。

夕方、週休3日でアルバイトに精を出している学生が叱られていました。この学生も日本で進学するつもりのようですが、受け入れ先がこんなことを考えているなんて、気づいていないでしょうね。

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どの科目を取りますか

1月11日(水)

Cさんは今学期から受験講座を受ける学生です。どの講座を取るか決めてもらうため、授業後に説明をしました。

「Cさんは大学で何を勉強しようと思っていますか」。これは文系か理系か確認する質問であると同時に、日本語力チェックもしています。これがわからないようだと、受験講座についていくのは厳しいかもしれません。Cさんは難なく「文学か経済を勉強しようと思っています」と答えました。

「文学か経済…。ずいぶん離れていますねえ。文科系の人は、総合科目は絶対取ってください」「はい、わかりました。経済を勉強するときに数学が必要ですが、受験講座の数学は何を勉強しますか」と聞かれたので、EJUの数学コース1の範囲である数学Ⅰと数学Aの教科書を見せました。2次関数のあたりでCさんの顔が青ざめてきました。志望校を聞くと、A大学、M大学、N大学の名が挙がりました。いずれも国立大学ではありませんから、少なくとも文学部ならEJUの数学が要求されることはないでしょう。

Cさんは自分が置かれている状況もよく理解しているし、きちんと理解できるまで質問も繰り返すし、話の内容も筋が通っているし、このまま順調に伸びてくれれば上述の志望校も夢ではありません。何より、こちらの言ったことをきちんと聞き取っているところが心強いです。でも、数学をあきらめてしまったのは、理系人間としては寂しいですね。

数学は、図形の問題が解けたり順列組み合わせの計算ができたりするのが到達目標ではありません。図形の問題や順列組み合わせの計算に使う論理性こそ、その根本です。それは、文学の研究にも必要とされます。

数学嫌いを生まない教育をしている国って、あるのでしょうか。

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名前を書く欄

1月6日(金)

午後、Fさんが大学出願に必要な書類を申し込みに来ました。申込用紙に、必要書類の種類とその枚数、名前や学籍番号や提出先などを記入します。Fさんは、名前の欄に、姓と名を分けて、カタカナで名前を書きました。ところが、書類の申し込み用紙の名前を書く欄には、若干小さめの字ですが、(漢字)、(英字)という表示があります。それが目に入っていなかったのでしょうね。

テストの時や提出物にいつもそうしていますから、ほとんど反射的にそう書いたのでしょうが、ちょっと注意不足でしたね。学校内の書類ですから、受け取る側の指摘に従って書き直せばそれで済みますが、大学に提出する書類でこんなミスを犯したら、最悪の場合、出願が認められなくなります。Fさんはクラスの中ではしっかりしているほうですが、それでも間違えてしまうのですから、他の学生はどうなのでしょう。

でも、多くの大学がオンライン出願となっています。“英字”の欄にカタカナを入力したら、すぐにエラーが出て気が付くでしょう。同様に、不適切な入力があると、やり直しを指示されます。そういうシステムに慣れているため、細かい字まできちんと読まずにパッと書いてしまうのかもしれません。

人間が犯すケアレスミスをフォローしてくれるのはありがたいことですが、そのせいで人間の注意力が衰えていくのだとしたら、恐ろしいことです。コンピューターの助けなしでは、いずれ人類は、社会を保てなくなる、生きていけなくなるのでしょうか。

私も同じようなミスをちょくちょくやらかしますが、こちらは細かい字が読めないせいで…。

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合格発表

12月14日(水)

今学期もあっという間に期末テストまで1週間となってしまいました。クラスで試験範囲を発表しましたが、各学生がどこまで実力を伸ばしたのだろうかと思うと、不安に駆られる面もあります。

私を不安に駆り立てる学生の1人、Eさんは、昨日学校を休みました。担任のM先生にも連絡がなく、こちらから電話をかけても反応しませんでした。おとといが受験校の合格発表でしたから、落ちたショックで引きこもっているのではないかとも思いました。

そのEさん、今朝は遅刻ギリギリでしたが、教室に駆け込んできました。暗い顔をしているわけでもなく、授業には集中しているように見受けられました。課題プリントを配ってやらせている間に、Eさんのところへ行ってこっそり聞きました。

「昨日はどうしたんですか」「ちょっと頭が痛かったです」「おととい合格発表だったけど、どうだった?」「合格しました」「こらっ! それを早くM先生に言わなきゃダメだろう」

などというやり取りの結果、ちゃっかり合格していたことが判明しました。入試前に手取り足取り指導したわけではありませんが、少なくとも担任教師に報告するのが常識でしょう。このクラスの学生は、根っからの悪人はいませんが、Eさんみたいに大事なところが抜けているパターンが多いです。

夕方、ミーティングをしていたら、M先生に電話がかかってきました。Tさんからで、合格の報告でした。こういう義理堅い学生もいます。Tさんはクラブ活動もしていますから、教師との接触が多かったという面もあるでしょう。Eさん、Tさんのほかにも、結果待ちの学生がいます。学期末まで、学生をどつきながら情報を集める日々が続くことでしょう。

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どうなる?

12月6日(火)

このところ、進学相談が増えています。進学相談で一番困るのは、自分の置かれた状況をきちんと把握していない学生です。学力的な状況がまるでわかっていなかったり、“3月までしかいられない”という法律的な制約を理解していなかったり、計画性のなさや立てた計画の無謀さに思い至らなかったりなど、周りで見ているほうがどうにかなってしまいそうな学生がおおぜいいます。

Aさんは学期が始まってほどなく、私に志望理由書のチェックを依頼してきました。約束した日はとうに過ぎていますが、私と顔を合わせても元気よく「先生、おはようございます」とあいさつするだけです。Bさんには志望校の候補をいくつか提案しました。しかし、その後どうなったかわかりません。もう1年KCPにいるといううわさもあります。Cさんには身の程知らずの志望校に対してダメ出しをしました。でも、志望校を変更したという話は伝わってきません。このままでは3月いっぱいで帰国でしょう。

Dさんはすでに合格していますが、日本語の勉強がおろそかなままです。「よく面接を通ったね」と言いたくなるような発話力ですが、それを少しでも進歩させようという気持ちが感じられません。進学したら、同級生にも先生にも相手にされないよ、向こうは日本語の先生じゃないんだから。

親ともめているという学生も何人か。Eさんはどうにか親の許可を取り付けたようですから、前に進めそうです。ようやく本番を迎えられます。しかし、Fさんの親御さんは今までにも意見をころころ変えていますから、油断はできません。進んでいいのかどうなのか、確信が持てません。

年内にもう少し目鼻を付けたいのですが、どうなることでしょうか。

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女子大に行きたい?

11月30日(水)

Kさんは文科系の数学の受験講座に出ています。来年の6月のEJUを目指すということで、基礎から始めています。しかし、文科系の学生がよくつまずくところを軽く乗り越え、因数分解などの計算もとても速いです。

「Kさんは数学がよくできるね」

「それほどでもないです。でも、私の町はほかの町と違って、数学がとても厳しかったんです。中学の時の高校の問題をしていました。友達は東大の理科系の大学院に入ろうと思って、国でオンラインの授業を受けています」

「Kさんも理科系に進んだら?」

「私の数学は友達と比べたら全然まだまだです。私の国には女子大がないので、日本では女子大に入りたいです。就職もいいそうですから」

女子大で勉強したいという夢をかなえさせてあげたいですが、1つ大きな問題があります。私立の女子大は、多くの場合、EJUの数学を見ません。Kさんが他の受験生に差をつけることができる科目が、入試の合否判定に用いられないのです。データサイエンス系の学部学科を創設した女子大が話題になっていましたが、そういうところを狙うと、一番有利に戦いを進められるのではないでしょうか。

中学生に高校数学を先取りさせて数学力をバリバリ鍛えるというのは、理系人間にとってはうれしい限りですが、実際に学んでいる中学生はどうなのでしょう。落ちこぼれは放置して前進あるのみというと、若者の可能性の芽を摘み取っているようにも感じられます。そういう教育に耐えて数学力を身に付けたとすると、Kさんはやはり優秀なのです。

どういう方面に向かわせてあげたら、Kさんにとって幸せなのでしょうか。

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やめた?

11月24日(木)

Gさんは、先学期、生物を勉強したいと言って、A大学の指定校推薦に申し込みました。しかし、大学側が出している推薦基準は満たしているものの、EJUの成績が最低点ギリギリでした。ですから、これから一生懸命勉強して11月のEJUで6月よりも点を伸ばし、その成績が使えるA大学の指定校推薦2期にしようということになりました。そう決めてからは、勉強に励んでいるように見えました。

ところが、突然、B大学の国際文化学部の指定校推薦を受けたいと言い出しました。いろいろ考えてみたら、生物を勉強したいというのは単なるあこがれに過ぎず、自分の将来を考えたら国際文化について学んだほうがいいと思うようになったとのことです。

生物と国際文化では、方向性がかなり違います。受験期が迫ったこの期に及んで、ずいぶんと思い切った方向転換をしようとするものです。Gさん自身は言っていませんが、EJUで理科系の科目に手ごたえがなかったのではないかと思います。11月の成績でも“最低点ぎりぎり”は変わらず、いや、下手をすると割り込んでしまうと思い、先手を打ったのかもしれません。B大学の推薦基準はEJUの日本語だけですから、Gさんの成績は使えるのです。いや、Gさんの実力なら、基準を軽くクリアできます。

指定校推薦は、基準さえ満たせばだれでも推薦していいというものではありません。その大学で4年間勉強する意志があるかが最大のチェック項目です。Gさんに「B大学で4年間勉強を続けられますか」と聞いたら、「はい」という答えが返ってくるに決まっています。指定校推薦は、「この学生は成績優秀で、御校で勉強しようという固い意志を持っていますから、ぜひ勉強させてやってください」という学校間の約束です。2か月かそこらで、EJUの手ごたえだけで進路を大幅に変えてしまう学生をどこまで信じたらいいでしょう。

毎年のことではありますが、難しい問題を抱えてしまいました。

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学生に鍛えられる

11月22日(火)

Oさんは今学期の新入生で、2024年に大学進学を考えている学生です。大学ではITの勉強をしたいと言っています。だから、理科系の受験講座を取っていますが、まるっきり基礎からの勉強になっています。理科系の学部に進学希望の学生は、国の高校で理科や数学の勉強をしてきて、ある程度の自信を持っているというのが通常パターンです。基礎から勉強したいと言っていても、本当にそうすると話が簡単すぎて飽きてしまう場合がほとんどです。そうならないように、高校では教えない小ネタを仕込んでおいて、興味をそらさないようにします。

しかし、Oさんは掛け値なしで基礎からのようです。「数学の授業は何をしていますか」と聞くと「三角関数をしています」と答えてくれますが、同時に「授業のスピードがちょっと速いです」とも言います。担当のS先生によると、Oさんに合わせてだいぶレベルもペースも落としているそうですが…。物理も化学も、一緒に受けている学生に教えてもらったり、説明を飛ばすととたんにわからなさそうな顔をしたりします。

教える側からすると、これくらい常識だろうと思っても油断はできません。論理的にきちんと積み重ねて説明しないと理解してくれません。逆に言うと、筋道を通した教え方をすれば、うなずいてくれます。こちらの話をしっかり聞いて、自分のものにしていこうという姿勢が感じられます。今は基礎の基礎レベルですが、時間をかけてこういう勉強を続けていけば、6月のEJUまでには頭の中に理系のネットワークが構築できるでしょう。

そして、私もOさんに鍛えられています。化学式を書けば通じるとか、図示すればわかってもらえるとか、そういう甘えは許されません。レベル1のクラスに入ったつもりで、物理や化学を教えています。

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