Monthly Archives: 2月 2017

問題を抱えつつ

2月28日(火)

Sさんは来年T大学に入りたいと言っています。理系希望で、理科や数学のセンスは十分にあります。日本語は現在中級クラスですが、まだまだ伸びていくでしょう。英語もそこそこ自信があるようですから、今後変な道に進まなければ、期待してもよさそうです。

今、Sさんが一番悩んでいるのは、カタカナ言葉です。化学の問題をやらせても、カタカナで書かれている物質名がわからないために問題が解けないということがよくあります。母国語で書かれていたら解けるはずだからと言って、ここを素通りすることは絶対にしてはいけません。ここをいい加減にしたまま進んでいくと、T大学のはるか手前で沈没してしまうでしょう。そういう学生を山ほど見てきましたから、Sさんを上手に育てていきたいと思っています。

Cさんは大学で遺伝の研究をしたいと思っています。そういう方面の知識量はかなりのもので、高校を卒業したばかりとは思えないほどです。しかし、日本語がネックになって、その知識を生かせずにいます。私が説明すると、「先生、ちょっと待ってください」と言って、しばらく反芻してから「わかりました」とにっこり笑うのが常です。これでは、試験で実力を発揮することは至難の業でしょう。夢を叶えるためには日本語力をどうにかしなければならないのですが、Cさんは日本語の勉強はあまり好きではないようです。自分の好きな生物や化学の勉強に走ってしまう毎日で、宿題をしてこないとか、テストの成績が悪いとかで、クラスの先生によくしかられています。

SさんもCさんも、そのほかHさんもGさんも、みんな私にとっては期待の新人ですが、みんなそれぞれ問題を抱えています。その克服に少しでも力を尽くしていくつもりです。

下から上まで

2月27日(月)

午前中が一番上のクラス、午後は一番下のレベルのクラスの代講と、ジェットコースターのような1日でした。午前中は四字熟語とか五行歌とか挫折とは何ぞやとかやっていたのですが、午後は「~てもいいですか」の練習からでした。しかし、このような基礎のいい加減な学生が上級にも山ほどいます。特に、テストの点数だけはそれなりと取るけれども、話したり書いたりすると日本語が崩壊している学生を見ていると、どこでどういう勉強をしてきたのかわからないけれども、こいつの日本語は武器になっていないなと思います。

言語は、ごく少数の例外を除いて、その習得そのものが最終目的ではありません。日本語なら日本語を道具として利用して、高等教育を受けるなり事業を始めるなりして初めて、勉強の成果が現れてきます。ということは、道具としてつかえないような形で日本語を身に付けても、その人の人生に貢献することは薄いのです。点取りゲームの勝者となったとしても、それによってその人の人生が豊になるとは限りません。

残念ながら、ゲームの勝者として上級に属している学生がいます。受験のテクニックにだけは長けていて、まともな文も作れなければろくに話もできないくせに、なぜかN1に受かってしまい、自分は上級者だと勘違いしている困り者が後を絶ちません。そういう学生に限ってプライドが高く、書いたり話したりしたときの誤りを指摘しても、聞く耳を持たないことがよくあります。

初級の段階から上滑りしないように、確実に力を付けていってもらいたいと思っています。このクラスの学生を中級や上級でもう一度教えることがあったら、今日の目の輝きをまた見せてほしいと思いました。

山を越えたら山が消えた

2月25日(土)

卒業認定試験もバス旅行も終わり、卒業生が大半を占める超級クラスを担当する私にとっては、大きな山を越えた感じがします。もちろん、卒業式の日までは油断できませんが、ゴールが見えてきました。

朝一番から、今まで積み上がる一方だった机の上の書類の山を、次から次と処理して大きく減らしました。授業でやったプレゼンのコメント票も、当人が卒業する前までに渡さなければ、何の意味もありません。発表内容を思い出しながら書くのは大変かなと思いましたが、どの発表も特徴があって、メモを見たらプレゼンしている各学生の姿がありありと脳裏に浮かんできました。それだけ印象が強いということは、優れた発表だったのでしょう。

11月のEJUの問題集が発売されましたから、一刻も早く理科と数学の模範解答を作りたいのですが、さすがに、まだ、そこまでの余裕はありません。これは、卒業式以降になりそうです。でも、新学期が近づいてきたら、またそんな暇はなくなりますから、のんびりしているわけにはいきません。6月のEJUの前には、この問題を学生にやらせなければなりませんからね。

2月25日といえば、日本の高校生にとっては国公立大学前期日程の試験日ですが、留学生にとっても少なからぬ国公立大学の試験日です。日本人には後期日程が残されていますが、留学生はもう後がありません。Wさん、Cさん、Lさん、Xさん、Hさん、…、みなさん、どうでしたでしょうか。実力を遺憾なく発揮できたでしょうか。結果がわかるのは卒業式以降ですから、教師にとっては「果報は寝て待て」みたいなところがあります。

プレミアムフライデー

2月24日(金)

今月から最終金曜日がプレミアムフライデーと称して、早めに退社しましょうと国が旗振りをしています。中央省庁も3時に退勤することを勧めたとか。大手企業の中には半ドンにしたところもあるようです。

KCPは4:45まで授業がありますから、3時に退勤というわけにはいきません。午前授業の教師は…と言いたいところですが、今は受験シーズン最末期ですから、学生がいつ相談などに訪れるかわかりません。学生が図書室に残っている限りはスタンバイしておくに越したことはありません。また、出席率の悪い学生がひょっこり表れたら即座に指導しなければなりません。つまり、待ったなしで対応する必要がある事柄がうようよしていますから、そう簡単にプレミアムフライデーとしゃれ込むわけにはいかないのです。

金曜日は受験講座がありませんから、バス旅行の準備などで遅れていた仕事に手をつけました。そのすべてが卒業式前には片付けねばならない仕事でしたから、そういう意味でも、やっぱりプレミアムフライデーには程遠い1日でした。

でも、来月のプレミアムフラーデーは31日で学期休み中ですし、それに新学期の準備もたけなわになる前ですから、もしかすると早帰りも可能かもしれません。要するに、「今」が必要な仕事には「今」対応するほかないためプレミアムフライデーどころではなく、そういう仕事がない(少ない)時期ならプレミアムフライデーに乗ることもありうるというわけです。

国はプレミアムフライデーを通して個々に働き方を考え直してもらいたいようです。私たちも、学生に振り回されるだけではない時間の使い方を模索していきたいです。

タイムスリップ

2月23日(木)

東北道を快走していくと、やがて左手に白銀に輝く日光の山々が見えてきました。新宿を出るときは、空の底が低く、弱い南風に流される雲がはっきり見え、わずかに雨滴も感じました。首都高走行中は時折ワイパーが動くこともありましたが、北へ行くにしたがいだんだん空が明るくなってきましたから、お天気はいいほうに傾いてくれそうかなという予感がしていました。日光宇都宮道路に入ると、頂上は雲の中でしたが、青白い男体山が車窓を占めました。さっそくスマホにその姿を収める学生も。

日光江戸村は、薄日が差していました。駐車場横の休憩所でおなかを膨らませた私のクラスの学生は、入場するや左右の道標やお地蔵さんや水車や、ありとあらゆるものに突っかかって、写真を撮ったりあれこれ感じたことを言い合ったり、さっぱり前に進みません。私は日光江戸村での“大仕事”が控えていますから気が気ではなく、ついに彼らをおっぱなして“仕事場”へ向かいました。

花魁ショーの行われる若松座は、開演直前には桟敷が文字通りすし詰めの満席。この花魁ショーでお大尽を務めるのが、私にとってのバス旅行最大の任務です。学生たちのコールもあって首尾よくお大尽役に選ばれ、舞台袖で衣装とかつらをつけ、幕が開くのを待ちました。舞台上のお大尽の座に就くと、おひねりが飛んで来るのがわかりましたが、めがねをはずした私は桟敷で見ている学生たちの様子がさっぱりわかりません。そばにいる花魁の顔も衣装もぼんやりとしか見えません。

介添え役の太鼓持ちのいっぱちさんに言われて背筋をピンと伸ばすと、桟敷がどよめきました。やっぱり、偉い人は胸を張ってあたりを見渡すような威厳がないといけないんだなあと思いました。ここから先は、これで3回目か4回目のお大尽役ですから、まあ、慣れたものです。会場の気配しか感じられませんが、その空気や熱を盛り上げるほうへと演じるだけです。演じている最中におひねりが飛んでくるのは、意外と気持ちのいいものですね。

花魁ショーが終わって外に出ると、風がちょっと出ていましたが、青空も広がり始めていました。そんな中、「先生、とっても面白かったです」などと言われると、いつもながら少々気恥ずかしいものです。変身処でサムライや町娘などの衣装を着させてもらった学生たちも、友だちにからかわれながら江戸時代にタイムスリップした自分自身を楽しんでいるようでした。私のお大尽も、この一種なのでしょう。

帰りのバスが中野長者橋のランプから山手通りに出ると、学生を現実に戻さなければなりません。今年のバス旅行は諸般の事情で木曜日に実施しましたから、明日は通常授業です。テストがあるレベルもあれば、宿題が出されているレベルもあります。「はい、新宿駅につきました。江戸時代は終わりですよ」というアナウンスで、バス旅行を締めくくりました。

受けたい

2月22日(水)

授業後に教室でテストをやらせているところに、Gさんが入ってきました。真剣な面持ちでしたから、何か大きな問題でも発生したのかと思いました。ところが、話を聞いてみると、先週の金曜日に受けられなかった卒業認定試験を受けさせてくれということでした。

まず、腹が立ったのは、教室のドアの窓からのぞけば、私が試験監督をしているのがすぐわかるのに、その教室に入ってきたことです。緊急を要する用事ならともかく、認定試験の追試を認めてくれという、きわめて個人的な用件ではありませんか。なぜ試験監督が終わるまで教室の外で待てなかったのでしょう。

そういう気持ちを抑えて、なぜ金曜日に試験が受けられなかったのかを聞くと、ケータイの電池が切れてアラームがならなかったと言います。これまた、大した理由もなく遅刻や欠席をした学生がよく口にする言い訳です。それに加えて、今まで追試が受けられなかった事情を縷々述べていましたが、私はもう聞く気をなくしていました。

試験監督中でなければ激怒するところですが、穏やかな中にとげを含んだ口調で、どうして今頃追試を受けようとしているのかと尋ねました。すると、2年間のKCPの生活を「卒業」で締めくくりたいというようなことを言っていました。殊勝な言い分ではありますが、今までさんざん好き勝手なことをやりまくってきたGさんから、終わりよければすべてよしみたいなことを言われたくはありません。

Gさんは、しおらしく頭を下げていれば自分の要求は通してもらえると思っているに違いありません。そういうことを指摘すると、もちろん否定しましたが、私にはその否定を額面どおりに受け取るつもりはありませんでした。「いい加減にやっているとどこかで痛い目に遭うということをここで思い知って、これから先は二度と同じ失敗を繰り返さないでもらいたい」と恩着せがましいことを言って、Gさんの要求を突っぱねました。

でも、これは私の偽らざる気持ちです。KCPの卒業証書がもらえないくらい、人生における失敗のうちでは小さな部類です。この失敗に懲りて大きな失敗を未然に予防できれば、Gさんにとっては実に安い授業料ではありませんか。でも、本当に懲りてくれるでしょうか。

実力?

2月21日(火)

超級のSさんは、頭がいいというか、語学のセンスがあるというか、テストに強いというか、とにかく成績だけはまあまあ以上で、既に進学先も決まっています。そのSさんの最大の欠点は、出席率が芳しくないことで、ずっとブラックリストに載っています。今学期は私のクラスなのに、あまり顔を合わせていません。

そのSさん、先週の卒業認定試験で赤点を取ってしまいました。授業に出ていないとわからない問題に軒並みつまずいていました。勘の良さだけではカバーし切れなかったようです。それでも、他の赤点の学生同様に、一度だけ救いの手を差し伸べようと思いましたが、その救いの手を知らせる日に休んだので、もう情けはかけないことにしました。卒業証書ではなく、修了証書を手に進学してもらいます。

KCPの卒業認定試験は、確かに卒業に値する実力を備えているかも見ますが、同時にこの学校の授業にどれだけ参加したかを見る試験でもあります。私はそう考えて授業を進めていますから、授業で特に強調したことや板書で詳しく説明したことから試験問題を出します。Sさんのようになんとなく休んでいる学生には不利になりますが、それは当然のことだと思っています。

世の中、要領よく生き抜く力や才覚も必要ですが、愚直に正面から問題にぶつかることも、それ以上に必要だと思います。今までにもこう考えて断を下してきたことが何回かあります。そういう学生やSさんに私の気持ちがどこまで伝わるかわかりませんが、たとえ1人でもこれをくみ取ってくれる学生が出てくることを信じて、これからもこうしていこうと思っています。

はて、Sさんはバス旅行に申し込んでいますが、本当に来るでしょうか。次に会うのは卒業式なのでしょうか…。

手袋がない

2月20日(月)

土曜日の帰りに道でこけて手をついたときに、手袋の指先が破れてしまいました。小さな穴ですが、指先がくっきり見えてしまい、貧乏くさいことこの上ありません。家には予備の手袋がありませんから、昨日、新しい手袋を買おうと家の近くの店を回りました。しかし、手袋がないのです。あっても、ちょっとねえ…というものばかり。今週はバス旅行で日光へ行きますから、手袋は必須です。軍手ならありますが、それじゃ様になりませんから、どうしましょう。

破れてしまった手袋は、百均で買ったものですから、捨てるにしても惜しくはありません。でも、暖かいし、手袋をはめたまま本のページがめくれるし、とても気に入っていました。だから、昨日もまず百均をのぞいたのですが、“さくらコレクション”とかというのになっていて、私がはめていた手袋は既にありませんでした。

確かに、2月も下旬ですから、春物が売られているのはわかります。しかし、まだ2月ですからこれからも寒い日があることは間違いないのに、手袋のような冬の小物が消えてしまっているのは納得がいきません。店としてはもう売れ行きが衰えているものより、これから売れるはずのものに売り場を使いたいのでしょう。こけて手袋を破いてしまったのは自己責任で、あと1か月ほど冷たい手をこすり合わせて過せということなのでしょうか。

今朝は冷え込んで、たとえ指先が破れていても、手袋は欠かせませんでした。しかし日中は結構気温が上がったようで、最高気温が19.7度と言われると、やっぱり今さら冬物を買おうというほうが間違ってるかなって気にもなります。そんなもうすぐ春の陽気をよそに、午後は今週末受験という学生4人の面接練習をしました。あと数日のうちに、みんなうまく仕上げてくれるといいのですが…。

寒い

2月18日(土)

春一番の翌日は冬型になるのが常ですが、昨日は最高気温が20度を超えたのに、今日はやっと10度に手が届いた程度です。風向きも、昨日は南風だったのに、今日は北西の冬の季節風そのもの。明日の朝は真冬並みに冷え込むという予報が出ています。

超級クラスの中間テストの採点をしました。同じ教材で同じように授業をしてきましたが、テストをしてみるとかなりの差がつきました。不合格者こそいませんでしたが、かろうじて合格が何名か。

Hさんはどうやら漢字の勉強をしてこなかったようです。だれでもできるラッキー問題すらも落としている体たらくです。漢字のない国からきているVさんやTさんにも大差を付けられました。でも、他のパートで挽回し、合格点を1点上回りました。

Wさんはカタカナ語がからっきしだめでした。問題文は、Wさんにとっては意味不明の文が並んでいるに過ぎなかったのかもしれません。

漢字の問題は、中国の学生に有利になり過ぎないように、中国語の漢字とは微妙に違う字を必ず入れています。それにものの見事に引っかかってしまったのが、Sさんでした。本人は満点のつもりかもしれませんが、成績を見たらがっかりするでしょうね。

私のクラスは大半が卒業生です。それゆえ、昨日のテストは「卒業証書」がかかったテストでした。まだすべての採点が終わったわけではありませんが、まじめに授業を受けた学生たちは、合格点が取れたのではないかという手応えがあります。さあ、実際のところはどうなのでしょう。来週のお楽しみです。

C予報

2月17日(金)

バス旅行が来週の木曜日に迫ってきましたが、週間予報によると、どうもお天気が思わしくないようです。気象庁の予報によると、栃木県は曇り時々雨ですが、日光江戸村は山沿いですので、もう少し悪いかもしれません。他のサイトの気圧配置予想によると、木曜日は低気圧が本州に中央部のさばっていて、悪天候オーラを発散しまくっています。

数年前のバス旅行で日光江戸村へ行ったときは、いろいろなデータから曇りという予報を出しました。確かに、東京は曇りで、東北道も厚い雲の下でした。このまま逃げ切れるかなと思ったのですが、もう少しで江戸村というところから雨が降り出しました。江戸村の背後の山に雲が登っていくのがはっきり見えました。山沿いは雨が多いという気象の基本をいやというほど感じさせられました。

だから、今回の予想気圧配置の低気圧は、とても不吉な予感が伴うのです。1週間先ですから、これから変わる可能性も結構高いという点だけを頼りにしているのです。気象庁も、あまりあてにならないという意味の「C」ランクをつけているのだけが救いです。

雨が降ると、江戸村内のそぞろ歩きができなくなりますから、とても辛いのです。室内のアトラクションも楽しいのですが、学生たちに江戸時代の暮らしの一端を感じ取ってもらうとなると、ぶらぶら歩き回るのが一番なのです。だから、せめて曇りで踏みとどまってもらいたいのですが、一体どうなるのでしょう。

中間テストが終わりました。来週がバス旅行で、再来週は卒業式です。1月期は、毎年、駆け足で過ぎ去っていきます。