Category Archives: 社会

人生の分かれ道

3月2日(月)

子:俺、会社に就職はしない。バイトしながら、もう少し頑張って、漫画を描いて絶対プロの漫画家になる。

父:世の中そんなに甘くないぞ。お前ぐらいの実力じゃ、プロになるのは無理だ。

…なんていう親子喧嘩のやり取りを聞いて、グループに分かれて自分の意見を言い合うという活動をしました。

KCPの学生は、数年間働いてためた自己資金を元手にしている人もいますが、多くの場合、留学のスポンサーは親です。親を説得してという学生もいれば、親に命じられてという学生もいます。親子でじっくり話し合って、納得ずくでというパターンが一番多いように思えます。

話し合いの結果を聞いてみると、親の意見が正しいと考える学生が若干優勢でした。教材に取り上げられた例が漫画家で、その道の厳しさは学生もよく知っています。ネットビジネスとかだったら、違った反応を示したかもしれません。

私が大学の志望校を決める時、最初は気象大学校に行きたいと親に言いました。親は、「気象大学校に進学したら、将来は気象庁に入る以外道はない。気象庁に入ったら日本列島のはずれの島の測候所で、1人で1年中観測し続けなければならないかもしれない」と反対しました。要は、つぶしの利く進学先を選んでおけと言いたかったのでしょう。

私はあっさりその言葉に従い、理科系の中では実につぶしのきく学科に進みました。つぶしが利きすぎて、エンジニアからスピンアウトして、こんな仕事をしているという次第です。これが、気象大学校に進むより、私にとって幸せだったかどうかはわかりません。気象大学校コースだったら、今頃、お天気おじさんか何かになっていたかもしれません。まあ、大失敗の道ではなかったと思っています。

学生たちが数十年後、この日本留学を振り返った時、どう思うでしょう。親の意見に従って、あるいは、自分の意見を押し通して、日本留学をしたおかげで充実した人生が送れたと思ってくれるでしょうか。

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性懲りもなく

2月18日(水)

今学期も、後半戦に突入しました。初日は、ぎりぎり遅刻2名、大遅刻1名、欠席2名。最初の頃は発言が少なく雰囲気が重かったのですが、授業が進むにつれて次第に口が滑らかになってきました。最後は質問が多く出て、かろうじて予定通りのところまで進められたというくらい、元気になりました。

いい気持ちで職員室に戻ると、3名の学生が私を待っていました。進学相談や面接練習なら気合も入りますが、この3名は学校周辺のよそ様の駐車場でたばこを吸っていたのを摘発され、説教を待っていたのです。喫煙所以外、殊に他人の敷地は、たとえ灰皿が置かれていても、たばこを吸いに行ってはいけないと指導し続けています。しかし、こういう不届き者が後を絶ちません。

なぜたばこを吸ってはいけない場所でたばこを吸ったのかと聞くと、喫煙所が遠いからだということでした。10時半の休み時間に喫煙所まで行くと、ゆっくりたばこを吸っている暇がありません。往復で10分ぐらいかかりますからね。だから、学生たちは手近なところで間に合わせようとするのです。

なぜたばこを吸うのか――たばこを吸うと元気になるそうです。頭がすっきりすると言いたいのでしょうか。中級以下の学生たちですから、こんな表現が精一杯です。夜更かしやハードなアルバイトで寝不足になり授業中眠くなったのなら、その解消のためにたばこを吸いに不法侵入された駐車場の側こそ、いい迷惑です。

3名にしたら、たぶん見つからないだろと踏んで近場でのんびりたばこを吸っていたら、運悪くKCPの教職員に見つかってしまったといったところでしょう。3名以外にも喫煙者がいて、蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったと捕まえた教職員は言っています。こういう学生たちに、よその敷地でたばこを吸ってはいけないことをわからせるにはどうしたらいいでしょう。

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さえない学生じゃなくて

2月16日(月)

午後、明日の上級選択授業の中間テストの問題を作っていると、ロビーに誰か立っていました。何か用事があるんだけど、どうしたらいいか戸惑っている学生のように見えました。しかし、たまたま事務職員がみな席を外していたので、私が出て行きました。私の目には要領の悪そうな学生に映ったのですが、よくよく顔を見ると、卒業生のCさんではありませんか。思わずずっこけてしまいました。

CさんはM大学に進学し、4年間優秀な成績で通し、大学院にも進みました。大学2年生の時から日本語教育能力検定試験を受け、4年生の時に合格しました。外国人留学生が合格するのは、稀有のことです。さらに、昨年、登録日本語教員試験にも合格し、その合格証も見せてくれました。現在は都内の日本語学校で専任講師として日本語を教えるとともに、進学指導もしています。明日が春節で、その前後1日ずつが休みなので、こちらに顔を出してくれたとのことでした。

こぼす愚痴の内容も私たちとあまり変わらず、すっかり日本語学校の日本語教師になっていました。いろいろな公務を次から次と任されて、忙しくてたまらないとも言っていました。若手のホープだからこそ、仕事が回ってくるのです。“忙しい奴=有能な奴”という方程式があり、“大事な仕事は忙しい奴に回せ”とも言われています。有能な奴のところに仕事が集まるというこの状況を、“仕事の万有引力の法則”と私は秘かに呼んでいます。

国へ帰る気はないとCさんは言っていますが、国へ帰って日本語学校を立ち上げられるくらいの力はついたんじゃないかなあ。このぐらいいろいろな仕事をさせてもらっているのなら、早晩それだけの実力が身に付くはずです。どんどん鍛えてもらって、将来へと向かう道幅を広げておけばいいと思います。次に会うときは、日本語学校の校長先生でしょうか、経営者でしょうか…。

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鬼は外と漢字

2月3日(火)

節分です。中級クラスは授業の後半から日枝神社へ豆まきを見に行きました。しかし、火曜日の私は上級クラス担当で、出かける中級クラスの面々を横目に、選択授業で上級の学生に漢検の練習問題を解かせていました。月曜と水曜は中級担当なんですが、今年の節分は、残念ながら、ちょうどその真ん中でした。

さて、その漢検の授業ですが、自ら積極的に漢検の授業を選んだ学生と、消去法で漢検の授業が残って、しかたなくこの授業を取った学生とが如実に分かれます。消去法組は教室の後ろの方に座ります。積極組は前の方に陣取ります。問題用紙を配ると、消去法組は読み書き問題から取り組みます。しかも、スマホで調べながら。積極組は部首とか同音(訓)異字とか誤字訂正とか、スマホが使いにくい問題、頭を使う問題に、まず取り組みます。

スマホで調べながら漢字の読み書きの問題をしても、あまりいい勉強にはなりません。漢字熟語を語彙として覚えていくのであれば話は違ってくるでしょうが、私の目の前でスマホをいじっている学生にはそれだけの気迫が感じられませんでした、

一方、積極組は周りの学生と相談しつつも新しい課題に果敢に向かって行きます。Tさんはかたくなにスマホを使おうとしませんでした。あくまで自力で解くというのは、今時、タイパが悪いとされそうですが、深いところで理解した事柄は、記憶に残るものです。私に質問してくるのは、もちろん積極組です。

日枝神社の豆まきと学校での漢字の授業と、学生にとってどちらが勉強になったでしょうか。消去法組は、鬼は外の方がよかったのかな…。

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冬晴れ税

1月29日(木)

東京に冬晴れ税をかけたいね――なんていう川柳が新聞に出ていました。諸色高騰の折、新たな税金までかけられたらたまったものではありませんが、積雪により経済停滞や除雪による経済負担が全くと言っていいほどない東京が、雪で困っている地方に仕送りをするくらいあってもいいような気もします。今シーズンは、雪があることが前提で町がつくられている札幌ですら、交通機関が止まったりお店屋さんに商品が届かなかったりゴミ収集が滞ったりなど、かつてないほどの混乱に陥っています。

ニュースや天気予報でこういった大雪の影響が報じられていますが、冬晴れ地域の最たるところ・東京の住民は、今一つ実感が伴わないというのが本音でしょう。札幌まで行かなくても、東京駅から新幹線に乗って1時間か2時間のところでも、平年を大幅に上回る積雪量になっています。困っている人を見かけたら救いの手を差し伸べるという考え方なら、東京が冬晴れ税を出すのが当然とも考えられます。もっとも、目の前の雪をどうにかするには、お金よりも労働力かもしれません。人手不足が顕著な昨今ですから。

大雪のため、8日に行われる衆議院選挙の投票時間を短縮するところも多数あるそうです。ここまでくると、この解散・総選挙によって、国民の真意・総意を測れるのだろうかと思えてきます。冬晴れ地域の東京の住民はもともと政治に無関心な層が分厚いのに対して、自分たちのまちを何とか活性化したいと切実に思っている人たちが多い地域ほど、この大雪の影響が選挙に色濃く出そうな気がします。どの政党が勝っても、国民の声が正しく反えされた議会にはならないのではないでしょうか。

高市さんは私と同額年ですから応援してあげたい気もしますが、今回は早まっちゃったかな。

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流血

12月19日(金)

私は、朝、新宿御苑駅から外に出た時から仕事モードに入ります。そこから学校までの数分間で、その日の仕事の流れを考え、いつどこで何をするか決めます。予定外のことが入ってきたり、やり始めたら意外と難事業だったりすることもあるので、その通りにいかない日の方が多いくらいです。でも、大外れにはなりません。基本ラインを決めることで、効率的に動けるような気がします。

今朝も、期末テストの前にあれしてこれして、午前の試験監督をしながらあれしてこれして、昼の時間にあれしてこれして…と予定を組み立てながら歩いていたら、突然、思いっきりこけてしまいました。一瞬何が起こったかわかりませんでした。車道と歩道の境目に立っている、腰の高さほどのポールに衝突して、でんぐり返しをしてしまったのです。私の出勤時間帯は日の出のはるか前ですから、考え事をしていた私の目は、ポールをとらえられなかったのです。

目尻を道路にぶつけ、どうやら血が出ているようでした。学校のすぐそばですから、そのまま学校まで行き、荷物を置いてトイレの鏡を見てみると、傷口から血が流れ出ていました。除菌シートで血をふき取り、ある程度血が止まってからコンビニで絆創膏を買い、傷口に貼りました。

そんな姿で試験監督の教室に入ったら、選択授業の小論文クラスで毎週顔を合わせているSさんが「先生、どうしたんですか」と気の毒そうな顔をして声をかけてくれました。午後の試験監督はレベル1でしたから、私の顔が変だと気づいてはいたものの、どう声をかけていいのかわからなかったのでしょう。見て見ぬふりをしているような視線を感じました。夕方、歯医者を予約していましたから歯医者に行くと、先生から「どうしたんですか」と聞かれました。どうやら、各方面にご心配をおかけしたようです。

私は歩きスマホはしませんが、考え事は歩きスマホと同じくらい危ないと、身をもって知らされました。これから、気をつけます。

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ビジネスパーソン登場

12月18日(木)

今学期最後の授業を終え、職員室で明日の期末テストの問題を作っていると、卒業生のNさんが、パリッとしたスーツ姿で現れました。有能なビジネスパーソンといった趣でした。就職が内定したという報告に来てくれました。再来年の入社だそうですから、厳密には内々定かもしれません。いずれにしても、日本の会社で働くことが決まりました。

Nさんが内定を決めたS社は、その業界では超一流企業であり、知らない人はいません。日本人の大学生を押しのけて勝ち取った内定は、価値があります。それは何よりNさんのしゃべりっぷりによるところが大きいでしょう。外国人特有のアクセントやイントネーションは感じられず、Nさんを知らない人が聞いたら、せいぜいどこかの方言が少し交じっているのかなと思う程度で、外国人が話しているとは思わないでしょう。

大学の授業やゼミなどで相当鍛えられたのだと思います。Nさん曰く「日本語は当たり前のことしかやってこなかった」なのですが、それがなかなかできないのです。今の在校生の大半は、当たり前ができていません。まじめに課題に取り組む、忘れずに宿題をする、教科書をきちんと読む、こういった基本動作ができない学生が多くて困っています。A先生やH先生は講演会を開こうと言っていましたが、本当にそうです。私たちの言葉より、成功した卒業生の実体験談の方が、学生たちの心に響くと思います。

今学期受け持ったレベル1のクラスでも、学期が始まった頃は口が回らずとんちんかんなことばかり言っていたYさんが、今では成績上位になりました。出席率100%、宿題提出率100%、毎日全力で授業を受けました。10月にYさんのとんちんかんを笑っていた学生たちは、見事に抜き去られてしまいました。

YさんがNさん2世になれるかどうかは、今学期のような勉強を来学期以降も続けられるかどうかにかかっています。ぜひとも卒業まで続けてもらいたいです。

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歓声に包まれて

12月12日(金)

8時過ぎに私が新百合ヶ丘の駅に着くと、すでに数名の学生がいました。その後も三々五々、学生が集まってきました。外は寒いと言って、駅のコンビニに逃げ込む学生もいました。8時半ごろ、第一陣の学生がK先生に率いられて出発しました。私はコンビニの中の学生に声をかけて、第二陣として、国際交流授業の行われる神奈川県立麻生高校に向かいました。

控室に充てられた部屋は進路相談室みたいな教室で、大学の資料や赤本がたくさん並べられていました。それ以外のスペースは生徒が1人きりで集中できるブースになっていました。大机が並んでいるKCPの図書室とはだいぶ雰囲気が違いました。欠席者がいたので人数調整をし、高校の各クラスから迎えに来てくれた代表の生徒に連れられて、KCPの学生たちは教室へ。

麻生高校の校長先生をはじめ、幹部の方にご挨拶を済ませた後は、引率の教師は暇を持て余すことになります。授業の様子をチラ見するのも兼ねて、校舎内を見学させてもらいました。クラスごとに趣向を凝らしたイベントを企画してくださったようで、どの教室からも歓声が上がり、笑顔がうかがえました。また、社会科教室には付近で見つかった土器などが展示されていたり、理科室からは動物の骨格標本が顔をのぞかせていたりなど、随所に高校らしさを感じました。職員室前の掲示板には指定校推薦の一覧が張り出されていました。これはKCPと同じですね。

残念ながら、私は午後から学校で用事があるため、中座せざるを得ませんでした。でも、あの様子だったら、参加した学生は十分満足できたのではないでしょうか。楽しかった話をうんとして、欠席した学生をうらやましがらせてやろうではありませんか。

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人口1人増加

12月8日(月)

お昼近く、仕事をしていたら、ロビーに見覚えのある顔が現れました。KCPからW大学の大学院に進学したCさんでした。ついこの間までKCPで勉強していたような気がしたのですが、本人に聞いてみると、大学院に進学したのは2018年のことだと言いますから、7年も前の話です。でも、Cさんの顔はほとんど変わっていませんでした。人懐っこいキャラクターも、KCPにいた頃と全く同じです。

Cさん、日本人になったそうです。帰化が認められ、いろいろな手続きをし、ちょっと時間が余ったからこちらまで来てくれたとのことでした。それにしても、早いペースで帰化できたものです。大学院進学が2018年ですから、就職は2020年です。2020年と言えば日本中がマスクをして逼塞していた時です。そんな時からまじめに働き、会社でも実績を挙げたのでしょうね。学歴も高く(しかもW大学と言えば一流)、加えて勤務評定も素晴らしいtなれば、日本政府の覚えもめでたかったのでしょう。

日本語もさらに上達していました。胸を張って日本人と名乗れる話し方でした。母国の国籍を捨てるまでには葛藤もあったことと思います。母国への思いを断ち切るために日本語に磨きをかけたのかなあとも思いました。日本は、優秀な国民を1人手に入れました。

そのCさん、現在住んでいるのは東京ではなく長野県です。「長野って言っても広いけど、どこ?」と聞いて出てきた地名が、F先生の地元でした。そして、偶然にしてはできすぎですが、F先生のご実家から、毎冬恒例の、おいしい信州りんごが学校に届きました。私も真っ赤なりんごを1ついただきました。いつも通り、しばらく飾って目で楽しんでから、いただくことにします。

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心の奥底

12月5日(金)

夏休みに福岡の街を歩いていた時です。突然、不快感が襲ってきました。何がどう気に障ったのかわかりませんでしたが、ムカつくような、何かに怒りをぶつけたいような、そんな漠然と嫌な気持ちになりました。ある遺跡に向かって歩いていた時、ほんの一瞬前まではその遺跡に思いを巡らして楽しかったのですが、その楽しさが消え去り、暗雲に包まれたようでした。

原因がわからず、ちょうど赤信号に引っかかったこともあり、立ち止まってあたりを見回しました。すると、ある見覚えのある看板が目に入りました。ピーンときました。その看板に不快感の源がありそうでした。どうしてだろうと必死に思い出してみたところ、その看板は、私がネットでよく見るサイトに広告として出ていたのです。その広告はサイトを見る際に本当に邪魔くさく、いちいち消していました。そのたびに嫌悪感を抱き、だから偶然その広告が目に入った時、不快感が込み上げてきたのです。

その広告の会社の商品・サービスは、今の私の生活にはまったく無関係で、買ったり利用したりすることはありません。そういう意味では、その会社は私にとってニュートラルなのですが、ネットの広告のおかげで、ネガティブな感情が意識下に刷り込まれていたというわけです。

将来、その会社が扱っている商品・サービスを利用する機会が生じても、その会社にだけはお世話になるつもりはありません。これ以外にも、ネットの広告には悪印象しか残さないものをよく目にします。今までだって、そういう会社の品物を無意識のうちに避けていたかもしれません。私が偏屈者だからかもしれませんが、ネットに広告を出す会社さん、少しは考えてくださいね。

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