ためはだめ?

1月4日(木)

年末年始の休みに、とあるローカル線に乗ったときのことです。ローカル線ですから単線で、上下列車のすれ違いは、走りながらではなく駅に止まってします。そのすれ違い駅に着いた時、車掌さんが「反対列車との待ち合わせのため、しばらく停車いたします」とアナウンスしました。ほどなく反対列車が来ました。すると、「反対列車到着のため、間もなく発車いたします」というアナウンスが聞こえてきました。

最初のアナウンスは全く違和感がありませんでしたが、発車時のアナウンスを聞いた時には、思わず「へっ?」と言っちゃいそうになりました。「反対列車が到着いたしましたので、間もなく発車いたします」だったら何ら問題はありませんでしたが、「ため」はだめですねえ。

「ため」も「ので」も、接続の形は違いますが、理由を表すことには変わりありません。最初のアナウンスも、「反対列車との待ち合わせをいたしますので~」と言っても、意味も変わりませんし、乗客に対して失礼にも当たりません。でも、なぜ、反対列車が到着した後のアナウンスは、「ため」だと違和感たっぷりなのでしょう。

「文法が不合格のため、進級できません」「全科目合格のため、進級できます」

「雨天のため、予定を変更します」「晴天のため、予定は変更しません」

「電車が遅れたため、遅刻しました」「電車が遅れなかったため、授業に間に合いました」

…どうも、「ため」は、予想外の事態が発生したり、いつもとは違う結末を迎えることになったりした場合に有効みたいです。また、どちらかというと、自分にとって不都合な結果になったときのほうが、相性がいいような感じがします。上記3組の文のうち2番目の文は、もしこれらが言えるとしたら、全科目合格するとは思っていなかったとか、雨という予報だったので予定変更を関係者に連絡しておいたとか、遅刻を覚悟していたのにかろうじて間に合ったとか、それぞれ順当な結果ではなかったニュアンスが感じられます。いずれもレアケースでしょう。

反対列車が到着したことで自分の列車が発車できるということは、予定されていたことであり、不都合なことでもありません。私の違和感の根っこは、こんなところにあったのだと思います。

では、車掌さんはなぜ「ため」を使ってしまったのでしょうか。おそらく、「ため」の持っている改まった感じにひかれたからではないかと思います。「反対列車が到着いたしましたので~」よりも「「反対列車到着のため~」の方が硬い言い方で、車内アナウンスにふさわしいと思ったのでしょう。

さて、仕事始め。いきなり、養成講座の文法の授業でした。今年も、文法を考えながら過ごす1年になりそうです。

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