Monthly Archives: 10月 2021

発表は難しい

10月2日(土)

学期末に行ったグループ発表の映像を見ました。発表当日、私は養成講座の授業があったため、現場に立ち会えませんでした。代講の先生が撮っておいてくださった発表の様子をチェックし、採点したというわけです。

オンラインでの発表を録画で見るという悪条件が重なり、学生の真の実力が測れたか心もとない面はありますが、やはり、学期中からタスクに積極的に取り組む学生と、おざなりの学生とでは、如実に差が出ました。ほぼ満点の学生からお情けで合格点にしてやった学生まで、幅広く分布しました。聞いていた学生も、それは感じたに違いありません。

自分の部屋からオンラインということで緊張感が薄いのでしょうか、原稿棒読みに近い発表が多かったです。もちろん、ほぼ満点組は原稿を十分に理解した上で発表していましたから、自然な感じがしました。その一方で、どこかのサイトから引っ張ってきた文章をそのままパワーポイントに張り付け、それを読み上げるだけという、労力最小限をモットーにした発表もありました。

そういう極端な例に限らず、字を載せ過ぎたスライドが目立ちました。グラフとか写真とか、視覚に訴える資料を多用してほしかったのですが、文字に頼ってばかりで頭を抱えてしまいました。

学生たちは、プレゼンテーションにおいても、音声や図表よりも文章で示したい、聞き手も文章で理解したいという傾向が強いのかもしれません。一歩譲って文字情報を示すにしても、知ってもらいたい項目を際立たせるなどの工夫をしてもらいたいです。そういうのを覚えておかないと、進学してからがつらいんじゃないかなあ。

次の学期は、教室でみんなの前で、程よいプレッシャーを感じながら発表してもらいましょう。

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子育ての適地

10月1日(金)

おとといの期末テストで、私が担当しているレベルでは、簡単に言うと、「子育てするなら都会と田舎とどちらがいいか」というテーマで意見を書いてもらいました。私が採点した約20名のうち、田舎がいいと書いた学生は1名でした。「都会」が多いだろうとは思っていましたが、ここまで差がつくとは予想外でした。

多くの学生たちが挙げた理由は、教育でした。田舎ではいい教育が受けられない、子供の能力を引き出すなら都会で質の高い教育を…というのがその趣旨です。自国では得られない教育を求めてわざわざ日本まで来ている人たちに尋ねているのですから、当然の意見かもしれません。

もう一つ、このクラスの学生の大多数は都会の生活しか知らないようです。はっきりそう書いている学生も何名かいました。田舎は旅行で訪れるなら魅力的だが、住むのは嫌だといわんばかりの文章もありました。そうなると、田舎で子育てというのは想像もつかないでしょう。まあ、学生たち自身、育てられている最中ですからね。

更に言ってしまうと、「都会」「田舎」の定義が学生側と教師側でずれていたかもしれません。仙台は、東北の人にとっては別格の大都市です。しかし、東京と比べたら街の規模が全然違います。大阪だって、東京から見たら、生駒山地が迫っている田舎町になりかねません。また、学生たちが想像した田舎とは、山奥の一軒家のようなところかもしれません。その証拠に、都会がいいという理由に、田舎は不便だというのがいくつか見られました。さらに想像力をたくましくすると、自分が都会で暮らしたいから、子育ても都会と言っているのではないかと思われるふしも見られました。都会は就職しやすいなどというのは、子供じゃなくて自分自身のことじゃないかな。

こういう発想ですから、東京を離れようとしないのです。唯一「田舎」と答えた学生は、行き過ぎた競争社会を批判し、目の前の成果にとらわれて都会を選んではいけないと説いています。文法のミスには目をつぶって、Aをつけました。

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