死なせないで

10月3日(金)

最近の研究は、文系理系を問わず、いかなる分野においても、定量性が求められます。“AはBより多い”ではなく、“AはBより15%多い”といったまとめ方がなされます。そういった研究結果を論文にするとなると、必然的に図表が多くなります。その論文から知見を得るには、図表を読み解かねばなりません。つまり、学問をするにはグラフを読み取る力が必要不可欠なのです。

そういうわけで、選択授業小論文の期末テストは、グラフから読み取ったことについて自分の意見をまとめるという課題を出しました。それを採点したのですが、頭が痛くなり、吐き気を催しました。

テストの際、ただグラフを配っただけではなく、読み取りの注意点の解説までしました。私は丁寧に説明したつもりでしたが、学生たちは勘違い大間違いを派手にやらかしました。“10万人当たり3.1件”を3.1%と思い込んだり、「CはDに含まれますから、この2つの数字を足してはいけません」と繰り返し注意したのに、足してしまったりしてくれました。さらに、想像をたくましくし過ぎて、勝手に何百万人も死んだと決めつけて議論を進めた学生も何人かいました。その一方で、容易に想像がつく社会的背景に触れた学生はごくわずかでした。これが入試問題だったら、合格者は2名ぐらいだったでしょう。

小論文クラスの学生は全員上級ですから、私の説明が理解できないはずはありません。グラフが読み取れないがゆえに、あらぬ方向に走ってしまったのでしょう。裏読み深読みを求めたわけではありません。表面に見えている事柄をそのまま書いてくれればよかったのですが、それができなかったんですねえ。

グラフの読み取りは理系人間の専売特許ではありません。ここでどうにかしておかないと、学生たちは進学してから苦労することになります。

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