Monthly Archives: 11月 2015

答えられない

11月4日(水)

今週末に入試を控えるSさんの面接練習をしました。準備してきた質問に対してはすらすら答えられるものの、想定外の質問にはしどろもどろになるという、中級あたりの学生によくあるパターンでした。

大学と学部の志望理由、卒業後の計画はきちんと答えられます。しかし、将来やりたい仕事をするために大学で何を勉強しなければならないかという質問に対しては、何かしゃべっているものの、それが答えになっていません。それじゃダメだと指摘しても、ビジネスに必要な知識などという抽象論の域を出ない答えしか返ってきません。

要するに、その大学への憧れがきちんとした形にまで成熟しておらず、漠然とした精神論に留まっているのです。これでは合格が覚束ないので、Sさんに考えてもらおうと、考える上での補助線を引いてやるのですが、Sさんにはその補助線が見えていません。Sさんは「先生ならどう答えますか」と、私に模範解答を求めます。もちろん、私の頭の中にはSさんの考えを忖度した答えがあります。でも、それを教えてしまっては、Sさんはそれを暗記するだけでしょう。そして、暗記すると、本番で緊張したら忘れるものです。忘れた時、頭が真っ白になるっていうのが、暗記の特徴です。

受験日までもうちょっと時間がありますから、現時点ではコテンパンにやっつけて、立ち直るのに必要な支柱を立ててあげたところまでにしておきました。支柱を力に立ち上がるかどうかはSさん次第です。ここで立ち上がれないようだったら、頭の中がまだ大学入試のモードになっていない、自分の将来に本気で向き合っていないのです。冷たい言い方ですが、大学に入るにはまだ早いっていうことです。そんないい加減な考えで大学に受かったところで、進学後いい勉強ができるはずがありません。1年か2年で大学をやめることになったら、時間とお金の無駄遣いですから、むしろ落ちたほうがいいです。さて、Sさんはどうするでしょうか。

正直すぎる

11月2日(月)

Yさんはもうすぐ面接試験を控えています。出願の時に志望理由書でさんざん苦労しましたが、面接の受け答えでも苦労を重ねそうな雰囲気です。

一つには、Yさんは非常に正直だということがあります。「日本と国とで何か違ったことがありますか」という質問に対して、堂々と「何もありません」と答えてしまいます。Yさんが普通に暮らしていく上では、国と日本とで違いは感じないのかもしれません。しかし、それじゃあ話の接ぎ穂がないじゃありませんか。あるいは、感度が低すぎると思われるかもしれません。何か違いがあるからこそ、留学する意義があるのであり、それがなかったら、極端な話、わざわざ留学する必要なんかないだろうってことにもなりかねません。

もう一つは、すぐ自分の世界に入り込んでしまう点です。自分の世界を持っていることは学問をする上で不可欠ですが、不意にその中に入ってしまうと周りはそれについて行けなくなってしまいます。面接でこれをやると、面接官はいいイメージを抱かないでしょう。

Yさんは学力はありますから、日本人のようなペーパーテストだけの入試なら合格する可能性はかなり高いです。しかし、面接試験があるとなると、よほど好意的な面接官でない限り、Yさんのよさに気付いてくれないでしょう。潜在能力が顕在化される以前に、切り捨てられてしまうパターンです。

でも、不思議ですね。面接ってペーパーテストでは計れない受験生の美質を見出すために行われるようになったはずなのに、面接でその美質を表に出す訓練をしていないといい物を持っている受験生が落とされてしまうんですね。入試って、難しいですね。

私にぼろかすに言われたYさんは、明日の休みにもう一度考え直しますと言って帰りました。さて、休み明けにどんな答えを考えてくるでしょう。