何か飲まない?

5月12日(月)

「何か飲む?」「うん、飲む」。この会話に現れている2つの“飲む”は、明らかにイントネーションが違いますよね。?付きの方は、語尾でいったん下がったのちに上がって終わりますが、答えの方は下がったままで終わります。この違いは、教科書の文字を読んだだけではわかりません。実際の会話での発音を聞いたり、自分で話してみたりしないと身に付くものではありません。同様に、「何か飲まない?」「ううん、飲まない」(という会話が実際になされることはほとんどないでしょうが)における2つの“飲まない”も、イントネーションによって意味と役割の違いを表しています。「何か飲む?」ができたら、「何か飲まない?」も正しいイントネーションで発話できるでしょう。実際、私のクラスの学生たちは、ガイジンっぽくないイントネーションで話せるようになりました。

では、「何か飲む?」と「何か飲まない?」は何が違いますか。この2つ、レベル1の教科書にほぼ同時に出てきました。学生たちは、私の真似をしてイントネーションはどうにかできるようになったものの、“意味は?”と聞かれると、お手上げです。知っている単語をかき集めて、“丁寧”とか“気持ち”とかと答えますが、それだけでは言わんとしていることがさっぱり伝わってきません。

簡単に言ってしまうと、「何か飲む?」は「あなたは何か飲みますか」であり、「何か飲まない?」は「(一緒に)何か飲みませんか」です。こういう説明を、身振り手振りも交えてしたら、ある学生が「誘う?」などという、レベル1らしからぬ難しい言葉で聞き返してきました。速攻でスマホを見たのかもしれません。たとえそうだとしても、こちらの意図が伝わったことは確かですから、「うん、そうだね」と言って、さらに使う場面を与えました。

文字だけで勉強すると、上級になっても「何か飲まない?」が使えません。そういう芽をしっかりつぶしておくのが、初級の教師の役割です。

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