Category Archives: 自然

猫の額の木陰

7月1日(金)

新しい月が始まり、2022年の後半戦が始まりましたが、いきなり今年1番の暑さ、37.0度です。桐生とか伊勢崎とか勝沼とか、40度を超えたところよりはましだと思わなければいけないのでしょうが、数字を見ただけで元気がなくなります。

校舎に入ってくる人は、学生も教師もみんな温度センサーに引っ掛かります。駅の方から来ると、玄関に入る直前、ほんの数十メートルだけ日なたを歩くのですが、それが命取りになります。髪や服やかばんなどがその間にたっぷり熱を蓄えてしまいます。私は、郵便局の前の公園を一周して、木陰で熱を冷ましてから校舎に入るようにしています。そうすると、アラームに驚かされることはありません。

こうしてみると、木陰の威力って大したものです。あんな猫の額の半分ほどの公園に植わっているわずかばかりの木でも、私の体や持ち物から熱を奪ってくれるのです。涼しいというレベルには至りませんが、日なたを通って来た人たちとは明らかに違う結果になっているのですから。

こういう働きをする木を、安易に切り倒してしまったり、落ち葉の処理に手がかかるからと枝を払ってしまったり、日本中で虐待しています。世界各地で発生している森林火災だって、自然発火が原因の場合でも人災的要素が見逃せないと言います。近い将来、体温測定のアラームが鳴るだけでは済まない事態がもたらされてしまうかもしれません。

天気予報によると、来週は多少気温が下がりそうです。でも、湿度が上がりそうなので、結局、蒸し暑くてかなわんということになりそうです。体力を温存しつつ、新学期の準備を進めていきましょう。

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倒れた鳥居と、暑さに耐える

6月20日(月)

能登半島で地震が相次いでいます。震度5~6ですから、“ちょっと揺れたね”ぐらいでは済みません。現に、昨日の地震では震源地近くの神社の鳥居がばったり倒れました。崩れ落ちたのではなく、根元からぽっきり折れて、そのまま90度のめったみたいですね。志賀原発は異状なしとのことですが、震度6弱だったらねじ1本緩んでも困ります。

地震、原発と言えば3.11ですが、先週、あの事故で国には責任はなかったという最高裁判決が出ました。国や原発推進に関わる人たちは喜んでいるようですが、それは皮相的な物の見方だと思います。考えようによっては、国には責任能力がなかったという判断だとも言えます。つまり、国には原発に対してどうのこうのと言えるだけの知識も判断力もなかった、当事者能力が備わっていなかったということです。

あれから11年余り、国はそういった能力を磨いてきたか、許認可を与える責任能力をつけたかと言ったら、大いに疑問です。そういった方面においては何の進歩もなく、温暖化防止には原発がいちばんと旗を振っているに過ぎません。私にはそう見えます。

原子力発電は、原理的にはすばらしいと思います。デコピンをしただけで巨大なエネルギーが生まれるのですから。しかし、現在の科学技術をもってしても、その制御ができているとは言いかねます。エンジニアリング的には非常に大きな不安があります。つまり、原理の高尚さにエンジニアリングが追いついていないのです。

国が原発に責任を負えるようになるのがいつなのか、私にはとんと見当がつきません。この夏は電力事情がひっ迫するとのことですが、だれも責任が負えない怪しげな電力に頼るよりは、汗をだらだら流しながら、猛暑日と熱帯夜に耐えましょう。

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アラームのあとで

5月28日(土)

朝からけたたましい警告音が何度も鳴り響きました。初夏の日を受けて校舎内に入ると、髪や服やかばんなどが部分的に37.5度以上になり、温度センサーに引っ掛かってしまうのです。コンビニや喫茶店で買って持って来た飲み物が反応することもあります。教師はきまり悪そうに持ち物を衝立の向こう側に置いて、入り直していました。受験講座を受けに来た学生も、ほぼ全員がアラームにびっくりしていました。日陰で服や体を冷ましてから再挑戦する学生も。10時少し前に玄関の外に出て空を見上げると、かなりの高度にお日様がいました。

その10時から、新入生のウェルカムパーティーがありました。今回は、今までとは違って、上級の在校生に声を掛けて来てもらいました。そして、新入生というか、最近来日したばかりの学生たちと数名ずつのグループになって、留学の心得を伝えたり、日常生活のアドバイスをしたりしてもらいました。

グループを作る前に一言ずつしゃべってもらいましたが、みんな日本語がうまいですねえ。まあ、そういう学生を選んではいるんですがね。学生の話す力が落ちているんじゃないかと危惧していましたが、この学生たちならどこへ出しても通用するでしょう。

グループで話し始めると、話が止まりません。新入生側は聞きたいことがいっぱいあり、在校生側は語りたくてたまらないのですから。レベル1の新入生も、及ばずながら日本語で話そうとしていたのがほほえましかったです。こういう経験が、弾んだ会話ができるようにもっと勉強しよう練習しようという意識向上につながるのであれば、まさに一石二鳥です。

予定をずいぶんオーバーしてしまいましたが、みんな満足そうでした。そして、ほぼ真上からの日差しを浴びながら帰って行きました。

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北の海に想う

4月25日(月)

私が知床半島へ行ったのは学生時代ですから、もう40年ぐらい昔のことです。斜里(今は「知床斜里」というそうです)駅からバスで知床五湖まで言った記憶があります。さわやかな好天に恵まれ、知床連山をバックに、気持ちよく五湖めぐりができました。さらに奥地まで進みたいという気持ちが湧き上がったのと同時に、これ以上奥に進んだら自然の神秘を侵すことになるとも思いました。私が足を踏み入れることによって知床の自然が破壊されたら、何の意味もないではないかと思ったのです。

だから、白神山地も屋久島も、行ってみたいですが行っていません。縄文杉のパワーに打たれてみたいです。青池の青さに吸い込まれてみたいです。でも、それは、気持ちだけにとどめておきます。富士山にも登りたいです。日本の最高峰を極めたいですしまし、登山者数はすでに飽和以上だと聞いていますから、冬晴れの日に東京から拝むだけにしています。

知床の海に散ったみなさんのご冥福を心からお祈りするとともに、行方不明の方々が一刻も早く救出されることを願ってやみません。でも、このニュースを耳にした時にまっ先に感じたのは、観光客も船会社も一線を越えちゃったのかなということです。ここには近づいてはいけない、見てはいけないという領域に踏み込んでしまったので、反撃のパンチを食らったのではないかということです。一線を越えた人は今までにも大勢いたのに、あの船に乗り合わせた人たちだけがこのような目に遭うとは、一罰百戒的で理不尽な気もします。

それ以上に理不尽な目に遭っているのが、ウクライナの人たち…。

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三線の音

11月18日(木)

授業の休み時間に職員室に下りると、ちょうどO先生がいらっしゃったところでした。わずかな時間しかありませんでしたから、軽く会釈して教室に戻りました。O先生はつい先日まで、数か月沖縄にいました。授業が終わってから、その話をたっぷり聞かせてもらいました。

沖縄と言っても、O先生がいたのは、本島ではなく、西表島でした。沖縄本島でも十分に東京とは違う空気を吸えますが、西表島ともなると、完全に文化の違いを感じるそうです。東京から直線距離で2000キロ、本島からでも500キロ近くあります。気候風土が大幅に違いますから、そこから紡ぎ出される文化も違って当然です。

マングローブや海に沈む夕日は、もう見飽きたと言っていました。街灯がないため、満月の明るさが存分に感じられるそうです。月明かりだけを頼りに歩くって、小説の中でしか知りません。前世紀末、まだこの仕事を始める前、中国の砂漠の端っこで満点の星を見上げましたが、それとはまたひと味違うのでしょうね。

O先生は持ち前のコミュ力を生かして、島の人と自然と社会から多くのことを吸収しました。島は人口が少ないため誰もが顔見知りなこと、よそ者のO先生にも気安く声をかけてくること、島外から運ばれるものは非常に高いこと、イリオモテヤマネコがヒトを含めた生態系の頂点に立っていることなど、興味深い話をたくさんしてくださいました。そして、島で覚えた三線を披露してくれました。「まだまだ」とのことでしたが、素人の私は、たっぷり沖縄情緒に浸れました。

話を聞いているうちに、うらやましくなりました。私は、旅行者として西表島を訪れることはあるかもしれませんが、O先生のように長期間滞在してこんなにも多くの得難い経験を手にすることはないでしょう。年齢とバイタリティーの差は、いかんともしがたいものがあります。せめて来年の夏休みこそは、3年ぶりに有意義に過ごしたいものです。これも感染状況次第ですが…。

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上がったり下がったり

2月22日(月)

土曜日ぐらいから暖かい日が続いていますね。最高気温が21~22度というと、桜の季節の先です。そんなわけで、お昼(と言っても3時半ごろですが)は、花園小学校の校庭の隅で過ごしました。

私の“お昼”は、食事もそうですが、読書の時間でもあります。ですから、陽気がよければ外でもいっこうにかまいません。いや、温かな風に吹かれてページを繰ると、建物や電車の中で読むよりも気分がいいです。

ここ2、3日ほど暖かいとはいえ、花園小学校の桜はまだつぼみすら定かではありません。これであと1か月もすれば本当に桜は咲くんだろうかという感じでした。でも、週末にうちの近くの隅田川の土手に植えられている桜並木の枝をしげしげと見た時には、つぼみがもう少し膨らんでいました。花園小学校の桜は日当たりがあまりよくないですから、花の生育が遅れているのかもしれません。

20度を超えると、アメリカやマレーシアの学生は半袖で登校してきます。確かに真冬の装備は要りませんが、夏装束はやり過ぎだろうとツッコミを入れるのが、この時期の恒例行事です。しかし、今年はオンライン授業ですから、そんな軽口もたたけません。zoomの画面では顔を確かめるのが精いっぱいで、服装の変化までは観察できません。まあ、暖房が効いていたら真冬でも半袖で過ごせちゃいますがね。

週の半ばからは、また、気温が下がるそうです。週末は季節が逆戻りするくらいの寒さになるという予報が出ています。三寒四温、春になりかけのこの時期は、気温もジェットコースターです。

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春の気配

2月13日(土)

私が春を感じるのは、出勤した時に、学校の前の道から見える東の空がわずかに明るくなり始めるころです。今週の初めぐらいから、東の空の色が頭上の空の色よりわずかに薄くなり始めました。空がオレンジ色に染まるよりはるかに手前で、まだ白黒の世界です。ビルのすき間(谷間にも満たない狭さです)が白んだかなという程度に過ぎません。それでも、なんだか心が浮き立ちます。

職員室で受験講座の資料作りに励んでいると、O先生が「咲きました。いい香りですよ」と、梅の小枝を持って来てくれました。7階のお茶室の庭に咲いていたそうです。オンライン授業が続き、茶道部も活動ができません。久しぶりにお茶室に足を運んだO先生が、白梅のほころんでいるのを見つけたというわけです。梅の小枝は、O先生が一輪挿しに生けて、受付に飾ってくださいました。

お昼過ぎにZさんが来ました。去年の新入生ですが、W大学の大学院に受かったので、今学期いっぱいで退学します。その手続きを聞きに来たのかと思ったら、T大学の大学院も受けているけれども、そっちも合格したらどちらに進学した方がいいかという相談も受けました。「日本人だったら90%以上T大学だろうね」と答えると、退学手続きはT大学の発表の後まで待つということになりました。表情からすると自信ありげでしたから、期待してもいいかもしれません。

私がZさんの相談を受けている隣で、Kさんが志望理由書を書いていました。来週早々出願ですから、担任のO先生のチェックを受けてすぐに清書しているという次第です。O先生の顔をのぞき込むと、梅を生けていた時とは打って変わって、渋い表情をしていました。KCP全体の春は、もう少し先のようです。

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朝日が沈む

11月12日(木)

この時期、私の出勤時間帯には、東の空がわずかに明るんでいます。御苑の駅から靖国通り方面に向かって進み、靖国通りの直前でKCPの方へ曲がると、ちょうど朝日の昇る方角になるのです。

2月の末ごろ、同じように出勤時の空にほの明るさを認めると、春が近づいてきたなと感じます。まさに光明を見出したわけであり、厳しい冬を乗り切った自分をほめてやりたくなります。気が付くと口元が緩んでいます。

しかし、今どきの同じような空の光景には、もう二度と光の世界に戻れないのではないかという恐怖心すら感じます。体を丸めて寒風に耐える自分が見えてきます。

いつの間にか、東京の最低気温が10度を割るようになりました。今朝は、あまりの風邪の冷たさに、マフラーを用意しました。でも、コートはまだです。それは、スーツの上着の下にカーディガンを着込んでいるからです。このカーディガンが意外に暖かく、コートなしでも苦になりません。

では、なぜカーディガンを着ているのでしょうか。それは、校舎内全体が寒いからです。換気のために窓とドアを開けっ払って授業をしていますから、校庭で授業するのと大して変わりありません。まさかコートを着て授業を行うわけにもいかず、夏の初めごろ在庫処分セールで買ったカーディガンが登場したというわけです。好判断をした半年前の自分をほめてやりたいです。

でも、まだ冬の入り口です。しかも、この先気温は平年を下回りそうだという長期予報も発表されています。ずっと換気優先の教室で授業していけるでしょうか。教室の暖房の設定温度を25度ぐらいにしないと、暖かい感じがしません。電気代がかさみそうです。

今年は、出勤時に朝日が見えなくなるのが一層寂しいです。

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コロナよりも恐ろしい現実

3月31日(火)

世界中がコロナで大騒ぎしていますが、実は日本でとんでもないことが起こっているのです。

今年の東京の桜は、3月14日に日本でいちばん早く開花しました。満開も3月22日と、やはり日本でいちばん早かったです。桜前線は北上を続け、現在、仙台まで開花が確認されています。ところが、南国九州鹿児島では、まだ桜が咲いていないのです。鹿児島県内に咲いている桜が1本もないとまでは言いませんが、鹿児島市内のソメイヨシノの標準木は、いまだつぼみのままです。とうとう3月中に桜は咲きませんでした。いまだに咲いていないのは、北海道と、仙台・福島を除いた東北、それに長野・新潟です。いずれも北国・雪国です。

鹿児島がそんな地方と同じくらい寒かったのかというと、もちろん違います。むしろ、冬が暖かすぎたからなのです。桜の花が咲くには、暖かくなる前に、ある程度の寒さが必要です。低温の期間がないと、花の芽が形成されず、したがって花も咲きません。今年は全国的に暖冬でしたが、鹿児島では暖冬過ぎて花芽が形成されるだけの寒さに達せず、桜が咲かなくなってしまったのです。

鹿児島から約370km南にある奄美大島の名瀬では、桜の標準木がソメイヨシノではありません。ヒカンザクラです。名瀬以南はもともと暖かいですから、ソメイヨシノは咲かないため、ヒカンザクラを桜の標準木としています。鹿児島も、沖縄や奄美大島と同じように、ソメイヨシノが咲かない(咲けない)地域になってしまったのかもしれません。

コロナは、いずれ近い将来、ワクチンが開発されるでしょう。そうなれば、今のインフルエンザと同じように、ときどき大きな流行はあるものの、今年のように世界中の人々を恐怖のどん底に陥れるようなことはなくなると考えられます。しかし、地球温暖化にはワクチンはありません。そう遠くない将来、東京が今年の鹿児島のようにならない保証はどこにもありません。

コロナという目の前の災厄に対峙することも大切ですが、鹿児島の桜が仙台よりも遅くなったという現実も絶対に忘れてはいけません。

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どこでお花見?

3月24日(火)

東京の桜はすでに満開ですが、今年は私の定点観察ポイント、毎朝のお楽しみ花見スポットが、具合が悪いことになっています。丸ノ内線四ツ谷駅の荻窪方面行きホームの屋根を延長する工事をしているため、満開の桜の前に鉄パイプの足場が組まれているのです。ですから、電車の窓越しのお花見が台無しになっています。花が見えないことはありませんが、去年までのように目を奪われるような美しさは感じられません。朝のささやかな目の保養ができない状態です。

午前中、証書をもらいに来る卒業生が少なそうなでしたから、パンでも買って、花園小学校の校庭の桜を愛でながら、少し早めのお昼にしようと思って外に出ました。ところが、青空なのに風は冷たく、あっさり計画を中止して、うどん屋に入ってしまいました。きのうの朝は日曜日の暖かさが残っていましたから、今シーズン初めて、コートを着ないで家を出ました。しかし、今朝はコート+マフラー+手袋と、真冬モードに逆戻りです。日中になっても気温はあまり上がっていないようでした。

気象庁のページで調べてみると、私が出歩いていた頃の気温は10度をどうにか超えていましたが、北西の風が6~7mぐらい吹いていたようです。体感気温は真冬の寒さだったと言っていいでしょう。うどんで温まったのは正解でした。桜は盛りですが、春はまだ浅いといったところでしょうか。

四ツ谷駅の工事が今すぐ終わるとは思えませんから、今年は横着しないでどこかへ足を運ぶことにしましょう。ただ、心配なのは、屋根のほかに壁もできて、来年から桜が見られなくなることです。東京メトロさん、私のささやかな楽しみを奪うような無粋なまねはしないでくださいね。

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