かわいがり

2月10日(水)

新人のO先生をいたぶってしまいました。いつも面倒を見ているM先生が代講だったので、私がO先生の文法の下調べの出来具合をチェックすることになったのです。

O先生は文法書を見たり自分で例文を作ったりして、各文法項目について調べてきてはいました。でも、私がその分析結果の隙をついて悪い例文を並べると、とたんに言葉が詰まってしまいます。私は学生のとんでもない例文を腐るほど見ていますから、勘違いのポイントもわかります。そのポイントに合わせて非文の例文を作ることぐらい、朝飯前です。私の作った例文は、Oさんが自分で作った基準に当てはめると〇なのですが、感覚的には×です。どこが引っ掛かるのか、なぜダメなのかがわからず、呻吟し続けていました。

文法書の内容を伝えるだけなら、学生たちに自習させれば十分です。文法書に書かれていないポイント、それをまねて例文を作ってもつかめないニュアンスなどを伝えてこそ、本物の教師です。O先生は文法書の行間を読み取ることがまだまだのようでした。

新人の先生には申し訳ないのですが、この辺の感覚はある程度場数を踏まないと身に付きません。場数を踏むと、どんな分析をすればその文法の特徴がつかめるかが見えてきます。教えたことのない文法事項にぶつかっても、どんな例文を出してどことどこを説明すれば学生たちに理解してもらえるかが、頭のなかにひらめいてくるようになります。

気がつくと1時間以上も変な例文を出してはO先生を困らせていました。相撲の世界なら「かわいがり」に相当するのかな。Oさんは、今は文法書と同じ地平にしか立てていませんが、来学期になったら丘の中腹ぐらいには立てるでしょう。そのとき、そのとき、どんな風景を目にするのでしょうか。

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