Category Archives: 卒業生

目を開く

7月31日(金)

7月が終わります。でも、学生の進学に向けての動きがあまり活発ではありません。EJUがなかったため、受験モードになる機会が失われ、本試験の壁に弾き飛ばされて自分のできなさ加減に気づくこともなく、みんなどことなくのんびりしています。TOEFLなど英語試験を受けた学生ですら、私の目からすると「キミは何年計画で大学に入るんだい」と言いたくなるくらい緊迫感がありません。

だから、尻に火をつけるべく教師側も動いています。先週の進学フェアも、昨日のH大学の説明会も、指定校推薦の大学名を公表したのも、その希望者受付を始めたのも、そういう意味合いを込めています。私も、授業をしたクラスでEJU中止の影響を解説したり、志望校の選び方の手ほどきをしたりしています。

今年はJASSOの進学フェアも中止になりましたから、学生が多くの大学を知る機会が奪われました。また、オープンキャンパスは中止か、開催されてもオンラインで、学生たちの動きが鈍いように見えます。というわけで、受験生なのに大学の名前を知りません。「早稲田に慶應にMARCH、あとは…???」というレベルの学生が少なくありません。これでは困りますから、各大学の詳しい内容はさておき、せめて名前だけでも覚えてもらおうと、東京近辺の大学紹介をしました。

ただ大学の名前だけ羅列したにでは学生の興味を引きませんから、KCPから進学した学生の声も交えました。また、その大学を卒業した学生がどんな仕事をしているかなども、可能な限り紹介しました。そうすると、学生たちの知らない大学が、意外に“いい大学”だったりするのです。学生の顔つきを見ていると、少しは学生の視野を広げられたかなと思います。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

進学したけど

7月11日(土)

3月の卒業したSさんが、ビザ更新に必要な書類を取りにKCPへ来ました。第一志望のR大学に進学したSさんですが、キャンパスでの対面授業はもちろんのこと、オンライン授業もほとんどありません。一部の語学の授業を除いて、実質的に学生が自習することになっています。自分で教科書を読んで、演習問題をやって…という毎日だそうです。前期は定期試験もなく、後期も対面授業は望み薄のようです。

教師が計画的に授業を進めていくのなら、科目間の連絡も取れていて、学習がスムーズに進むことでしょう。しかし、学生が自分で教科書を読み進むとなると、そのバランスも崩れてしまいます。授業Aで習ったことを応用すると授業Bの理解が深まり、それを基礎に演習科目Cに取り組むとその専門分野が立体的にとらえられる―というようになっているはずです。Sさんはそれがうまくできず、進んだり戻ったりしていると言っていました。

確かに、R大学には優秀な学生が集まっていますが、大学院生ではなく学部の1年生に専門分野の自習を求めるのはかわいそうです。1年生の授業に集中的に教師を割り当てられなかったのでしょうか。Sさんはそんなことは言っていませんでしたが、「授業料半分返せ」という声も十分理解できます。

他の大学に進学した卒業生たちはどうしているでしょう。どこも去年までとは全然違う形の授業になってるでしょうが、多少なりとも大学生活らしい生活が送れていることを祈るばかりです。同時に、在校生への進路指導も、こういう異常事態下であってもきちんとした勉強ができるところを薦めるようにしていきたいです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

厳しい戦い

6月23日(火)

昼食から戻って職員室で仕事をしていると、スーツ姿の見慣れぬ若者が入ってきました。新しい先生が来るという話も聞いていないし、このご時世ですから新入生という線も考えにくいです。それに、私の方を見て妙になれなれしく微笑みかけています。私の顔がよっぽど怪訝そうだったのでしょうか、マスクを外してくれました。笑顔の元が見えました。小さめの歯が隙間なく生えそろった口元は、まぎれもなく卒業生のYさんのものでした。

Yさんは、就活の真っ最中です。やはり、コロナの影響はかなりあるらしく、「採用は厳しい」とはっきり言われることもあるそうです。オンライン面接でも通常の面接でも、難しさは変わりないと言っていました。2種類の難しさのポイントが違う面接をこなさなければならないのですから、去年までの就活生より精神的にきついんじゃないでしょうか。

大学で何が一番大変かと聞いたら、「論文」と即答が返ってきました。Yさんの先生は、論文に関しては一家言ある方のようで、3年生の時に出した論文はボコボコにされたそうです。そういう厳しい訓練を受けたおかげでしょうか、Yさんが使う語彙は社会人のものになっていました。専門分野についても、今の社会についても、実のある議論ができる実力が備わっています。私はいわば身内の人間ですから採点が甘いのかもしれませんが、こんな学生を採ったら、その企業は10年後にきっといい人材を採ったと思うことでしょう。

去年の今頃は、世界中のだれもが1年後にこんな状況になっているなんて、夢想だにしませんでした。Yさんの同級生たちは、みんなどこかで就活に苦戦していることでしょう。どうにか勝ち抜いてほしいと、ひたすら願うのみです。

さて、私は、明日から遅ればせながらのゴールデンウィークと、少々早めの夏休みをいただきます。このブログも、しばらくお休みです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

アンケート

6月17日(水)

留学生に推薦したい専門学校・大学・大学院を挙げてほしいというアンケートが来ました。確かに私は学生の進路指導もしていますが、日本全国の専門学校・大学・大学院を知り尽くしているわけではありません。まさに管見の及ぶ限りで答えるほかありません。

私が持っている管は、各校の留学生担当の方や、何かの折に見た学校の様子や、卒業生から聞いた話や、一般に報じられている各校に関わるニュース程度です。私自身、専門学校や大学に対して何の影響力も持っていませんから、特別なパイプを握ってもいません。こんな狭い視野から見た評価を答えてしまっていいのだろうかと思いつつ、用紙に記入しました。

まず選んだのが、進学した学生がいい学校だと言っているところです。学生自身、志望校選びの際には情報収集に努め、それなりに取捨選択した結果が、現在の在籍校です。しかし、第一志望校に進学したはずなのに不満を述べる学生もいます。そういう学校は見掛け倒しなんだなあと思います。逆に、滑り止めくらいの気持ちで受かったところに進学せざるを得なくなった学生から、「後輩にぜひ薦めてください」と言われる学校は、きっと人生を豊かにできる留学ができるところだと思います。

私なりの“いい学校”の判断基準に、入試問題の質があります。その問題を解くことによって、受験生に新たな視点が生まれるような出題をする学校は、きっと学生を伸ばしてくれるだろうと思います。おざなりだと感じられるような問題や、落とすためとしか思えないような問題や、問題のための問題みたいな問題や、いわゆるクソ問題を平気で出してくるようなところは評価が低くなります。

来学期になったら、進路指導が本格化します。今年は今までとは違う条件で戦うことになりますから、こちらとしても怠りなく研究し続けねばなりません。というか、もう、ちびちびろ情報を集め始めています。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

わざわざ来ました

6月3日(水)

3時過ぎ、オンラインの受験講座の前半が終わって、窓際でぼんやり外を眺めていると、「先生、卒業生のWさんが書類の申し込みに来ています」と声をかけられました。数日前、ビザ更新に必要な書類を申し込みたいとメールを送ってきましたから、KCPのホームページから直接申請できると教えました。メールが来たのは緊急事態宣言が解除されたころでしたが、出歩かないに越したことはありませんから、そう答えておきました。

1階の受付まで下りると、Wさんが申請書類に必要事項を記入しているところでした。「KCPは学校で授業が始まったんですか」「うん、今週からね。でも、全部の学生が一緒にならないように、レベルによって来る日を変えてるんだ。Wさんのところは?」「うちの大学は、今学期は学校で授業がありません。オンラインだけです」「Wさんみたいな専門だと、それは困るよねえ」「はい。でも、私はコンピューターグラフィックスですから、まだましです。だけどやっぱり、大きな制作は大学に事前に申し込んで設備を使わせてもらってるんです。彫刻の学生なんかはかわいそうですよ、何にもできませんから」

去年の今頃思い描いていた大学生活とはだいぶ違うようです。1年生ですから、まだ焦ってはいないでしょうが、もどかしさは感じていることと思います。KCPまでわざわざ来たのも、うちから一歩も出られない、出る用事がない、そういう憂さを晴らす意味もあったのではないでしょうか。

今年就活とか大学院進学とかという卒業生はどうしているでしょうか。去年の秋あたりに夢を熱く語っていた何人かの顔が頭をよぎりました。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

久しぶり

4月3日(金)

GさんとHさんが卒業証書を取りに来ました。いや、ビザ申請に係る書類を受け取りに来たついでに、卒業証書ももらっていったと言うべきでしょうか。

私は、2人が入学した学期にレベル1で受け持ちました。Gさんはいつもニコニコしていましたが全然話せず、Hさんは話そうとするのですが言葉が出てこずもどかしそうな顔をしていたのをよく覚えています。必ずしも順調とは言いかねる道のりでしたが、どうにかこうにか進学にこぎつけました。

2人は国にいた時からカップルのようでした。教室で毎日並んで座っていたのであれこれ調べてみたら、そういうことがわかりました。仲がいいのは結構なことですが、GさんとHさんの場合は悪い意味で協力し合ってしまい、日本語に浸りに来たはずが、常に国の言葉で思考回路が作動していました。ですから、次の学期からは、絶対同じクラスにしてはいけない学生リストに載ってしまいました。

クラスは違っても休み時間など2人で話しているのをよく見かけました。私が通りかかると、話を途中でやめて、律義に挨拶してくれました。根は透き通っているんだろうなと思っていました。でも、進路については、私の手を離れてからのクラスの先生方とだいぶ衝突したようです。「GさんとHさん、金原先生のクラスだったんですか。全くもう、どういう指導をしてきたんですか」などと愚痴をこぼされたこともありました。でも、誰よりきつかったのは、Gさん、Hさん自身だったに違いありません。

「授業は20日から始まる予定ですが、始まらないかもしれませんね」と、レベル1の時からは想像もつかないような会話ができるようになったGさん、Hさん。私が受け持った時に抱いていた希望とは違った形での進学かもしれませんが、新しく描き直した夢に向かって歩み始めてください。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

アンダーコントロール

3月25日(水)

オリンピックがとうとう延期になってしまいました。妥当な措置だと思います。まさしく諸々の事情が複雑に絡み合っているため具体的にいつに延期するのかは決められないそうですが、だからこそ、関係者の苦衷は想像に余りあるものがあります。

2020年のオリンピックは、安倍さんが原発事故に起因する諸問題はアンダーコントロールだと大見得を切ってもぎ取ってきたところがあります。最初は批判も多かったですが、次第に国全体がオリンピックに向けて盛り上がってきました。ところが、オリンピックイヤーに入ってから新型肺炎が猖獗を極め、世界全体がアンダーコントロールじゃなくなって、昨晩の決定に至りました。こんなことを言ったら不謹慎かもしれませんが、安倍さん、アンダーコントロールの亡霊にたたられてるんじゃないかなあ。

卒業証書を受け取りに来た卒業生に話を聞くと、専門学校も大学も、ほぼ入学式は中止で、授業が始まる期日さえも未定のところがあります。証書を受け取った後笑顔で写真に収まってくれますが、心の中に言い知れぬ不安を抱えていることは想像に難くありません。日本に居続けるのも不安でしょうが、国へ帰ろうにも帰れないというのもまた事実です。帰国しても2週間は隔離ですから、心配しながらも自由に歩ける日本のほうが多少はましだといったところでしょう。

欧米諸国に比べると、日本は“瀬戸際”が予想よりも長引いていますが、かろうじてアンダーコントロールを保っています。でも、自粛ムードが世を覆い、不安や心配など暗い影に包まれた日々を送っていると、ストレスがたまってしまいます。ストレスがたまると抵抗力が落ち、新型肺炎じゃなくても体調を崩しやすくなります。それじゃあ何のために活動を控えているかわからなくなってしまいます。

安倍さん、今年は人の少ない新宿御苑で1人で花見をして、コロナウィルスが1個もない空気をたっぷり吸って、花の美しさで心の洗濯をして、この難局に立ち向かってください。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

時間を守る

3月23日(月)

先週の月曜日から卒業証書を渡しています。今年は大勢が一時に集まらないように、予約制にしています。卒業生には、担任教師にメールで証書を受け取りに行く時間を連絡するように伝えてあります。1週間やってみて、しっかりしている学生とだらしない学生の差が歴然としていることに、たいそう驚かされています。

例えば、Aさんたちは仲のいい5人一緒に証書をもらいたいとのことでしたが、約束の時間より早く学校へ来て待っていたのはAさん。だいぶ経ってから来たのがBさんとCさん。待たされていたAさんが気の毒になり、教師側がいらいらし始めてから悠然と現れたのが、DさんとEさん。Aさんは皆勤賞、BさんCさんはまあまあの出席率、DさんEさんは…。進学してからが心配です。

Fさんは2度時間変更しました。約束した時間が都合悪くなったから変えてほしいと連絡してきたことは立派ですが、2度もとなると、時間管理の仕方が甘いんじゃないかな。でも、Gさんに至っては、1度目はすっぽかし、2度目は約束し直した時間に遅れて、私が別の仕事でいないときに現れ、証書がもらえずじまいでした。Gさんらしいと言ってしまえばそれまでですが、こんなに時間にルーズでは、困ったものです。

結構多いのが、約束していないのに突然もらいに来るパターンです。気が向いたから来たでもかまいませんが、時間を連絡しろと言われているのですから、せめて30分ぐらい前には電話でもメールでも、今から行くと連絡するのが礼儀じゃないでしょうか。

約束の時間に遅れる学生と、アポなしでやってくる学生に備えて、私は1日中職員室にいます。おかげで、先週からずっと、お昼抜きです。今朝も、普通の朝食+カップ麺1個で食いだめをしてきました。それでも、この時間(もうすぐ午後7時)になると、お腹が鳴りそうです。

明日も明後日も、パラパラと学生が来ます。空いている時間帯もありますが、結局埋まっちゃうんでしょうね。でも、多くの学生とは、これが顔を合わせる最後の機会になります。空腹感ぐらい、我慢しなきゃ。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

よく話す仕事

3月18日(水)

卒業生が証書を受け取りに大勢来ました。もしかすると、昨日・おとといよりも多かったかもしれません。私はその一人一人に証書を読み上げて手渡しています。これまで全然接点がなかった学生、名前だけ、顔だけしか知らない学生、だいぶ前に説教した学生、初級で教えたきりの学生、選択授業で週に90分だけ教えた学生、受験講座でさんざん面倒を見た学生、もちろん、今学期の私のクラスの学生、こんなにまで色とりどりの学生がいたのかと、改めて感心してしまいます。

直接教えた学生には、「よくやった」と声をかけてやりたくなります。ことに遠隔地に赴くことになっているとなると、「しっかりやれよ」と激励もしたくなります。でも証書を渡す時は学校組織の機能の一部ですから、ごく普通に「おめでとうございます」と声をかけるだけです。渡した後で時間があれば、機能ではなく人間として接します。称賛も激励もします。

今までに“濃厚接触”した学生の中には、衝突を繰り返してきた学生もいます。こいつにだけは証書を渡したくないと思った学生もいますが、いざそういう学生が目の前に立つと、衝突したことも美しい思い出に昇華されてしまいます。「恩讐の彼方に」などと言ったら大げさすぎますが、共同作業をしてきたような錯覚にすらとらわれます。こういうのは、かえって学生のほうがドライなのかもしれませんね。

週末、マッサージに行きました。足裏と背中をもんでもらって最後の最後に、「お客さん、よく話す仕事をなさっていませんか」と言われました。背中がコチコチだとか、骨盤がゆがんでいるとか、目に疲れがたまっているとか、足が若いとか、数々の言われ方をしてきましたが、足と背中だけで仕事について言われたのは初めてです。しかも、「よく話す仕事」というのも、あながちはずれではありません。

その後3日間、授業こそしていませんが、100名からの証書をフルセンテンス読み上げてきました。今晩帰りに寄ったら、足の小指に触れただけで「昼間、よくしゃべりませんでしたか」とかって聞かれそうです。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ

1人1人の卒業式

3月16日(月)

朝から、卒業生が続々と証書を受け取りに来ました。一番早く来たのはOさんで、7時40分ごろでしたでしょうか。混んだ電車に乗るのは嫌だから空いている時間に来たと言います。いまどきらしい理由だと思いました。でも、カメラマンをはじめ、スタッフがまだ来る前でしたから、9時まで待ってもらいました。

Oさんを皮切りに、三々五々というより一々三々ぐらいの規模で学生がぽろぽろと来ました。オンライン授業中のため教師も全員いるわけではなく、ギャラリーは10名いるかいないかぐらいの教職員だけでしたが、それだけ非常に距離の近い証書の授与ができました。私も、手渡す学生全員に、以下同文ではなく、証書の文面をすべて読み上げました。そして、1人1人と記念写真を撮りました。用意した学生の寄せ書きコーナーの模造紙も、1枚目はすべて埋まり、夕方には2枚目に突入してしまいました。

それでも、お昼過ぎは学生が数名集まり、ちょっと渋滞もしました。しかし、見守る学生たちも穏やかで、自分の番になるとちょっとおどけて見せたりしていました。もちろん、卒業生たちは教師と思い出話に花を咲かせることも忘れてはいません。心のこもった「ありがとうございました」「お世話になりました」が、1日中聞こえました。

夕方、金曜日に証書をもらって東京を去っていったZさんから、引っ越しが無事に終わったというメールが入りました。義理堅いものですね。周りに知っている人のいない新しい環境で生活をはじめるのは、不安や心配がいっぱいあるでしょう。進学先の入学式もオリエンテーションも中止だとか言いますから、さらに心細さが募るのではないでしょうか。しばらくしたら、景気づけにメールを送ってあげましょうか。

日本語教師養成講座へのお問い合わせはこちらへ