Category Archives: 行事

心の鬼

2月3日(金)

節分の日は、かつては赤坂の日枝神社の豆まきを見に行ったものですが、日枝神社は今年も豆まき中止です。手近なところで午前中に豆まきをしている神社仏閣は少なく、今年は節分の翌日は立春ということで、春を探しに新宿御苑巡りをすることにしていました。しかし、日中も日が照らず、気温も上がらず、受験生に風邪をひかせては取り返しがつきませんから、教室で過ごすことにしました。

私のクラスでは、各人の心の鬼を発表してもらうことにしました。怠け心、傲慢さ、ゲームで派手に課金してしまうことなどといういかにも心の鬼といった回答が多かったです。その中で、Nさんは「自信がありすぎること」と答えました。

授業中のNさんは几帳面にノートを取っており、指名するとやや小さめの声で答えます。とても自信があるような答え方には見えません。でも、本人としては自信過剰なんですよね。確かに、Nさんの志望校はK大学をはじめ、超一流校ばかりです。冷静に見て、今のNさんでは、K大学には手が届かないでしょう。それでも受かると思っているとしたら自信過剰でしょうが、そういう自分自身を自信過剰だと評価しているのなら、謙虚なものではありませんか。一体、どちらなのでしょう。

受験生の心は不安定なものです。ある日自信過剰でも、翌日はそのすべてを失っていることだってあります。教室では表情を変えないNさんですが、私たちのうかがい知らないところで大きな波にもてあそばれているのかもしれません。

こういうことがわかったのも、福の神のお力でしょうか。

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どこへ行こうか

1月14日(土)

2019年以前は、節分の日に、学生を連れて豆まきを見に日枝神社へ行っていました。力士数名、有名人少々を含む方々が、仮設の舞台から福豆の入った袋をまき、我々下々の民はそれをダイレクトキャッチし、福をつかむという図式でした。袋の中に“当たり”が入っていると、景品がもらえました。氏子になっている企業がスポンサーになっているのでしょう。私なんかは、たくさんキャッチした学生から、“はずれ”の豆の袋を1つ2つ分けてもらうのが常でした。

2020年は、ちょうど感染が拡大し始めるころでした。日枝神社の豆まき自体は行われたものの、学生も教師も人込みを恐れて日枝神社まで行きませんでした。去年とおととしは、オンライン授業だったり、出かけるような空気ではなかったりということで、日枝神社なんて全く念頭にありませんでした。

今年こそは日枝神社復活と思ったのですが、残念ながら、今年も豆まきはしないそうです。他の神社へ行ってもいいのですが、午前クラスの授業にちょうどいい時間帯に豆まきをしてくれるのは、日枝神社ぐらいなのです。4時ごろからというところが多いようです。最近の感染状況や新しい菌株の感染力を見ると、現時点で予定しているところも中止に追い込まれるかもしれません。今年も教室でひっそりなんでしょうか。

豆まきの準備中の神社やお寺を見ても面白くないでしょうし、でも、教室で豆まきの動画を見るだけでは不完全燃焼のような気もします。もう少し、頭を悩ますことにします。

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二十歳を祝う会

1月13日(金)

授業が終わったら、本当は何人かの学生を捕まえたかったのですが、それをほったらかして6階へ。12時半から「二十歳を祝う会」が開かれました。

「成人式」というと、成人年齢が18歳に下がったので18歳が対象となりますが、やっぱり子供と大人の区切りは二十歳かなあ。18歳で成人になった人がまだ少ないからでしょうか、日本の多くの地域で「二十歳を祝う会」的な催しが行われています。

二十歳の学生と比べると、私はその3倍の期間を生きています。会場にいる学生が生まれたころ、私はすでに2つ目の仕事として日本語教師を選び、KCPで教えていました。でも、この仕事が選べたのは、その前の20年間があったからこそだと思っています。最初の仕事は化学会社の研究員・エンジニアでしたから、日本語教師とは縁もゆかりもありませんでした。ただ、文法について考えるのは好きで、また、暇さえあれば本を読んでいましたから、自然に語彙も増えました。司馬遼太郎をはじめ、多くの作家から珠玉の言葉を学びました。それがこの仕事に生きていることは、疑う余地がありません。

ですから、二十歳の学生にも、興味の幅を広げて自分を鍛え続けてほしいと思っています。私は、今の私を思い描きながら二十代、三十代…と生きてきたわけではありませんが、若い時にまいた種を、今、刈り取っています。私は、残念ながら、日本の国の外で学ぶ機会はありませんでしたが、学生たちはそのスタートラインに立っています。この留学生活を充実させれば、年を取ってからあでやかな人生が送れます。

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通訳の効果

1月12日(木)

学校になついている学生は、教師が手伝ってほしいと声をかけると、喜んで手を貸してくれます。声をかけずとも、荷物をたくさん抱えていると、「持ちましょうか」と言ってくれる学生が少なくありません。「持ちましょうか」さえ未習の初級の学生は、アイコンタクトで申し出てくれます。

このところ感染拡大防止のため活発ではありませんが、学校行事のスタッフも人気があります。こちらの指示が伝わることが前提ですから上級の学生に限られますが、いつも期待以上の働きをしてくれて、本当に助かっています。必ず機転の利く学生が何名か出てきて、その学生を中心に仕事が回るのです。

そんな教師のお手伝いの中で、学生の評価が一番高いのは通訳です。たまたま職員室の前を通りがかった学生を捕まえて初級の学生への通訳を頼んでも、まず間違いなく引き受けてくれます。だいぶ前のことですが、レベル2の学生にレベル1の学生への通訳をしてもらったことがあります。こちらはレベル2の学生にもわかるような日本語を話しているのですが、それを自国語に訳している学生の表情は、自信に満ち溢れていました。また、レベル1の学生の質問や意見を、つたないながらも、私にわかる日本語にしてくれました。「どうもありがとう」とお礼を言うと、「うれしいです」と返ってきました。“お役に立てて”とまでは言えないあたりが、レベル2なのですが…。

今学期の木曜日のクラスには、Mさんがいます。Mさんは先日の入学式で通訳をしてくれました。授業中、クラス全体に多少難しいことを聞いても、真っ先に答えてくれました。できる学生がもっとできるようになった感じです。学校行事の通訳は、教職員、学生の目が集まりますから、花形中の花形です。それをやり遂げたことで、自信が確かなものになったのではないでしょうか。

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青空に恵まれて

10月29日(土)

“天気よければすべてよし”で、昨日の川越小旅行は、最後の集合場所に戻ってきた学生たちの笑顔笑顔笑顔で無事終わりました。Cさんはミッフィーのノートを買い込み、すでに合格の決まったY大学に進学したら使うと言っていました。キツネのお面をかぶった学生もいれば、1日中買い食いをし続けもうお腹いっぱいという学生もいました。美術館に立ち寄った学生も、意外と多かったようです。

朝、本川越の駅前に集まったときは、こりゃ川越の街じゅうKCPの学生だらけになっちゃうなと思いました。しかし、街の中心部を実際に歩いてみると、学生たちはそんなに目立ちませんでした。平日の日中なのに、川越の街は観光客でにぎわっていました。全国旅行支援のおかげなのでしょうか。時の鐘付近の食べ物屋さんは、どこも長蛇の行列。学生たちはそれにもめげずにお目当てのスイーツなどをゲットしたのでしょう。

お昼過ぎに、中間の出席チェックがありました。私は中級から上級にかけてのクラスを担当しました。学生の集団が来るたびに「はい、クラスと名前」と、各学生に名乗らせます。以前教えた学生の名前を聞くと、「あ、Sさん、お久しぶり」なんて、声を掛けました。欠席がちの学生に「お久しぶり。この頃、あんまり会わないねえ。ちゃんと学校来てんの?」とかって言ってやると、少し慌てた様子で「いいえ、来てますよ」と否定したり、「本当に久しぶりですか。昨日、先生見ました」と存在を主張したりしていました。いなかったことを証明するのはアリバイですが、いたことを認めてもらうのは何というのでしょう。

帰宅後、スマホに搭載されている歩数計を見ると、3万歩余り。普段の5~6倍ほど歩きました。

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てんぷらラーメンを食べに?

10月21日(金)

来週の金曜日は、学校行事で川越へ行きます。西武新宿から西武線で終点の本川越まで行き、そこで学生たちを野に放ちます。でも、当日いきなり「はい、好きなところを見てきて」では、迷子になるか駅付近でスマホいじりに精を出すかでしょう。ちょうど1週間前ですから、クラスの学生をいくつかに分けて、そのグループごとに川越について調べさせることにしました。

川越経験者のTさんは、てんぷらラーメンがおいしかったとのことなので、それをまた食べようとグループのメンバーに提案していました。同じグループのDさんは、評判のコロッケ屋さんをネットで見つけ出し、食べに行きたいと訴えました。どうやら、このグループはグルメツアーになりそうです。

Nさんのところは、喜多院や時の鐘など、王道を歩く雰囲気です。かなり忙しいスケジュールのようですが、こちらはお昼をどうするつもりでしょう。菓子屋横丁あたりで仕入れたお菓子を食べながら歩き回るのでしょうか。それもまた、川越らしさの一つです。

学生たちは、意外に行動範囲が狭いです。自宅と学校と塾の範囲しか知らない学生が多いです。以前観光で来日し、ニセコは知っているけど渋谷は行ったことがないなどという例もあります。川越でてんぷらラーメンを食べたことがあるTさんなどは、貴重な存在です。漠然と「日本文化を知りたい」と言っているだけでは、いつまでたっても日本文化に触れられません。KCPの課外活動は、半強制的に学生を日本文化の中に放り込む意味もあります。これをきっかけに、日本を新しい角度から見てもらいたいと思っています。

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お昼の公演でみんな好演

9月14日(水)

お昼に、演劇部の発表会がありました。出し物はアラジン。演劇の公演を想定して設けたステージではありませんから、照明もよくないし、マイクも音を十分に拾っているとは言えません。でも、演劇部の面々は、アラジンっぽい衣装に身を包み、精一杯声を張り上げ、体を大きく動かし、ステージの端から端まで使って、日ごろの練習の成果を見せてくれました。

私のクラスのCさんやLさんも、午前中の授業で指名した時の蚊の鳴くような声とは打って変わって、講堂の内番後ろで見ていた私にも聞こえる声でセリフを言っていました。発声練習もしているのかどうかわかりませんが、マスク越しでもよく通る声でした。なんだ、大きな声も出せるんじゃん。

30分近い公演でした。出演したどの学生も、けっこうな量のセリフをこなしていました。授業中はつっかえつっかえ教科書を読んでいるかもしれない学生たちが、演技をしながらよどみなく話しているじゃありませんか。よどみがなさすぎて、セリフが上滑りしていた場面もありましたが…。ステージに立ったりマイクを握ったりすると人が変わるという例はよく聞きますが、演劇部の面々は好ましい方向に変わった観たようです。こういう経験が、学生の自信を生み出してくれればと思っています。

ステージが終わった後、演劇部全員で写真を撮っていました。マスクを外したら、自然に笑顔が浮かんできたようです。指導をしてきたN先生も、昨日までの心配げな表情が嘘のような晴れがましい顔で隅に立っていました。

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笹の葉さらさら

7月7日(木)

七夕とあって、6階講堂のステージ上には、短冊をぶら下げる枝が、笹と呼ぶにはだいぶ太い緑の幹から何本か突き出ていました。本物の笹ではなく、O先生たちの力作です。

その七夕飾りを見ながら、ウェルカムミーティングが開かれました。入学式と名乗らないのは、やっとのことで入国できた、先学期オンラインで参加していた学生もいるからです。そういえば、どこかで見た顔や、妙に教師になれなれしい学生がいました。

かつては入学式当日にオリエンテーションなどもしていたため、新入生のほぼ全員が参加しました。しかし、このところオンラインでのオリエンテーションが定着し、セレモニーのためだけにどれだけの学生が来るだろうかと案じていました。先輩学生として在校生も何人か集めていますから、新入生があまりに少ないと、ちょっと様になりません。

杞憂でした。用意した椅子がすべて埋まるほどの新入生が来ました。張り合いが出た先輩学生は、歓迎の言葉を述べたり、留学生活のアドバイスをしたり、校舎の中を案内したりしている時の顔つきが、いかにも誇らしげでした。いつの間に身につけたのか、風格すら感じられました。

新入生がたくさん来たということは、それだけ日本留学への期待も大きいのです。日本語の本場で、日々、生の日本語に接しながら学んでいくことに、大きな喜びを感じているのでしょう。もちろん、これから、期待がしぼみそうになることも、喜びが苦しみに代わることもあるでしょう。そういう学生たちを支えて、ピンチを乗り切らせることが私たちの仕事なんだなと、改めて確認した次第です。

ステージの“笹”には、新入生が書いた願いが掛けられていました。

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アラームのあとで

5月28日(土)

朝からけたたましい警告音が何度も鳴り響きました。初夏の日を受けて校舎内に入ると、髪や服やかばんなどが部分的に37.5度以上になり、温度センサーに引っ掛かってしまうのです。コンビニや喫茶店で買って持って来た飲み物が反応することもあります。教師はきまり悪そうに持ち物を衝立の向こう側に置いて、入り直していました。受験講座を受けに来た学生も、ほぼ全員がアラームにびっくりしていました。日陰で服や体を冷ましてから再挑戦する学生も。10時少し前に玄関の外に出て空を見上げると、かなりの高度にお日様がいました。

その10時から、新入生のウェルカムパーティーがありました。今回は、今までとは違って、上級の在校生に声を掛けて来てもらいました。そして、新入生というか、最近来日したばかりの学生たちと数名ずつのグループになって、留学の心得を伝えたり、日常生活のアドバイスをしたりしてもらいました。

グループを作る前に一言ずつしゃべってもらいましたが、みんな日本語がうまいですねえ。まあ、そういう学生を選んではいるんですがね。学生の話す力が落ちているんじゃないかと危惧していましたが、この学生たちならどこへ出しても通用するでしょう。

グループで話し始めると、話が止まりません。新入生側は聞きたいことがいっぱいあり、在校生側は語りたくてたまらないのですから。レベル1の新入生も、及ばずながら日本語で話そうとしていたのがほほえましかったです。こういう経験が、弾んだ会話ができるようにもっと勉強しよう練習しようという意識向上につながるのであれば、まさに一石二鳥です。

予定をずいぶんオーバーしてしまいましたが、みんな満足そうでした。そして、ほぼ真上からの日差しを浴びながら帰って行きました。

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話しながら

5月26日(木)

今年のアートウィークの目玉は、似顔絵コーナーです。美術系の大学・大学院への進学を目指す学生が似顔絵師となって希望した学生の似顔絵を描くのです。

Hさんはその似顔絵師の1人です。待ち構えていたところへCさんが来ました。アクリル板の向こう側にCさんを座らせ、小ぶりのスケッチブックを広げて描くのですが、世間話をしながらなんですね。縁日なんかでお店を開いている絵描きさんと同じ雰囲気でした。話に夢中になっているからなのか、絵を丁寧に描いているからなのか、時間はかかっていましたが、出来上がった似顔絵は、Cさんの特徴を余すところなく捕らえていました。「Cさん、悪いことできないね。Hさんの絵はモンタージュ写真よりよくできているから、それ、貼り出されたら一発で捕まっちゃうよ」なんて、言われていました。

Tさんは、盛るのが上手です。こちらは捜査には使えませんが、描いてもらった女子学生は、みんな喜んでいました。瞳がキラキラした似顔絵を見ている学生の瞳が、本当にキラキラし始めました。Tさんもまた、世間話をしながらでした。お客さんとやり取りしているほうが、特徴をつかみやすいんでしょうかねえ。あるいは、コミュニケーションを通して、お客さんのいい顔を引き出しているのかもしれません。

芸術家は、やっぱり、人の心をつかまないと、人の心を動かす作品は創作できないのでしょう。HさんとTさんは、そんな術が自然と身についているのかな。私みたいな芸術性のかけらもない者のうかがい知れない何かを持っているのですよ。

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