9月12日(金)
日本語プラス生物が終わると、「先生、ちょっと聞いてもいいですか」とYさんが質問に来ました。「先生、これも暗記しなければなりませんか」と、自分で買った資料集の表の中にある単語を指さします。老眼を凝らしてよく見てみると、光合成色素の一種でした。もちろん、知らないよりは知っていた方がいいですが、大学受験の段階では知らなくても支障のないものでした。「東大を受けるなら覚えたほうがいいかもしれないけど、EJUのレベルなら知らなくても関係ないよ」と答えると、「そうですか」とにっこり笑っていました。
「塾の先生が暗記しろと言ったので…」とYさんは付け加えました。塾の先生はだいたい大学生です。その光合成色素はその先生の研究分野に深くかかわっているのかもしれません。思い入れが強すぎて、うっかり「暗記したほうがいい」と言ってしまったんじゃないかとも思いました。
学問には何も考えずに暗記しなければならない、少なくとも暗記したほうが効率がいい事柄もあります。でも、理想は何回もお世話になっているうちに自然に覚えてしまったというパターンです。受験生なら、練習問題をたくさん解いているうちに頭に染みついてしまったといったところでしょうか。そう考えると、Yさんが示した単語は、頭に染みつくほど問題集に登場するとは思えません。
物覚えが悪くなり、暗記を避けたい気持ちになっているからかもしれませんが、気安く暗記で物事を解決しようという考えには素直に賛成できません。その事柄の周囲との連携や、背景まで理解することが第一です。Yさん、暗記の生物じゃ、大学に入ってから苦労しますよ。
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