真っ赤な例文帳

4月23日(木)

授業で扱った文法や語彙を使うチャンスを与えるために、毎日のように例文を書かせています。同時に、文法や語彙が定着しているかどうかも見ることができます。そんなに御大層な文である必要は全くないのですが、気の利いた文を書いてくる学生もいればこじ付けみたいな文を作ってくる学生もいます。こういうあたりにセンスというか吸収力というか、まあ言ってみれば伸びていけそうかどうかの差を感じます。

センスのある学生は、自然な場面設定ができます。課題となっている文法や語彙がどんな場面や状況で使われるのかを的確に把握し、それに具体性を持たせることができます。そして、自分の現有の語彙や文法でそれを文として表現するのです。

一方、センスのない学生は、特異な例しか想像できなかったり、妙な勘違いに捕らわれてそこで頭が固まってしまったりしています。あるいは教科書や教師が提示した例文の亜流を作るのがやっとです。さもなければ、想像力がたくましすぎて、一般庶民の頭ではついていけないような文を作ります。

センスのある学生は、たとえ使い方が間違っていても、ちょっと方向性を示唆すれば自力で軌道修正できます。センスのない学生は、結局、間違いを何度も直されながら時間をかけて覚えていくしかないのです。語学の速習法なんていうのは、所詮はセンスがある人たちにしかできません。

だから、私たちは学生たちに間違える機会をいかに多く与えるかに腐心すべきなのです。作文でも会話でも何でもかんでも、間違える舞台をどんどん用意して、そこで思う存分躍らせて、最初に習ってから半年とか1年とかかけて、真の意味での定着を図っていくのです。

今学期私が受け持っている初級クラスの学生たちは、「上手」になるためにはまだまだ泣いてもらわなければなりません。明日もまた、真っ赤に添削された例文シートが学生の手元に返されます。

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