10月6日(月)
みなさんは、い形容詞の語幹を感嘆詞的に使いますか。例えば、今年の夏なんか毎日でしたが、冷房の効いた屋内から外に出た瞬間、「あつ(暑)!」と、実際に口には出さなくても、心の中でそう叫んだりはしませんでしたか。学生たちもよく言っていましたから、現代日本語としてかなり浸透していると思われます。
さて、このい形容詞の語幹ですが、2拍のものが一番よく使われます。「あつ」「さむ」「くら」「おも」「こわ」「わる」「はや」「おそ」「やば」など、きりがありません。3拍となると、「ちいさ」よりは「ちさ」、「おおき」は「でか」、「おいし」は「うま」でしょう。長音を切り詰めて2拍にしたり、2拍の類義語を持ってきたりする例があります。それ以外となると、「みじか」「つめた」「うるさ」「きたな」は耳にしますが、「あかる」「かなし」「うれし」は聞きませんねえ。4拍以上になると、絶望的ですね。「うつくし」「あたらし」「おもしろ」「ほそなが」「あたたか」「のぞまし」「むしあつ」「けたたまし」「むさくるし」なんて、聞いたことがありますか。「むずかし」は「むず」になりますね。
とはいうものの、「けちくさ」「めんどくさ」「えげつな」「あほくさ」「びんぼくさ」「きしょくわる」など、ネガティブな意味の形容詞は、4拍以上でも“い”省略形が用いられます。そもそも、「あつ」「さむ」なども、不快感や意外、驚きを表す時に用いられ、だからこそ感嘆詞的なのです。「あま(甘)」と言ったら、単に甘いのではなく、甘すぎるとか、予想をはるかに上回る甘さだとか、甘やかしすぎているとか、そんな感情の発露だと思います。
この“い”省略形は、もともとは関西言葉でしょう。私は、半世紀以上も前に、京都に住んでいたいとこ経由で知りました。関東地方でも普通に使われるようになったのは、今世紀に入ってからではないでしょうか。もしかすると、スマホやSNSの普及と歩調を合わせているのかもしれません。ここから先は、私のような素人ではなく、どなたか専門家の研究にお任せすることにします。
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