Category Archives: 学校

推薦の重み

1月31日(金)

Aさんは、去年の秋に指定校推薦でB大学に合格しました。指定校推薦の出席率の基準が90%でしたが、Aさんは92%ぐらいでそれをクリアしました。しかし、毎年95%以上の学生を推薦してきましたから、Aさんには指定校推薦の書類を渡す際に、くどくくどく、これ以上出席率を下げることのないようにと、くぎを5本ぐらい刺しておきました。

しかし、合格証を手にしてからのAさんはちょくちょく遅刻や欠席を繰り返し、出席率が90%を割り込む月が多くなりました。はたから見ている限り、気が緩んでいるように感じられました。そして、今月は、病気になってしまったこともあり、出席率が50%となり、入学からの出席率も90%を割り込んでしまいました。

にもかかわらず、来月末のバス旅行に行かないと言い出しました。学校行事に必ず参加することも、指定校推薦の際の条件です。バス旅行に行かないということは、その分出席率も下がります。バス旅行は朝から夕方までですから、2日分の出欠席になりますから、下がり方が大きいのです。

授業後、Aさんを呼び出しました。Aさんはバス旅行に行けない理由を丁寧に説明すればわかってもらえると思っていた節がありました。こちらはAさんが何か言い出す前に、データを示して現在の出席率が推薦基準以下であることを伝えました。学校推薦基準に満たないので、B大学に合格取り消しとされても文句は言えません。

また、推薦を受ける際に、Aさんは、出席率95%以上を維持する、卒業まで模範生でい続ける、これが守れなかったら推薦を取り消されても異議はないといった誓約書にサインしています。

そういったことを伝えると、Aさんは黙り込んでしまいました。うつむいたまま何もしゃべらなくなってしまいました。私も黙ったまま待っていると、「うちに帰ってよく考えます」と涙声で言って、職員室を後にしました。私も、月曜日まで待つことにしました。

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暖簾に腕押し

1月28日(火)

出席を取り終わって連絡事項を伝え始めた頃に、最近休みが目立つCさんがそっと教室に入ってきました。そして、教卓から一番遠いところに席を取りました。Cさんは目立たないところに座ったつもりだったのかもしれませんが、教師からは実によく見えるのです。その後の授業でCさんはあまり気合が入っていなかったことも、実によくわかりました。

火曜日の後半は選択授業で、クラスの学生はバラバラになります。Cさんは私が担当する小論文のクラスです。先週は欠席だったので、今週が初授業です。「先週欠席した人には、先週のプリントをあげます。小論文の書き方のポイントが書いてありますから、よく読んでください」と言うと、先週の欠席者が次々と手を上げましたが、Cさんは無反応。

今回の課題の説明をし、「さあ書いてください」となったのですが、Cさんは何もしませんでした。原稿用紙を持っていなかったのです。こういう場合、付近の学生に声をかけて原稿用紙を分けてもらうものなのですが、Cさんは何もしませんでした。何か動きを見せるかと思ってしばらく待ちましたが、何もしようとしません。ついに根負けし、「1階で原稿用紙を買ってきなさい」と促しました。

原稿用紙を買いに行ったにしては戻りが遅いなと感じ始めた頃、ドアがノックされました。開けると、事務所のRさんがいました。「先生のクラスの学生さんが原稿用紙を買いに来たんですが、現金の持ち合わせがないんです。どうすればいいですか」。言葉を失ってしまいました。Rさんが「下で余っている原稿用紙を渡しましょうか」と言ってくれたので、お言葉に甘えることにしました。

戻ってきたCさんは課題に取り組みましたが、全く筆が進みません。終業のチャイムが鳴りましたが、ほんの数行しか書けませんでした。それを提出して帰ろうとするCさんを引き留め、事情聴取。

(タブレットで出席率データを見せながら)「今月の出席率は50%ですよ」

「はあ…。でも、まだ、1月は終わっていません」

「1月はあと3日だよ。全部出席したって、出席率80%になんか、なるわけないでしょ」

「……」

「どうしてこんなに休むんですか」

「やる気が出ないんです」

「やる気が出ないんだったら、国へ帰って、現地募集する日本の大学に出願したらどうですか」

(嫌な顔をしながら)「……」

(入学からの出席率データを見せながら)「こんな出席状況のままじゃ、ビザは絶対に出ませんね。やっぱり帰国するのが一番いい方法だと思います」

「……」

といった調子で、返答に困ると「……」を繰り返すCさんでした。私の言葉も、どれだけ響いたかわかったもんじゃありません。今までに他の先生から同じ話を何回もされているのですから。

さて、明日の教室にCさんはいるのでしょうか。

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魔性の住処

12月27日(金)

今年最後の出勤日ですから、校内の大掃除をしました。例年のように、私は給湯室を担当しました。今年は冷凍冷蔵庫の中を重点的にやってくれという指示を受けていましたから、その通りに動きました。

冷蔵室を開けると、飲み物食べ物がいっぱい入っていました。目についたペットボトルを取り出して賞味期限を確認すると、2023年でした。その隣のは、なんと2022年ではありませんか。賞味期限が2022年ということは、買ったのは2021年かもしれません。だとしたら、オンライン授業をやっていたころですよ。

年季物のお菓子も発見しました。冷蔵されていたのですから、食べてもお腹を壊すことはないでしょうが、相当な勇気がいります。生八ツ橋は、残念ながら、可燃ごみ行きとなりました。だれがどのような経緯で冷蔵室に入れたのかわかりませんが、もったいない限りです。お茶のお供にちょうどよさそうなきれいなお菓子もありましたが、これも生八ツ橋と同じ運命をたどりました。フードロスって、こうやって生まれるんですね。

何より驚かされたのは、未開封で賞味期限から比較的日が浅いミルクティーに沈殿が生じていたことです。白かったので乳成分が凝集したのではないかと思いますが、見た目はよろしくありません。同じく未開封なのに容器のペットボトルがへこんでしまった麦茶もありました。真夏の暑い盛りに買って来て冷蔵室に入れたら、中の空気が思い切り収縮してしまったのでしょう。ペットボトルの密閉性が証明されたと言えないことはありませんが、どことなく気持ち悪いですね。

冷凍室からは、カチンカチンに凍った炭酸水が現れました。物理的にはありうることですが、実際に目にすると、不思議さは拭い去れません。

それにしても、KCPの教職員のみなさんは物持ちのいい方ばかりのようです。私なんか、買ったものはとっとと食べたり飲んだりして、冷凍冷蔵庫のお世話にはなっていません。机の引き出しに食べ物飲み物を多少しまい込んでいますが、もちろん賞味期限のはるか前に消え去っています。

冷蔵室も冷凍室もスカスカになりました。隅々まで拭き掃除をしてきれいにしました。新年は冷凍冷蔵庫をたびたび見張って、同じことが繰り返されないようにしていきましょう。

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初欠席

12月5日(木)

毎朝、メールの受信トレイをあけると、前日帰り際にチェックしたにもかかわらず、夜中のうちにまとまった量のメールが届いています。多くがニュースメールであり、そのほとんどはそのままゴミ箱行きとなります。全部を開封して丁寧に目を通していたら、あっという間に授業が始まる時間になってしまいます。

時々、送信時刻が真夜中の、KCPの先生からのメールが届いていることがあります。夜遅くまでご自宅で仕事をなさって、送信されたのでしょう。頭が下がります。私は、うちでは仕事をしない主義ですから。

その後も、朝は授業が始まる直前まで、何回もメールチェックします。なぜかというと、学生から欠席連絡が届くことがあるからです。メールの件名がブランクだったり、名前だったり、「おはようございます」なんて書いてあったりしたら、まず間違いなく欠席メールです。つい先日は、「今日の授業は病気のせいでお休みさせていただきます」という、メールの本文そのものみたいな件名もありましたが、これを出したのは新入生のNさん。生真面目な性格がよく出ています。

今朝、8時半ごろ、受信トレイを見てみると、「おはようございます」があるではありませんか。送信者はJさんとなっていました。Jさんは、今学期どころか、入学以来無欠席です。「まさか」と思いつつ中を見てみると、「体調が悪くなってしまって、今日は休みたいと思います」と書いてありました。皆勤が消えるのに立ち会ってしまいました。

Jさんは、毎日きちんと予習をしてきて授業を受けていました。もちろん、宿題を忘れるようなこともありません。入学以来そういう姿勢で勉強を続けてきたので、今や、クラスはもちろん、レベル全体でも1番かそれに近い成績です。テストができるだけではなく、会話力も素晴らしいです。

こういう学生は、初めて休んだ次の日が山です。翌日も休むようだと、緊張の糸が切れてしまったのかもしれません。そうなると、あっという間にブラックリストにまで転落していきます。ここで踏ん張って1週間持ちこたえてくれれば、来年3月の卒業までペースを崩さずにいけるでしょう。

明日の朝も、気が抜けません。

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あと1か月

11月30日(土)

毎学期、新入生のプレースメントテストを行い、中級以上と判定された学生にはインタビューをしています。KCP卒業後の進路を確認したり、今までの日本語学習状況を聞いたり、KCPでどんな勉強をしたいかなどということも聞いてみたりします。かつては新入生来日後にこういったことを大急ぎでやっていたのですが、最近はもっぱらオンラインで、学生がまだ国にいるうちに済ませてしまいます。

私がインタビュー担当のKさんに案内のメールを送ったところ、インタビューを予定していた日は入院中だという返信が来ました。そこで、急遽、30分後にzoomでインタビューという運びになりました。最近、たまにzoomを使おうとすると、バージョンを更新しないと使えないぞという案内が現れます。これが出てくるとややこしいので、zoomの設定は時間に余裕を持ってやらなければなりません。

zoomを立ち上げようとしたところ、案の定、それが出てしまい、30分の余裕時間があっという間に消えていきました。それでもどうにか約束の時間に間に合い、Kさんと初対面となりました。

国で教科書を使って独学で日本語を勉強したというKさんですが、会話の練習はあまりしていないと言っていました。その通り、日本語を話し慣れていない感じがしました。多少言葉や表現を選びながら慎重にしゃべっていたようで、語彙や文法で致命的な間違いは犯しませんでした。最後の方は、「入院の時、漢字の教科書も持って行って、ちゃんと勉強していてくださいね。そうじゃないとM大学やR大学はなかなか入れてくれませんよ」なんていう軽口にも反応できるようになりました。

明日から12月。Kさんの来日も、1か月ちょっと先に過ぎません。

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寒!

11月19日(火)

寒かったですねえ、今朝は。都心の最低気温は7.9度で、昨日より2度余り低かったです。今季の最低気温は9日(土)の7.8度ですが、それに迫る気温でした。でも、これで平年並みです。今までが暖かすぎたのです。これからしばらく、最低気温が一ケタ台の日が続くそうですから、ようやく気温が季節に追い付いたようです。

もちろん、コートにマフラーで出勤しました。手袋はしませんでしたが、してもおかしくない風の冷たさでした。コートは重かったですが、その威力は絶大で、そんな風に吹かれても寒さは感じませんでした。ヒートテックなしでも、もう少し頑張れそうです。

職員室の鍵を開けて中に入ると、少しひやんとしました。思わず、暖房のスイッチを入れました。朝一番で表玄関のドアを開け放つのが毎朝の私の仕事ですが、今朝は他の先生がいらっしゃる直前まで開けませんでした。でも、もう保温のためにドアを閉めておいてもおかしくない時期ですよね。

教室に入ると、欠席4名。うち2名が遅刻で来ました。その2名に理由を聞くと、異口同音に「寒くて起きられませんでした」と答えました。毎年そんな学生が現れますが、今年もそういうシーズンになったのだなあと思いました。そういう答えに対して「バカ者!」と言ってやるのが冬の風物詩です。

日本語プラスが終わると外は真っ暗です。受講生のSさんは、フード付きの暖かそうなオーバーを着込みました。「先生、さようなら」と言って、帰っていきました。その後を追って、私も外階段を下りました。スーツの上着を突き通して肌に刺さる外気は、10度を割り込んでいるかもしれません。一気に冬ですね。

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繁盛したかな

11月7日(木)

富士山の初冠雪が観測されました。平年より1か月以上遅れていて、観測史上最も遅い初冠雪だそうです。夕方、歯医者に行くために外に出たら、風の冷たさに驚かされました。一気に冬将軍かと思って調べてみると、最低気温も最高気温も平年並みでした。今までが暖かかったですから、平年並みでも十二分に寒く感じるのです。

そんな肌寒さ以上のものを感じる中、先学期に続いてバザーが行われました。先学期は小雨模様だったことを思えば、今学期はきれいな青空に恵まれたのですから、多少寒くてもありがたく思わなければなりません。

10時半の休憩時間になると、学生たちも教師も校舎前のバザー会場に集まってきました。店開き直後だったようで、ブルーシートにはまだすき間がありました。それでも衣料品や食器などを手に取って、掘り出し物だと思ったのでしょうか、ニンマリ笑って会計を済ませて教室に戻っていく学生を何人か見かけました。

昼休みは午後クラスの学生が加わり、さらににぎやかになりました。どてらをおしゃれにしたような暖かそうなジャケットを試着してそれを買った学生は、ペラペラのシャツ1枚しか着ていませんでした。本気で寒かったのでしょうか。ネクタイを買う女子学生が目立ちました。ブレザーかなんかに合わせるのでしょうか。「この食器は電子レンジで使えますか」などと質問している学生もいました。たくさん買っておまけをしてもらい、うれしそうにしている学生も見かけました。

私は、授業が始まって学生がいなくなったころ、狙っていた足ふきマットをゲットしに行きました。前回買ったのを使ってみたらとても具合がよかったので、家の中のいろいろなところに置こうと思っていたのです。5枚買いました。この上に立てば、床暖房がない私の家でも足が冷たくならないでしょう。冬支度の第一歩が踏み出せました。

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曇り空でちょうどいい

10月25日(金)

朝早くは傘も要らない程度でしたが雨がぱらついていました。しかし、学生がぽつぽつ集まり始めた9時過ぎの葛西臨海公園は、分厚い雲に覆われていたものの、雨はすっかり上がっていました。最近は、下手に日が照ると暑くてかないませんから、考えようによっては、雨が降りさえしなければ曇り空でちょうどいいのかもしれません。しかも、風が弱いですから、BBQにはまさにピッタリです。

クラスの学生が集まってきましたが、見慣れぬ顔が2人ほどいました。声を聞くと、メガネを外したRさんと、マスクをしていないSさんでした。「教室とずいぶん雰囲気が違うね」と声をかけると、そこを狙っていたと言わんばかりの自慢げな顔をしていました。

今までのBBQは立川の昭和記念公園が多かったのですが、今回は葛西臨海公園です。配給される燃料が木炭を四角く成形したもので、今までとは若干勝手が違いました。コンロの空気孔の通りが悪く、そのため炭がなかなか燃えてくれず、火おこしに苦労しました。

Lさんは軍隊でこういうことはやってきたと、火の担当になってくれました。調理はアルバイトで腕を磨いているKさんが中心でした。慣れた手つきで材料を切ったり串を通したり調味料を振りかけたりしてくれました。焼くのは、材料を持ってきたみんなが協力して、ひっくり返したり炭をうちわであおいだりしながら面倒を見てくれました。

今回のBBQの料理コンテストは、ピザがお題でした。それを担当してくれたのが、Jさんでした。生地の上に材料を飾り付けて、焼いてもらいました。チーズとソーセージ、ベーコンなどが絶妙に絡み合って、コンテストの入賞は逃しましたが、おいしくいただきました。

そして、何より感心したのが、CさんとSさんが、焼くときは何もしていなかったのですが、食べ終わった後の器具を洗うのを引き受けてくれたことです。洗い場まで2往復してくれました。ゴミも、誰かが所定の場所まで運んでくれました。私が尻を叩くまでもなく働いてくれた学生たちには感謝しています。

食後は海を見に行きました。晴れていれば富士山がきれいだったろうにと思いましたが、あまり欲張ってはいけません。図らずして、他のクラスの学生たちも含め、ご歓談の時間になりました。授業中には見られなかった組合せでしゃべったりじゃれたりしている姿が見られました。

3時半に無事解散。月曜日はいつも通りに漢字の復習テストがあるんですが、ちゃんと勉強してくれますよね。

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入学式挨拶

みなさん、ご入学おめでとうございます。世界のいろいろな地域からこのように多くのみなさんがこのKCPに入学してくださったことを非常にうれしく思います。

みなさんは、日本は初めてですか。外国での生活は初めてですか。一人暮らし、親元を離れての生活は初めてですか。食事を作るのが初めてだという方もきっといることでしょう。初めてづくしで不安を抱えていたとしても、不思議ではありません。また、どうすればいいかわからないことに直面することもきっとあるに違いありません。そんな時、どうしますか。

日本語に自信がない初級の方は、周りの人に助けてもらうことが多いでしょう。多少なりとも日本暮らしをしてきた人の経験や知恵を借りて問題を解決することは、みなさんに経験や知恵を貸してくれる人たちも通って来た道です。日本で暮らし始めてから日が浅いみなさんが恥ずかしく思う必要など、全くありません。私たちKCPの教職員に助力を求めることもあるでしょうが、私たちはそのためにいるのですから、困った時は遠慮なく相談に来てください。

自分ひとりの力で何とかしようと思う人もいると思います。独力で難題を解決した時の達成感、それを通して得られた自信、自分の将来に対して見えてきた希望、そういったものは何物にも代えられません。果敢に挑戦して勝利を手にしたのですから、堂々と胸を張っていいと思います。みなさんを日本へ送り出したご両親をはじめご家族が一番望んでいることは、きっとこういうことではないでしょうか。

とはいうものの、他人に頼ってばかりでは、自分自身の成長につながりません。毎度毎度先輩や友だちに通訳してもらっていたら、その人の日本語力、コミュニケーション力は伸びません。自分の国のコミュニティーの中でしか生きられない人になってしまいます。内弁慶的な人間になっては、大きな成長は望めないでしょう。KCPを卒業して進学なり就職なりしたら、他人に頼れる場面はぐっと減ります。KCPにいるうちに、自立の訓練もしておくことが必要です。大人への階段を上がっていかなければならないのに、踊り場で足踏みしているようでは、留学で得られる成果もわずかなものにしかなりません。

また、逆に、何でも自分で解決しようと思うあまり、泥沼にはまってしまってにっちもさっちもいかなくなった例も、数多く見てきました。もっと早く頼ってくれれば助けてあげられたのに、と思うこともしばしばです。周囲のアドバイスを無視して自分の考えを押し通したあげく、失敗に失敗を重ね、心身ともに疲弊してしまった学生もいました。勇猛果敢と猪突猛進は、紙一重なのです。病気になっても病院へ行かず、こじらせてしまったなどというのも、こういった例の一つと言っていいと思います。

何事もバランスが肝心です。みなさんは、短い人で3か月、長い人で1年半、このKCPに在籍します。その間にできるだけ大きな成果を手にしようと思ったら、時には誰かの力を借りることも必要です。また、独力でなしうる領域を広げておくことも大切です。大して考えもせずに問題集の答えを見てわかった気になってはいけません。同時に、解けない問題を前に腕組みをしているだけでは、何も得られません。答えを見て解き方を身に付け、次に同じような問題に出合った時に独力で解けるようになっていれば、実力が伸びたと言えるのです。

私たち教職員一同は、みなさんが頼ってきたら喜んでお力になります。しかし、時には「そんなこと、自分でしろ」と言うかもしれません。その言葉の裏には、今私が述べたような考えがあるのです。

本日は、ご入学、本当におめでとうございました。

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欠席理由書

9月11日(水)

「じゃあ、授業を終わりますが、今から名前を呼ぶ人はちょっと残ってください。Aさん、Bさん、…。ほかのみなさんは、気を付けて帰ってください」と、数名の学生を授業後に教室に残しました。何だろうといった顔つき、もしかすると…といくらかうつむきがちの学生、もう覚悟は決まっていると言わんばかりの学生、そんな学生たちに配ったのは、欠席理由書です。前月の出席率が80%を下回った学生に書いてもらうことになっています。入管提出資料にしますから、おろそかにはできません。

Cさんは身内に不幸があって一時帰国したためですから、理由がはっきりしています。Dさんも病気治療という納得できる理由があります。Eさんは具合が悪い日もありましたが、なんとなく休んでしまった日もあります。入管提出書類に、まさか「なんとなく休んでしまいました」とは書けませんから、非常に苦しくなります。たとえ病欠であっても、先月も先々月もその前の月も病気でたくさん休んだとなると、そんな病弱な体で本当に日本留学を続けられるのかという議論が湧き上がってきます。

学校の方も、いい加減な理由で欠席する学生が大勢いるとなると、学生管理能力を問われかねません。学生をかばってやりたい気持ちもありますが、あんまり甘い顔もできません。やはり学生の本分は勉強ですから、厳しく指導していく必要があります。それが、学生たちの将来につながるのです。学校に通う習慣すらつけられない学生が、高等教育など受けられるはずがありません。

出そろった欠席理由書、読むとやっぱり頭が痛いですね。

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