7月17日(木)
「先生、Kさんは珍しい人ですね。日本語が全然上手になりませんよ。熱心に質問するのはいいんですが、何言ってるか全然わかりません。だから、質問されるとマーカー渡してホワイトボードに書いてもらうんです」と、数学のS先生がぼやいていました。
私の化学と物理の時間にもKさんは質問しますが、質問内容がわからないということはありません。私の答えを聞いているKさんの様子を見る限り、私の答えはKさんにとって的外れではなく、質疑応答が成り立ち、コミュニケーションも取れていたことになります。
S先生と私の最大の違いは、日本語教師であるかどうかです。つまり、Kさんの日本語は、日本語教師には通じますが、そうでない人には通じないのです。日本語教師は日々不完全な日本語にまみれて鍛えられていますから、一般の方には理解できない、ひどい発音やめちゃくちゃな文法もわかってしまうのです。
Kさんは決して不真面目な学生ではありません。出席率も100%です。授業中にいい加減なことをしているとは思えません。話す練習だって、一生懸命やっているでしょう。それでも、一般人のS先生には通じない日本語しか話せないのです。
だとすると、Kさんの資質ではなく、KCPの授業のあり方の問題なのかもしれません。確かに、私たちの授業をきちんと受ければ、大部分の学生は普通の日本人にも通じる話し方ができます。しかし、Kさんのような取りこぼしも出てしまっているのです。
Kさんは今年受験です。面接や口頭試問が待ち構えています。面接官、試験官は日本語教師ではありません。今のままでは、ここで点を稼ぐことは期待できません。どうにかして、この山を越える力をつけさせるのが、私たちの仕事です。
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