Category Archives: 行事

春を感じる

3月8日(水)

毎年この時期は、茶道クラブの卒業生がお点前を披露してくれていました。しかし、ここ数年はお茶室の密回避のため、卒業記念のお茶会がありませんでした。今年は、新規患者数も大幅に減り、また、もうすぐ5類ということもあり、久しぶりに復活しました。私もクラスの学生から招待してもらいましたから、顔を出しました。

かつては1枚の畳に体を接するようにして何人も座りましたが、さすがにそれはできず、1畳に1人とスカスカでした。お点前はCさん。入学以来ずっとけいこを続けてきたとかで、所作も堂々としていました。お茶のお師匠さんと言われても、何ら違和感はありません。

私の方はというと、数年のブランクのせいで、うろ覚えだった正客としてのふるまいを完全に忘れており、学生を指導しているO先生に助けられてばかり。お菓子のおいしさもどこかに吹き飛んでしまいました。でも、久しぶりにいただいた抹茶の味には、疲れが消え去り、気力を奮い立たせるものがありました。

正座も久しぶりでした。最初は足がつりそうになりましたが、それをどうにか乗り越え、20分ほどのお茶の時間を何とか持ちこたえました。最近寝ていても何となく腰痛を感じていますが、正座している間はそういった鈍痛も出てきませんでした。私は昔から正座すると腰痛が和らぐたちなのです。

茶器などが片付けられたら、記念撮影。Cさんと同級生のQさんやSさんは足がしんどそうでしたが、笑顔でフレームに収まっていました。床の間で早春オーラを発散していた椿はきちんと写ったでしょうか。

いただいたお茶と正座のおかげかどうかはわかりませんが、午後の受験講座も調子よく進められました。

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地下活動に潜入

2月27日(月)

先週あたりから、演劇部が地下活動を続けています。演劇部は3月10日の卒業式で発表をする予定です。今年の卒業式はKCPの6階講堂ではなく、数年ぶりに四谷区民センターで行われます。そのステージに立とうと、N先生のご指導の下に、地下の多目的室で日々練習に励んでいるのです。私もチョイ役をいただいていますから、昼休みにその練習に呼ばれた次第です。

6階講堂ならマイクなしでも会場中に声が届くでしょうが、四谷区民センターとなるとそうはいきません。ですから、限られた本数のマイクをどう回すかも考えながらステージ上での動きを決めていきます。私も「Aさんからマイクをもらって…」と、マイクの動き指示も受けました。

私のセリフはほんの二言三言ですから知れたものです。でも、年のせいか、それがなかなか頭に入らないんですねえ。しょうがないですから言葉の勢いと動きで周りを圧倒して、セリフのあやふやさをごまかしています。まあ、大体どんなことを言えばいいかは頭に入っていますから、それに合わせていけば大崩れはしないでしょう。

学生たちは、セリフもたくさん出し、振り付けもあるしで、私の数倍かそれ以上に負担があるはずなのですが、みんな果敢にそれに立ち向かっています。練習のたびに改良案が出てきて少しずつ形が変わりますが、そんなことなどものともせずにどんどん吸収していきます。伸びようとする力は、見ていて気持ちがいいです。

来週の金曜日が本番ですが、それまでにみんなが揃って練習できる機会はそんなに多くありません。でも、この勢いなら卒業生へのすばらしいはなむけになるのではと期待させてくれます。

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初めての素顔

2月22日(水)

久しぶりに、新宿御苑へ行きました。去年の卒業式後に卒業生を連れて行って以来です。節分の日に春を探しに行こうと計画していたのですが、あまりの寒さに中止しました。そのリベンジという面もありますが、上級のクラス写真を早咲きの桜の下で撮ろうというのが主たる目的です。

前半の授業を終えて、11時少し前に学校を出ました。気温は上がっていませんでしたが、抜けるような青空で、風も弱く、覚悟していたより寒くはありませんでした。入苑時に御苑の職員がたっぷりお役所仕事をしてくれたようで、10分以上は待たされました。それでも、学生から「寒い」という声は聞こえてきませんでした。スマホに夢中だったからかもしれませんが…。

苑内は、ぱっと見は冬枯れですが、木々をよく見ると新芽を膨らませているのもありました。大城戸門からしばらく歩くと、下見でT先生が目をつけていた早咲きの桜が、白と濃いめのピンクの花を誇っていました。周りが殺風景なだけに、目を引きますね。スマホで接写している学生もいました。きっと、春のかけらが欲しいのでしょう。

写真の時は、屋外でもあることだし、マスクを外してもらいました。私にとって、大半の学生が初めての素顔でした。意外と子供っぽい顔、思ったより大人びた顔、勝手な想像とは逆にふっくらした顔、オンラインの画面で見た時よりもずっと精悍な顔など、実に様々でした。

そんな顔を見ながら、秋に進学したAさんや、病気のために帰国を余儀なくされたBさんや、今ここにいる学生たちと机を並べた面々を思い出しました。みなさんどうしているのでしょうね。

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心の鬼

2月3日(金)

節分の日は、かつては赤坂の日枝神社の豆まきを見に行ったものですが、日枝神社は今年も豆まき中止です。手近なところで午前中に豆まきをしている神社仏閣は少なく、今年は節分の翌日は立春ということで、春を探しに新宿御苑巡りをすることにしていました。しかし、日中も日が照らず、気温も上がらず、受験生に風邪をひかせては取り返しがつきませんから、教室で過ごすことにしました。

私のクラスでは、各人の心の鬼を発表してもらうことにしました。怠け心、傲慢さ、ゲームで派手に課金してしまうことなどといういかにも心の鬼といった回答が多かったです。その中で、Nさんは「自信がありすぎること」と答えました。

授業中のNさんは几帳面にノートを取っており、指名するとやや小さめの声で答えます。とても自信があるような答え方には見えません。でも、本人としては自信過剰なんですよね。確かに、Nさんの志望校はK大学をはじめ、超一流校ばかりです。冷静に見て、今のNさんでは、K大学には手が届かないでしょう。それでも受かると思っているとしたら自信過剰でしょうが、そういう自分自身を自信過剰だと評価しているのなら、謙虚なものではありませんか。一体、どちらなのでしょう。

受験生の心は不安定なものです。ある日自信過剰でも、翌日はそのすべてを失っていることだってあります。教室では表情を変えないNさんですが、私たちのうかがい知らないところで大きな波にもてあそばれているのかもしれません。

こういうことがわかったのも、福の神のお力でしょうか。

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どこへ行こうか

1月14日(土)

2019年以前は、節分の日に、学生を連れて豆まきを見に日枝神社へ行っていました。力士数名、有名人少々を含む方々が、仮設の舞台から福豆の入った袋をまき、我々下々の民はそれをダイレクトキャッチし、福をつかむという図式でした。袋の中に“当たり”が入っていると、景品がもらえました。氏子になっている企業がスポンサーになっているのでしょう。私なんかは、たくさんキャッチした学生から、“はずれ”の豆の袋を1つ2つ分けてもらうのが常でした。

2020年は、ちょうど感染が拡大し始めるころでした。日枝神社の豆まき自体は行われたものの、学生も教師も人込みを恐れて日枝神社まで行きませんでした。去年とおととしは、オンライン授業だったり、出かけるような空気ではなかったりということで、日枝神社なんて全く念頭にありませんでした。

今年こそは日枝神社復活と思ったのですが、残念ながら、今年も豆まきはしないそうです。他の神社へ行ってもいいのですが、午前クラスの授業にちょうどいい時間帯に豆まきをしてくれるのは、日枝神社ぐらいなのです。4時ごろからというところが多いようです。最近の感染状況や新しい菌株の感染力を見ると、現時点で予定しているところも中止に追い込まれるかもしれません。今年も教室でひっそりなんでしょうか。

豆まきの準備中の神社やお寺を見ても面白くないでしょうし、でも、教室で豆まきの動画を見るだけでは不完全燃焼のような気もします。もう少し、頭を悩ますことにします。

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二十歳を祝う会

1月13日(金)

授業が終わったら、本当は何人かの学生を捕まえたかったのですが、それをほったらかして6階へ。12時半から「二十歳を祝う会」が開かれました。

「成人式」というと、成人年齢が18歳に下がったので18歳が対象となりますが、やっぱり子供と大人の区切りは二十歳かなあ。18歳で成人になった人がまだ少ないからでしょうか、日本の多くの地域で「二十歳を祝う会」的な催しが行われています。

二十歳の学生と比べると、私はその3倍の期間を生きています。会場にいる学生が生まれたころ、私はすでに2つ目の仕事として日本語教師を選び、KCPで教えていました。でも、この仕事が選べたのは、その前の20年間があったからこそだと思っています。最初の仕事は化学会社の研究員・エンジニアでしたから、日本語教師とは縁もゆかりもありませんでした。ただ、文法について考えるのは好きで、また、暇さえあれば本を読んでいましたから、自然に語彙も増えました。司馬遼太郎をはじめ、多くの作家から珠玉の言葉を学びました。それがこの仕事に生きていることは、疑う余地がありません。

ですから、二十歳の学生にも、興味の幅を広げて自分を鍛え続けてほしいと思っています。私は、今の私を思い描きながら二十代、三十代…と生きてきたわけではありませんが、若い時にまいた種を、今、刈り取っています。私は、残念ながら、日本の国の外で学ぶ機会はありませんでしたが、学生たちはそのスタートラインに立っています。この留学生活を充実させれば、年を取ってからあでやかな人生が送れます。

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通訳の効果

1月12日(木)

学校になついている学生は、教師が手伝ってほしいと声をかけると、喜んで手を貸してくれます。声をかけずとも、荷物をたくさん抱えていると、「持ちましょうか」と言ってくれる学生が少なくありません。「持ちましょうか」さえ未習の初級の学生は、アイコンタクトで申し出てくれます。

このところ感染拡大防止のため活発ではありませんが、学校行事のスタッフも人気があります。こちらの指示が伝わることが前提ですから上級の学生に限られますが、いつも期待以上の働きをしてくれて、本当に助かっています。必ず機転の利く学生が何名か出てきて、その学生を中心に仕事が回るのです。

そんな教師のお手伝いの中で、学生の評価が一番高いのは通訳です。たまたま職員室の前を通りがかった学生を捕まえて初級の学生への通訳を頼んでも、まず間違いなく引き受けてくれます。だいぶ前のことですが、レベル2の学生にレベル1の学生への通訳をしてもらったことがあります。こちらはレベル2の学生にもわかるような日本語を話しているのですが、それを自国語に訳している学生の表情は、自信に満ち溢れていました。また、レベル1の学生の質問や意見を、つたないながらも、私にわかる日本語にしてくれました。「どうもありがとう」とお礼を言うと、「うれしいです」と返ってきました。“お役に立てて”とまでは言えないあたりが、レベル2なのですが…。

今学期の木曜日のクラスには、Mさんがいます。Mさんは先日の入学式で通訳をしてくれました。授業中、クラス全体に多少難しいことを聞いても、真っ先に答えてくれました。できる学生がもっとできるようになった感じです。学校行事の通訳は、教職員、学生の目が集まりますから、花形中の花形です。それをやり遂げたことで、自信が確かなものになったのではないでしょうか。

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青空に恵まれて

10月29日(土)

“天気よければすべてよし”で、昨日の川越小旅行は、最後の集合場所に戻ってきた学生たちの笑顔笑顔笑顔で無事終わりました。Cさんはミッフィーのノートを買い込み、すでに合格の決まったY大学に進学したら使うと言っていました。キツネのお面をかぶった学生もいれば、1日中買い食いをし続けもうお腹いっぱいという学生もいました。美術館に立ち寄った学生も、意外と多かったようです。

朝、本川越の駅前に集まったときは、こりゃ川越の街じゅうKCPの学生だらけになっちゃうなと思いました。しかし、街の中心部を実際に歩いてみると、学生たちはそんなに目立ちませんでした。平日の日中なのに、川越の街は観光客でにぎわっていました。全国旅行支援のおかげなのでしょうか。時の鐘付近の食べ物屋さんは、どこも長蛇の行列。学生たちはそれにもめげずにお目当てのスイーツなどをゲットしたのでしょう。

お昼過ぎに、中間の出席チェックがありました。私は中級から上級にかけてのクラスを担当しました。学生の集団が来るたびに「はい、クラスと名前」と、各学生に名乗らせます。以前教えた学生の名前を聞くと、「あ、Sさん、お久しぶり」なんて、声を掛けました。欠席がちの学生に「お久しぶり。この頃、あんまり会わないねえ。ちゃんと学校来てんの?」とかって言ってやると、少し慌てた様子で「いいえ、来てますよ」と否定したり、「本当に久しぶりですか。昨日、先生見ました」と存在を主張したりしていました。いなかったことを証明するのはアリバイですが、いたことを認めてもらうのは何というのでしょう。

帰宅後、スマホに搭載されている歩数計を見ると、3万歩余り。普段の5~6倍ほど歩きました。

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てんぷらラーメンを食べに?

10月21日(金)

来週の金曜日は、学校行事で川越へ行きます。西武新宿から西武線で終点の本川越まで行き、そこで学生たちを野に放ちます。でも、当日いきなり「はい、好きなところを見てきて」では、迷子になるか駅付近でスマホいじりに精を出すかでしょう。ちょうど1週間前ですから、クラスの学生をいくつかに分けて、そのグループごとに川越について調べさせることにしました。

川越経験者のTさんは、てんぷらラーメンがおいしかったとのことなので、それをまた食べようとグループのメンバーに提案していました。同じグループのDさんは、評判のコロッケ屋さんをネットで見つけ出し、食べに行きたいと訴えました。どうやら、このグループはグルメツアーになりそうです。

Nさんのところは、喜多院や時の鐘など、王道を歩く雰囲気です。かなり忙しいスケジュールのようですが、こちらはお昼をどうするつもりでしょう。菓子屋横丁あたりで仕入れたお菓子を食べながら歩き回るのでしょうか。それもまた、川越らしさの一つです。

学生たちは、意外に行動範囲が狭いです。自宅と学校と塾の範囲しか知らない学生が多いです。以前観光で来日し、ニセコは知っているけど渋谷は行ったことがないなどという例もあります。川越でてんぷらラーメンを食べたことがあるTさんなどは、貴重な存在です。漠然と「日本文化を知りたい」と言っているだけでは、いつまでたっても日本文化に触れられません。KCPの課外活動は、半強制的に学生を日本文化の中に放り込む意味もあります。これをきっかけに、日本を新しい角度から見てもらいたいと思っています。

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お昼の公演でみんな好演

9月14日(水)

お昼に、演劇部の発表会がありました。出し物はアラジン。演劇の公演を想定して設けたステージではありませんから、照明もよくないし、マイクも音を十分に拾っているとは言えません。でも、演劇部の面々は、アラジンっぽい衣装に身を包み、精一杯声を張り上げ、体を大きく動かし、ステージの端から端まで使って、日ごろの練習の成果を見せてくれました。

私のクラスのCさんやLさんも、午前中の授業で指名した時の蚊の鳴くような声とは打って変わって、講堂の内番後ろで見ていた私にも聞こえる声でセリフを言っていました。発声練習もしているのかどうかわかりませんが、マスク越しでもよく通る声でした。なんだ、大きな声も出せるんじゃん。

30分近い公演でした。出演したどの学生も、けっこうな量のセリフをこなしていました。授業中はつっかえつっかえ教科書を読んでいるかもしれない学生たちが、演技をしながらよどみなく話しているじゃありませんか。よどみがなさすぎて、セリフが上滑りしていた場面もありましたが…。ステージに立ったりマイクを握ったりすると人が変わるという例はよく聞きますが、演劇部の面々は好ましい方向に変わった観たようです。こういう経験が、学生の自信を生み出してくれればと思っています。

ステージが終わった後、演劇部全員で写真を撮っていました。マスクを外したら、自然に笑顔が浮かんできたようです。指導をしてきたN先生も、昨日までの心配げな表情が嘘のような晴れがましい顔で隅に立っていました。

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