Monthly Archives: 12月 2024

魔性の住処

12月27日(金)

今年最後の出勤日ですから、校内の大掃除をしました。例年のように、私は給湯室を担当しました。今年は冷凍冷蔵庫の中を重点的にやってくれという指示を受けていましたから、その通りに動きました。

冷蔵室を開けると、飲み物食べ物がいっぱい入っていました。目についたペットボトルを取り出して賞味期限を確認すると、2023年でした。その隣のは、なんと2022年ではありませんか。賞味期限が2022年ということは、買ったのは2021年かもしれません。だとしたら、オンライン授業をやっていたころですよ。

年季物のお菓子も発見しました。冷蔵されていたのですから、食べてもお腹を壊すことはないでしょうが、相当な勇気がいります。生八ツ橋は、残念ながら、可燃ごみ行きとなりました。だれがどのような経緯で冷蔵室に入れたのかわかりませんが、もったいない限りです。お茶のお供にちょうどよさそうなきれいなお菓子もありましたが、これも生八ツ橋と同じ運命をたどりました。フードロスって、こうやって生まれるんですね。

何より驚かされたのは、未開封で賞味期限から比較的日が浅いミルクティーに沈殿が生じていたことです。白かったので乳成分が凝集したのではないかと思いますが、見た目はよろしくありません。同じく未開封なのに容器のペットボトルがへこんでしまった麦茶もありました。真夏の暑い盛りに買って来て冷蔵室に入れたら、中の空気が思い切り収縮してしまったのでしょう。ペットボトルの密閉性が証明されたと言えないことはありませんが、どことなく気持ち悪いですね。

冷凍室からは、カチンカチンに凍った炭酸水が現れました。物理的にはありうることですが、実際に目にすると、不思議さは拭い去れません。

それにしても、KCPの教職員のみなさんは物持ちのいい方ばかりのようです。私なんか、買ったものはとっとと食べたり飲んだりして、冷凍冷蔵庫のお世話にはなっていません。机の引き出しに食べ物飲み物を多少しまい込んでいますが、もちろん賞味期限のはるか前に消え去っています。

冷蔵室も冷凍室もスカスカになりました。隅々まで拭き掃除をしてきれいにしました。新年は冷凍冷蔵庫をたびたび見張って、同じことが繰り返されないようにしていきましょう。

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初めて見ました

12月26日(木)

年末年始の休みの軍資金を下ろしにATMへ。休みが迫っているから混んでいるかなと思ったら、お客さんは1人しかいませんでした。待つこともなく、用が済みました。ATMから出てきたお札をよく見ると、なんと渋沢栄一さんがいるではありませんか。北里柴三郎さんの1000円札は10月ぐらいにお目にかかりましたが、新しい1万円札は、来週はもう来年という押し詰まったこの時期に及んで、ようやく出会えました。

ずいぶん前から、現金を使わなくなりました。1万円札を使うのは、nanacoのチャージの時ぐらいでしょうか。万単位の買い物はカード払いだし、それよりもう少し少額だったらnanacoやpasmoだし、結局現金を使うのは神社仏閣のお賽銭と八百屋さんと金券ショップで図書カードを買う時ぐらいのものです。とはいえ、いざという時役に立つのは現金だといまだに信じていますから、お金を下したというわけです。

私が新入社員の頃は、社会人になったら年齢×千円の現金を常に財布に入れておけと教えられました。つまり、25歳なら2万5千円、30歳なら3万円となります。今の私なら、6万円以上財布に入れておかなければならないという計算です。そんなにあったら、半年ぐらいはもっちゃいそうです。

年末年始休みはまた名古屋まで行ってきますが、交通費や宿泊代はカードで済ませます。この時期は、博物館などはお休みですから、野山を歩くことになります。そうすると、また現金を使うチャンスがなさそうです。

新しい千円札と一万円札は手にすることができましたが、五千円札は、一万円札を使って三千円ぐらいの買い物をし、そのおつりとして受け取る以外にお目にかかるすべがありません。発行一年後の来年七月三日までに出会えるでしょうか。

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あいさつ2題

12月25日(水)

朝、病院に向かっている時、前から歩いてきた黄色い帽子をかぶった小学生に「おはようございます」とあいさつされました。私も慌てて「おはようございます」とあいさつを返しましたが、全くの想定外のこととて、あまり大きな声が出せませんでした。小学生に聞こえたかなあと、少し心配になりました。

もちろん、その小学生には全く面識がありません。私が病院に向かう道を歩くのは3か月に1度のことですから。そんな見ず知らずの子どもから朝のあいさつを受けるというのは、気持ちのいいものですね。これから1日、何かいいことがありそうな予感がしました。

でも、私が先に小学生に「おはようございます」とあいさつしたらどうだったでしょう。小学生は怪しい年寄りに声をかけられたと思ったかもしれません。おそらく、知らない大人から声をかけられても無視しろと教えられているでしょうから。病院に歩を進めながらそんなことを考え、ちょっと寂しくなりました。

病院から学校に戻ると、かつてKCPに勤めていたH先生が書類を取りにいらっしゃると事務のRさんが言っていました。“はて、H先生ってどんな先生だったっけなあ”なんて記憶をほじくり返しているうちに、当のH先生が受付に現れました。顔を見た瞬間、記憶が鮮明によみがえりました。ご本人は「重力には逆らえない」などとおっしゃっていましたが、いえいえ、全然変わっていませんよ。

「お久しぶりです」とH先生から声をかけられました。いい響きだなあと思いました。聞けば、H先生がいらっしゃったのは、建て直す前の古い校舎の頃だというではありませんか。中級の問題クラスで一緒に戦っていたころを思い出して、懐かしくなりました。

「メリークリスマス!」と声をかけてくれる人はいませんでしたが、心温まるあいさつが2つも聞けた、充実した1日でした。

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授業が終わったら

12月24日(火)

お昼に外に出ると、“恋人がサンタクロース”など、クリスマスソングが流れていました。しかし、私は養成講座の2024年最後の授業でした。

授業の内容は、テスト結果の分析でした。とかくクラスの平均点を出してお茶を濁しがちですが、それでは本当にお葉を濁したにすぎません。平均点はクラスの得点分布が正規分布(きれいな山型の分布)をしている時に意味をなし、その形が崩れれば崩れるほど意味をなさなくなります。中級クラスで言えば、毎日行っている漢字の復習テストなどは満点を取って当然のテストですから、日々の平均点の変動を見てもあまり意味がありません。

中間テストや期末テストは、学生の実力を見る意味合いもありますから、正規分布に近い分布をしてもらいたいところです。しかし、そうは問屋が卸しません。大きな山のほかに、極端にできない学生の山ができてしまうことがよくあります。平均点でクラスを評価しようとすると、できないグループの数名が足を引っ張ってしまい、クラスの実態を正確に表さないことがあります。そういう場合には中央値や最頻値を用いるとか、分布の全体像を見比べるとか、いろいろな手があります。

そんな話を、EJUやJLPTの実際のデータも交えてしていきました。この授業資料を作る際に私自身も新たな発見をし、勉強になりました。

今年の養成講座の授業はこれで終わりですから、受講生のAさんはそのままご実家に帰省なさるとか。新年早々ハードな授業が始まりますから、心身ともに十分に休んできてもらいたいです。今頃(18:03)は、もう、ご家族とクリスマスパーティーをしているころでしょうかね。

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国立対策の前に

12月21日(土)

午前中、Aさんが進学の相談に来ました。昨日発表されたEJUの結果を基に、国立大学をどうすればいいかという話です。Aさんは、6月に比べて、日本語の点数はあまり伸びませんでしたが、数学と理科は少しよくなりました。とはいえ、強気になれるほどの成績ではありませんでしたから、相談に来たというわけです。

国立大学の留学生入試は、2月25日付近に集中する傾向があります。この集中日にどこを受けるかが1つのポイントになります。それ以外の入試日にも何校か受けて、どこかに受かるような組み合わせを考えます。Aさんは東京近辺にこだわりませんから、これから出願できる国立大学をいくつか紹介し、本人に選ばせました。

そのAさんからの情報によると、WさんはG大学に行くと決めたそうです。Wさんも理科系で、国立大学と言っていたのですが、力試しに受けたH大学とG大学に受かり、国立大学を受験する気持ちは失せてしまったようです。理系科目はAさんより良かったですから、十分チャンスはあるのですが…。G大学は超有名大学だということもあり、本人は、もう受験勉強をする気は全くないようです。

でも、G大学は、文科系では名のある大学ですが、理科系は“?”がついてしまいます。Wさんの将来を明るくする勉強ができるか、今一つはっきり見えません。でも、受験勉強や面接練習はもう嫌だという気持ちも、わからないではありません。

Aさんに「今から国立対策だな」と声をかけたら、この休みは北海道へ遊びに行くそうです。成田発のLCCだと4000円で行けるそうです。風邪をひかずに帰ってきてくれれば、それでいいか…。

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大躍進

12月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。まず、聴解。Nさんの解答用紙には、最初の2問しか答えがありませんでした。その2問は正解だったのですが、あとが白紙では点数をあげようにもあげられず、あっさり不合格。日頃のNさんの様子を見る限り、2問しかできないなどということは絶対にありませんから、テスト中に寝込んでしまったのに違いありません。ほかは、よくできる学生が満点近くを取り、怪しい学生は合格点に届かず…という感じで、大きな番狂わせはありませんでした。

次は作文。Nさんの作文は2行で終わっていました。ここでも寝たのでしょうか。こんなに寝てばかりだとすると、どこか具合が悪かったのでしょうか。それとも、進級をあきらめたのでしょうか。受験で頭がいっぱいで、期末テストになんか、構っていられなかったのかもしれません。そうだとしたら、年明け早々の入試にぜひとも合格してもらいたいものです。

作文で驚かされたのは、Kさんです。今学期勉強した論理構成に則って、持論を堂々と展開していました。クラスの学生にこういう作文を書いてほしかったのですが、なかなか書いてくれませんでした。Kさんも書いてくれない1人でしたが、最後に立派な文章を書いてくれました。どんな授業も真剣に聞いているKさん、ついに華が開いたと言ったところでしょうか。

そのKさん、EJUでもやってくれました。今朝ほど公表された11月のEJUの結果によると、Kさんは6月のEJUに比べて、日本語の成績を60点以上も伸ばしました。地道に努力を続けてきたKさんの面目躍如です。そして、この時の記述の成績が40点。でも、昨日の期末の作文なら、50点取ってもおかしくないです。1か月前のEJUではできなかったことが、昨日はできたのです。大躍進じゃありませんか。

惜しむらくは、Kさんはすでに指定校推薦で進学先が決まっていますから、このEJUの好成績を活用する場がありません。でも、自信だけは持ってもらいたいですね。

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退学届

12月19日(木)

3時頃、Qさんが退学手続きに来ました。配偶者のDさんの就職が決まったので、家族滞在ビザにするそうです。今学期何回か「次の学期も勉強すれば卒業だよ」と誘ってみましたが、最終的に退学の道を選びました。

QさんもDさんも初級クラスで受け持ちました。Qさんはともかく、Dさんはいつも日本語より英語が先に出てきてしまい、なかなか上達しませんでした。今では初級レベルの主みたいな学生です。Dさんの場合、日本で就職することが来日の主目的であり、できることなら日本語の勉強はしたくなかったのです。そのため、授業も上の空で、仕事のことばかり考えていました。

「日本語ができると早く就職できるよ」と気持ちを勉強に向かわせようとしましたが、決して揺らぐことはありませんでした。Dさんにとって、KCPは就職活動の足場でしかありませんでした。どうやら仕事が決まったようですが、Dさんの日本語力からすると、仕事で使うのは国の言葉なのでしょう。

QさんはDさんに比べればずっと日本語の勉強に力を入れていました。曲がりなりにも中級まで上がってきたのですから。そのQさんにしても、授業料を払わずに日本にいられるのならそっちにしようという考え方なのです。もう少し勉強を続ければ、日本語で仕事ができるくらいにはなると思うんですがねえ。

日本で暮らすなら日本語ができなければならない――とまでは思いませんが、同国人のコミュニティーの中に閉じこもって生きていくというのは、どうなのでしょう。Qさんたちはそんな生活をしていくのではないかという気がしてなりません。狭くて息苦しいような気がしますが、そうでもないんですかね。

夕方、Dさんも退学の手続きに来ました。2人に幸あれと祈るばかりです。

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意外な、差の感じ方

12月18日(水)

T先生の代講でレベル8のクラスに入りました。今学期授業をしてきたレベル5のクラスに比べると、やはり数段上という気がしました。授業は、期末の前日でもあり、発話力テストとしてのプレゼンテーションでした。ですから、私が感じた差は、話す力の差です。

プレゼンテーションで使われたスライドは、レベル5でも8でも大差ありませんでした。むしろ、映し出された字が大きい分だけ、レベル5の方が優れているとも言えます。しかし、そのスライドで語られる日本語は、8の勝ちです。

どこが違うのかというと、まず流暢さでしょう。Kさんなど、全くよどみなく話を進めていました。レベル5で最も話す力があると思われるJさんをもってしても、足元にも及びません。訥弁という印象が強いFさんも、原稿を持たずにすらすらと10分弱の発表をこなしていました。しばらく見ないうちに話す力がずいぶん伸びたものだと感心させられました。

最近は、こういう発表をさせると、原稿づくりの際にこっそり翻訳アプリを用いる学生がいます。レベル5だと、翻訳アプリの日本語レベルに話す力が追いついておらず、その翻訳文が妙に浮き上がってしまいます。レベル8にも翻訳アプリを使った学生がきっといたことでしょうが、その日本語が浮き上がって来ないのです。難しい言葉遣いに負けない発話力が備わっているのです。

こういう人たちが翻訳アプリを使うなら、それは実に有力な武器になります。人間がコンピューターを使っている図になります。しかし、レベル5あたりの学生だと、コンピューターに負けてしまっていますから、アプリ翻訳の文をそのまま使うと、もれなく違和感がついてくるのです。

こういうところにも、中級と上級の差が横たわっているのだなと思い知らされました。

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納税期

12月17日(火)

期末テストが近づくと、年貢の納め時の学生があちこちに現れます。中間テストの時は、まだ学期が半分残っている、期末テストで逆転して見せると、多少の余裕も見られます。追試再試の先送りもよくある話です。しかし、期末テストとなると、そんな余裕もなくなり、受けるべきテストの先送りも許されなくなります。未受験のテストは0点だったものとみなして平均点を算出しますから、そのせいでその科目が不合格になることだって十分あり得ます。

Gさんはその年貢を一生懸命納めようとしています。不合格だったテストを次々と受け、なんとか合格点にまでこぎつけようとしています。直前まで2階のラウンジで勉強し、1階に下りて来てテストを受けるという繰り返しです。覚え込んだことを忘れないうちにテスト用紙に書き込もうという魂胆です。瞬間最大風速みたいな点数を出して、ぎりぎりでも合格しようというつもりです。

その作戦が功を奏してか、このところ受けた漢字や表現のテストは、どれも合格点を取っています。平均点も合格点を確保しました。あさってが期末テストですから、そうやって無理やりにでも詰め込んだものが、多少は残ってることでしょう。図らずも期末テストの勉強にもなっているのです。

Gさんはそうやってどうにか年貢を納め切って、期末テストでひどいことにならなければ進級できそうです。その一方で、LさんやZさんは置かれた状況はGさん以上に厳しいものがあるのですが、動いてもいませんし、動く気配すら見せていません。進級をあきらめてしまったのでしょうか。Kさんも当落線上にいるはずなのですが、自覚が感じられません。私が買い物に出た時、恋人と腕を組んで歩いていました。

ここに登場したみなさん、果たしてメリークリスマスになるのでしょうか。よい新年を迎えられるのでしょうか。

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息つく間もなく

12月16日(月)

午前の授業の後は、まず、アメリカの大学プログラムの学生Mさんのオーラルテストをしました。先週金曜の日本の高校訪問がとてもよかったと言っていました。そこでは自分の地元の紹介など、大活躍をしたようです。来年、JETプログラムを利用して、東北地方の学校で働いてみたいと夢を語ってくれました。

その次は日本語プラス生物の授業をしました。今学期最終回は、ホルモンと神経の話です。バソプレシンとか糖質コルチコイドとかランビエ絞輪とか、学生たちが大嫌いなカタカナ専門用語がたくさん出てきました。しかし、確認テストはよくできていましたから、必要最低限の概念は学生たちに届いたというところでしょうか。

それが終わったら、Rさんの面接練習でした。Rさんは私のクラスの学生ではありませんが、いろいろな成り行きで面接練習を引き受けました。T大学の面接試験が今週金曜日に迫っています。

T大学に入りたいという気持ちが強すぎるのか、前のめりの姿勢で受け答えをしていました。今まで、自信なさげに前かがみで面接練習に臨む学生は大勢いましたが、Rさんのように、見ようによっては今にも飛びかからんばかりに受け答えをする学生は初めてでした。気持ちはよくわかりますが、ちょっと表に出し過ぎかな。でも、答えの内容は素晴らしく、どれ一つ取っても他の受験生の口からは出てきそうもない、オリジナリティーあふれる言葉の連続でした。本番もこの勢いなら、合格の可能性は十分にあります。

面接練習が終わって1階に戻ってくると、Gさんが待っていました。漢字テストの再試です。Gさんはどうしても進級したいと思っていますが、不合格の漢字テストがあります。それを受けておかないと、漢字が不合格で進級できないということもあり得ます。それでは困ると、受けに来たという次第です。再試ではどうにか合格点が取れましたが、これは期末テストの範囲でもあります。不安が全面解消したわけではありません。

諸々が終わったら、外は真っ暗。明日も同じような1日になりそうです。年末、最後の力を振り絞って、仕事をどんどん片付けていきます。

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