Category Archives: 進学

久しぶり

4月3日(金)

GさんとHさんが卒業証書を取りに来ました。いや、ビザ申請に係る書類を受け取りに来たついでに、卒業証書ももらっていったと言うべきでしょうか。

私は、2人が入学した学期にレベル1で受け持ちました。Gさんはいつもニコニコしていましたが全然話せず、Hさんは話そうとするのですが言葉が出てこずもどかしそうな顔をしていたのをよく覚えています。必ずしも順調とは言いかねる道のりでしたが、どうにかこうにか進学にこぎつけました。

2人は国にいた時からカップルのようでした。教室で毎日並んで座っていたのであれこれ調べてみたら、そういうことがわかりました。仲がいいのは結構なことですが、GさんとHさんの場合は悪い意味で協力し合ってしまい、日本語に浸りに来たはずが、常に国の言葉で思考回路が作動していました。ですから、次の学期からは、絶対同じクラスにしてはいけない学生リストに載ってしまいました。

クラスは違っても休み時間など2人で話しているのをよく見かけました。私が通りかかると、話を途中でやめて、律義に挨拶してくれました。根は透き通っているんだろうなと思っていました。でも、進路については、私の手を離れてからのクラスの先生方とだいぶ衝突したようです。「GさんとHさん、金原先生のクラスだったんですか。全くもう、どういう指導をしてきたんですか」などと愚痴をこぼされたこともありました。でも、誰よりきつかったのは、Gさん、Hさん自身だったに違いありません。

「授業は20日から始まる予定ですが、始まらないかもしれませんね」と、レベル1の時からは想像もつかないような会話ができるようになったGさん、Hさん。私が受け持った時に抱いていた希望とは違った形での進学かもしれませんが、新しく描き直した夢に向かって歩み始めてください。

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騒ぎの陰で

3月9日(月)

来学期の授業料の納付期限が明日なので、授業料を納める学生が多いです。オンライン授業が終わってから家を出たのでしょうか、午後、Jさんも納めに来ました。Jさんは国立大学を2校受けていましたが、どちらもダメだったようです。これからもう1年勉強して再挑戦することになりますが、果たして合格するまで緊張が持続できるでしょうか。学力的な面よりも、そちらの方がずっと心配です。

Jさんはスタートダッシュが遅かったように思います。年が明けてから急に準備を始めた感じがします。他の学生が夏ぐらいから始めていた準備を、1か月半ぐらいでどうにかしようというのです。急ごしらえ感は否めませんでした。日本語力がそこそこ以上あったということが、逆に災いしたのではないでしょうか。面接でしゃべるのくらいどうにかなるという気持ちがあったに違いありません。

しかし、面接練習をすると思っていたことの10分の1も話せず、口頭試問も頭の中にあることを論理的に語ることはできませんでした。ショックを受けてどうにかしようともがいたのですが、遅れを取り戻す前に入試本番になってしまったというのが真相です。

今上級のJさんは、4月になると親しい友達は卒業してみんないなくなってしまいます。これは両極端の効果をもたらすことがあります。その寂しさに耐えられなくなって沈んでいった学生と、一人になってから集中力を発揮し始めた学生の両方がいました。Jさんが後者になってくれることを祈るほかありません。

6月にはこの騒ぎも収まり、EJUも粛々と実施されるのでしょう。コロナにかまけて受験準備をおろそかにしていてはいけません。

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インタビュー

2月21日(金)

Lさんは京都の大学への進学が決まっています。そのきっかけとなったのが、夏に京都の大学のオープンキャンパスを見に行くツアーに参加したことです。午後、そのツアーを主催した京都の団体が、今年の夏に行う予定のツアーのプロモーションに使う動画を撮りに来ました。

動画と言ってもLさんへのインタビューが中心で、向こうの担当者からの質問にLさんが答えるという形で撮影が進められました。Lさんにはだいぶ前に知らせておいたのですが、約束の時間のかなり前からちょっと目が泳いだような顔つきでラウンジにスタンバっていました。

インタビューが始まっても、明らかに緊張した表情と声で受け答えをしていました。しかし、答えの内容は立派なもので、インタビューの聞き手の方も感心していました。日本語教師的に評価すると、単語で答えることが全くなかったのと、主語と述語が食い違うねじれ文もなかった点に、心の中で思わずガッツポーズをしてしまいました。時々言いよどむこともありましたが、話が変な方向へ進んでしまうこともなく、言いたいことがよくわかる答え方をしていました。

普段見ていると、進学してから日本人に伍していけるかなあと感じさせられていましたが、いざとなったらしゃべれるものなのですね。学生たちは私たち教師が知らないところで成長していくものなのです。いや、成長していくだけの力があったからこそ、大学に合格したのかもしれません。

夜、3年前に京都の大学に進学したJさんが、就活だと言って顔を見せてくれました。もう少し正確に言うと、昼間から怪しげな人影がロビーをうろちょろしていたのですが、誰なのかわからず放っておきました。改めて呼び出され、声を聞いたらJさんだとわかりました。一回りやせて精悍な顔つきになっていたので、すぐにはわからなかったのです。話を聞くと、かなり密度の高い学生生活を送ってきたようです。第一志望の大学に進学できたのですから当然の結果かもしれません。

3年後、LさんもJさんのように充実した学生生活だと報告してくれるでしょうか。

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大遅刻

2月20日(木)

10時2分、学生たちに文法の問題をやらせていると、ドアが開き、Yさんが入ってきました。1時間2分の大遅刻ですが悪びれる風もなく、空いていた席に着きました。学生たちが取り組んでいるプリントを渡すと、当たり前のごとくそれを受け取り、問題に取り組み始めました。

YさんがK大学に受かったのは先月のことでした。日本語ゼロでKCPに入学し、コツコツ努力を重ね、超級レベルに上り詰め、そして、名門大学に合格したのです。Yさんに関わったすべての先生が祝福し、Yさんも少しはにかみながらそれに応えていました。

しかし、Yさんが休み始めたのはそれからです。やや病弱なところがあり、それまでにも学校を休んだことはありましたが、平気な顔で遅刻したり、欠席理由が寝坊になったりし始めたのは、合格からです。受かるまでは、悲壮感を漂わせながら授業に食らいついていましたが、今はタガが緩み切った表情をしています。

毎年、志望校に合格してから株が下がる学生はいますが、Yさんの落差は屈指のものです。K大学合格までYさんを応援していた先生方が最近のYさんの姿をご覧になったら、さぞかし落胆なさるでしょう。私も初級でYさんを受け持ちましたが、今のYさんはまるで別人です。燃え尽きたというのとも違います。

HさんもLさんもJさんも株価低迷組です。人はどうして何かに挑戦し続けないと堕落してしまうのでしょう。ひたむきに挑む姿は美しいですが、望みがかなった後にこそ、その人の本性が現れるのだとしたら、汗の結晶の輝きはかえって罪です。

午後は年末までだらけていたWさんの3回目の面接練習でした。今までになく目が真剣でした。力が伸びてきている感じがします。期待していいのでしょうか。

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お金持ち

2月19日(水)

今シーズンの受験も終盤戦です。国立に勝負をかけている学生はともかくとして、去年のうちから受けているのにまだ決まっていない学生もいます。また、どうしてもこの3月で出たいけど、どこにも入れないでいる学生も何人か聞いています。志望校に受からなかったら帰国と、自ら背水の陣を敷いているプライドの塊も見かけます。

そんな中、W大学の先生に会いました。まだ進学先が決まっていない学生がいるという話をすると、「ぜひうちの大学に送り込んでください」と。授業料減免もするから、そういう学生に薦めてほしいと言って、要項をくださいました。

どんな学生でもいいのかというとそうではなく、経費支弁がしっかりしていることという条件を付けられました。つまり、家にお金がある学生なら歓迎するというわけです。アルバイトに走らなければ、きちんと教育すると言いたいのでしょう。

私がKCPに勤め始めたことは、“学生=貧乏”という不動の方程式がありました。アパート、学校、バイト先の3地点に囲まれた地域を、魔のトライアングルとも呼びならわしました。怪しいアルバイト先を確認しに行ったり、勉強とアルバイトとどちらが大事なんだと学生に迫ったりしたものです。今も、もちろん、アルバイトをしている学生はいますが、アルバイトに生活が懸かっている学生はいません。

今は、着たきり雀みたいな学生もいなくなりました。持ち物が豪華になりました。着ているものがおしゃれになりました。Cさん、Oさん、Sさん、Yさん…毎日しゃれた格好で登校してくる学生は枚挙にいとまがありません。そんな経済力を見ると、W大学が要求する基準は満たせそうです。学生の中には、日本に残るためにW大学進学を選ぶ人もいるかもしれません。そんなときのために、友好的に笑顔で接しました。

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これから出願

2月18日(火)

中間テストがありました。しかし、3月卒業予定者は、来週卒業認定試験がありますから、別メニューでした。私も、日本語教師養成講座の講義を担当しましたから、試験監督には入りませんでした。

養成講座の前半の講義を終えて、職員室に戻りがてら卒業予定者の別メニューの教室をのぞこうとしていたら、Sさんがその教室に入ろうとしました。コートを着てかばんを持っていましたから、“ちょっとトイレ”というのではなさそうでした。朝寝坊して今やっと学校に着いたという風情が漂っていました。私と目が合うや気まずそうな顔をして、教室に入っていきました。

養成講座が終わって職員室でコンピューター仕事をしていると、Sさんが、出席成績証明書がほしいと言ってきました。出席成績証明書は、先々週あたりに一度出しているので、その時に出願した学校はどうなったかと聞くと、落ちたとのことでした。それで、今から間に合う学校に出願するために証明書を申し込んだというわけです。

Sさんは優秀な学生です。教室では積極的に発言し、その発言も的を射ています。それゆえ、クラスメートもSさんの発言に注目しています。ただし、これは、Sさんが学校へ来た日のことです。そうです。Sさんの最大の弱点は、出席率が悪いことです。筆記や面接でどんなに点を稼いでも、今のご時世、出席率が低かったら絶対に受かりません。Sさん自身もその点は自覚していますが、どこかなめてかかっているところがあり、教師にどんなに注意されても、遅刻や欠席を繰り返します。あんなに頭がいい学生なのに、どうして過去から何も学ばないのだろうと不思議に思います。

もう後がありません。「頑張れ」と言ってやりたいところですが、みんなで声を合わせて言ったところで、向こうが出席率の数字で切ってきたら、それでおしまいです。「後悔先に立たず」を学んで国へ帰るなんてことにならないように祈るしかできません。

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この勢いで

2月12日(水)

教職員の朝礼が始まる直前、Oさんがロビーから私を呼びました。またややこしい願い事を持ってきたのかと、内心不安を抱えながら職員室の外で話を聞くと、「先生、Y大学に合格しました」と、合格通知を見せてくれました。「それで、先生、もう受験しませんから、受験で休むと言っていた卒業式、出ます。それから、バス旅行も入試で行けないと言いましたが、行けるようになりました。お金、いつ払えばいいですか」と、うれしい予定変更。

このOさん、ちょうど1週間前、別の大学に推薦してくれと言ってきました。でもY大学の結果が出ていないので推薦できないと断りました。推薦していたら、Y大学の合格は捨てなければなりませんでしたが、実際にはそうはしなかったでしょう。そうすると、たとえ私がその大学にどんなに平身低頭しても、その大学との間の信頼関係にひびが入ってしまったことは疑いありません。

噂によると、JさんもK大学の大学院に受かったとのことです。試験の直前に、国でしてきた研究内容の発表練習に何回か付き合いました。そこでのアドバイスが効いたかどうかはわかりませんが、Jさんは落ちたら帰国も考えていたようですから、これまた心の底から「おめでとう」と言ってあげたいです。

Jさんは、授業後に私を探しに職員室まで何回も足を運んできたそうですが、水曜日の午後は受験講座が目いっぱい詰まっているため、会えずじまいでした。明日、じっくりと合格の喜びを聞きましょう。

その受験講座から戻ってくると、Hさんからメールが来ていました。明日、午前中にS大学の筆記試験を受け、午後から面接練習をすると言っていました。おととい、そういう約束をしましたから、こちらは予定通りに進んでいるようです。授業中も引き締まった顔つきをしていましたから、気力は充実していると思います。

受験シーズンも追い込みです。明日はHさんのほか、Pさんの面接練習が待ち受けています。

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両極端

2月8日(土)

学校全体を見渡すと、行き先が決まらず神経が高ぶっている学生と、行き先が決まって気が緩みまくっている学生が目立ちます。もちろん、絶対数は真面目に勉強している学生が圧倒的ですが、ピリピリ組とだらだら組は教師の目に留まりやすいのです。

Cさんはこれから国立大学をいくつか受けます。戦友だったSさんが受かってしまい、取り残されたという感じも抱いているかもしれません。面接練習で私の質問に答えられないとショックを受け、答えられたらこの答え方でいいかと確かめずにはいられず、さっきの答えとこの答えとどちらが面接官に好印象を与えるかなどと聞いてきます。アリの目になりすぎていますから、鳥の目を持ってほしいと思います。面接の全体像をつかまないと、戦略的な答え方ができません。私が口で言ってもなかなか通じませんから、Cさんの気が済むまで寄り添っていくしかありません。月曜日の午後に、また練習します。

糸が切れちゃってる代表はHさんかな。国ではほとんど勉強したことがなく、日本へ来てからの1年余り、死ぬかと思うほど勉強したそうです。おかげで去年のうちに大学には合格しましたが、その反動で、今は魂が抜けたようです。だって、筆記用具すら持たずに教室にいるんですよ。入学してから、また勉強しようという意欲が湧き上がってくるのでしょうか。心配でなりません。

Cさんは、これからの1か月が人生の分かれ目です。プレッシャーに押しつぶされずに力を発揮してもらいたいです。Hさんもこれから気持ちをどう立て直すかで留学が成功するかどうかが決まります。早くそこに気づいてほしいです。

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いい教師とは

2月4日(火)

最近元気がなかったCさん、第一・第二志望校のA大学とU大学に落ちていたことがわかりました。これから受けられるところをねらうと言っていますが、どこも2期・3期の募集ですから、Cさんがいかに優秀でもかなり厳しい戦いになりそうです。

Cさんが挙げた学校は、Cさんの実力をもってすれば、どこも年内試験の1期なら楽勝で合格できそうなところばかりです。しかし、これから募集で一部3月試験の学校となると、かなりの競争率になることは火を見るより明らかで、必然的に合格ラインも大幅に上がります。去年の夏ごろに、ある大学の先生が「B日程では、今まで私共など振り向いてももらえなかった優秀な方たちに入学していただきました」とおっしゃっていたのを思い出しました。Cさんがその“優秀な方たち”に加えてもらえるかどうかは、なんともわかりません。

CさんがA大学とU大学にこだわったのは、東京の大学だからだそうです。でも、勉強する場所が東京でなければならない理由は、特にありません。漠然と東京にあこがれていただけと言っていいです。A大学もC大学も受けてよかったのですが、同時に他の大学の1期とかA日程とかも受けておくべきだったのです。最悪の場合の行き先を確保した上で、難関校に挑戦してもらいたかったです。

私たちもCさんに何の指導もしてこなかったわけではありません。でも、監禁拘束してまで書類を書かせ、受験料を払わせ、出願させることは、もちろんできません。Cさんは、この期に及んで、自分は甘かったと反省しています。同じような言葉を、年末にKさんからも聞きました。他にもこのような反省していると思しき学生が数名います。こうなると、監禁拘束も冗談とばかり言っていられなくなります。

おそらく、来年度はさらにもっと状況が厳しくなるでしょう。学生の主体性を尊重する、物わかりのいい教師でいてはいけないようです。

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処置なし

1月21日(火)

久しぶりにKさんに会いました。それだけ派手に学校を休んでいたということでもあるんですが、来て売れただけありがたいと思わなければなりません。

Kさんがなぜ欠席するかと言えば、学校が面白くないからです。日本語の勉強よりも面白いことを学校外で見つけてしまったからです。先学期A大学に受かっていますから、受験の心配もありません。元々勉強が嫌いだったようで、しなくてもいいならしないで済ませたいと思っています。

もちろん、休み続けると進学してからビザが延長できなくなりますから、全然学校へ来ないという危ない橋はわたりません。じゃあ学校へ来たときはどうするかというと、教室でひたすらスマホをいじり、ただただ授業が終わるのを待ちます。予習を前提に授業を進めていますが、予習などしてくるはずがありません。指名されると、隣の学生に答えを教えてもらってどうにか答えます。

教師に注意されたから直そうなどという殊勝な心掛けなど全くありません。注意すればしただけクラスの雰囲気が暗く重くなります。スマホをやめても寝るだけです。マイナスのオーラをまき散らしまくっています。そもそも、筆記用具すら持って来ないのですから、遊びに行くついでに学校に寄ったというのが実情でしょう。

Kさんを振り向かせるために一大奮起をしたとなれば美談になりますが、私はそこまで熱血な教師ではありません。Kさん以外にも情熱を傾けねばならない学生が大勢います。例えば、Kさんよりも先に、昨日この稿に書いたWさんの夢をかなえるためなら時間を割きたいです。

Kさんは、おそらくバス旅行にもいかないんだろうな…。

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