9月11日(木)
日本語プラス物理の時間。「じゃあ、この例題をやってください」と言って、モニターに例題を映し出し、教室内を見て回っていると、Gさんがスマホを手にしました。「EJUではスマホは使えませんよ」と注意しても、「計算するだけですから…」とスマホを手放そうとしません。その問題、スマホのおかげでGさんは正解でした。
「次はこちらです」と別の例題を出し、しばらくすると、「先生、これはスマホでは解けません」とGさん。先ほどの問題に比べると、問題文から作られる方程式が多少複雑です。でも、1次方程式ですから、理系の受験生にとっては楽勝のはずです。Gさんが言いたいのは、未知数を求めるために式を変形するのにスマホの計算機が使えないということです。
他の学生が解き終わったようなので、解説を兼ねて楽な計算法を説明しました。「ここで4と4.2はだいたい同じと考えて、消してしまいます」と言ったら、すかさずGさんが「先生、それじゃ答えが違っちゃいます」とクレームをつけました。「もう少し話を聞いてください」となだめて説明を続けました。そして、最終的には正解の選択肢に近い数値を出しました。「EJUだったらこの程度の計算で十分です。今の私のやり方なら、スマホは要らないでしょ」と言っても、Gさんはどことなく不満げでした。
EJUの物理の計算問題は、概算ができればいいのです。せいぜい上2桁の計算で十分です。概算で出した数値に一番近い数値の選択肢を選べば、だいたいそれが正解です。だから、4と4.2を同じとみなしてもどうにかなってしまうのです。そういう計算の工夫をせずに計算機に頼って答えを出そうとしていると、本番ではひたすら筆算を続け、時間を浪費します。スマホに頼り切った頭では、筆算に時間を要することは火を見るより明らかです。
こういうずるい計算は、数字に対する勘を養うのに役立ちます。数字に対する勘が働くかどうかは、研究者にとってもエンジニアにとっても、必要欠くべからざる感覚です。そういうことを言い続けて、すでにレモンを10個一気食いしたぐらい口が酸っぱくなっているのですが、Gさんには伝わらないようです。
他の先生の話だと、他の授業時間でもGさんはすぐスマホに手を出すそうです。数字の勘を養うよりも、スマホ依存症を治療するほうが先のようです。
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