熱演が無駄

12月3日(木)

「はい、ここまでのことで、質問ありませんか。……ない? なかったら、例文を書いてください」と、学生たちに今やったばかりの文法を使った例文を書かせました。文法の授業を締めくくる恒例の儀式と言ってもいいでしょう。

学生が例文を書いている最中、私は教室中を回って、学生たちの手元をのぞき込みます。もちろん、密にならず、変なプレッシャーを与えずという距離は保ちます。学生が作ったばかりの悪い例文を見つけ出し、どこが悪いか学生全員に考えてもらいます。同時に、私の説明が足りなかったところや練習が必要だったところを補います。

Cさんの例文を見ると、私が書いてはいけないと注意したタイプの例文でした。赤で板書し、ホワイトボードをたたいてここが重要だと訴えたのに、それを無視した例文を作っていたのです。すぐに、教室全体に響く声で、「こういう文を書いてはいけないって言いましたよね。思い出してください」と再度注意しました。Cさんも、書いたばかりの例文を消して、また考え始めました。

ところが、Cさんの教科書やノートを見てみると、私が赤で書いた重要ポイントも、ホワイトボードをたたいて強調した注意点も、何も書かれていませんでした。わずかにその文法の意味しか記されていませんでした。参考になるのがそんなメモ書きみたいなものしかなかったら、教科書の例文を見たって、どこに目を向けるべきかわかるはずがありません。

Cさんみたいな学生は、板書事項をまとめた解説を配ったって、おそらく見ないでしょう。学生が書いて提出した例文は添削して返しますが、教師が入れた赤は読んでいないに違いありません。その証拠に、Cさんのこの前の文法テストは…、いや、お恥ずかしくて点数は明記できません。

2度目の解説はきちんと聞いていたようで、Cさんが提出した例文は、一応要点は捕らえていました。でも、別のところに文法ミスがあり、○にはできませんでした。その文法を勉強した時も、ろくにノートを取っていなかったんでしょうね。

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