入学式挨拶

皆さん、ご入学おめでとうございます。このように大勢の学生が、世界各地からこのKCPに集ってきてくださったことをうれしく思います。

これから日本語の勉強を始めようとしている皆さん、皆さんはどんな日本語を知っていますか。「頑張ってください」「頑張ろう」「頑張れ」など、「頑張る」という動詞は、そういった皆さんでも一度ぐらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。同じ意味の言葉が皆さんの母語にもきっとあると思います。

そこで質問ですが、皆さんは今までにどのくらい頑張ったことがありますか。頑張ったことがない人はいないでしょうが、何にどの程度頑張りましたか。一番頑張ったのはどんな時で、自分の全力を100としたときにどのくらいまで力を出しましたか。

スポーツをしていた人は100に近い頑張り方をしたことがあるのではないかと思います。そうでない人は、ここまであまり頑張らなくても大きな支障もなく来ているのかもしれません。順調な人生が送れたことは好ましいことですが、頑張り方を知らずに大人になってしまったとしたら、これは大問題です。

どんな人の人生にも、何が何でも頑張らなければならない局面が必ずあります。その時、それまでに本気で頑張った経験のない人は、頑張り切れないものなのです。自分の全力を出すすべを知らないといってもいいでしょう。もちろん、それでは困ります。

今この場にいる皆さんにしてもらいたいことは、全力を出す経験をすることです。100の力を出し切ることを一度味わってもらいたいのです。自分はやればできると思っていても、やったことがなかったらできるかどうかはわかりません。「できる」と信じ込むことと、「できた」経験があることとは、天と地ほどの差があります。

留学生活には全力を出す場がいくらでも用意されています。勉強や入学試験はもちろんですが、日々の生活も全力で立ち向かわないと押し流されてしまうことばかりです。全力を傾けてもどうにもならないことだってあるでしょう。壁にぶつかってはね返され、己の無力さを知ることも、留学の成果の一つです。

確かに挫折は辛いことです。その時、「あれは自分の全力じゃないんだ」と慰めてしまったら、その人に進歩はありません。全力で取り組んで挫折し、自分の全力をもう一段高めることに新たな目標を設ければ、それがその人の成長につながります。挫折が単なる挫折に終わらず、生きた挫折になるのです。

常に八分の力で生きている人は、やがてその八分の力が全力になってしまいます。筋力を鍛えていないとどんどん衰えていくのと同じように、難局を乗り越える力も訓練しなかったら伸びるどころか萎えていくばかりです。

ですから、皆さんにはこのKCPで日本語の習得、その先にある進学や就職といった目標に向けて、全力を傾けてもらいたいのです。KCPを卒業する日まで、頑張り続けてもらいたいのです。そのためのお力添えは、わたくしたち教職員一同、喜んで致します。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

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