Category Archives: 社会

入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。このように多くの方々が世界中からこのKCPに集まってきてくださったことを大変うれしく思います。

今年は2025年、令和7年、そして、昭和100年です。今ここにいらっしゃる新入生のみなさんは、大多数が日本で言う平成生まれでしょう。昭和はその前の時代、みなさんのご両親がみなさんぐらいの年か、あるいはもっと若かった、幼かったころの年代です。

その昭和が始まったのが1926年、この年を昭和1年(元年)とすると、今年は昭和100年となります。そういうわけで、今年は昭和を回顧する催しが数多く行われることと思います。せっかくそういう記念すべき年に日本へ来たのですから、今の日本だけではなく、昔の日本についてもぜひ知ってもらいたいと思います。

殊に、日本で就職しようと思って来日した方にとっては、昭和を知ることは就職した後のみなさんの仕事ぶりに好影響をもたらすに違いありません。それは、就職先の経営者や上司、あるいは取引先や折衝先の方々など、みなさんにかかわりのありそうな人たちは、多かれ少なかれ、昭和の色に染まっているからです。つまり、昭和を知るということは、みなさんを取り巻く人たちの発想や行動様式の根源に迫るということなのです。

そして、もうしばらくは、日本の社会をけん引するのは昭和テイストの人たちです。それゆえ、なおさら、昭和の時代を知らずにいることはできません。また、日本は少子高齢化が進みつつありますから、これからも若者が減り、高齢者が増えていきます。そのため、日本で商売をするとなると、マーケットのボリュームゾーンである昭和の人たちの心をつかむ必要があります。

進学を考えている方にしても同じことが言えます。特に人文科学系、社会科学系の分野に進もうと考えている方は、それらの学問の基盤は昭和にありますから、昭和が令和に与えている影響を無視することはできません。そういう方面の研究の屋台骨を支えていらっしゃる先生方の頭に、昭和はしっかり息づいています。

そのような昭和という時代がどんな時代だったか知るチャンスが、昭和100年にまつわる様々なイベントという形で、みなさんの目の前に現れるのです。これを逃す手はありません。2025年、昭和100年という節目の年に日本に来ていることを存分に活用してください。

とはいえ、昭和は64年まであった長い時代です。さらには戦争の期間を含んでいますから、昭和の時間は一様に淡々と流れて行ったわけではありません。それをつぶさに見ていき、それなりに理解していこうというのは、決してたやすいことではありません。しかし、だからといって、手をこまねいていては、得るものの少ない留学になってしまいます。難題に立ち向かって手にしたものこそ、真の意味での留学の成果であり、それこそがみなさんの未来を切り開く武器となりうるのです。

みなさんのまわりには、私をはじめ、昭和を知る教職員が大勢おります。直接は昭和を知らない若い感覚を持った教職員もみなさんを見つめております。どうか、安心して留学生活を始め、大きな成果を手にしてください。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

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初めて見ました

12月26日(木)

年末年始の休みの軍資金を下ろしにATMへ。休みが迫っているから混んでいるかなと思ったら、お客さんは1人しかいませんでした。待つこともなく、用が済みました。ATMから出てきたお札をよく見ると、なんと渋沢栄一さんがいるではありませんか。北里柴三郎さんの1000円札は10月ぐらいにお目にかかりましたが、新しい1万円札は、来週はもう来年という押し詰まったこの時期に及んで、ようやく出会えました。

ずいぶん前から、現金を使わなくなりました。1万円札を使うのは、nanacoのチャージの時ぐらいでしょうか。万単位の買い物はカード払いだし、それよりもう少し少額だったらnanacoやpasmoだし、結局現金を使うのは神社仏閣のお賽銭と八百屋さんと金券ショップで図書カードを買う時ぐらいのものです。とはいえ、いざという時役に立つのは現金だといまだに信じていますから、お金を下したというわけです。

私が新入社員の頃は、社会人になったら年齢×千円の現金を常に財布に入れておけと教えられました。つまり、25歳なら2万5千円、30歳なら3万円となります。今の私なら、6万円以上財布に入れておかなければならないという計算です。そんなにあったら、半年ぐらいはもっちゃいそうです。

年末年始休みはまた名古屋まで行ってきますが、交通費や宿泊代はカードで済ませます。この時期は、博物館などはお休みですから、野山を歩くことになります。そうすると、また現金を使うチャンスがなさそうです。

新しい千円札と一万円札は手にすることができましたが、五千円札は、一万円札を使って三千円ぐらいの買い物をし、そのおつりとして受け取る以外にお目にかかるすべがありません。発行一年後の来年七月三日までに出会えるでしょうか。

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授業が終わったら

12月24日(火)

お昼に外に出ると、“恋人がサンタクロース”など、クリスマスソングが流れていました。しかし、私は養成講座の2024年最後の授業でした。

授業の内容は、テスト結果の分析でした。とかくクラスの平均点を出してお茶を濁しがちですが、それでは本当にお葉を濁したにすぎません。平均点はクラスの得点分布が正規分布(きれいな山型の分布)をしている時に意味をなし、その形が崩れれば崩れるほど意味をなさなくなります。中級クラスで言えば、毎日行っている漢字の復習テストなどは満点を取って当然のテストですから、日々の平均点の変動を見てもあまり意味がありません。

中間テストや期末テストは、学生の実力を見る意味合いもありますから、正規分布に近い分布をしてもらいたいところです。しかし、そうは問屋が卸しません。大きな山のほかに、極端にできない学生の山ができてしまうことがよくあります。平均点でクラスを評価しようとすると、できないグループの数名が足を引っ張ってしまい、クラスの実態を正確に表さないことがあります。そういう場合には中央値や最頻値を用いるとか、分布の全体像を見比べるとか、いろいろな手があります。

そんな話を、EJUやJLPTの実際のデータも交えてしていきました。この授業資料を作る際に私自身も新たな発見をし、勉強になりました。

今年の養成講座の授業はこれで終わりですから、受講生のAさんはそのままご実家に帰省なさるとか。新年早々ハードな授業が始まりますから、心身ともに十分に休んできてもらいたいです。今頃(18:03)は、もう、ご家族とクリスマスパーティーをしているころでしょうかね。

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昨日の試験

11月18日(月)

昨日は汗ばむほどの日和で、日中は腕まくりをしていました。そんな中、第1回の日本語教員試験が実施されました。私は経験とか今までに取得した資格とかの関係で昨日の試験は免除でしたが、KCPの先生の中でも何名かの方が受験されました。

O先生の試験会場は、私が学生時代に住んでいたアパートの近くのビルでした。すなわち、築半世紀近い建物です。しかも、元地元民からすると、そのビルはどう考えても試験会場向きではありません。倉庫とか大安売りの会場とかという印象しかありません。取り壊して建て替えるという噂も耳にしていたのですが、ネットで調べたら、とりあえずその計画はなくなり、リニューアルされたそうです。でも、そう遠くない将来、そういう方向に進むとも報じられています。

要するに、老朽化した、試験会場向きとは言いかねるビルで試験が行われたのです。それに加え、長机に詰めて座らされ、その気になればカンニングし放題だったというではありませんか。また、O先生の試験室は、音響設備が不十分で、聴解問題がよく聞こえなかったそうです。同じ部屋の他の受験生は、全然聞き取れなかったと嘆いていたとか。そりゃあそうですよ、体育館みたいなところなんですから。

トイレの数も不足していて、休憩時間内に用を足すことができなかった人もいたそうです。休憩時間は15分でしたが、回収した答案用紙と問題用紙の数の点検に時間を要し、実質的には数分だったようです。大安売りの会場なら、多少お客さんが多くてもトイレ利用は分散しますから、トイレの数はさほど多くなくてもどうにかなるでしょう。しかし、試験会場となると、休憩時間にトイレ利用が集中します。そんな計算もせずに、単に面積だけで会場を借りたのでしょうか。尿意をこらえながら試験を受けた人が実力を発揮できなかったことは、想像に難くありません。そういう方の心中は、いかばかりでしょう。

“日本語教師の質を担保する国家資格”という触れ込みだったはずですが、そんなご立派な試験が、こんなひどい環境で行われたのです。看板倒れもいいところです。国が日本語教育をいかに軽視しているかがよくわかる試験でした。

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合格発覚?

11月5日(火)

「先生、中間テストの後で大阪へ行きたいんですが、いいですか」「受験で?」「いいえ、うちを探すんです」…と、Lさんが授業直後に聞いてきました。Lさんが受験するのでO先生と面接練習をしているのは見かけましたが、どこかの大学に受かったという話は聞いていません。さらに、「先生、2月に京都に引っ越ししたいんですが…」「KCPの卒業式が3月10日ごろにありますから、それまではずっと出席してもらわなければ困ります」…と答えたものの、Lさんはどこの大学に進学するのでしょう。確認を取りたいところでしたが、追試を受けたいという別の学生の世話もしなければならず、また、すぐ次の授業が迫っていましたから、「3月10日ごろですか…」と半分納得したようなLさんの声を聞いたところで見送りました。

夕方、Lさんの担任のH先生にこのやり取りを報告すると、そばで聞いていたO先生が、「えっ、それは大阪のK大学に受かったっていうこと? 私の所には一言も報告がないんだけど」と、やや不満げな表情でおっしゃいました。Lさんが、合格したのにO先生に黙っていたとすれば、義理を欠いていると言わざるを得ません。ちょっと抜けているところのあるLさんのことですから、問い詰めるまでもなく「はい、K大学に合格しました」と言っちゃうんじゃないかと思います。

Lさんに悪気があるとは思えません。O先生に対して感謝の気持ちも抱いていることでしょう。しかし、自分の合格を誰よりも喜んでくださるのがO先生だというところまでには、思いが至っていないのでしょう。“お世話になった”という感覚がないことはないでしょうが、それに対する何よりのご恩返しが合格の報告だとは気が回っていないのです。

そういう気づき方というのでしょうか、気の回し方というのでしょうか、う~ん、学生と食い違っていることがよくあるんですよね。同じことを日本語学校以外でやらかしたら、相当強い風当たりがあることでしょう。そういうことまで教科書に載っていない事柄まで教えるのが、日本語学校なのです。

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寒さ、夏服、人新世

10月10日(木)

このところ、急に涼しくなりました。今朝なんか、厚手のジャケットを着ている人や、首にスカーフをまいている人を見かけました。夏物のスーツの私は、外に出た瞬間、寒いと感じました。私が出かけた頃の気温は15度台だったようですから、コートを着ていてもおかしくないくらいでした。

暑さが収まったのは結構なことですが、このところの雨は秋雨前線のなせる業です。10月10日といえば60年前の東京オリンピック開会式の日、きれいな秋晴れの日でした。秋雨前線は、今頃東京近辺をうろちょろしていてはいけないのです。半月ぐらい秋の歩みが遅れていると言ってもいいでしょう。

しかも、天気予報によると、明日からまた夏日が復活しそうな雰囲気です。せっかくスーツの上着がありがたいところまで季節が進んだかと思ったら、また半袖が懐かしい日々に戻るのでしょう。夏物のスーツには、もう少し活躍してもらわなければなりません。

「1950年代から、地球は“人新世”に突入した」という提案が国際地質化学連合に出されましたが、この3月に反対多数で否決されました。人新世は気候変動だけを意味するわけではありませんが、それも含めた地球の変化を指します。秋が消滅しそうな日本は、人新世になっていると言ってもいいような気がします。

この人新世の真骨頂は、人が住んでいないような地域の地層からもプルトニウムが検出されたというところにあります。1950年代に世界中で行われた核実験の結果、プルトニウムが全球的に飛び散り、それが堆積したのです。いやはや恐ろしい限りです。

今学期のBBQは10月25日ですが、「秋」晴れの日にしたいものです。

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たかのやま

9月25日(水)

期末タスクの発表会をしました。この日のためにここ1週間、毎日調べ物をしたり発表原稿を作ったりそれを発表する練習をしたりしてきました。その成果をクラスメートの前で発表するのです。

タスクの内容は、数名のグループに分かれて、ある県について調べ、それを発表するというものです。私のクラスは、愛知県、鳥取県、和歌山県、熊本県、青森県が取り上げられました。この中で、愛知県は知らなくても名古屋走っている学生は多いでしょうが、他の県は初めて知ったという学生が大半だったのではないかと思います。

それでいいのです。知ったら、興味を持ったら、さらに調べて、できれば現地に赴いて直接見て聞いて触ってくることをしてもらいたいのです。東京以外は北海道と大阪と京都と沖縄しか知らないのでは、日本に留学している意味がありません。友達の発表を聞いて、日本の多様性に気付いてほしいのです。

学生の聞いている態度を見る限り、自分の担当以外は無関心ということはなさそうでした。何か引っかかるものを見つけたようです。“高野山”を“たかのやま”と読んでしまうなど、不正確な情報もありましたが、津軽弁の動画に笑いこけたり、太平燕の写真に目を輝かせたり、印象に残る情報もあったと思います。

今回は1グループ10分ということだったのですが、どのグループも制限時間を大幅に超えてしまい、発表が終わったのは授業終了時刻を15分もオーバーしていました。でも、誰一人として時計を気にすることなく、最後まで発表に耳を傾けていました。話す方も聞く方も、成長したなと思いました。

さあ、明日は期末テストです。進級がかかります。

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静かな授業

9月18日(水)

私のクラスは期末タスク真っ盛りです。数人のグループになって、各メンバーが与えられた課題についで調べ物をして、それを総合して発表します。昨日から始まったばかりですから、まだ調べ物の段階です。このクラスの学生はよくしゃべるのですが、調べ物の最中は水を打ったように静まり返っていました。鉛筆を動かす音の分だけ、テスト時間中の方がうるさいくらいでした。今どきの学生は、スマホで何かしている時が、一番精神集中できるのでしょうか。

今回のタスクは、ある県についていろいろな角度から調べて発表するというものです。グループ内で役割分担を決めて、各自が調べた結果を持ち寄ってパワーポイントを作り、発表します。もちろん、そこで使うべき(使ってほしい)表現や語彙は、今学期の授業で入れています。ですから、ただ単に調べ物をすればいいという問題ではありません。ネットに書いてあることをそのまま丸写しして発表しても、点数は付きません。それを自分なりに咀嚼して、理解できたことをクラスメートにわかるように伝えるという点に主眼があるのです。

同時に、クラスメートの発表を聞いて、新たな知見を得ることもまた、この期末タスクの目的です。学生が知っている都道府県と言えば、1都1道2府と沖縄県ぐらいでしょう。埼玉県は春に行った川越をピンポイント的に知っているくらいでしょうか。例えば鳥取県などという学生にとって縁遠い県について調べたり、その結果を聞いたりしたら、それはそのまま学生たちの視野が広がることにつながります。

調べ物の最中の静けさが、知的好奇心爆発の前兆現象であることをひそかに祈っています。

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何の名月?

9月17日(火)

今晩は中秋の名月です。しかし、日中の最高気温が33.4度では、到底“秋”とは呼べません。昼間の青空の色はいくらか秋めいてきたかに感じますが、蒸し具合はまだまだ夏です。ですから、中秋ではなく、せいぜい晩夏の名月ですね。明日の朝の予想最低気温は26度となっていますから、熱帯夜で迎える中秋の名月となりそうです。そういえば、ススキは穂を出しているのでしょうか。

昨日、おとといあたりは各地でお祭りが行われました。9月の半ばですから秋祭りのはずなのですが、おみこしを担いだり山車を引いたりする人たちにとっては、熱中症に気を使いながらの夏祭りそのものだったでしょう。私が見かけたお祭りも、大汗かきまくりのまさに夏祭りでした。

しかし、週間予報によると、今週末は最高気温が30度を下回るそうですから、その通りならまさに“暑さ寒さも彼岸まで”です。それでも、平均気温に比べるとだいぶ高いのですがね。10月になったらクールビズが終わって、またスーツ姿に戻ることになっていますが、果たして戻れるでしょうか。夏装束をもう半年延ばした方がいいでしょうか。考えどころです。

今年は本当に異常気象だったと思います。お米をはじめとした農作物の実りはどうなのでしょう。どれもこれも不作となったら、冷害ならぬ“暑害”とでも呼ばなければなりません。すでに、昨年、お米は品質がガタッと下がっていますから、“暑害”は既に顕在しているとも言えます。ある種の魚の不漁も、その一つでしょう。

地球温暖化は、もう戻れない一線を越えてしまったのかもしれません。

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熱帯化

8月31日(土)

台風10号は、潮岬の沖から、三重県、滋賀県、福井県方面に北上しそうな予報が出ています。関東地方へは来ずに低気圧になりそうです。しかし、雨を中心とした影響は、数百キロ離れた関東地方にも及び続けるようです。直撃こそ免れそうですが、油断はできません。

台風10号の元になる熱帯低気圧が生まれたのは、私が福岡を歩き回っていた21日でした。発生の頃は、26日か27日に関東地方を襲うようなことが言われていましたから、福岡のホテルで休校するかどうか判断しなければならないかもしれないと覚悟をしていました。帰りの飛行機が飛ぶかどうかまで心配しました。

しかし、当の台風はのんびりちんたら迷走し出し、九州の南へと向かい、上陸したのは、おととい、鹿児島県薩摩川内市でした。その後も千鳥足の歩みで今に至っています。夏休みが1週間遅かったら、ホテルに缶詰めになっていたかもしれません。

このような台風の進路も地球温暖化の影響だそうですが、私が注目しているのは、日本近海で熱帯低気圧が発生していることです。日本付近においては、寒気と暖気が衝突して発生する温帯低気圧は、四季を問わず佃煮にするほど生まれていますが、高い海水温を必要とする熱帯低気圧は、そう簡単に生まれるものではありませんでした。それが気安く発生するようになったということは、海水面が熱くなっているということです。また、最近頻発しているゲリラ豪雨は、夕立ではなく、熱帯のスコールを思わせます。

仕事の合間に空を見上げると、雲がけっこうな速さで流れていました。今は風も弱く雨も降っていませんが、まだまだ気を抜くわけにはいきません。

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