知りません

12月5日(月)

読解の時間。本文に出てきた単語の意味を確認しました。「“仕事観”って、何ですか、Lさん」と、一番後ろの席で怪しい動きをしていたLさんを指名すると、「知りません」という答えが返ってきました。これをお読みの皆さんが教師だったら、どうお感じになりますか。ほとんどの方がカチンとくるのではないでしょうか。まあ、予習をしてこなかったことに対してカチンとくることは当然として、それ以外にカチンとくる要因は何でしょう。

これは、「知りません」と「わかりません」の違いにあります。「“仕事観”って、何ですか」「わかりません」だったら、カチンの度合いも低かったと思います。

この場合の「わかりません」は、“考えたけれども答えが得られませんでした”という裏側の意味を隠し持っています。曲がりなりにも考えたのですから、しかたがないやという気になります。

しかし、「知りません」は、「情報を持っていません」と主張しているにすぎません。私の質問に対して考えもせずに情報の有無で答えたことに対して、カチンときたのです。読解のテキスト中の言葉なのですから、及ばずながらも考えろと言いたくなります。

日本語学校には、こう答えてしまう学生がおおぜいいます。教師は、自分の頭の中にある自動翻訳機で「知りません」を「わかりません」に置き換えて、腹を立てる前に意味を理解してしまいます。授業を早く進めたいならこれでいいですが、来年進学するつもりでいるLさんには、一言モノ申さずにはいられませんでした。大学の先生にそんな答えをしたら、その授業の単位は絶対にもらえないぞと脅しておきました。へそを曲げる教授がいても、全く不思議ではありません。

「知りません」と口走りそうな面々が、必死にメモを取っていました。

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