上手に話せるように

6月4日(土)

今週私が面接した初級クラスの学生の何名かから、上手に話せるようになるにはどうしたらいいかという質問を受けました。毎日日本人と話すのが一番いいに決まっていますが、日本に住んでいても日本人と話すチャンスはそんなにないのが現状です。KCPは日本人ゲストを呼んで、ゲストと話すチャンスを作っていますが、それだって各学期数回の前半どまりです。

アルバイトをしても、多くの場合、職場で使われている日本語は限られていますから、学生たちが望むような会話力はつきません。居酒屋敬語と称する、日常会話や入試の面接などでの日本語とはかなり様相の違う話し言葉だけが身につく結果に終わります。

相談を受けた学生には、授業前でも後でも、職員室で先生と話す練習をしてみたらどうかと言いましたが、毎日何人もの学生の会話相手をするとなると、こちらの仕事がさっぱり進まなくなります。このアドバイスは、そういう矛盾を含んでいます。また、日本語の文章を音読してみろとも勧めました。授業中に毎日音読の練習をしていますから、その成果を応用して、多様な日本語に触れ、日本語のリズムに慣れるのです。音読チェックぐらいなら、私たちも毎日できるでしょう。

Sさんは、国にいたときの日本語の先生から、公園へ行っておばあさんに話しかけなさいと教えられたそうです。内気なSさんはこれまでその教えを実行していませんが、実行しなくて正解です。変なガイジンに話しかけられたとかって誤解でもされたら、大騒ぎになりかねません。誤解を解くのに持てる日本語力を総動員し、話す力が向上するかもしれませんが、労力のわりに効果は薄いと思います。

Sさんの先生がどんな方かは存じませんが、公園でおばあさんに話しかけて会話力を磨いたとすると、まだのどかな日本が残っていた頃に勉強なさったのでしょうね。サザエさんかちびまる子ちゃんの時代なら、公園で留学生に話しかけられても暖かく迎え入れてくれる人が大勢いたんじゃないかな。今はグローバリズムの時代と言いつつも、人を見たら泥棒と思えという発想のほうが勝ってしまっているように思えます。

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