Category Archives: 成績

最後の仕事

10月4日(土)

クラス担任の最後の仕事は、成績通知票にコメントを書いて、それを各学生に送ることです。成績表そのものは、中間テストや期末テスト、日々の授業内に行う平常テストの平均点などがそのまま入りますというか、コンピューターが勝手に記入してくれますから、頭を使う必要はありません。しかし、コメントはそれぞれの学生に向けて自分の言葉で書き入れなければなりませんから、頭をフル回転させなければなりません。

非常にいい学生とどうしようもなく悪い学生は、ネタがいくらでも思い浮かびますからスラスラ書けます。悪い学生はネタを絞るのに苦労するくらいです。また、進学が決まった学生や受験の前にあれこれお世話した学生も、おめでとうとかよく頑張ったとか、いくらでも書きようがあります。まあ、この稿に登場するような学生には、何か書いてあげられるものです。

しかし、授業中に目立たず、成績も可もなく不可もなくといった学生は、書くのに苦労します。「次の学期も頑張ってください」では、いかにもおざなりで心がこもっていません。JLPTに合格していないかなと調べてみたり、コトバデーの時はどうだっただろうかと記憶をたどったり、クラスの日報の中にヒントはないかと当たってみたり、果ては教科書を開いてとっかかりを探したり、思いつく限りの手を使います。たいてい何か見つかるものですが、地味一筋の学生には、本当に頭を抱えてしまいます。

今学期は、幸いにもそういう学生は少なく、午前中に書き上げることができました。でも、同時に、多くの学生がこの10月期に進路決定を控えていることを改めて感じ、どう指導していくべきか、新学期の課題がいきなり突き付けられました。

新学期は、来週水曜日からです。

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組み合わせ

9月20日(土)

毎学期実施している上級の実力テストの採点をしました。私のクラスは、予想通りというか順当にというか、授業の時に“こいつできるな”と思った学生が好成績でした。欠席がちな学生や、出てきてもぼんやりしているような学生は、悲惨な成績でした。

この実力テストは、進級の可否には関係ありません。来週の期末テストでしかるべき点数を取れば、実力テストの結果が悪くても進級できます。1つ上のレベルではなく、もう1つ上のレベルに飛び級したらどうかと声をかける時などに参考にします。もちろん、次の学期の教材選定や授業の進め方の決定の際も判断材料の1つにします。

期末テストは、授業で取り上げたことが理解できたかどうかを見るテストです。まじめに出席し、教師の話をよく聞き、グループワークなどにも積極的に参加してきた学生が、点が取れるようになっています。実力テストは、学生にとって初見の文章から問題が作られます。ですから、まじめに出席していなくても点が取れることだってあります。

学生の日本語力をより正確に表しているのは、実力テストでしょう。じゃあ、実力テストの成績順にクラス編成すればいいかというと、そういうわけでもありません。やっぱり、クラス内にも多様性が必要です。同じタイプの学生ばかりだったら、刺激に乏しいクラスになってしまいます。

そういう意味では、今の私のクラスはほどほどに成績もキャラクターも人生経験もばらついています。グループ活動をすると、学生たちは毎回“へーぇ”と感じさせられているようです。

とはいえ、このクラスも解体しなければなりません。どんな組み合わせにしたら、学生たちに新しい“へーぇ”を配給できるでしょうか。

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採点デー

6月20日(金)

昨日の期末テストの採点をしました。私の担当は、読解3クラス分です。1クラスは最上級クラスで、私が作った問題ですから、自作自演みたいなところがあります。残り2クラスは、今学期木曜日に入っていたレベル3です。こちらはO先生が作成された模範解答と採点基準に則って採点しなければなりません。

レベル3だと、答えの型を重視します。例えば、「なぜ~です(ます)か」「~はどうしてですか」など、理由を聞く問題には「~から(です)」と答えることになっています。「なぜ外国人観光客が増えているのですか」に対しては、「円安が進んでいるからです」と答えます。「円安の進行」ではマイナス2点です。

ところが、授業でやっているにもかかわらず、「円安の進行」タイプの答えが多いです。「円安が進んでいるからです」と答えた学生は、クラスの上位者ばかりでした。中位以下の学生は、テスト問題を見ると、心の余裕がなくなってしまうのでしょう。

それから、問題文から延々と抜き出した答えも困ったものです。解答欄が1行しかないのに、細かい字で3行分ぐらい書く学生が多くて、目が痛くなりました。自分のクラスなら“私が読めない答えは全部×”と宣言してしまうところですが、そんなわがままは許されません。目薬を差しながら採点しました。これも、上位者は必要なところを要領よくまとめています。

最上級クラスのテストは、授業内で考えたことや議論したことを中心に出題しました。ですから、自由解答みたいな問題がいくつかありました。読解の日に休みがちだったCさんはほぼ白紙、いつも真剣に聞いていたAさんやYさんはほぼ完答。期末テストは日本語力を判定するテストではなく、勉強したことを確認するテストです。ですから、模範解答はあるようなないような、上述の自作自演とはそういう意味です。

明日は、選択授業の小論文の採点をします。

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楽しい授業の後で

6月16日(月)

月曜日のレベル1のクラスも、ついに最終回。楽しく盛り上がって終わりたいところですが、このくらす、進度が若干遅れ気味ですから、少しでも追いつくようにガンガン進めていかなければなりません。そういう時には、教科書をベターッとやっていくのではなく、学生が上のレベルになってからもなかなか使えるようにならない項目に力を入れます。いつの間にか身についていくような表現は、サラッと扱います。

サラッと扱うにしても、学生にとっては勉強すべき、覚えるべき事柄がたくさんあることには変わりありません。普通に教えていては頭の中に残りませんから、インパクトを強くし、印象付けることを考えます。体を動かしたり画像や動画を見せたりいつもとは違うクラスメートと話させたり、こちらも精いっぱい頭を使います。

レベル1も最後のほうになると、結構しゃべれるようになります。そうなると、教師もついうれしくなって、予定外の行動に出てしまうこともあります。その期待に応えて、こちらが用意した応用タスクをうまくこなしてくれたり、こちらの予想以上の反応を示してくれたりすると、うっかり調子に乗ってさらに余計なことまでしてしまうこともあります。でも、進度を稼ぐことが本日の第一使命ですから、そこは我慢しなければ。

という感じで、最後の授業も無事に終わりました。“よかった、よかった”といきたいところですが、授業後に先週のテストの再試を受ける学生がクラスの半分ぐらいいました。木曜日が期末テストですから、受けられる日が限られています。再試者が1人か2人なら、その場でフィードバックするのですが、これだけの人数となるとそういうわけにもいきません。全員分の答案を職員室に持って帰り、じっくり採点しました。

ここで頭の痛いことが。再試者の1/3以上が不合格なのです。授業中に私と一緒に調子に乗っていた学生も含まれています。授業、ちょっと軽すぎたかな。でも、勉強していないことも明らかです。先週のテストでは同じぐらいの点だった学生が90点以上で合格しているのですから、勉強不足と断じざるを得ません。

3日後が期末テストという時期に及んでこんなことでは、進級が危ういです。私たちこのクラスの教師にも責任の一端はありますが、学生自身が勉強しないことには、今後大きく伸びていく目はないでしょう。

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それぞれの結果

2月8日(土)

12月のJLPTのデータをまとめました。良い方にも悪い方にも、大きな番狂わせはありませんでした。授業中ほとんどしゃべらないAさんが意外と高い点数でN1に合格したことや、授業中の様子を見ている限りAさんよりずっとよくできそうな感じがするNさんが落ちたことぐらいでしょうか。12月の時点でレベル1だったTさんが、ぎりぎりではない点数でN2に受かったことは、レベルだけを見れば番狂わせに加えてもいいですが、毎日Tさんを見ていたクラスの先生はどうご覧になるのでしょうか。

番狂わせはなくても、毎回出てしまうのが、合計点では合格ですが、ある科目が合格基準点に達していないために不合格になってしまう例です。読解が60点満点で9点では、聴解が満点でもN2の実力があるとは言えないでしょう。基準点未満の科目があって落とされる学生は、ほぼ全員漢字がネックになっています。Gさんの先学期の面接記録を読むと、予復習は全然していないと書かれていました。また、中間テストに比べて期末テストは、成績がガタッと落ちていました。これからすると、むしろ、聴解でよく満点が取れましたねということになります。

就職が決まっているHさんはN1に合格しました。技術を見込まれて入社試験に通ったとはいえ、N1はあって困るものではありません。日本でずっと暮らしていくつもりなら、なおさらのことです。

ZさんがN1の、CさんがN2の、それぞれ校内最高点というのも妥当なところでしょう。CさんはN1を受けても受かったかもしれません。

一番困るのは、出願したのに受験しなかった学生たちです。試験日に体調不良だったのかもしれませんが、試験日に体調を最高のコンディションに持って行くのも、試験の1科目です。

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納税期

12月17日(火)

期末テストが近づくと、年貢の納め時の学生があちこちに現れます。中間テストの時は、まだ学期が半分残っている、期末テストで逆転して見せると、多少の余裕も見られます。追試再試の先送りもよくある話です。しかし、期末テストとなると、そんな余裕もなくなり、受けるべきテストの先送りも許されなくなります。未受験のテストは0点だったものとみなして平均点を算出しますから、そのせいでその科目が不合格になることだって十分あり得ます。

Gさんはその年貢を一生懸命納めようとしています。不合格だったテストを次々と受け、なんとか合格点にまでこぎつけようとしています。直前まで2階のラウンジで勉強し、1階に下りて来てテストを受けるという繰り返しです。覚え込んだことを忘れないうちにテスト用紙に書き込もうという魂胆です。瞬間最大風速みたいな点数を出して、ぎりぎりでも合格しようというつもりです。

その作戦が功を奏してか、このところ受けた漢字や表現のテストは、どれも合格点を取っています。平均点も合格点を確保しました。あさってが期末テストですから、そうやって無理やりにでも詰め込んだものが、多少は残ってることでしょう。図らずも期末テストの勉強にもなっているのです。

Gさんはそうやってどうにか年貢を納め切って、期末テストでひどいことにならなければ進級できそうです。その一方で、LさんやZさんは置かれた状況はGさん以上に厳しいものがあるのですが、動いてもいませんし、動く気配すら見せていません。進級をあきらめてしまったのでしょうか。Kさんも当落線上にいるはずなのですが、自覚が感じられません。私が買い物に出た時、恋人と腕を組んで歩いていました。

ここに登場したみなさん、果たしてメリークリスマスになるのでしょうか。よい新年を迎えられるのでしょうか。

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メモ魔歓迎

11月16日(土)

中間テストの聴解を採点しました。すべて記号(番号)で答える形式でしたから、採点そのものは楽でした。できると思っていた学生は高得点を取り、授業中からダメっぽかった学生はせいぜいぎりぎり合格点で、結果はおおむね予想通りでした。

高得点の学生とできない赤点の答案用紙を比べると、メモの量が全然違いました。100点だったSさんも95点だったCさんも90点だったGさんも、みんな細かい字で聞き取った情報をメモしていました。80点以上だった学生は、ほとんどが、母国語であったとしても、メモ欄を大いに活用していました。

一方、最低点だったLさんをはじめ、不合格になった学生は、メモ欄がほぼ白紙でした。何も聞き取れなかったのかもしれません。Jさんは、授業中の様子を見る限り、満点に近い成績だろうと思っていたのですが、80点に届きませんでした。メモ欄は真っ白でした。Jさんもきちんとメモを取っていれば、高得点組に名を連ねたのではないでしょうか。

授業で聴解をするときは、メモを取るようにと口を酸っぱくして注意しています。しかし、ボーッと聞いているだけの学生は、どのクラスにも必ずいます。聴解問題には何を聞き取るのかという指示がありますが、それすら理解できず、だから何をメモすればいいかわからないという可能性もあります。そうなると、どこから指導していけばいいかわからなくなります。

とはいえ、中には聴解の天才がいます。数年前の学生Kさんは、ずっと集中して問題を聞き、決してメモを取りませんでした。そして、問題が終わるや否や、自分の答えの番号をマークしました。最後に採点すると、正答率は、悪くて9割でした。爪の垢をもらっておくべきでした。いや、聴解ですから、煎じて飲むなら耳の垢の方が効き目があるでしょうか。

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選択

10月31日(木)

「7月の私はバカでした」と、日本語プラス物理の授業が終わった直後にWさんが叫びました。Wさんは理系の学部に進学しようと思っています。6月のEJUの理系科目で思った以上の高得点を取りました。そこで喜んで東京の有名私大への進学を考え始め、資料を集め始めました。「A大学とB大学と、名前を言ったときのインパクトが強いのはどちらですか」なんていうような質問もしてきました。「A大学もB大学も知らない人がいないくらい有名だけど、それは文系の大学としてだから、理系の学部はあまりお勧めしないな」などと答えると、不満そうな顔をしていました。

ところが、最近になって、ようやくそういった有名私立大学は授業料が高いことを知り、また、自分が勉強したいことが勉強できそうもないこともわかり、冒頭の発言に至ったというわけです。「国立のZ大学は書類審査だけですから、6月の点数で合格できるかもしれません」と。すぐにでも出願しそうな勢いだったのですが、結局出願せずじまいでした。それもまた後悔につながっているようです。

「国立のY大学とX大学に出願しようと思っていますが、私の点数で合格できますか」なんていう質問をするようになりました。どちらの大学も、はっきり言って田舎にあります。そういう大学の名前を、決していやそうな顔でなく口にするようになりました。夏あたりは大学に入ってチャラチャラするつもりもあったようですが、このところは堅実な考え方に向かっています。

Wさんの変身の影にはVさんがいます。同じ理系のVさんは、ずっと国立と言っていました。そして、C大学やD大学のようなチャレンジ校のほかに、U大学やT大学のような、自分の勉強したいことが勉強できて、なおかつVさんの成績で手の届きそうな大学を見つけてきています。間近にそんな友人がいると、Wさんも自分の志望校を見直してみようという気になったのでしょう。

2人とも11月のEJUで点数の上積みを狙っています。そして、本当の意味での志望校に挑戦しようと思っています。EJUは、10日後です。

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経験者は強い

10月15日(火)

日本語プラスが始まりました。午後から、11月のEJUに向けた授業をしました。

まずは記述。初めて記述に挑戦する学生もいましたから、記述の全受験生平均は33点だから、最低でも35点は取れなどという目標点数と、文章構成を説明しました。制限時間30分で400~500字の文章を書くのですが、やはり経験者は早いですね。書き上げてあまりに暇そうにしていましたから、間違いがないかどうか、もう一度読み直せと指示を出したほどです。

次は理科。こちらも2科目で80分という制限時間内でどんどん答えていかなければなりません。各問は決して難しくないのですが、1問2分程度で答えを出さなければならないところに難しさがあります。5分かけても答えが出せなかったらとりあえず後回しにしろという指示を出して、問題を解かせました。60分ほどで初挑戦組の1名がギブアップしました。知識が足りなかったと言っていましたが、問題文の日本語の読解ができなかったというのが最大の要因ではないかと思います。

さて、記述を採点してみると、やはり上級の学生は50点に近い成績でした。中級になると、35点がやっとぐらい。初挑戦組は400字に達しないというか、結論に至らなかった学生もいました。来週は、そういうあたりをフィードバックして、書くスピードを上げるようにしていきます。

理科も、経験者組が圧勝でした。ケアレスミスを犯さなければ、本番でも高得点が期待できます。経験者組は「国立」と言っていますが、十分可能性があります。

本番まで1か月足らずの短期決戦です。こちらも油断なく身構えて行かねばなりません。

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点数は正直

10月4日(金)

先学期の担当クラスのデータチェックをしていたら、会話の中間タスクと期末タスクの成績が未入力でした。これでは学生に成績表を渡せませんから、急いで入力しました。

中間タスクはペアでのロールプレイ、期末タスクはグループで調べたことの発表でした。中間タスクは普通体でのくだけた会話、期末タスクは丁寧体でのわかりやすい説明を見たことになります。どちらもコミュニケーション力を構成する太い柱です。だから両方ともできてほしいのですが、そういう学生はなかなかいません。唯一、Lさんが中間も期末も高得点でした。Lさんは授業中の発言も多く、同国人にも母語を使って話すことはありませんでした。やっぱりねという感じでした。

次はHさんとPさんでしょうか。Lさんよりは発言が少なかったですが、普段から話すときは単語や単文止まりではなく、勉強した表現も織り込んで、考えたことを伝えていました。CさんやGさんは、会話よりも発表が高得点でした。この2人はおとなしいので、会話のキャッチボールよりは自分のペースで調べたことを語る方が性に合っていたのでしょう。逆に、ZさんやJさんは、会話の方が振るっていました。調べたことを原稿にしたまではよかったのですが、それを棒読みしてしまったことが響きました。

Wさんは、どちらもお情けで合格という点数でした。指名されたとき以外はしゃべらないし、しゃべっても単語を並べるだけでした。おそらく、学校外では日本語を使っていないのでしょう。KCPを出た後、日本社会でうまくやっていけるのか、心もとない限りです。

学生の特徴を意識して採点したわけではありませんが、成績には学生の特徴が現れるものだと、妙に感心してしまいました。

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