敵は漢字だ

12月21日(水)

Pさんは理科系の大学進学を考えていました。受験講座も取りました。しかし、勉強したのは夏まででした。ネックになったのは、漢字でした。漢字の読み書きがどうしてもできませんでした。理科系の受験講座の資料なんて、図表や数式、反応式が多くを占め、大した量の漢字があるわけではありませんが、Pさんには大きな負担になっていたようです。

話す・聞くにかけては、Pさんはクラスでもトップを争っています。いや、2つぐらい上のクラスに入っても、決して負けることはないでしょう。本人も自信を持っているようで、それが態度に現れます。目を合わせて堂々とやり取りをします。教科書を読ませたときのおどおどした顔つきと、とても同一人物とは思えません。

そのPさんのクラスに、期末テストの試験監督として入りました。最初は作文。課題文はグラフが多いので、何とかなるでしょう。…などと思いながら教室内をうろちょろしていたら、Pさんが真っ先に提出しました。原稿用紙に名前が書いてあることを確認し、既定の文字数以上になっているか見ようとしたら、原稿用紙の大半がひらがなではありませんか。「日本」などという表記が、ちらっと目に入った程度でした。

次は読解、文法。やはり、一番に提出ですが、今度は空欄が目立ちます。読解の問題テキストは授業でがっちりやっているんですが、ふりがながないと皆目わからないようでした。文法も同様で、選択肢の問題はどうにかなったものの、短文作成などは沈没でした。

最後の漢字・語彙は言うに及ばず。明らかに勉強していません。捨てていると言ったほうがより正確です。

入学試験においてもきっとこんな感じでしょう。EJUは漢字が読めずに問題が理解できず、大学の独自試験に小論文などあろうものならお手上げに違いありません。面接の評価が素晴らしかったとしても、合格には至らないのではないかと思います。

漢字さえ勉強すればと思いますが、その漢字の勉強がPさんにとっては苦痛以外の何物でもないのです。こういう学生に勉強させてくれる大学、ないのでしょうか。

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