落第点

5月26日(金)

私のクラスの、今学期の新入生Tさんは、初級にしては上手に話せますし、こちらの言葉を理解する力も十分にあります。しかし、Tさん自身、ドラマやアニメなどを聞きながら独学でここまで日本語を身に付けてきたというとおり、文法や語彙を系統的に勉強していません。動詞の活用形がうまく作れなかったり、クラスの他の学生がみんな知っている語彙が抜けていたりということが時々あります。

それでも学期の前半まではどうにかこうにか切り抜けてきました。また、しゃべらせると内容のある話をしますから、クラスメートから侮られるということもありませんでした。しかし、今回の文法テストでついに不合格点を取ってしまいました。答案を見ると、白紙だとか箸にも棒にもかからない間違え方とかというわけではなく、ふにゃふにゃの土台にブロックを積み重ねようとしたところ、崩れ落ちてしまったという感じです。

もちろん、私たちも今まで手を拱いてきたわけではありません。Tさんの抜け落ちを補うべく、基礎文法の解説をしたり問題集をやらせたりしてきました。しかし、日本での進学を考えているTさんは、授業の進度が速い進学クラス所属です。授業の勉強と抜け落ちの穴埋めを並行して進めるのは、想像以上に難しかったようです。

じゃあ1つ下のレベルからスタートさせればよかったかというと、それだとTさんにとってはつまらなかったでしょうね。Tさんは中間テスト直前の日本人ゲストとの会話でも活躍していたし、今回のテストでも他の学生が書けない気の利いた表現もしていました。そういう点からすると、今のレベルが最適だと思うのです。

さて、ここからが私たちの腕が問われるところです。このままTさんがずるずると落ちていかないようにどうにか手を打たねばなりません。本人のモチベーションを維持強化していくことも求められます。何をどうすれば進級できるか、その道筋をTさんといっしょに考えるのが、最初の仕事です。

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